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交換留学の日本人女子大生を車内レイプした台湾タクシー運転手の素顔
2011.7.24 18:00 産経ニュース
タクシー運転手による日本人女子大生強姦事件で、犯人が少額の保釈金で釈放されたことに対する市民や法曹界の反応などを報じた台湾各紙
東日本大震災の義援金が約170億円に達するなど、親日感情で知られる台湾だが、留学中の日本人女子大学生がタクシー運転手にだまされ、山中で暴行されるという事件が発生し、台湾社会を揺るがしている。運転手はすぐに逮捕されたものの、地裁は「逃亡のおそれがない」として少額の保釈金でいったん釈放。検察側の抗告で高裁は一転、勾留を命じたが、運転手の逃亡が発覚したことから、35万人以上の市民がフェイスブックを通じて、保釈を許した地裁判事の免職運動を起こす騒ぎに発展している。日台のきずなをゆるがした暴行犯とはいったいどんな男だったのか。(台北 吉村剛史)
婦女暴行の容疑で台湾の警察当局に逮捕されたのは台北郊外、新北市内に住むタクシー運転手、謝東憲容疑者(41)。
捜査関係者らによると、事件が起きたのは7月11日深夜。謝容疑者は、交換留学生として台湾の大学で学ぶ日本人女子大生(21)を、台北市郊外、新北市土城区の山中で暴行した。
女子大生は同日午後7時ごろ、台北南郊のMRT(地下鉄)永寧駅から友人の男性の家へ向かう途中、道に迷っていたが、姿を見かけた謝容疑者が「送ってあげる」などと呼び止め、女子大生がタクシーに乗ったところ、山間部へ連れ去り、女子大生の首をしめるなどして脅迫。車内で性的暴行を加えたという。
女子学生は置き去りにされ、近くのコンビニエンスストア前で泣いていたところを店員が発見、保護し、事情を聴いて警察に通報した。同店の防犯カメラの映像が手がかりとなって謝容疑者の車が浮上し、12日、警察当局が謝容疑者を逮捕、送検した。
しかし、謝容疑者は「タクシー代が払えないという彼女の方から体を提供してきた」「合意の上の情事」などと容疑を否認した。板橋地検が謝容疑者の勾留を申請したものの、地裁の担当判事(34)は同日深夜「単独犯であり、逃亡の恐れもない」として、保釈金5万台湾元(約14万円)で謝容疑者を釈放した。
これに対し、地検は「最低でも有期刑5年以上の重罪の容疑者」として抗告した。高裁は一転して、勾留命令を下したが、警察が謝容疑者宅に身柄拘束に向かったところ、謝容疑者の妻が「夫は14日の夜に家を出て以来、連絡がつかない」と話し、逃亡が発覚した。
結局、謝容疑者は17日、携帯電話で友人に連絡をとり、地元の墓地で友人と待ち合わせをしたところ、友人の通報で駆けつけた警察によって身柄を拘束された。
事件をめぐっては、被害女子大生の友人男性やその家族らが憤慨し、台湾のメディアに連絡。テレビ各局をはじめ、蘋果日報や聯合報、自由時報、中国時報などの有力紙が13、14日から一斉に報道した。
女子大生自身、帽子やサングラス、マスクなどを着けてカメラの前に立ち、「抵抗すれば殺すと脅された」などと証言、しめられた際のアザが残る首の映像などをまじえて大きく報道した。
そうした中、永寧駅付近では今年3月から5月にかけて、帰宅途中の1人歩きの女性に近づき、窓を半分開けて「送ってあげる」と声をかけてくるタクシーが何度も目撃されており、たびたび警察に通報が寄せられていたことも判明した。
また当局の調べに対し、謝容疑者が「別の2人の女性乗客とも車内で性行為をしたことがある」と話していることから、謝容疑者がタクシーを使った同様の手口によるレイプ常習犯だった可能性も浮上し、通報を生かせなかった警察にも批判の声はあがった。
さらに炎上したのは、当初、少額の保釈金で釈放を許した地裁の担当判事で、その判断を疑問視する報道が各紙で続出した。担当判事の同僚法官からも「釈放は問題がある」との声が飛び出し、司法院の林錦芳秘書長も司法院が「近く法官会議を開き、判事の保釈釈放裁定の処理不当を検討する」と応じる一幕も。
司法関係者が揺れる中、「たった5万元で保釈とは、信じられない判断」「東日本大震災の際に見せた台湾の姿は一朝にして崩壊した」「信用を世界的に落とした」などと憤慨する市民らが14日、フェイスブックを通じ、この担当判事を感覚の鈍い「恐竜法官」と決めつけ、免職を嘆願する署名運動の輪が一気に広がり、20日までに36万以上もの署名を集めた。
台湾では昨年8月、児童への性的虐待に対し、軽い判決が続いたことから市民の怒りが爆発し、司法の欠陥をただそうという「白バラ運動」が起きており、今回も関係者らが政府を批判した。フェイスブック上では31日には立法院(国会に相当)付近などで抗議集会を呼びかけるなど、騒ぎはさらに広がっている。
台湾では、1990年、1人旅をしていた日本人女子大生が行方不明になり、翌年、遺体が発見され、タクシー運転手による暴行、殺害が発覚する事件が起きている。当時は日本で台湾の治安に対する不安が広がったため、台湾を訪れる日本人観光客が激減し、旅行業界が打撃を被っている。
近年、日本と台湾の良好な関係をアピールしてきた台湾の外交部(外務省に相当)では、今回の事態を憂慮し、16日には台湾の対日交流窓口機関、亜東関係協会を通じて「日本側に慰問の意を表明した」と表明した。
また「被害者に適切な援助も申し入れた」とし、日本側から、特別な援助の要請はなく、「台湾の司法態度を尊重し、最善の処理を希望する」との回答を得たとして、「事件による対日関係への影響はない」と説明に追われた。
一方、日本側の対台湾交流窓口機関、財団法人交流協会台北事務所でも、台湾在住の邦人向けに、台湾のタクシーに乗る際は不審な車両を避けたり、交番でタクシーを呼んでもらうよう、注意を促す文書をメールなどで流し、対応に追われた。
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