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地域ぐるみ防災不可欠
中央防災会議の大地震被害想定 京都新聞 2月19日より http://www.kyoto-np.co.jp/
近畿の大地震によって文化財建造物が壊滅的な被害を受ける可能性があることが、18日に政府の中央防災会議で公表された被害想定で明らかになった。市街地に多くの文化財建造物がある京都では、たとえ建物が倒壊を免れたとしても、延焼の危険にさらされる。
韓国の国宝「南大門」放火事件のような悲劇を防ぐためにも、地域ぐるみの取り組みが不可欠だ。地域の防災力向上は、地域の人命を救うことにつながると専門家は指摘する。
文化財建造物は観光の拠点であり、市街地に隣接して立地しているだけに、耐震性と防火の両面での対策が必要だが、多額の費用が必要となるだけに、具体策については模索が続いている。
京都市中京区の二条城では、耐震診断で国宝の「二の丸御殿」や重文の「本丸御殿」の耐震不足が指摘されたことから、一部を入城制限して、より詳しい専門診断に向けて地下30メートルまでの地質を調べるボーリング調査を市が進めている。修理することが前提の日本建築は欧米の石造り建築と異なり、倒壊しても建て直すことが比較的容易だ。しかし、大勢の観光客が集まる観光拠点だけに、人的被害を食い止める最低限の耐震補強が求められる。
■難しい耐震診断
ただ、解体修理は数100年に一度で、膨大な出費が必要となる。耐震不足と認定されれば、大幅な入場制限を強いられる恐れもあり、耐震診断自体に及び腰となる社寺も多い。
京都府文化財保護課の平井俊行建造物係長は「画一的な耐震診断を強いれば、ほとんどの建物がアウトになる」とした上で、「伝統的な日本建築は修理を重ねることで耐震性を保ってきた歴史がある。金具や鉄骨の補強で免震性を高める技術も進んできており、必要に応じて整備するのが現実的」と話す。
■ハード面に限界
一方、京都の社寺は、古い民家が密集する市街地に多く、周辺からの延焼を食い止める必要もある。ほとんどの国宝・重文の建造物は、自動火災報知設備や、放水銃などの消火設備が設置されている。しかし、失火や放火などの初期消火を念頭に置いたもので、大地震の同時多発火災で「消防車がこられない」ケースは想定されていない。
消火設備には巨大な貯水槽が必要だが、多額の費用がかかる。小さな社寺では居住者が高齢だったりして、必ずしも万全の防火体制をとれない場合も多い。小池久・府文化財保護課長は「ハード面だけでは限界がある」と訴える。
初期消火や美術工芸品の搬出に地域の住民の力を貸してもらおうと、京都市は2000年から「文化財市民レスキュー」を組織、これまでに230カ所で発足した。「地域を守ることが、文化財を守ることにつながる。自立的、日常的な活動を高めていくことが今後の課題」(野村弘・消防局予防部文化財係長)という。
清水寺と産寧坂重要伝統的建造物群保存地区での防災水利整備事業など、寺社と地域の協働をコーディネートしている大窪健之・立命館大教授(文化財防災学)は「人がいてこその文化財で、文化の風土を伝える地域も守ることが大切。寺社の池などを消火用水などに利用すれば地域の防災の核にもなるし、地域の水と緑の再生につながる。地域にも寺社にもメリットがある」と強調。「今回の被害想定はとても厳しいが、京都の防火への高い意識をベースに、地域でできることを考えるきっかけになれば」と話している。
写真:(本文と関係無し)能登震災 被災した歴史的建築物 興味深い土台 塀が無傷だったのは?
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