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恒例の世論調査の結果が報道されたことで、またいつものように別姓選択制の議論が盛んになっている。これまでも何度か議論をしてきたが、いまだに同じところで止まっている人が多く、議論が前進しない。何度も一から自分の考えを説明しなおすのは馬鹿馬鹿しいので、ここに大筋をまとめておこうと思う。

別姓選択制賛成派に多い主張は「別姓選択は選択の自由、現行制度は強制、だから別姓選択のほうがよい」というもの。
そして「他人が同姓にしようが別姓にしようがとやかく言うことではない」という。

まずこのあたりから解きほぐしていかなければならない。
上記の意見にはいろいろな「暗黙の前提」が含まれているのだが、深くものを考えない人はそこに気づかない。
表面的なイメージだけで捉えると、暗黙の前提として含まれている主張に疑いを持たない。
だからこそ、世間でよく言われることについては、本当にそうなのだろうか、という批判的な検証をきちんとしなければならない。

では、改めて、よく考えてみてほしい。
日本における「みょうじ(名字・苗字)」というのは、個人の選択の自由の対象であるべきものなのか、ということを。
最初に掲げた賛成派の主張は、この問いについて「自由であるべき」という前提を勝手に含んでいる。
しかし本当にそうなのだろうか?よく考えてみてほしい。
田中さんはなぜ「田中」という苗字なのか。本人が「田中と名乗りたい」と思ったからなのか。
だれかに「田中か山田か鈴木か佐藤か高橋の中から一つ選べ」と言われて選んだものなのか。
どちらも正しくないことは一般常識のある人ならだれでもわかるはずだ。
ではなぜか。答えは簡単である。「田中家に生まれたから」である。
本人が選択したわけではないし、だれかが代わりに選択したわけでもない。まして自由などまったくない。
どこに生まれたかによって自動的に決まったものだ。つまりそれは出生地の住所と同じ性質のものと言ってもよい。
ではその田中家はなぜ田中家なのか。
それは「両親のいずれかが田中家の出身だから」である。
その「両親のいずれか」の部分にだけ、選択がある。
しかしこれはあくまで、2つの異なる家族の出身者が新しく1つの家族を作るにあたってどちらの家族から名前を受け継ぐのかを選択しているだけであり、個人が自分の苗字を自由に選択する、というのとはまったく意味が異なる。
経営統合する企業がどういう社名になるかを決められることと、社員個人がそれぞれ自社の社名を好きなように名乗れる、というのは違うのと同じことである。
生まれたときに生まれた家の苗字に自動的になる。そして他家に養子に入れば養家の苗字に自動的になる。
婚姻によって2つの家族が1つになるときはいずれかの苗字が新しい家族の名前になる。
すべて「条件(置かれている立場)に沿って自動的に決まる」ものであって、当人の自由意志で選択するものではまったくない。

こういう説明をすると、賛成派からはこういう反論がくる。
「それは現状がそうである、というだけで、それを変えるべきでない理由にはならない」と。
ここにもまた新たな「暗黙の前提」が含まれている。それが何であるか、おわかりになるだろうか。
それは「苗字のあり方などはいつでも自由に変えてよい」という前提である。

これも改めて考えてみてほしい。本当にそうだろうか。
この考え方には「文化」という観点がまったく欠落しているのである。
苗字が家族を表す名前である、というのは文化的な事実なのであって、成文法ができる以前から(正確には古代後期〜中世初期から)存在するものである。
もちろん、文化は時代によって変化をするものなので、かつて使われていた「氏(うじ)」という、父系の祖先を表す名前は今はもう使われていない。
しかし苗字が家族を表すという文化的事実については、変化をしたという事実はどこにも存在していない。
「不便だから夫婦別姓」という主張が存在するのは事実としても、それは苗字が家族を表すという文化的事実そのものが変化したことを表していない。
文化というのはそれだけで独立しているわけではなく、社会や個人に根深く影響しているものであり、文化のほうから自発的に変化したものであるなら別として、そうでない場合に権力や法律が強制的に変更することは望ましくない。
それは文化への権力の介入というものであり、厳に慎むべきものである。
ここまで見てくるとあることに気づくはずだ。
賛成派の主張では別姓選択制こそが自由の実現であり、現行制度はそれを阻む強制、ということになっていた。
しかし問題を深く掘り下げてみると見えてくるのは、実は現行制度の維持は文化の現状に対して寛容であり文化的自由を保証するために介入をしないという選択であるのに対し、別姓選択制は文化の変更を強制する権力の介入である、ということだ。
認識はまったく逆転してしまうのである。

…(2)へ続く

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