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「あー、じゃあこれ、マイセンと午後ティーです」
「ごめんね、ありがとね」
活字にすれば、謝罪と感謝の言葉に見えなくはないが、
タカシは中身を確かめることも、財布から金を取り出す素振りを見せることなく、
すぐに彼が「ちゃん付け」で呼ぶ僕の母と同じ名前の女に視線を戻した
「なあ、君、つんくって知ってる?」
視線は彼が「ちゃん付け」で呼ぶ僕の母と同じ名前の女に向いていたが、
それが僕に向けた言葉なのは明らかだった
「つんく♂知らないやつなんて、僕らの世代にはいないですよ」
自分でも嫌悪感が無意識に出ていることに気づく
「じゃあ話早いな。ミニモニっていたじゃん?」
僕は頷くことなく目尻の筋力だけで頷く
「あいつらって身長…」
「150cm以下のユニットですよね。知ってますよ」
タカシが砂漠の様に乾いた唇をねっとりとした舌で潤し
弾力を持った唾液を上下2セントほど糸状に引き伸ばしながら話を続ける
「身長の小さい女ってエロいっていうじゃん?」
そんな思春期の頃に聞いたような都市伝説をぬかしやがって
こいつ、このタカシってやつ、マジでなに言って―――
―――加護亜依(エロくて干された)
―――矢口真里(エロくて干された)
―――辻希美(もう、そんな感じ)
―――外人のメンバー(もう、そんな感じ)
合点
瞬間的に声が出そうになったが、タカシのことを言えないくらい
いつの間にか乾ききり、張り付いた自分の上下の唇が邪魔をする
「つまりそれって」
やっとの思いで喉を伝った僕の言葉にタカシは応えた
「つんくに聞けよ」
午前8時45分
テレビの中で表情の緊張と緩和を繰り返す小倉智昭を隠すように、
我が家のリビングには、マイルドセブンともメビウスともとれる煙が充満している
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