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いち早く「両利き」にならないと生き残れない

6/20() 6:30配信 東洋経済オンライン

 
 

既存の業界秩序が破壊される時代、既存事業の「深化」により収益を確保しつつ、不確実性の高い新領域を「探索」し、成長事業へと育てていく「両利きの経営」が欠かせない。

この「両利きの経営」研究の第一人者であるチャールズ・オライリー、マイケル・タッシュマンの著作が、この2月『両利きの経営――「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』として刊行され、話題になっている。

 

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同書の邦訳版には、経営共創基盤の冨山和彦氏と早稲田大学教授の入山章栄氏という、日本における実務と研究の第一人者が関わり、それぞれが解説を寄稿している。

 

今回はその2人が、日本企業の陥りがちな課題や両利き経営の留意点について対談した。入山氏が、冨山氏の豊富な経験知を聞き出していく。

 

■業界チャンピオンに死角あり

 

 入山:どの企業にもイノベーションが求められるこれからの時代は、既存事業を深掘りして収益を稼ぐ「深化」と、不確実性は高くても新しい領域を切り開く「探索」を、まさに左手と右手が同時に使えるようにできる「両利きの経営」が欠かせません。多くの日本企業は「深化」だけ得意で、「探索」が非常に苦手な印象です。

 

 しかし、「両利き」の重要性は世界中の経営学者が支持することであり、だからこそ世界的な第一人者であるチャールズ・オライリー(スタンフォード大学経営大学院教授)とマイケル・タッシュマン(ハーバード・ビジネス・スクール教授)の共著『両利きの経営』が、冨山さんと私の解説で日本でも上梓されたわけです。

 

 冨山さんはこの本の著者の1人であるオライリー教授と親交があると聞きます。どのようなきっかけで知り合ったのでしょうか。

 

 冨山:私がカリフォルニア大学サンディエゴ校の教育プログラムに招かれたときに、同校教授で日本研究者のウリケ・シェーデさんと仲良くなったのですが、彼女の夫がオライリーさんでした。

 

 彼は、なぜ産業構造の転換期にチャンピオンが退場することが繰り返されるのかに興味を持っていて、日本の状況を聞かせてほしいと頼まれたのです。

 

 入山:冨山さんが産業再生機構時代に再建の対象となったカネボウやダイエーも、かつては業界チャンピオンでしたね。オライリーさんには、どのように説明をしたのですか。

 

 冨山:企業というものは、最初は破壊的イノベーターであっても、いったんエスタブリッシュメントになった瞬間から、現状維持の遺伝子が発現するのです。

 

 インクリメンタル(漸進的)に改良・改善して再強化する能力は残っても、不連続に自己破壊したり、違う遺伝子を取り込んだりする力は失われる。既存ゲームの勝者が内部で昇格するので、自らゲームを変える力は働かない。とくに日本の組織は終身雇用制で固められ、余計に同質化の再強化が進んでしまう。

 

 おそらく、カネボウやダイエーの人たちも、評論家的立場で今後どうするべきかという議論をすれば、既存事業を縮小し、新規事業を強化すべきだと言ったでしょう。しかし、成功している時点では、それがどうしても自分事にならない。縮小ペースはきわめて遅く、新規事業の拡大ペースと調整しながらの撤退戦になる。

 

 ところが、世の中の変化があまりに激しく、本業があっという間に劣化し、大赤字に陥る。成長事業への投資もままならず、共倒れになる。そういう現象だと説明したら、オライリーさんも「やはりそうか」という反応でしたね。

 

 入山:まさに、「両利きの経営」ができないわけですね。

 

 冨山:そうです。破壊的イノベーションに触れた瞬間に、ものすごく早めに新規成長領域に行くべきだけれど、多くの場合それができない。それで、アップルのようにイノベーションを生み出せる企業になろうと、みんなスティーブ・ジョブズの伝記を読み始めるのですが、大企業の人には意味はありません。一から起業するわけではないのだから。

 

 既存企業は、破壊的イノベーションに対峙したときに、どう対応するかという議論をすべきです。大企業は、かつてのイノベーション精神が失われたと、精神論に持っていきがちですが、その議論をする前に、日本がそれまでに作り上げてきた改良型イノベーション、会社の形、終身雇用制、ガバナンスのあり方が根本的に通用しなくなっていることに気づかないといけません。

 

■意思決定力で勝負する領域で劣勢になる

 

 入山:長い間、強みだったはずの日本的経営が、破壊やデジタル変革の時代では急速に通用しなくなっていますよね。冨山さんはなぜだと思われますか。

 

 冨山:かつてのモノづくりやオペレーショナルで大事なのは、流れ作業的な集団作業の中で、どう落ちこぼれを作らずにボトムを上げるかであって、トッププルではない。それが今や、1人の天才なり強烈な個性の持ち主が1万人の集団に勝ってしまう時代です。実際に、パソコンや情報通信など、それが成り立ち始めている領域から日本企業は負けています。

 

 半導体にしても、CPUではデザインなどの個人の独創力が重要です。だから勝てない。メモリー系も集団での生産技術のときは日本が勝っていましたが、パワーゲームになって、どのタイミングでどこに投資するかという意思決定のゲームに変わると負けていく。

 

 入山:なるほど……。「特定の個で決めて勝負する領域」から日本企業は負けていく、というのは興味深いですね。

 

 冨山:最初のうちは生産技術が低いと見くびっていても、量産すれば生産技術もついてくるので、気づくと逆転され、相手がはるか先にいる。サムスンなどの圧倒的なオーナー君主がリードしているところは、バンバンと意思決定をしていく。

 

 そうなると、マネジメントで大事なのは個であって、その意思決定の大胆さやタイミング、企画性を日本の現場の工員の頑張りでは凌駕できない。これがだいたいの負けパターンでしょう。

 

 入山:この負けパターンから脱する鍵はどこにあるのでしょうか。

 

 冨山:会社の形や仕組みをかなり大改造し、自分自身が痛みを伴うことをしないといけませんね。単にツールとしてデジタル的な現象を取り入れるとか、おいしいところだけつまみ食いするアプローチではダメでしょう。例えば、マイクロソフトはもともとパッケージソフト屋だったのが、今では箱もCD-ROMもほとんど売っていません。今のメインビジネスは、クラウドベースのB to Bサービスです。

 

 会社の構造そのものを変えて、市場も変えていった。そういう根本的なところをモデルチェンジしないといけないでしょう。ただし、そういう根本的な領域にメスを入れようとすると、大きい組織ほど大変で、大きさが急に短所になってしまいます。

 

 入山:一方で、デジタルの戦いをめぐって、日本は初戦では負けたが、IOTになってモノとモノがつながる第2回戦ではまだチャンスはある、という意見もありますよね。

 

 冨山:そこで必要になるのが、やはり両利き経営モードでしょう。左脳で考える右利き経営が強かった日本の会社が、いかに右脳的な発想をして左手を手に入れるか。あるいは、左手しか使えなかったシリコンバレーのプレーヤーが、右手も使えるようになるか。

 

 どちらが先に両利き経営を見つけるかという競争だと思いますね。最近、日本企業が懸命にGAFAにすり寄っているのも、そういうことだろうと思います。

 

GAFAの栄華は永遠ではない

 

 入山:人間というのは面白いもので、GAFAが世界を支配するような空気になっていますよね。GAFA無敵論というか。私は、これは異常な認知バイアスだと感じます。

 

 冨山:盛者必衰は歴史の教訓です。例えば、私が就職した1980年代半ばは、IBMの未来は永久に栄華が続くようにいわれていたのに、あっという間に崩れ去った。その後、日本の電子立国は永遠なりと言ったのに、ガラガラと崩れた。だから、GAFAの栄華も永遠ではなく、データ覇権というのさえバブルにすぎないのかもしれません。

 

 多くの場合、パラダイムの転換期に恐竜は滅びるけれども、そこを乗り越えて、生き延びる哺乳類のようなものがいます。滅びるものと生き残るものの境目はどこにあるか。それは、近現代史から学べることであり、経営者がどれだけそこを真剣に意識して取り組むかが大事です。

 

 とくに両利きの経営では、単に右に左を加えても、両利きにならないところが難しい。脳の仕組み、つまり、企業を動かす基本OS(オペレーションシステム)を大きく変えないといけない。右利きの人が左手を使うのは容易ではなく、相当の訓練が必要です。それをやめれば、すぐに右手に戻ってしまうので、変革の持続性が問われてくるのです。

 

 入山:企業は基本OSまで変え続ける必要がある、と。そうすると、その持続性を担保するうえで懸念されるのが、日本の大企業の場合、経営者の任期が非常に短いことだと思うのです。

 

 冨山:最悪なのは、短いことに加えて、定期的に4年で交替する場合です。トップの在任期間がわかっていると、抵抗勢力も時間のゲームができてしまう。巨大組織になると、社長に就任しても、初日から掌握はできず、12年はかかります。最後の年は影響力のないレームダックになるので、まともに仕事できるのは4年間のうちの1年くらい。変革を妨げる側は、あと1年も耐えれば、変革モードが落ち着き、織田信長のような君主が消えるので、とりあえず面従腹背でやっておこうとなる。

 

 これに対して、信長が何年生きるかわからない、10年続くかもしれないと思えば、抵抗勢力も改宗するか、抵抗を続けるかと考えざるをえなくなります。さらに10年後にも、変革推進派が新たにトップになる可能性だってある。

 

 入山:なるほど!  長期政権なだけでなく、「いつ辞めるかわからない」ことが大事というのは、すごく面白いし、示唆に富みますね。ところで、京都産業大学の沈政郁教授がカナダのアルバータ大学の研究者と一緒に、過去40年の日本の一部上場企業のデータを統計分析したところ、利益率も成長率も高いのは、明らかに同族企業だったのです。

 

 冨山さんがおっしゃるように、判で押したように22期でやる会社は、実は統計的に見てもパフォーマンスが悪い。一方、ファミリービジネスにはトップが長く在任するので長期視点になり、結果として知の探索ができるというのが、私の理解です。

 

 冨山:そうだと思いますよ。ファミリービジネスや、サラリーマン会社でも事実上オーナー的な経営者が長年君臨しているほうが、デジタル・トランスフォーメーションや両利きへの変革を持続できる。

 

 逆に、ファミリービジネスのリスクは、とんちんかんな人が後を継ぐと、突然ダメになること。言い換えると、そこさえ克服できればいい。イノベーション時代の経営には、ずば抜けて強い、有能なリーダーシップと同時に、暴走したり、衰えたりしたら交替させる安全弁も必要で、そこは取締役会なりが機能すべきところでしょう。

 

■トップがコミットして異質のものを取り込め

 

 入山:では、ここまでの話を受けて、冨山さんからご覧になって、両利きの経営に適応できていると思う経営者はいらっしゃいますか。

 

 冨山:富士フイルムホールディングスの古森重呂気鵑蓮⊂なくともフィルムに関しては破壊的な波を乗り越えられています。あとは、コマツの坂根正弘さんと野路國夫さん。ダントツ経営で既存事業の選択と集中を行い、オープンイノベーションで、シリコンバレー経由でいろいろなベンチャーの種を拾ってきて、コムトラックスなどのように真剣勝負でモノにし、まさに両利き経営をやっていますね。

 

 それからコマツのトップ層は、部下をシリコンバレーに派遣して調べさせるのではなく、自分で現地に行き、そのまますぐ即決する。だから、向こうも本気になりますよね。破壊的イノベーションや探索の領域は、従来とは異質のものを取り込むので、そこにトップがコミットすることが大切なのではないでしょうか。

 

 (構成:渡部典子)

 

冨山 和彦 :経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO/入山 章栄 :早稲田大学ビジネススクール教授

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出生前診断専門クリニック「日本以外の先進国で普通にある」驚きの検査

6/20() 8:00配信 現代ビジネス

 

 出生前診断というと、35歳以上の女性が選択して受ける新型出生前診断や羊水検査などを思う人が多いかもしれない。しかし進歩が著しいいまの医学では、通常の診察で出生前に胎児の先天性疾患の可能性を察知するケースが増えている。つまり、出生前診断は実はすべての妊婦に深く関わっているのだ。


【写真】世界最先端技術がここに! 出生前診断専門クリニック

 

 ジャーナリストの河合蘭さんは、著書『出生前診断-出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』で「科学ジャーナリスト賞2016」を受賞している。長く出産の現場と医療の現場を取材し続けてきた河合さんは、医療の進歩とともに「母たちの選択肢」や「自分で決めること」がないがしろにされがちな現状も多く目にしてきた。そこで最新の現場から、様々な母たちの姿と、彼女たちに寄り添う医療従事者を紹介していく。

 

 今回は日本中からこの医師の出生前診断を仰ぎにくるという大阪のクリニックを紹介する。そこでは、日本以外の先進国で普通にある検査に加え、世界有数の技術を備えていた。そしてその理由も明確に存在していた。

 

分娩も健診もないクリニック

 出生前診断の専門施設「クリフム夫律子マタニティクリニック」では、分娩や妊婦健診、婦人科の診療、また人工妊娠中絶も一切扱わない。でも診察が始まる前から、このクリニックにはさまざまな女性が多くは夫と一緒に真剣な面持ちでやって来る。

高齢で妊娠したので「お腹の子に障害があるかどうか知りたい」と言う人もいるし、一方では、かかりつけ医による一般的な超音波検査で心配なことを言われ、もっと詳しいことを知りたいと遠方からやって来る人も多い。

 

 その朝、私は妊娠中期の「胎児ドック」に立ち会わせていただいた。「クリフム」の検査の基本は、最初に、最新の2D/3D/4Dエコーを駆使して詳しい超音波検査「胎児ドック」を行うこと。これは欧米で最もポピュラーな胎児の検査である。欧米では妊婦健診のたびにかかりつけ医が超音波検査をおこなうことはなく、超音波検査は、この時だけ会う専門家チームによって行う「出生前診断」のひとつという位置づけだ。

 

 検査を受けに来たのは、お腹にダウン症の赤ちゃんがいることがわかっている女性だった。東京で妊娠初期に受けた新型出生前診断でダウン症がわかって、でも産むことを決心した女性が、はるばる東京からやって来て、赤ちゃんは無事に成長しているかどうかを見てもらおうとしていた。

 

 「よろしくお願いします」

 

 プローブを持つのは、ここの院長で、海外での講演や教育活動も多い夫律子(ぷ・りつこ)さん。始まるとまもなく、大型テレビの大画面に、手際よく、赤ちゃんの微笑を浮かべた顔がアップで描出された。 その、あまりのリアルさに、女性と、付き添ってきた家族たちから「おお」と歓声が上がった。

 

 でも、顔を見るだけなら、精密さの違いはあるものの、今は多くの産婦人科で可能だ。夫さんの診察の真骨頂は、その先にある。胎児の全身を脳、心臓、その他の内臓や骨、血管とそこを流れる血流の方向、速度に至るまで徹底的に見ていく。

 

「誰のためでもない、赤ちゃんのためや」

 全身を見ていく中で、胃を見始めた時、夫さんの表情が引き締まった。胃が、通常より大きかった。そして、通常はないはずの丸い膨らみが、胃から腸の間にある十二指腸という場所に見えた。ダウン症があると発生率が少し上がる「十二指腸狭窄」があるかもしれない。

 

 「ここね」

 

 夫さんは丁寧に説明を始めた。

 

 「赤ちゃんはお腹の中で羊水を飲んでいるんです。でも、それが胃と、この丸く膨らんだところに溜まってしまっているみたい。あとで絵を描いて説明しますけれど、もしかしたら、生まれてから新生児手術の対象になるかもしれません」

 

 女性が出産を予定している病院は、大きな有名病院ではあったが、新生児の手術はできなかった。

 

 「赤ちゃんの病気は、何もわからないまま生まれたら、生まれてからバタバタする。赤ちゃんだけ別の病院に送られて、ママと離れ離れになることもありますが、この子は、せっかくこうして検査を受けているのですから、それは避けたいですよね。」

 

 この狭窄は、かかっていた病院の超音波検査では見つけられなかったものだが、夫さんが詳細な報告書類を作ってくれると聞いて、女性も安心した。こうして50分間の超音波検査が終わると、そのあと夫さんと遺伝カウンセラーによる詳しい説明とカウンセリングか行われて転院先もほぼ決まった。

 

 「病院って変えてもいいんですよね」という女性に、夫さんは言った。

 

 「もちろんです。これは誰のためでもない。赤ちゃんのためや」

 

なぜ出生前診断専門医になったのか

 夫さんは、産婦人科医になってまもなく胎児の発達に強い関心を持ち、胎児超音波検査で国際的に高い評価を得た非常にユニークな経歴を持つ産婦人科医である。2006年、当時住んでいた香川県に日本初の出生前診断専門クリニックを立ち上げた。

 

 そして翌年、交通アクセスの良い大阪の繁華街にあるビルに場を移すと、当時は国内に実施できる施設はほかにどこもなかった欧米流の出生前診断に本格的に取り組み始めた。目指したものは、日本の女性にも、世界標準の出生前診断を提供すること。

 

 出生前診断は、ほかの先進国と日本ではかなり違う。日本は、他の先進国に比べて受けられる出生前診断の種類が少ないのだ。1970年代に羊水検査が上陸して以来、出生前診断は障害がある人の人権を脅かすものとされ、タブー視されてきたからだ。医師も検査会社も、絶えず「倫理的に問題だ」と言われている胎児の検査には消極的で、新しい検査が海外でできても、積極的に国内で開始しようとする専門家はほとんど出ないまま歳月が流れた。

 

 しかし海外のアカデミック・シーンで学んできた夫さんは、他の先進国の女性たちが選ぶことができる検査が、日本の女性たちには知らされてもいないことに大きな疑問をいだいてきた。「妊婦と赤ちゃんは、その犠牲になっていないか?」という疑問である。

 

 新しい出生前診断を次々に取り入れている国は、カウンセリングの体制、胎児治療も進んでいた。

 

 「海外の状況を知る者にとっては、日本の状態はまるで鎖国」と夫さんは言う。言ってみれば、クリニックを開設したその時、夫さんは、日本の出生前診断シーンに一艘の黒船を浮かべたのだった。

 

日本以外の先進国で普通に行われている検査

 夫さんが実施している出生前診断は、ひとことでいえば、日本以外の先進国で普通に行われている検査だ。見つけられる病気の数は膨大で、しかも早くわかる。

 

 妊娠初期にここへやってきた人は、妊娠初期の胎児ドックを、まず受ける。「NT(Nuchal Translucency:後頚部浮腫)」と呼ばれる後頚部のむくみのミリ数と、細かい超音波所見や年齢などからダウン症、18トリソミー、13トリソミーの可能性が算出されるが、NTPAPP-A free βhCGというたんぱく質を調べる血液検査を合わせた「組み合わせ検査」を行う人もいる。

 

 胎児ドックの所見もしくは組み合わせ検査から遺伝性疾患が疑われた場合、次に絨毛検査、羊水検査などの確定検査に進む。そこで陽性という結果が出たら、産むことをあきらめる人もいる。夫さんは、クリニックの遺伝カウンセラーや臨床心理士たちと共にじっくりと検査後のカウンセリングをおこない、その過程にある葛藤を共に悩んできた。

 

 夫さんは言う。

 

 「たとえ最終結論が中絶ということになったとしても、そこへ行くまでに、赤ちゃんの命を大切に思って、出来る限りのことを知りたいと思うお母さんがここにやってきます。そして、まず、超音波で赤ちゃんを見る。そして今の状況を知って、もし、この子を産むとなったら治療はあるのか、社会生活は可能なのかといった見通しをとじっくり聞いて話せる場がなければ、赤ちゃんとちゃんと向き合えないじゃないですか。そういう必死なお母さんたちのために、私は、最高の検査をして、情報提供をしていきたいんですよ」

 

通常2週間待つ検査を5時間で

 クリフムでは、検査の結果が出るまでのスピードも驚異的だ。

例えば、初期の超音波でダウン症の可能性が高いとなった人は、ここでは妊娠初期に当たる11週から14週に「絨毛検査」という確定検査(はっきりしたことがわかる検査)を受けられる。絨毛は将来胎盤になる組織で、稀な例外を除いて胎児とDNAは同じだ。日本の一般的な確定検査である羊水検査は妊娠16週にならないと受けられないので、だいぶ早く受けられることになる。

 

 検査から結果が出るまでの待ち時間も、日本では通常23週間くらいひたすら待つだけだが、クリフムでは、何とたった5時間で、非常に正確な「速報」を出している。時間のかかる細胞培養とは別に、21番染色体、18番染色体、13番染色体それぞれにある固有なSTRs(ShortTandem Repeats=塩基配列の繰り返し)の量を解析する「QF-PCR法」という検査法を採用しているのだ。

 

「速報を出しているところは、日本ではまだとても少ないですが、方式は違っても、先進国ではそれが普通になってきています。コスト・パフォーマンスも高いうえに非常に正確なので、ヨーロッパ、カナダでは、このQF-PCRが標準的な方法」と夫さんは言う。

 

 実は、5時間というのは「世界最速」のようだ。というのは、クリフムでは、絨毛検査で採取された絨毛は、クリニックと同じビルの階下にある「リッツメディカル」という検査会社に持ち込まれる。「リッツ」は夫さんの名前「律子」の「律」。つまり夫さんは、結果を出すまでの時間を可能な限り短縮するため、何と、自前の検査会社をクリニックの真下に作ってしまったのだ。

 

 国内では学べるところはどこにもないので、リッツメディカルの技師たちは香港で技術を学んだ。

 

 夫さんが、なぜこんなに急ぐかというと、理由はこうだ。

 

 「長くは待てないと、確定検査を受けるのをやめて、中絶に走ってしまう人もいるのです」

 

 他の施設で「異常がある確率が高い」と言われ、羊水検査ができる妊娠中期まで待ちきれない人も、ひとりで悩まず、ここにやってきて、SOSサイン出してほしいと夫さんは切に思っている。

 

 まずは赤ちゃんを超音波で見て、その情報を使いながら相談に乗ってあげたいと言うのだ。クリフムの超音波検査は確定検査でこそないがかなり正確で、前の検査でもらった陽性の判定が偽陽性かどうかを推測する有力な手がかりになる。

 

非認可施設の診断が一番心配

 夫さんが特に心配なのは、検査後のフォロー体制もない非認可施設で新型出生前診断を受け、陽性を受け取ってしまった人たちのことだ。そうなった女性は羊水検査を受ければ赤ちゃんは健常と出るかもしれないのに、すぐ中絶してしまっているケースが存在すると言われている。

 

 「結果が出るまでが長くていいことは何もありません。その間、食事ものどを通らないくらいハラハラしているおかあさんを放っておいたらどうなるか。病気がある可能性が高いと言われただけで、親族から『そんな心配な子は産まないでほしい』と言われる人もたくさんいます。そして、何よりも、はっきりした答えがすぐに出れば、病気について詳しく知る時間もできるし、そこからどうするか余裕をもって考えることができます」

 

 夫さんやスタッフは、希望があれば、見つかった病気と同じ病気を持つ母親を紹介することもある。夫さんの胎児ドックは、一般の産婦人科では出会うことがないような珍しい病気を見つけることも多いが、その場合もその病気についての経験から、専門医や患者会などとのネットワークが生かせるのは専門クリニックの強みだ。

 

子どもの病気を知りたくない母は少ない

 新しい検査は、常にそれまでのものより優れている。たとえば精度が高かったり、安全性が高かったり、お腹が小さいうちに実施できたりする。女性にとっては救われることばかりだ。

 

しかし今まで、それらは中絶される胎児が増えるからと反対されてきた。女性たちに、その存在も知らされてこなかった。出生前診断は、精度が低いもの、なかなか結果が出ないもの、女性の負担が大きいものにとどめておくのが倫理にかなったことなのだと、女性たちから見えないところで専門家たちによって決められてきた。 母親がお腹の子の病気を知るということについて、夫さんはこう考えている。

 

 「私は、知りたくないというお母さんは少ないと思います。お母さんなら、もし、育てている子どもに病気があったら、真っ先に自分に知らせて欲しいと思うでしょう。それを『そんなことは知らなくてもいいんだ』言うお医者さんがいたら『え? 私は母親ですよ。母親の私がなぜ知らせてもらえないのですか? 』と思うでしょう?」

 

 夫さんは信じているのだ。

 

 他の先進国の母たちのように、日本の母も、もしお腹の子に異常があっても、その子にしっかりと向き合い、自分の結論を出していく力を持っているということを。

 

河合

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<目撃>食虫植物が両生類を「釜ゆで」に!? 普段から食べていた、研究

6/16(日) 8:20配信
ナショナル ジオグラフィック日本版
餌の少ない湿地で栄養豊富なサラマンダーを常食、カナダ
 食虫植物は想像以上に食いしん坊なのかもしれない。両生類のサラマンダーを普段から食べているという研究結果を、カナダのチームが6月5日付けの学術誌「Ecology」に発表した。

【動画】食虫植物が両生類のサラマンダーを「釜ゆで」に!?

 鳥取県倉吉市にある鳥取短期大学の生態学者、田川一希氏は、食虫植物の中でカエルやネズミなどの脊椎動物が見つかったことはこれまでにもあるが、「偶然捕らえられ、餌食になったと考えられていました」と話す。

 そのため、田川氏は今回の発見にとても驚いている。なお、田川氏は今回の研究には関与していない。

 カナダ、トロント大学の生態学者で、今回の研究を率いたパトリック・モルドワン氏は2018年8月、アルゴンキン州立公園の湿地を歩いているとき、奇妙な光景を目撃した。

「ひざまずいて中をのぞいた最初の植物がサラマンダーを捕らえていました。サラマンダーはまだ生きていて、泳いでいました」

 興味をそそられたモルドワン氏と研究チームのメンバーは、袋状の葉に水をため、その中に虫をおびき寄せて捕まえるムラサキヘイシソウ(Sarracenia purpurea)を1カ月半ほどのぞき続けた。その結果、調査の対象となったムラサキヘイシソウのおよそ20%に、イモリの仲間であるスポテッドサラマンダー(Ambystoma maculatum)の幼体が入っていた。複数の個体が捕らわれているケースも多く、合わせて35匹が確認された。

 獲物の少ない強酸性の湿地で生きられるよう進化を遂げた食虫植物にとって、両生類は栄養面で大きな後押しになると、モルドワン氏らは考えている。ただ、この関係はサラマンダーの個体数に影響を及ぼす可能性もある。オンタリオ州の湿地ではすでに、スポテッドサラマンダーの生息密度が低下している。
サラマンダーが死ぬまでに3〜19日
 食虫植物は通常、花粉を媒介する昆虫などの獲物を蜜でおびき寄せる。植物内の小さな水たまりに落ちた獲物は、時間をかけて消化される。

 サラマンダーは何かから逃げている途中で水たまりに落ちたのかもしれないし、食虫植物がおびき寄せた昆虫に引き寄せられた可能性もある。「その結果、足を滑らせ、自らも餌食になってしまったのでしょう」

 いずれにせよ、これまで気付かなかったのは不思議だと、モルドワン氏は話す。ムラサキヘイシソウもスポテッドサラマンダーもよく見かける種だからだ。

 気付かなかったのは、以前のムラサキヘイシソウの研究が、春や夏に行われていたせいかもしれない。スポテッドサラマンダーがムラサキヘイシソウの餌食になるのは、晩夏から初秋の頃と思われる。ちょうど水生から陸生に変態する時期だ。

 ムラサキヘイシソウの側に季節的な要因がある可能性もある。一帯では早ければ9月に寒くなる。昆虫が少ない期間、この大きな獲物はとんでもない恩恵だ。

「これらの植物が捕まえるどの無脊椎動物より、サラマンダーは窒素、リンなどの栄養が比較にならないほど豊富です」

 ただし、サラマンダーを捕まえることにはリスクもある。獲物が大きいと、消化を終える前に腐敗し、そのせいで植物の命が奪われる恐れがあるのだ。

 田川氏が関心を持っているのは、食虫植物がサラマンダーを捕まえた後、どれくらい効率的に消化できるかだ。モルドワン氏らの論文によれば、サラマンダーが捕らわれてから死ぬまでに3〜19日かかっている。植物内の小さな水たまりが太陽によって熱せられ、文字通り、釜ゆでにされているのかもしれないと、モンドワン氏は推測している。
サラマンダーだけじゃない?
 論文によれば、スポテッドサラマンダーは水質汚染や生息地の消失に直面しており、今回の研究で明らかになった食虫植物も、サラマンダーの個体数に悪影響を及ぼす可能性があるという。ただし、現在のところ、危機的なレベルまで個体数が減少している形跡はなく、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでも「低危険種」(Least Concern)に分類されている。

 モルドワン氏は今後、「こうした大量の栄養摂取が翌年の生育にプラスに働くかどうか」を調査する予定だ。

 また、食虫植物がほかの脊椎動物を常食しているかどうかも調べたいと考えている。今回の研究ではカエルもヒキガエルも見つからなかったが、調査の時期が不適切だっただけかもしれない。

「今年は試料集めの期間をもっと長く取るつもりです」とモルドワン氏は述べている。

「私たちが現時点で認識しているより、これはおそらくはるかに広範な現象でしょう」
文=SANDRINE CEURSTEMONT/訳=米井香織

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アメリカで激しくなっている「中国排除」の実態

6/20() 5:20配信 東洋経済オンライン

 

アメリカにおける「中国排除」の動きが加速している。目下、華為技術(ファーウェイ)など中国製品を市場から締め出そうとしているが、それは市場原理ではなく、安全保障上の理由として法律を用い、国を挙げて中国を締め出そうとしている。

 

 この動きは、中国の世論工作やプロパガンダ活動、スパイ活動、サイバー攻撃といった「シャープパワー」に対するアメリカの危機感の表れである。20188月に成立した「国防権限法2019」は、アメリカの中国強硬策が色濃く表される内容となった。アメリカの政府機関はファーウェイや中興通訊(ZTE)、その関連会社との取引を禁じているだけでなく、中国と関係を持つ大学に対しても警鐘を鳴らしている。

 

■次々と閉鎖している「孔子学院」

 

 中でも“敵視”されているのが、「孔子学院」だ。孔子学院は、中国政府の中国語教育機関であり、全米の大学内などに設置されている。この孔子学院の活動が、近年「スパイ活動」と批難され、締め出しの動きが強まってきているのだ。

 

 孔子学院は、現在世界で548校設置され、そのうち約20%の105校がアメリカに集中している(20195月時点)。これは、アメリカ国内における中国語需要の高さを示すものであるが、一方で、中国がアメリカに対する働きかけをいかに重要視しているかをうかがわせるものでもある。

 

 が、ここへきて同院の閉鎖が加速。最盛期には、全米に120校あったのが次第に減少し、今年に入って、マサチューセッツ大学ボストン校、ミネソタ大学、モンタナ大学、オレゴン大学など、6月時点ですでに10校に上る孔子学院の閉鎖が決まった。

 

 共和党のマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)も孔子学院閉鎖に躍起な1人だ。例えば北フロリダ大学に対し、孔子学院との契約打ち切りを要請し、そのうえで「他大学も追随するように」と要望したという。同大学は、本年2月の閉鎖を20188月に決定した。

 

 アメリカで孔子学院が急速に増えた背景には、アメリカの大学の経営状態悪化が挙げられる。中国政府が資金提供をするため、大学側の自己負担なく中国語教育が提供できる機関として、アメリカの大学では2005年ごろから相次いで孔子学院の設置を進めたのである。

 

 しかし、2014年に入ると風向きが変わった。孔子学院の教育内容をめぐって、思想宣伝や政治宣伝を懸念する声が出始め、「中国政府の政治宣伝機関だ」とか、「学問の自由に反する」などといった批判が広まった。アメリカ大学教授協会(AAUP)なども大学側に、状況に応じては孔子学院との契約打ち切りを促すようになった。

 

 こうした中、いよいよアメリカでは、中国共産党によるスパイ活動容疑で孔子学院が連邦捜査局(FBI)の捜査対象になるという事態にまで発展。前述の「国防権限法2019」には、孔子学院を設立する大学への資金支援の停止を求める条項も盛り込まれており、アメリカの法律もが、孔子学院を名指しで批判したのだ。

 

■設置した大学にも「資金援助」

 

 そもそも中国は、なぜアメリカの教育分野でここまで幅広く活動できたのか。それは、先述のように、孔子学院が中国政府から資金を得ているからにほかならない。2013年の中国語メディアの報道によれば、2004年から2013年の間に、中国政府は孔子学院の事業に5億ドルの資金を投じている。別の中国語メディアは、2015年に中国共産党が孔子学院に支出した予算は3.1億ドルで、2004年から2017年までの間に総額20億ドル以上がつぎ込まれたと報じている。

 

 ちなみに、孔子学院を1校設置するには、10万ドル以上かかるとも、運営費は毎年20万ドル超とも言われている。また、孔子学院を設置した大学は、中国政府の運営機関から、毎年10万〜15万ドルもの助成金を受け取ることができるとされる。

 

 運営機関は、中国教育部(日本の文部科学省にあたる)傘下の「国家漢語国際推進指導小組弁公室」(漢弁)である。漢弁は、中国政府の機関であるが、その背後で意思決定するのは中国共産党指導部である。例えば、2018123日に、中国共産党中央全面深化改革指導小組が、『孔子学院の改革発展に関する指導的意見』などの文書を会議で通過させ、「特色ある大国外交」の担い手として「孔子学院建設強化」を打ち出したのは、その明確な表れである。

 

 さらにさかのぼれば、2014年末、孔子学院総本部の理事長は、イギリスのBBCのインタビューに対し、「孔子学院は、中国共産党の価値観を外国に輸出するために存在する」と公言している。こうした発言などを受けて、アメリカが孔子学院の活動に懸念を示すのは当然ともいえるだろう。

 

 アメリカの教育分野における中国締め出しは、孔子学院にとどまらない。中国共産党と関係の深い非営利団体「中米交流基金」が、ジョンズ・ホプキンズ大高等国際関係大学院(SAIS)やテキサス大学などに資金提供をしていたことが明らかになり、批判の対象となっている。

 

 さらにアメリカは、ここ10年で5倍も増えた中国留学生をも締め出しの対象とした。中国共産党と関わりの深い留学生組織「中国学生学者連合会」を通じて、留学生にスパイ活動をさせていると疑われるようになったのだ。ロイター通信によれば、20186月、アメリカ国務省は、中国人留学生のうち航空工学やロボット工学など、最先端の製造業分野を専攻する中国人大学院生らのビザ有効期限を、5年から1年に大幅短縮すると決定。スパイ活動や、知的財産権の侵害を未然に防ぐことが目的だとしている。

 

 さらに、政府高官レベルでは、アメリカ国内での中国によるスパイ行為などを探知すべく、アメリカ政府職員を対象に行う教育・訓練と同様のものを、アメリカの大学の職員に対しても実施することを計画中という。また、中国人学生や学者などの電話やインターネット利用動向も監視対象とされるようだ。

 

■アメリカで活発に世論作り

 

 一方、中国はかねてより同じ手法でもってアメリカにアプローチしてきた。中国は、その安全保障戦略に「三戦」(世論戦、法律戦、心理戦)を掲げている。経済や文化交流、人的交流を通じて海外の世論を工作し、敵の戦闘意思を取り除き、中国寄りに仕向けることが目的だ。そのためにも中国は、「公共外交」、つまりはパブリック・ディプロマシー(PD)をもってイメージ向上を図ってきた。

 

 中国のPDは、共産党が司令塔となり大々的に行われてきた。中国共産党中央委員会の直轄「中央統一戦線工作部」(統戦部)が中国PDの背後におり、海外のメディアやロビー団体、シンクタンク、中国人留学生を動かし、活発にアメリカの世論作りを行ってきた。

 

 こうした中国PDの強みは、共産党一党統治の権威主義的体制のもと、人員や財源といった豊富な資源を大規模に投入できることだろう。アメリカの議会議員や大企業に働きかけるべく、多額の予算を投じ、ロビー活動を行うことで、アメリカにおける親中派を増やしてきた。

 

 さらに孔子学院は、中国のPD戦略の代表選手であり、ソフトパワーの象徴でもある。2004年に韓国での開学を皮切りに、世界中の教育機関に設立されてきた。

 

 こうしてみると、実は中国がアメリカに対して行ってきた工作活動は、今も昔も何ら変わらない。もちろん、情報通信技術の革新に伴い、ハッキングなどの技術は格段に進歩したが、大まかな手口も方針も一貫しているのだ。こうした中国の外交手法を、アメリカは最近になってようやくシャープパワーと呼び、締め出しにかかっているのである。

 

 少し前まで、必ずしも中国全面否定というわけではなかったアメリカ。中国経済の急成長はアメリカの経済的不安を軽減させてきたし、アメリカの世界中での繁栄をより促してきた。実際のアメリカ世論には、対中好感度や信頼度は低くとも、少なからず付き合っていかなくてはならないとの考え方もある。

 

 ところが、中国レジームがさらに攻撃的になり、経済分野や5Gなど新技術で世界の主導権を握りたいという姿勢を示しており、こうした中、民主・共和両党の考え方が対立してきたアメリカは、こと中国に対しては、共通の認識を持ちつつある。オバマ前政権までの政策綱領では、対中政策に関し、民主党が「協調」、共和党は「強硬」という姿勢を打ち出したとされるが、最近では民主党は、米中貿易戦争について中国に安易に妥協しないようトランプ政権に圧力をかけているともいわれるほどだ。

 

■日本も「選択」を迫られる

 

 こうした情勢に鑑みれば、中国にとって孔子学院を始めとするアメリカでの教育関連の活動が、これまで以上にやりにくくなると考えられる。アメリカ政府や、その関係機関から資金援助を得ることも困難になるだろう。

 

 それでも中国が自ら撤退するとは考えにくい。中国のシャープパワーは、中国の国家戦略である「中国製造2025」と深く関わっているからだ。この戦略目標達成のために、中国は、日本やアメリカにおける親中派の育成など、自国の国益に資するためには手段を選ばないだろう。

 

 中国は、国内向けに反米世論工作に努めているとも言われており、中国共産党の機関紙「人民日報」や国営新華社通信、さらに中国中央テレビ(CCTV)を中心に反米報道を行い、「抗米」をテーマとした過去の戦争映画を連日放送しているという。

 

 今までのPDの手法がシャープパワーとしてアメリカから排除されるならば、違う手法で働きかけてくる可能性も考えられる。中国共産党、あるいは中国政府の関与がよりわかりづらい形でアプローチしたり、ネット上での世論形成を強化したりするかもしれない。

 

 中国はつねにバランスを取ろうとする。米中関係が悪化すれば、中国は日本にすり寄ってくる。アメリカからの圧力が強まるほど、アメリカ陣営と中国の対立という事態を防ぐべく、中国はアメリカの同盟国である日本に働きかけを強め、日米離反を促そうとするのだ。日本は、アメリカの意図をくみ取りながら、中国といかにして付き合っていくべきか。その選択を迫られる日は遠くないだろう。

 

響子 :未来工学研究所研究員

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日本の競争力「過去最低」世界30位の衝撃、衰退の根本原因を示そう
6/20() 7:01配信 現代ビジネス
 
低迷の原因を図で示そう
 スイスの国際経営開発研究所(IMD)528日発表した世界競争力ランキング2019によると、日本は前年の25位から30位に後退し、過去最低のランクとなった。
 
 
 こういう話を聞いても、最近は全く驚かない。国民1人あたりGDP(国ごとの価格差調整済み)では、1999年にはすでに世界30位に落ちていて、その後20年間30位前後を低迷しているのだ(世界銀行『世界開発指標』)。生活に対する主観的な満足度でも、日本はOECD36か国中27位である(OECD『より良い暮らし指標』)
 
 むろん、世界競争力ランキングではどのような要素を組み込むかによってランクは変わってくる。GDPも国民の生活水準を正確に反映しているわけではない。しかし、経済の効率性や国民の生活水準でみて、日本が先進国の中で下位に停滞しているのは間違いない。
 
 経済力の衰退は、社会に様々な悪影響をもたらしている。例えば、長時間労働をする労働者の割合はOECD36か国中4番目に多く、ワークライフ・バランスの点からも日本は先進国とは言えない状況だ。年金だけでは老後を暮らしていけないことも話題になっている。
 
 もし、経済活動がもっと効率的で生産的であれば、それほど長く働く必要もないし、老後を支えるだけの社会保障も整備できる。例えば、1990年代以降も平均的なOECD諸国並みに経済が成長してさえいれば、今の我々の所得は現状の約3割増しとなっていた。そうすれば、今日の経済問題はかなりの程度軽減されていただろう。
 
 これほどまでに日本経済が低迷している1つの要因は、経済活動も人も内向きであることだ。
 
 図1は、特許データを利用して、世界各国の企業の共同研究ネットワークを図示したものだ。各企業が国ごとに色分けされた点で表され、共同研究をしている企業が線で結ばれている。また、共同研究を行う企業同士は互いにひきつけあうように描かれているため、直接間接に共同研究関係でつながっている企業群はクラスター(固まり)を形成する。
 
 この図で特徴的なのは、欧米と中国が1つの大きなクラスターを形成しているが、日本企業はそこから少し離れたところで固まっていることだ。つまり、米欧中は互いに活発に国際共同研究をしているのにくらべ、日本企業は他国とのつながりが少ない。
 
 このような内向きのネットワークでは経済は成長しない。外国企業とつながることで、広く海外から多様な知識を取り込んでこそ、インパクトのあるイノベーションを起こすことができるからだ。特に近年では、海外との知的ネットワークがイノベーションに与える効果は大きい。筆者と新潟大学の飯野隆史氏らの推計では、1990年代には企業が生み出す特許の質は国際共同研究をすることで17%向上したが、2000年代にはそれが45%へと急増している。
 
 経済成長に寄与するネットワークは、共同研究によるものだけではない。貿易によっても、対内・対外投資によっても、国内の企業は海外の新しい知識を学ぶ機会を得て成長できる。しかし、輸出額や対内投資額の対GDP比でみても、日本はOECD諸国の中で最下位近くでずっと低迷している。
 
閉鎖的な日本人
 日本経済が内向きなのは、日本人の意識が国際性に欠け、閉鎖的であるからだ。冒頭に挙げたIMDのランキングは経営者をはじめとするビジネスパーソンに対する質問調査も基になっている。その質問の中に、企業や社会の国際性に関してたずねたものがある。それらを点数化したものを、シンガポール(総合ランキングで1)、アメリカ(3)、中国(14)、ドイツ(17)、マレーシア(22)と日本(30)とでくらべてみたのが図2だ。
 
 これによると、日本は3つのうち2つの項目、「幹部の国際経験」と「外国の考え方に対する社会の開放性」で断トツで最下位である。残り1つの項目、「グローバル化に対して社会が肯定的か」についても、アメリカとほぼ同じで最下位を分けあっている。ビジネスパーソンから見ると、日本社会は極めて閉鎖的に映っているのだ。
 
 日本人の外国に対する閉鎖性、グローバル化に対する怖れは、様々な調査やデータでも裏づけられる。米ピュー研究センターの調査では、国際貿易が国内の雇用に及ぼす影響について聞いた質問に対して、「(国際貿易が雇用を)増やす」と答えた日本人はわずか21%で、アメリカの36%、ヨーロッパ諸国の40%、オーストラリアの37%にくらべて、極めて低い。
 
 最近内閣府が発表した若者に対する意識調査の結果では、留学希望者や外国に住みたい人の割合は、日米欧韓7か国の中でいずれも最低だった(201962日付日本経済新聞)
 
閉鎖性の根底にあるもの
 日本人が長期にわたって外国に対して閉鎖的なのは、柔軟性が乏しいからでもある。図2の右端のグラフは、「新しいチャレンジに直面した時、国民の柔軟性・適応力が高いか」という質問に対する回答を点数化したものだ。日本は、シンガポール、アメリカ、中国とくらべて非常に低く、日本人の変われない体質を表している。そのため、内向き志向が是正されずに、むしろ強化されてしまっているのだ。
 
 日本が長らく内向きでいる間に、中国は海外とのつながりをうまく活用して急成長した。図1からわかるのは、中国企業はアメリカ企業と活発に共同研究を行っていることだ。中国が改革開放後に外資企業の誘致を積極的に行ってきたことは周知の事実で、それによっても多くの知識を吸収してきた。そして、そのような外向きの経済活動は、グローバル化の進展を柔軟に受け入れようとする中国人の意識(2)に支えられている。
 
 その結果、2005年には日本の半分だった中国のGDPは、今では日本の2.5倍以上になった。そればかりか、ITをはじめとする多くの技術分野で日本は中国に大きく後れを取ることになってしまった。
 
 日本人の内向き志向を変えるのは簡単ではない。人間には「現状バイアス」とよばれる性質があり、変化することで利益が得られるとわかっていても、なかなか現状を変えられない。さらに、進化の過程で、人間は少人数からなる群れの中で密接につながって他の群れや種と対抗することで、厳しい環境を生き抜いてきた。だから、人間には本質的に閉鎖的な性質があるのは否めない。
 
開放的な人間を育てるためには
 しかし、こういう人間の本質的な閉鎖性も絶対に変えられないわけではない。西南学院大学の山村英司教授らの研究からは、幼少期に団体スポーツをした日本人は、他人を信頼し、競争を肯定し、自由貿易を支持する傾向が強いことがわかっている。
 
 つまり、幼少期にスポーツを通じて多様な人々と接することで、多様性を尊重し、外国に対しても開放的な人間になれる可能性を示しているのだ。ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンも、幼児期に協調性などの「非認知能力」(学力とは違う能力)を育成することが一生を左右することを見出した。
 
 だから、子どもや若者に外の世界を見る機会を与えれば、外に対して開放的で柔軟な人間に育つはずだ。そのような若者が増えれば、日本経済はイノベーティブになり、生活も豊かになるだろう。
 
 それにはやはり海外留学が最も効果的である。ある程度長期に海外で生活することで、世界には様々な人や考え方があることを実感できるからだ。とは言え、海外の大学の学費が高騰していることもあり、なかなか自費で留学することは難しい。だから、海外留学に対する政府、企業のサポートの拡充が必要だ。
 
 サポートが得られず、高額の学費のために海外の大学に留学するのが難しければ、日本の大学に入っておいて、提携する海外の大学に1年なり2年なり留学するという手もある。そうすれば、比較的安い日本の大学の学費で海外の大学に通えるからだ(むろん生活費はかかってしまうが)。こういった留学のあり方をもっと普及させるのも大学の責務だ。
 
 留学を通した交流の効果は馬鹿にできない。手前みそながら、筆者が勤務する早稲田大学は中国では非常に知名度が高い。これは、戦前に多くの中国人が早稲田に留学しているからだ。その中には、中国共産党創設メンバーの李大,篏藺總軆餤の陳独秀のような大物も多い。戦前に官費で留学生を招聘したことが、いまだに日中友好の一助となっているのだ。
 
 日本に来る外国人留学生や観光客と日本人の交流は、日本人の外国人に対する認識も変えてくれる。だから、これをうまく活用することも大切だ。例えば、外国人留学生・観光客と地元の学校の生徒・学生たちとの交流を正規の科目に組み込めばどうだろう。
 
 その経験は若者の目を開かせ、地域経済の発展に大きな効果が期待できるだろう。2002年のサッカーワールドカップ日韓大会でカメルーン代表のキャンプ地となった大分県旧中津江村では、カメルーンとの交流が大会後も長く続き、昨年は両国企業の事業連携にまで発展している(2018924日付産経新聞)
 
 おりしも、この9月にはラグビーワールドカップが日本で開かれる。来年には、東京オリンピック・パラリンピックがある。開催地域ばかりではなく、各国チームのキャンプ地では、ぜひ選手や外国人観光客と地元の人々、特に子どもたちや若者との交流を、自治体や学校、NGOの方々には大いに盛り上げてもらいたい。
 
 最近では世界的に保護主義的な動きが広がっていて、内向きが問題なのは必ずしも日本に限らない。今やアメリカも日本並みにグローバル化に否定的だ(2)。だから、日本だけではなく、世界各国が国際交流を盛り立てて、お互いに理解しあい、学びあうことが絶対に必要だ。分断された世界は政治的に不安定なだけではない。経済的にも、知識の多様性が失われてイノベーションが停滞することで、どの国の利益にもならないことを理解しなければならない。
 
戸堂 康之

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