山梨県 武田勝頼公資料室

武田勝頼公は悲惨な最期を遂げた 武田滅亡の軌跡

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『武田勝頼公は生きている』【躑躅が崎―甲府善光寺―大善寺^笹子峠】運命の迷路 新府城退去 著者 平山三郎氏(大和村田野出身)
 
【笹子峠への道】
 勝頼公の一行は、放任度を整えた上、理慶尼の厚いもてなしに心から感謝して大善寺を後に出発したが、心の中では再び会える日を望めない思いに胸が迫り、気も絶え絶えであった。
 理慶尼も同じ思いを胸に秘めて別離の情を断ち切れぬまま、深沢川のほとりまで見送り、一行が見えなくなるまで、涙ながらに合掌してその場に立ち尽くしていた。一行に従う人数のうち昨夜のうちに行方をくらました者が多く、笹子峠の麓に向かう者
はわずかに二百たらずとなっていた。その中には女、子どもの姿が多く見え、勝頼公夫人は行き先を思うときいよいよ心細くなって
  行く先も頼みぞうすきいとどしく心よはみか宿りきくから
と、詠まれた。
 横吹あたりまでくると道はいよいよ狭く険しく、石ころだらけの坂道ばかりであるからともすれば一行に遅れる者が多くなったので、勝頼公は満川(日川)の流れを眼下に見下ろす岩角で一まず憩うことにした。平穏の時ならば風光明美の辺りの景色をたたえて和歌の一首ももうすところである。しかし今の勝頼公にはそんな心のゆとりはなかった。折から横吹郷の人々が国主一行の安否を気遣って馳せ集まり、何かと世話をしてくれたのに感激して勝頼公は奉持してきた不動尊を取り出し
「武田の運命はこの先どうなることか計り知れないので、これをそなたたちに托すから後世永く武田の武運と郷民の安泰を祈念されよ」
と、言って、郷人の代表に渡した。それ以来横吹の人々は武田不動尊を奉じて、岩角に祭祀し武田氏一族の冥福と村民の安泰を祈念している。
【駒飼・鶴瀬の宿】
 一行が笹子峠の麓の部落に着いたのは二月四日の午後であった。多くの者には鶴瀬郷の農家を借りてそれぞれ休息をとらせ、勝頼公一族はその先の駒飼(こまかい)郷の石見其の家を借りて館とし旅の疲れを休めた。この両部落は高い山に囲まれた谷深いところなので、不意に故に襲われる懸念は薄く、それにここまでついてきた者は先代から忠臣と言われている者ばかりである。
 武田家のためなら水火も辞さない士ばかりであると勝頼公は信じているし、それにこの地は、月山神社の神域でもあるから、しばらくの間、武田一族の身をこの神社の守護の下 に置きたいという祈念もあって、一応の安堵(あんど)感を深めていた。
【月山神社】 
この地に月山神社を祀ってある起源の伝承は、遠い昔に遡るのである。人皇第三十三代崇峻(すしゅん)天皇別称を泊瀬部(ほこせべ)天皇という、五九二年七十二歳のとき、時の大臣蘇我馬子(そがのうまこ)のために殺されたので、皇妃小手姫(おでひめ)も身に危険が迫ったことを感じて、出羽の国(山形県)に出羽三山(羽黒山・湯殿山・月山)を開いた峰子王子(はちこのおおじ)の元に逃れようとして、皇妃の父大友糠手(おおとものぬかで)とわが子、錦手皇女(にしきでのこうじょ)を連れて、密かに奈良の都を抜け出し、後の中仙遥から信濃路を経て、甲州を通った折、駒飼の里に数か月滞留されたという伝説のあるところで、その折皇妃は習得していた養蚕と機織りの技術を施し、民生の安定に力を注がれたので、その高徳を敬慕して近郷の者が集まり、日影の上の段に十六坪の社地を設けて月山神社を建立し、郷人のご加護を祈願している社である。
【日影の宮】
 駒飼の里に設けた武田の本陣は、松明(たいまつ)山の麓の老松が茂っている場所に駒をつなぎ、所在を隠すために武田の軍旗を巻いて諏訪神社(日影の官)の旗塚に置き守護を祈念した。
【腰掛石】
 そのころ勝頼公は、朝夕を西の原にある腰掛石に赴いては、あたりの動静を窺っていた。ここから西を眺めれば、一行が待機している鶴瀬の集落は足下に見えて、あちこちの民屋から炊煙が立つのを見てひとまず安堵はするものの、時折り西風に乗ってくる川瀬の音が押し寄せてくる敵兵の喚声にも聞こえて「ハッ」と肝を冷やす思いもしばしばであった。
 睦(きびす)を返せば、東の方に笹子峠の頂上がはるかに霞んで見えるが、その辺りに小山田が迎えにくる姿が一日も早く見えぬものかと一日を千秋の思いで待ちあぐんでいたのである。家臣は代わるがわる笹子峠が見える松明山の待場に登っては、動静を窺っていたが、一日経ち二日経つうちに西の方へ偵察に出ていた家臣から「織田軍の先鋒が新府を過ぎて、古府中まで進撃してきたらしい」との情報がもたらされた。

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