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麻酔科専門医です。
大淀病院でなくなられたお母様、ご家族にお悔やみを申し上げます。

産科医療には帝王切開の母体・胎児管理というかたち参画する立場です。脳出血を伴う症例も経験し、その時には幸い母体を救命し得ました。それは産科医と新生児科医はもちろん、私のような麻酔科医、脳外科医、脳内科医がスタッフとして揃っていたことに加えNICUなどインフラが整っていたから、と考えます。それでもかなりの困難を伴い、救命できた時には「奇跡」だと感じました。

現在おもに話題にされているのは、意識障害を伴う妊産婦の搬送に関する可否、と理解します。意識障害に陥った時点での子癇か脳出血かの判断はその場では非常に困難で、CTを撮るべきだったかという判断についても未だ医療現場でも意見の分かれるところです。私は撮影中の母体の急変を考慮し、CT撮影でなく母体搬送を選択した担当医の判断を支持しますが、朝のワイドショーでは医師を名乗る女性タレントが「CTさえ撮っていれば救えた」との発言をしたそうで、根拠もなく「救えた」と断言したことには、残念
という以上に、国民をミスリードしてしまうという大問題であると感じました。こうした医療上の難しい判断の是非に、警察や検察、ひいては訳知り顔の報道機関が言及しようとする現状に、大きな憂慮を感じます。

報道がなされた当初は、担当医が内科医のアドバイスを無視した、担当医が仮眠をしていた、などの医師個人を問責する論調や「たらいまわし」に象徴される正確でない表現による医療対応全体への批判が目立ちました。早朝のニュースショーの司会者が「バカ医者」と罵り、スポーツ新聞のコラムで「恥を知れ」とまで書かれた現状は、間違いなく異常であり、ただでさえ撤退・閉鎖の続く産科医療の窮状に間違いなく拍車がかかったと思われます。

http://blog.nikkansports.com//nikkansports/writer/archives/2006/10/post_565.html

わが国の産科医療が先進国のなかでもトップクラスの成績を上げていることは明白な事実です。またそれが、十分でない報酬に不満を言わず月に10日以上も当直をしながら、その翌日の平常業務をもこなしてきた医療従事者の地道な努力により支えられてきたことは、報道機関のみなさんもご存知のはずです。

本来の報道機関の使命は、医療現場の窮状と、それでも100%の安全を達成できないお産・分娩の危険な側面を伝えることであって、傷の癒えないご家族を引っ張り出してお涙頂戴のストーリー仕立て上げ、より多くの一般市民の耳目を引きつける事ではないと思います。

毎日新聞の論評などを拝見すると、「国や行政の問題」という形で批判の矛先を緩やかに変えている印象を受けますが、一度受けた激しい問責をわれわれ医療人は決して忘れません。医療ミスを声高に叫ぶその舌鋒鋭さのまま「報道ミス」に関する検討をお願いします。

http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/kishanome/news/20061026ddm004070125000c.html

某番組では産科医よりも助産師を、などというご意見まで登場したそうですが、これにより世界のトップレベルまで引きげられた妊産婦死亡率の数値が変化しないことを、願うばかりです。

命を落とされたお母様が静かに眠られる日が一日も早く訪れること、さらに重ねてつらい思いをされたご家族、とくにお母様が一命を賭されて、医療従事者の努力とともに生まれてきたお子様が立派に成長されることをこころから願います。

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閉じる コメント(2)

私も今回の報道で少々不信感を抱いていたのですが、大淀病院に先日父がお世話になった時に、皆さんとても親切で、懸命に仕事をしていらっしゃるのを見て、頑張って欲しいと心から思いました。医療関係の仕事は激務だと思います。その辛い中でも、患者の為にと頑張っている方々に、感謝致します。どうぞこれからも頑張ってください。

2006/11/2(木) 午後 7:25 [ ゆ〜りん ] 返信する

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ゆーりんサン、ありがとう。 あなたのように、確かなことばでお気持ちを伝えてくださる方も多くて、それらは間違いなく、私たちのエネルギー源です。 削除

2006/11/2(木) 午後 8:49 [ kayakker ] 返信する

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