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どうしてこの国の鶏もも肉には、皮がついていないんだろう。むね肉ならば皮付きだけれど、照り焼きや唐揚げにはももがいいし、皮もなくちゃさびしい。そしてなぜか皮付きのもも肉を買おうとすると、今度は骨までついていて、きれいに身をはずすのがすごく大変なのだ。皮の部分って、やっぱりアブラが体に悪いの!?お肉売り場で鶏肉のパックをみるたび、ついつい首をひねってしまう。 そうして、皮のことを考えるとき、もっと謎なのが、豚肉。鶏皮とちがって、豚の皮なんてふつうはいらないのに、わりとどんな部位でも皮ごと売られているのである。チョップにも、三枚肉にも、ロースト用のかたまり肉にも、分厚い脂肪と二段がまえで、皮はもれなくついてくる。どうせ捨てる部分なのにけっこう重いし、むだにお金を払っている気がして、いまいち釈然としないのだった。 と…いつまでも思えていたなら、それはそれで幸せだったかも。だって今では、気づいてしまったのだから。あのロースト・ポークの、カリッカリの皮のイケナ〜イおいしさに!皮のところにダイヤ型に切り目を入れて焼いたものを「クラックル」とか「クラックリング」とか呼ぶのだが、その名のとおり、驚くほどカリコリしたものができあがる。 オイルと塩をたっぷりぬって高温で熱することで、皮の表面が揚げたように軽くなるから、まるでスナック菓子のような食感。適度な塩味と、皮の下の脂身の甘さの、どうしようもなく絶妙なハーモニー…。いかーん!こんなものが世の中にあったら、ダメだったらダメだ!と思わず叫びたくような、罪深い食べ物との出会いが、そこにはあった。 今ではお肉の部分以上に、このクラックリングが楽しみでロースト・ポークを作るのだけれど、はっきり言ってこれだけ高カロリーなものは、食べるたびに罪悪感もアップする。おまけに塩分も、ポテトチップよりはるかに高いとか。いやだわ。あぶないわ。だったら、皮なしで料理する!?だけどせっかくポークを焼くのに、クラックリングがないなんて。 お料理の本にも、「ロースト・ポークはいかに上手にクラックリングを作るかが決め手」と、くどいぐらいに書いてある。実際どんなにお肉がおいしく焼き上がったとしても、クラックリングがふにゃっとなってしまったら、2時間もかけた苦労と手間が(そこはオーブンがやってるのだが)一気にパーになった気がして、くやし涙にくれるのだ。 こうなると、前は絶対捨てていたチョップのまわりについている細い皮ですら無視できず、それだけを焼くためにオーブンを温めたりする背徳の日。しかしこれだけ律儀に皮がついてくるということは、みんなもけっこうクラックリングが目当てなのかしら。上手に作るのは時間もかかるし大変なのに。 でも、そんな面倒がイヤな人のためか、クラックリングはまさにスナック菓子として、袋入りのも売っていたりする。もう「お肉のついでに皮も焼いたから食べましょう」などというキレイごとは言いっこなし。このうま〜い皮の部分だけを、食べたい時にすぐ食べたい!そんな人々のヨコシマな夢が、すでにかなっているなんて。 しかしそっちを食べていると、やっぱり自家製が恋しくなってくるのである。それでまた、皮付き部位を求めてお肉売り場へ…。何かがまちがってるような気もするけど、もう戻れないのだ。皮なんか捨てていたあの頃には! (マツザキリカ)No.58/07/2010 筆者:マツザキ リカ(Kazzyの妻) ニュージーランドの情報誌「Gekkan NZ」にフードエッセイ"Good Kiwi Tucker"を好評連鎖中。 http://www.gekkannz.net/gekkannz/latest_gekkannz/ Kazzy & Rika がやっている個人旅行者を応援する小さな宿 Minna House B&B http://minna-house.co.nz |
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