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<ニュージーランドの大臣が公的扶助受給者の受給額を公表>
就学支援手当の受給を打ち切られた二人のシングルマザーが、野党やメディアを巻き込んで政府に抗議したところ、その反論として受給していた公的扶助の全額を公表されてしまった問題で、プライバシー委員会は苦情申し立てを受理しており、調査を開始することを明らかにした。受給額の公表を指示したポーラ・ベネット社会政策大臣は、「この二人が受給している公的扶助の金額が、主張するように不十分なものかどうかを、国民に正しく判断してもらう必要があった」と公表を正当化した。
日本ならば、プライバシーの侵害であると大問題になり、この大臣は首になるかもしれない事件だと思う。しかし、この二人のうち一人の受給額は週715ドルと高額であったうえ、以前にも就学手当を受給してポリテク(国立専修学校)で資格をとったが、体が弱くて働けないという理由で疾病手当を受給していたにもかかわらず、再び就学手当を申請して却下されたという。このため、国民の反応は「公表はやりすぎ」という意見ばかりでなく、「今回のような場合は許容される」とか「公的扶助の受給者はもっとチェックすべき」との声もあがっている。
実際、公的扶助の受給は日本より容易であり、しかもなかなか打ち切られない。審査も甘い気がする。確たる証拠はないが、日本で公務員をしていた経験と、この国で見聞することからそのように判断する。受給が容易であることは、悪いことではない。セイフティネットの機能をきちんと果たして国民を守っているからだ。この国の政府は、困った人を助けるのが本当に好きだ。国民ばかりではない、こんな小国でありながら年間1000人以上の難民を受け入れている。
しかし、権利の濫用に甘いのはよくない。国民がペネット大臣の「蛮行」に同情的であるもう一つの理由は、同大臣がシングルマザーで、自身もかつて福祉手当を受給していた過去があるからだろう。ベネット大臣は、公的扶助を受給しながら勉強し、子育てし、努力して閣僚の地位に上がった苦労人なのである。福祉も大事だが自助努力も大事という彼女の主張は、真っ当なものである。
ジョン・キー首相が、ベネット大臣を諌めずに支持しているところをみると、事前に相談の上のことだったのかもしれない。ビジネスで成功して大富豪になったキー首相だが、父親を早くに失い、母子手当を受けていた時期もある。キー首相とベネット大臣は福祉手当の重要性と有り難みを身にしみて認識している者同士なのだ。その上で「自助努力」を求めているから、国民は反撥を覚えないのだろう。
それにしても、受給額の公表はプライバシーの侵害にあたると思うが・・・。
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