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今月の15日、反捕鯨団体シー・シェパード(SS)のメンバーでニュージーランド人のピート・ベスーン氏が、日本の調査捕鯨船団の監視船、第2昭南丸に侵入しました(これは船舶侵入罪という犯罪です)。ベスーン氏は1月6日に第2昭南丸と衝突して大破したニュージーランドの高速艇アディ・ギル号の船長で、第2昭南丸の船長に「衝突の原因は貴船にあり、損害賠償として300万USドルを要求する」という文書を手渡しました。その結果、ベスーン氏は艦船侵入の現行犯および傷害、器物損壊の容疑で身柄を日本に移送されて事情聴取をうけることになりました。事態を重視したマカリー外務大臣は、??橋利弘駐ニュージーランド大使と対応を協議しています。
この反捕鯨活動をめぐる2つの事件は、テレビや新聞で大きく何度も取り上げられました。
普段は冷静かつ公正な報道をすることが多いニュージーランドのマスメディアですが、残念ながらこと捕鯨に関しては、大きく扱うくせにシー・シェパード側の言い分しか記事にしないとか、明らかに報道が偏向しています。たぶん、記者やデスクにシンパがいるのでしょう。先日もヘラルド紙電子版に、以下のような読者への質問が載りました。
<質問文>
「数百万ドルもする捕鯨抗議船アディ・ギル号が第2昭南丸に衝突されて沈没し、乗船していたカメラマン1人が負傷しました。アディ・ギルのピート・ベスーン船長は、この衝突は6人の乗員に対する”殺人未遂”だと言いました。さて、あなたは、シー・シェパードの反捕鯨活動の手段を支持しまか」
誘導的なひどい質問です。寄せられたコメントを回読むと、「断固支持する」、「政府は腰抜け」、「ジャップから鯨を守れ」と質問に見合うひどさで、狂信的な言葉の羅列に胸が悪くなりました。今日、再びそのページを見ると、コメントが464もついてました。怖いもの見たさで恐る恐る最後から見ると、「目的の正しさは手段を正当化しない」、・・・おっ、雰囲気が変わっている。
最後から80件のコメントの内容を分類すると次のようになりました。
A.捕鯨に反対。SSの行動を支持する。・・・40
B.捕鯨に反対だが、SSの行動は犯罪。・・・26
C.捕鯨を容認する。SSの行動は犯罪・・・・14
科学的なデータとはとても言えませんが、メディアの偏向報道にもかかわらず、捕鯨の是非と抗議活動の是非を分けて論ずる人がおり、さらに鯨の特別視に疑問を呈する人や異文化を許容する立場から捕鯨を容認する人がいることが分かり、ほっとしました。ファナティックなコメントの羅列に我慢できなくなった冷静な人が、書き込み始めたようでした。
何を正しいと信じるかは人それぞれですが、その基盤となる正義=手続きやルールを踏み越えてはいけないという意識が立場を越えて共有されることが、本当に大切だと思います。
ところで、ベスーン氏が過激な行動にでている背景には、一昨年の選挙で国民党政権になってから、ニュージーランド政府における反捕鯨の重要度が下がったことに対する焦りと苛立ちがあると私は見ています。前の労働党政権は捕鯨反対を強く主張するグリーン党と親和性がりましたが、現在の国民党政権は経済重視で、グリーン党と距離があるので反捕鯨はポーズだけのような気がします。逆に労働党政権に変わったオーストラリアは、SSの後ろ盾になって反捕鯨のキャンペーンを強化してます。反捕鯨の立場に混じる狂信的な人々が、暴力や人種差別の引き金になることが心配です。
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