文芸夏冬^^

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・・・ 夢 ・・・

『風の丘』

 

月夜野 荒野


同じ景色の夢をよくみます。

夢はその日の眠りの深さによるのでしょうか、シーンが早く始まったり、また先まで続いたりと。

だけど、いつも決まって同じ情景をみているのです。

意識は朦朧としていても夢の中の私は、自分の目を通してその場面を眺めているのがわかります。

手先まではっきりと私のものと確認できるからです。

血管が浮き出たその腕はどんな色をしているかはわかりません。

ここには色がないのです。

私は、モノクロームの草原が眼下に果てしなく続く、小高い丘に立っています。

そう、嵐が丘の一場面のように荒涼とした無力感の大地に。

草原から丘に向かって風が吹き荒み、立っているのがやっとです。

音?もちろん聞えませんよ、沈黙が支配する世界ですから。

やがて場面は暗闇となり、私は箱のような小さな家に閉じ込められます。

家具は何も無く、真っ暗な中に何故だか不自然に長く伸びた自分の手足が四方の柱を支え、

ビュービューと吹き荒ぶ風に耐えているのです。

「ああ、もうだめだ・・・」

そう思ったとき、

突然外壁の板が一枚一枚吹き飛ばされ、骨組みだけになってしまいました・・・・・・。

私は骨組みだけの四角い箱を必死に押さえているのですが、

それは細い骨組みだけなのに、風に飛ばされそうになりながらゆがんでいるのです。

私の長く伸びた手足はその骨組みと一緒にパタパタと強い風に揺らいでいます。

そのときです、突然私の中から、灰色の‘もの’が離れていきます。

その‘もの’はミイラのようにやせ細って、

長い手足をばたつかせながら私と同じように骨組みを押さえています。

想像もつかない、激しい風が一瞬通り過ぎたとき、

その‘もの’は折れそうな首を曲げて振り向きます。

そしてそれは、まるで微笑むように紅く光る目で私を見つめ、

力尽きて飛ばされていきました。

やがて私も強風に耐えきれず、身体が引っ張られるように、

尖った岩がごろごろする丘を血だらけで転がっていくのでした・・・・・・、


「あぁぁぁぁ」




パチッとライトがつく音がして、まぶたを閉じていた目の前が急に明るくなった。

「さあ、起きましょう、気分はいかがですか」

「少し頭痛が・・・・」

「いつも夢で見る情景を見られたのですね」

「そうです、この景色を良くみます」

「はい、今日はここまでにしておきましょうね。

ではいつもの薬を処方しておきますので、薬が無くなったらまたいらしてください」

私を覗き込んでいているのは、白衣を着た細い男。

神経質そうな薄い唇から言葉を発している。

よくみると、その人は夢に出てくる、

血のような紅い目をした不気味な男にそっくりだった・・・・。

私は、起きているのにまた恐怖で身震いした。


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‘クレセントムーン’にようこそ  ――コウヤとカズネ――



頭上のポッカリ開いた四角い空間から人の顔が覗き込んでいる。

その空間から会話が微かに聞こえていた。

「誰が来た?」

「え、コウヤともう一人知らない子」

急な階段を昇り2階に上がると、そこにはまるで四方を閉ざされた鳥小屋のような、四角い木造の空間だ

った。

引っ込んだカウンターの中から、いらっしゃいと声がかかる。

ラフなプリントシャツを着た中年の男だった。

「こんちわ」

コウヤが軽い挨拶をした。

「一緒かい」

カウンターの中の男が聞いた。そして男は視線をコウヤからカズネに移した。

「うん、そう」

「珍しいねコウヤ。きょうは独りじゃないんだ」

コウヤは、少しはにかんだ微笑みを浮かべた。

「ご覧の通り、本日もカウンター席はいつもの顔ぶれでいっぱいなんだ。悪いけど、お二人さんボックス

席でいいね」

カウンターの男が言うと、

「いいよ。ここで」

そう答えたコウヤは、今までにないほど穏やかな表情にみえた。

「それとマスターさ、この子に何かソフトドリンクをくれる」

「ジンジャエールでいいかい?」

そう男が言うと、同じことをコウヤはカズネに向かって言った。

「ジンジャエールでいいかってさ」

コウヤがそう言うと、カズネは反射的に

「それでいいです」

と答えた。

コウヤがその男に視線を送ると、カウンターの中でうなずいた。

カズネは店の中を見回してみた。照明を暗くしてはいたが、それでも店の古くささは隠せなかった。

 いらっしゃい、そう言ってカウンターの椅子に座っていた女がロックアイスとミネラルを運んできた。

「こんにちは、コウヤくん」

「ありがとう、ミキちゃん」

ミキと呼ばれた女がテーブルにロックアイスを置いた。

「この子ミキちゃん」

コウヤがカズネに向かって言うと

ミキが微笑んだ。カズネも微笑みを返した。

「珍しいねコウヤくん、誰かと一緒なんて」

「うん、今日は特別」

「邪魔しちゃ悪いね、ごゆっくりどうぞ」

ミキは自分の席に戻り、また隣の人と話しだした。

「マスター、僕のボトル早く出してよ」

「焦るなって、今お通しと一緒に持ってく」

マスターと呼ばれた男が、カウンターの左角の出入り口から腰を屈めて出て来て、ジンジャエールとウイ

スキーのボトルをトレーに乗せて二人のいるテーブルまでやってきた。

「元気だったか、コウヤ」

「・・うん。あのう、この子カズネくん、友達の友達」

カズネは軽く会釈した。

「かわいい子だね、『クレセントムーン』にようこそ。きたないとこだけどゆっくりしてってね」

そう言って水割りを作ると、またカウンターの中に戻っていった。

「びっくりしたでしょうここ」

コウヤがカズネを見ながら言う。

「正直言って・・・、びっくりです」

「きったないよねこの店。でもね、僕はここが大好き」

コウヤは、マスターの作っていったホワイトの水割りを一口飲んだ。

「この店に飲みに来る人はほとんどが常連でね、知らない人がいることはめったにないな。あそこのね、

カウンター席の右端、ピンク電話の前に座っているのがタムラさん、タムラさんは毎週火曜日と金曜日に

必ずこの店に来て、あの端の席に座るんだよ。だからあそこはタムラさんの指定席って決まっているん

だよ」

カズネは一生懸命に話をするコウヤを見つめた。

コウヤは、子供が自分のおもちゃ箱の中の大切な物を取出すように夢中で語っていた。

その時、自分のことを話しているのが聞えたのか、タムラが振り返った。

「コウヤ、なんも知らない女の子に余計なこと言うなよな。初めて会うのにさ、変なやつって思われちゃ

うじゃんか」

タムラは無表情でそう言った。

「おっ、珍しい。タムラさんまだ酔ってないんだ」

「余計なお世話だね」

コウヤが茶化すとタムラはすぐに前を向いてしまった。

カズネとコウヤは恋人同士のように顔を見合わせて微笑みあった。

「その隣がさっきのミキちゃん、ああやってアイス運んできてくれるけど、別に店の子じゃないんだよ。

確か美容師だって言ってた。その隣ががタカシさん、救急救命士してるんだって。で、その隣がユウコさ

ん、酔ってくると「桃井かおり」みたいな話し方になってくるんだよ。それとあとはマスターかな、マス

ターは九州のどこかの県の出身なんだってさ、僕はそれだけしか知らない。以上、本日のフルメンバーで

す」

「私、コウヤさんの事も聞きたいな」

そうカズネが言うと、

「僕?僕はご覧のように見ての通りの人です」

「そんなのずるいです」

カズネがそう笑って言うと

カウンター席のタムラがまた後ろを振り返って、

「コウヤの悪口を話し始めたらさ、いっぱいありすぎて夜が明けちゃうよなあ、ミキ」

急に話をふられ、戸惑ったミキは、

「タムラさん、何で私に振るのよ」

そうミキが言うと

みんなの笑い声が店の中に溢れた・・・・。


クレセントムーンはこんな場所でありたいなあ

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特別な日




天井まであるガラスの窓に、華やかなネオンライトが反射している。

ガラスの向こう側の喧騒が嘘のように、ここでの時間は大河のようにゆったり流れる。

スケルトンのグランドピアノに、スポットライトが僅かにあたり、

ピアノに寄りかかるように立つボーカルのささやくようなスタンダードが、

うす紫に立ち上るたばこの煙に静かに絡まってゆく。

リズムに合わせ、マイクをくゆらすたびにスポットライトがずれて、

光がスケルトンに屈折してキラキラと輝く・・・・・。


「すてきね・・・・」

そうつぶやく女の持つ細いシャンパングラスの中の泡沫が、濡れた赤い唇にすいこまれていった。

「何が素敵?俺のことか」

男は少し微笑んで、女の瞳を見つめた。

「ばか・・・・」

そう言って女は男の前にシャンパングラスを差し出すと、カンと乾いた音を立てて二つのグラスが交差し

た。

「ねえ、いくつになったの?」

男がいたずらっぽく聞く、

「女性に年齢を聞くかしら」

「きょう誕生日だろう、だから聞いてみようかと思ってね」

「・・・・」

控えめだったコントラバスが僅かに調子をあげた。

「ああ・・・・」

ボーカルが歌いだすと、曲に合わせて女が唇を動かした。



‘ Yuo‘d be so nice to come home to ’

                     

「大すきな曲・・・」

褐色の肌をしたボーカルの黒いスパンコールのボレロが不規則に輝いて、

ステージはのぼりつめていた。

「お客さま、ご注文の品お持ちしました」

振り向くとタキシード姿のウエイターがサーモンピンクのバラの花束を抱えていた。

女が戸惑いながら男を見つめている。

「誕生日おめでとう、受けとってくれないか」

「ありがとう・・・・」

女は花束を受け取った。

「いい香り」

そう言いながら、花束を見つめていた、そして・・・

「・・・・私が重ねた歳の本数、この中に詰まっているのね」

僅かな沈黙のあとに男は言った・・・・、

「俺と結婚してくれないか」

女はグラスに残った僅かなシャンパンを飲み干し、

静かにうなずいた・・・・。




 先日、アバロウニの茂マスターとチーフの近ちゃん、

 息子みたいな年の悪友けいたと飲みに行った、

 ‘グランドハイアット博多’のメインバーのイメージで即興してみました。
  
 そこには異次元の空間が広がっていました。

 興味のある方はぜ行ってみてください。

 

 

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磁器の女

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?H3>最後の日・・・・伊万里




「これ、大事にするよ・・・」

 私は、ただ古新聞に包まれただけの絵皿に視線を落とした。

一歩先を歩いていた女はふり返り、瞳の奥を透視するかのように私をみつめた。

「そう・・・」

それだけ言って、すっと振り返り、来るときに登ってきた坂道を先に下りていった。

私はすぐに後を追った。追いつきそっと肩を抱くと頭を私の胸に押し当てた。その時私の左手に暖かな雫

が落ちてきた。女の瞳に涙が溢れているようだ。その涙の意味が深く私の心を貫いた。

「帰ろう」

私は女の肩を手のひらで軽くにぎりしめた。

「うん」

そう言うとわずかに微笑みがこぼれた。

すでに陽は傾き、深い静寂と冷気が二人をつつんでいた。

女が歩くたびにブーツの踵がコツコツとコンクリートの坂道に響きわたり、そのさめた音に身体よりもむ

しろ心が冷えてくるようだった。

私も女も心なしか急いで歩いている。二人とも車の中に、その閉ざされた空間で一刻も早く人の温もりを

身体一杯に感じたかったから。

並んで歩く女に私は言った。

「君らしいね、そういうところ」

私はさっきの涙を理解したつもりだった。

「私は・・・、本当の私はこんな女ではないわ」

女の言葉は自分に言いきかせたのか私に言ったのか、それは宙を舞って深い静寂に吸い込まれていった。

私は無言のまま、坂道を下りている。寄り添うように女も私のペースに合わせていた。

二人に残された時間はあとわずか。私は今度いつ日本に戻るのかさえ女から聞かされてはいない。

それなのに二人の思い出を詰め込むには、出会ってから余りにも僅かな日々しかなかった。

しかし今、女のたてる感情の波は激しく私に突き寄せ、あふれる思いとともに女の心に曳いていくのがわ

かった。

もう、私の感情は完全に支配されていた。


川沿いの駐車場・・・。

女の所有する車に二人は無言のまま乗り込んだ。

エンジンはブルンと軽い音をたてて気持ち良いほど鮮やかにかかった。

包み込む空間が二人だけのものになると、女の唇から堰を切ったように言葉が溢れ出した・・・。

「磁器の白さって絶対に女性的、そう透明で艶があって。陶器はいくら繊細な線を重ねてもどこかに力強

さは隠せない・・・・。

私の心は磁器そのものです、なにも描かれていない乳白色の下地そのものです。あなたに鮮やかな朱や群

青を彩ってもらったとき、私が完成して行くの。だから何かを私の心に描いてください。どんな色を使っ

ても結構です。私は、私はあなた色に染まりたい・・・・」

女はそう言い終わると静かに車を発進させた。

フロントグラスに真っ直ぐ顔を向けたまま私は暫く黙っていた。

気持ちは痛いほど伝わってきた。

待つことが私にとってあるべき姿であるようだ。

やがて沈黙がどうしようもないくらいに溢れてきた時、私の唇はやっと開くことができた。

「俺、君をいつまでも待つことにするよ」

そう言ったものの女はさらに沈黙を続けた。

車は既に山沿いの道を抜けて海岸沿を走っていた。

「このまま左にハンドルを切って車ごと海に落ちちゃおうかしら」

女が突然に口を開いた。

私は言葉の真意を確かめようとドライバーに顔を向けた。

カーブの度に対向車のヘッドライトが女の横顔をなめるように照らしていた。

そのとき女は微笑んでいた・・・・。

私は言った。

「いいよ、おまえとなら地獄の果てまで付いて行ってやるさ」

二人は同時に笑った。




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ショートショート

 
?H3>音信


「母さん?」

今確かに、実家にいるはずの母親の声がした。

ベッドサイドの時計に目をやると、午前2時を少し過ぎている。

僕はうつ伏せに寝ていたが、そのかすかな声で上体を起こした。

だが、うす灯かりの中、そこにはいつもの自分の部屋があるだけだった。

ただ、最近付け替えた夏用のブルーのカーテンがわずかに揺れていた。

「和ちゃん、ねえ和ちゃん」

確かに母親の声でそう呼ばれたのだ。

その緊迫した呼びかけは、混濁した頭の中、濃霧が一瞬の強風で晴れわたるように明快な目覚めだった。

僕の下着は汗でびしょびしょに濡れていた。

「夢か・・・・」


母は親父と別居した。

いつまでたっても浮気の納まらない父親に、母は僕と妹が独り立ちするまでと我慢を重ね、年を重ねてき

た。

「ねえ、和ちゃんもういいわよね。母さん、気兼ねなくひとりで暮らしたいの」

僕は何も言えなかった。

「美加には話したの?」

「うん」

そう母はうつむいて答えていた。

母はわずかな年金と、若いころから習っていた華道で生徒をとって暮らしていくと言うが、そう簡単に暮

らせるものではないはずだ。

「何かあったら、面倒見るからね」

「ありがとう、でもあんたは九州にいるしね、なるべく自分でやっていくわ」

母は気丈なひとだ、妹がこの母とそっくりでよく二人はぶつかっていた。


翌朝はなんとなくすっきりしない目覚めだった。

いつものように7時に目覚ましが鳴ったが、30分前には目が冴えてベッドの中でうずくまっていた。

僕は母に電話をしたい衝動に何度も駆られたが、もし起こしてしまったらかわいそうだと思い、電話をか

けずにいた。

朝の支度を済ませ、誰もいない部屋に「行ってくるね」とつぶやいて家を出た。

駅まで歩く5分の間・・・・、僕は母の携帯に電話をかけた。

「プププッ、プププッ・・・ただ今電話に出ることができません」

おい、うそだろう・・・・。

もうすぐ駅についてしまう。

僕は立ち止まって、もう一度母の番号を呼び出していると、携帯の呼び出し音が鳴った。

「もしもし」

「あっ、和ちゃん。どうしたのこんな朝早くに電話なんて」

よかった、やっぱり夢か・・・・。

母の声は、いつもの母の声だった。

「なんでもない、元気かなあと思って」

母は笑っている。

「何よ、心配しちゃったわよ、こんな時間に電話くれるから」

「ごめん、もう電車に乗るから、また夜にでも電話する」

僕はちょっと恥ずかしくなり、強引に電話を切った。

※ これフィクションですが、声が聞こえて翌朝あわてて電話したところだけは本当です^^

                                                                                     
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