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支持率低迷にあえぐ菅政権はTPP加盟を目指しているが、それに対抗する動きも活発化してきた。朝日新聞によると、3月2日千葉県では、米国やアジア・中南米諸国との間で関税を撤廃する「環太平洋経済連携協定(TPP)」参加に反対する農水産業13団体でつくる「TPP交渉対策千葉県連絡会議」の集会が2日、千葉市中央区で開かれ、約2千人が参加したらしい。この集会では、地域を守るために、『例外なき自由化』を阻止する内容の決議案が可決されたらしい。ちなみにこの集会には、千葉県出身の政治家が、自民党から共産党まで出席したらしい。
「例外なき自由化」なんて言葉を聞くと、僕はいつもフランスを連想する。フランスは、世界を覆う英語とグローバリゼーションの波に対抗するために、盛んにフランス語やフランス文化を国際社会で防波堤として使おうとする。今でも国連ではフランス語は英語と並んで国際共通語であるし、話者人口や学習者の人口では中国語やスペイン語、英語には遠く及ばないものの、フランス語は国際社会の30を超える国や地域で使用される言語であり、フランス政府は今でも国際社会におけるフランス語の地位の確保に必死である。事実、フランス語にはアメリカ批判が本当によく似合う。僕のフランス語学習の背景には、アメリカに対して感じ続けてきた違和感がある。まぁ、それはともかく。フランス政府にとってフランス語は世界を覆うグローバリゼーションに対抗するための武器であり、文化的例外である。
その一方で興味深いのは、フランスは国内においてはフランス語を国内統一や国威高揚の装置として使う。フランス国内には、様々な方言や地域語が存在する。バスク地方に行けばバスク語があり、コルシカ島に行けばコルシカ方言がある。ドイツ近郊に行けばアルザス語(ドイツ語の一種)が話されており、ブルターニュ地方に行けばケルト語派のブルトン語も存在する。これらの方言や地域語(外国語)は、その地域で人々のアイデンティティを形成する重要な文化的要であるのに、フランス政府は1951年にディクソンヌ法という地域語を尊重する法律を可決するまで、弾圧を続けたことを忘れてはならない。昔のフランスの学校の看板に、「つばを吐くことと、方言を話すのは禁止」というのがあったのは、言語で国家を統一しようとするフランス政府の政策を象徴している。最近ではフランス国内の方言や民族語は少しずつ話者数を増やしつつあるのもあるが、長年のフランス政府の弾圧政策により、いくつかの言語は絶滅状態である。
もしフランスが国際社会で英語(正しくは米語)とグローバリゼーションに反対し、文化に多様性を見出そうとするならば、フランス国内においても言語政策に多様性を見出そうとすべきであるが、フランスは国内ではフランス語で「国家統一」「国威発揚」を図ろうとする。この矛盾した政策は、TPP加盟についての日本政府の動きを連想させる。関税を払うことなく海外から安く食糧が輸入できると訴える一方で、やっぱり「コメは例外として守ろう」としたり、、、TPPに加盟するとすれば、それはメリットが大きい分、デメリットも大きいはずで、そのあたりをきちんと整理して議論しなければいけないのに、菅政権ではそれができない。TPPにもし加盟をすれば、「良いものを安く」という普遍的ビジネス論理に裏打ちされたグローバリゼーションの波に、日本は飲み込まれてしまうだろう。グローバリゼーションの難しさは、「良いものを安く」という、貨幣経済における普遍的なビジネス論理を屋台骨にしているために、なかなか反論や批判がしづらい点である。このあたりが、日本政府とフランス政府にとって、「文化的例外」を必要とする理由なのだろうと思う。
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