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私の中に“悪鬼”がいる。
ひたひたひたと、ぬめりぬめりぬめりと、私の身体を蠢く。しゅたしゅたしゅた、そろりそろりそろり。“悪鬼”は動きをやめることはない。とどまることがない。激しさを増すばかりだ。
気持ち悪い。気色悪い。汚らわしい。
そうした私の心を無視するかのように“悪鬼”は暴れる。どたどたどたと、ばたばたばたと、じとじとじとと。私の身体は無惨に引き裂かれ、“悪鬼”にひれ伏すことになるのだ。
昔から自己主張することがなかった。気弱だった。臆病だった。そうした性格に付け込まれ、ひとに利用された。クラスのいじめにもあった。鬼に襲われ、“悪鬼”を投げ入れられても抵抗する術を持たなかった。従順でいるしかなかった。暴力が止むのを待つしかなかった。
だが鬼は私を許すことをしない。飽きることがない。ぎとぎとぎとと、ずてずてずてと。私は永遠に続く地獄に耐えねばならぬのだ。
「おいおいおい、手ひどいやられようだな」
えっ?
「手ひどいやられようだなって、いってんの」
どこからともなく声がした。こんなところにひとがいるはずないのに。鍵でとじこめられた部屋の中にいるのに。窓が開いた形跡がないというのに。いや窓なんて、この部屋に、そもそもないのに。
それなのに暴力はいきなり止んだ。言葉を発した人物は、鬼を私から引き剥がしてくれたのだ。
「なぜ」
「そんなの簡単さ。退治しにきたのさ」
「退治?」
「ああ」
そいつはそういうと刃を取り出す。刀身は優に1メートルは超える、大きな大きな刀を。
私はそいつの姿をみる。全身黒づくめ、喪服の格好をした女性がそこにいた。長い黒髪、清楚な面持ち、この世にいるとは思えない美しい顔で。
「悪くは思わないでくれよ、お嬢ちゃん」
そいつは私から引き剥がした鬼をなでなでなでとなでる。鬼の一部である“悪鬼”をさらさらさらと優しく包み込む。
「なぜ?」
「いっただろう、退治しにきたってさ」
そいつは大きな刃を私に振りかざした。躊躇なく。遠慮なく。大きく。一直線に。
私は悟った。“悪鬼”が鬼の一部であるように、鬼はそいつの一部なのだ。私はそいつの意志で蹂躙されたのだ。
私の身体は砕けた。ころころころと。じりじりじりと。ばくばくばくと。
「これで完了だ。次はあいつか」
砕け散った私の肉体を前にそいつはそう呟いていた。
※ちなみに画像は、創作小説とはまったく関係がありません。シャナです(笑)
刃を持った女性はこんな感じということで、アップしました(笑)
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