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飴(あめ)といえば京都では祇園小石が最も知られている。この店で私が一番気に入っているのは「昔風のど飴」である。飴そのもののなめらかさと、金柑(きんかん)の柔らかい香りが絶妙にマッチして、金柑の香りが何とも輝いて感じられる。なめると独特のなめらかさで飴の表面が覆われているかのようだ。まったりとした甘さ、なめらかさ、輝く金柑の風味が、独特の味の豊かさをかもしだしている。
他にも気に入った飴として、大文字飴本舗の京野菜あめを採り上げよう。「飴で野菜?」と不思議に思われるかもしれないが、コトコトと煮た京野菜の味を飴で体験するのは面白い。みぶ菜飴は、あの漬物に使うみぶ菜の味がじわ〜っとしてくる。聖護院大根飴は千枚漬けに使う大根の香りがしてくるし、堀川ごぼう飴は、ごぼうらしい土の香りがする。他にも種類があるが、飴自体の味にひなびたところがあって、京野菜の味と絶妙に合っている。
京の飴は江戸時代の製法のものから明治時代、その後まで幅が広いので、歴史的に整理すると分かりやすい。まず江戸時代の伝統的な水あめは、おもに米に麦芽を混ぜて酵素を作用させ、でんぷんを麦芽糖に変えて作る。この時代には、水あめに砂糖を混ぜて加熱することで、固形の飴が作られるようになった。桂飴本家養老亭の桂飴は江戸時代、するがや祇園下里の豆平糖は明治時代の製法を受け継いでいる。後代のものの方が何となく垢抜けた感じがする。
こうした飴は茶色い色と独特の風味があるために、それ自体の味を楽しむには良いが他の食材とは元来合わせにくい。しかし大文字飴本舗は、この風味を昔ながらの京野菜とうまく合わせた。水あめの製法が工夫され、味がより穏やかになったために合わせやすいという事もあったと思う。祇園小石は、この水あめの製法に手を加えて、透明でそれ自体の味が少ないものを使用している。こうなると様々な飴を作る自由度が格段に広がる。その点だけをとると工業的製法の水あめによる現代的なキャンディにいささか似て見えるが、しかしそのまったりした柔らかな味わいは、現代的なものと全く違う世界である。
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