◇鞍馬寺・晴明神社・「デルタ」…
◇「オカルト」危惧も
「パワースポット」と呼ばれる新たな「霊場」が京都でも次々誕生。全国から人が集まっている。
多くは自然や寺社の中にあり、そこに立ったり触れたりすると、良縁や仕事での成功への力がみ
なぎるのだとか……。「イワシの頭も信心から」と言われる通り、信仰の対象は人それぞれ。しか
し、既存の宗教界には参拝者の増加を歓迎しつつも、オカルト信仰につながることを危惧する声
もある。
源義経が修行したことでも知られる鞍馬山(標高570メートル、京都市左京区)。鞍馬寺はその
深い森に包まれている。パワースポットとされているのは本殿前の広場だ。六角形をかたどった
石畳中央の三角形の石に立ち、両手を広げる−−。休日には、順番待ちで数百人の列ができる
こともある。
1200年の歴史がある鞍馬寺にあって、このパワーストーンは約30年前に作られたばかり。同
寺の教えを表現したもので、信者は踏まないようにしてきた。だが昨年夏、現地を訪ねた有名芸
能人のパワーを受けるような仕草がテレビで放映され、翌日から長蛇の列ができるようになっ
た。
「最初は戸惑いもあったが、いろいろな信仰の形があっていい。本殿の前だし比叡山も眺望で
き、心が落ち着く根拠はある。信仰の世界に目を向ける人が増えるのはいいこと」。鞍馬山博物
館の曽根祥子学芸員は歓迎する。一方で「パワーをもらうだけでは終わらず、人に親切にするな
ど、仏の心に気付いてほしい」とブームに乗る人たちに注文する。
平安中期の陰陽家、安倍晴明を祭る晴明神社(上京区)のクスノキも「触れるとパワーが得られ
る」と話題だ。
川崎市の会社員、元木健一さん(36)と妻涼子さん(29)は「鞍馬寺の石の上に立つと、確かに
パワーを感じた。何かしら引き寄せられるものがあるからこそ、石を作ったのだと思う」と話し、ク
スノキにも手を添えた。
パワースポットには明確な定義がなく、寺社とは限らない。水にもパワーが込められており、賀
茂川と高野川が合流する左京区・出町柳近くの「デルタ地帯」には強大な力が集まっているという
のだ。府鴨川条例が08年4月に施行されるまでのバーベキューのメッカが、ある意味、本当の
「聖地」になった観がある。
一方、京都市内の寺院の関係者はブームについて「パワーをもらって、ある能力が途端に備わ
るはずがない。超能力やオカルト信仰につながらないか心配だ」としている。