「危険運転」の代償重大 罪適用「ハードル高く」 検証亀岡暴走
「子どもたちを助けてあげて」。痛みでうめき声をあげていた松村幸姫さん(26)が叫んだのを、近所の人が目撃している。通学用のかばんや帽子が散らばる道路に血を吐く子やぐったりして動かない子が倒れていた。「救急車を呼んでる。がんばるんや」。近くの住民たちが駆け寄って励まし続けた。
23日朝、亀岡市篠町の府道。地元消防関係者らによると、児童9人の列の最後尾を歩いていた身重の松村さんは、突っ込んできた軽乗用車に最初にはねられた。約10メートル飛ばされながらも子どもたちのことを気遣っていた。松村さんは搬送先の病院で亡くなった。おなかの中に宿っていた新しい命も助からなかった。
一瞬の惨劇は、少年が仲間と徹夜でドライブした末の居眠り運転が原因だったと、京都府警はみている。
■8人前後分乗か
ドライブが始まったのは22日夜。捜査関係者によると、事故を起こした亀岡市の無職少年(18)=自動車運転過失致死傷容疑などで送検=や、車を所有する南丹市の少年(18)ら3、4人が軽乗用車と別の軽乗用車の2台で亀岡市のコンビニを出発した。走行の途中や2台の間で乗り降りを繰り返し、複数の免許所有者を含む計8人前後の少年少女が参加したと府警はみている。事故当時の同乗者の少年2人=ともに(18)、道交法違反(無免許運転)ほう助容疑で送検=も合流していた。
府警の説明では、無職少年はこの間、亀岡市内のボウリング場やコンビニの駐車場に止めて軽食を取り、友人らと一睡もせずに遊んだ。23日朝、軽乗用車のハンドルを握り、京都市山科区で少女を下ろした後、少年2人を乗せて国道9号を西に進んだ。亀岡市の王子交差点から抜け道の府道に入り、児童の列に突っ込んだ。
府警は、軽乗用車の運転は途中まで無職少年や別の少年が交代でしていた可能性もあるとみて、慎重に捜査を進めている。
逮捕された無職少年の父親によると、少年は父、兄の3人暮らし。中学卒業後、暴走族グループに入った。2年前にバイクの無免許運転で亀岡署に検挙された。府警や知人によると、暴走族解散後も車の無免許運転を繰り返していた。
府警は無免許運転が常習になっていたとみており、多数の死傷者を出した結果の重大性から最高刑が懲役20年の危険運転致死傷罪の適用も視野に捜査を進める。だが、容疑の変更はハードルが高い。
危険運転致死傷罪の構成要件は▽薬物、アルコールの影響▽制御できない高速の運転▽運転技能を有しない―などのいずれか。板倉宏日本大名誉教授(刑法)は「市民感覚では無免許の居眠り運転は危険運転に違いないが、今回は該当しない可能性が高いのでは」とみる。京都地検幹部も「要件は極めて厳格。少なくとも居眠りだけでは成立しない」という。
■「後悔している」
接見した弁護人によると、無職少年は「本当に申し訳ないことをした。後悔している。今後、車には乗りたくない」と話したという。だが無免許、居眠り運転の暴走の代償はあまりにも大きい。
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京都府亀岡市で登校中の児童らの列に軽乗用車が突っ込み、3人が死亡、7人が負傷した事故の発生から30日で1週間となる。暴走はなぜ起き、通学路の安全はどうだったのか。計20人が死傷した祇園暴走に続く惨劇の背景を探る。 |
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