フジテレビに対するBPO申し立てについてⅠ.最初に
平成27年2月17日に放送されたフジテレビ「カスぺ!『あなたの知るかもしれない世界6』」に関して、東光宏及び関東交通犯罪遺族の会(以下、「私たち」と言います。)はBPO(放送倫理・番組向上機構)に申立てを行いました。同番組の中のうち「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」とのタイトルで始まる再現ドラマが問題とする箇所となります。
Ⅱ.問題となる放送内容とそれによって生じた被害の内容
1 取材と放映の経緯
インタビュー依頼にあたり事前に受けた説明は下記がすべてでした。それであれば今後、悲惨な被害者が現れない啓発になればと考え、東はインタビューに応じることにしました。
・自転車で事故を起こすとこんな重大な事態になるという問題提起をしたい。 ・ただゴールデンタイムなので死亡ではなく、顔に重大な怪我を負わせたという設定にする。 ・しかし面白おかしくでは決してなく、あくまで自転車事故の重大性を訴える内容だ。 2 放送内容
しかし放映内容は、事前説明とはかけ離れたものでした。交差点で中学生が、小学生の男の子に自転車で衝突するのですが、その小学生は、最初から意図した「当たり屋」で、そのことが随所でわかる演出となっており、さらに小学生側代理人の弁護士の言い値のまま1500万円という法外な金額を取られる内容でした。その冒頭に東のインタビューが使われていました。
3 フジテレビが認めたこと
その後4月になってフジテレビから私たちに接触があり、話を聞くことになりました。
4月10日会合時、フジテレビに対し、内容の事前説明がなかったこと、自転車被害の多くは当たり屋ではないこと、東や自転車被害者の多くが当たり屋のような印象を与えかねないこと、番組内の負傷で1500万円はあり得ないこと、被害者の多くが法外な請求をしている誤解を与えかねないことなどを抗議しました。 続く、4月25日会合では、フジテレビから、東に不快な思いをさせたことに対する謝罪文の読み上げがあり、下記内容をフジテレビは認めました。 ① 本件番組はバラエティ番組ではなく、情報バラエティ番組であること
② 作品買取りではなく、制作会社に業務委託して作った番組であること ③ 番組の公式サイトには「実際に体験した人々に取材し事実のみで構成されたドラマ」 「実話の物語をドラマ化した『最大公約 数ストーリー』」と謳っていること ④ 再現ドラマが当たり屋に金銭を詐取される話になっていること ⑤ 当たり屋であることはドラマ冒頭から伏線であったこと ⑥ 取材に基づいた内容ではなく「架空」のドラマを作成したこと ⑦ 軽傷で完治しているドラマ事案での1500万円という賠償額について、相談した弁護士から具体的な数字は出ておらず、制作側でこのようなものだろうと判断したこと 4 放送内容の問題点
番組コンセプトとして、「事実のみで構成されたドラマ」「実話の物語をドラマ化した「最大公約数ストーリー」」とあり、番組内でも繰り返し同じ文言を使いながら、実際は裏付け取材をせずに制作されました。また自転車被害の最大公約数が当たり屋というのは事実と大きく異なります。もっとも多い現象は、当たり屋ではない普通の被害です。さらにドラマの小学生は軽傷で、番組最後には完治しています。これで1500万円の賠償金が認められるようなことはありません。これでは交通犯罪の被害者が法外な請求している印象を視聴者に与えかねません。よってこれは虚偽放送に当たると考えます。
5 フジテレビの対応
当たり屋のドラマであることの事前説明が全くなかったことについては、フジテレビも表面的に謝罪をしています。しかし最大の問題は、フジテレビが虚偽放送であることを一切認めないことです。上記会合後、私たちは改めて確認の意味で下記内容の書面をフジテレビに送りました。
① 抗議 (1)当たり屋がドラマのメインであることについて、事前に全く説明がなかったことを抗議する。 (2)東があたかも当たり屋のような誤解を視聴者に与えかねない内容であることに抗議する。 (3)当たり屋が自転車被害者の最大公約数との内容で、被害者の名誉を傷つけたことを抗議する。 (4)非常識な賠償請求する印象を視聴者に与えて交通犯罪被害者の名誉を傷つけたことを抗議する。 ② 要望 これらについて、番組審議会で取り上げられること、書面で謝罪をされること、謝罪訂正報道を求める。 これに対し、フジテレビは、代理人の弁護士を通して、会合で認めた内容を変質させ、最大公約数という謳い文句に反しない、1500万円もありうるなどと回答をしてきました。苦しい弁明としか言いようがなく、理解困難です。 6 東の現在の心境について
東は特に以下の点について憤っています。
① 当たり屋がメインの再現ドラマであることを隠し、趣旨を偽って依頼をしてきたこと ② インタビュー映像が、交通犯罪被害者を誹謗する番組の前ふりに利用されたこと ③ 私が実際に裁判で賠償金の支払を命じる判決を得ていることから、「私もどうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているたぐいであり、その点で当たり屋と似たようなものだ」との誤解を視聴者に与えかねない状況にあること ④ その後の話し合いでも、内々の謝罪文で内密に済ませようとしており、謝罪訂正報道を拒否したこと。 7 犯罪被害者等基本法について
平成16年成立の犯罪被害者等基本法では、全て犯罪被害者等はその尊厳が重んじられ、尊厳にふさわしい処遇を保障される権利があると明記し、国民の責務として、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害することがないよう十分配慮しなければならないと定めています。フジテレビの姿勢は同法を踏みにじるものです。
Ⅲ.フジテレビに求めたいこと
以上より私たちは、フジテレビに対して、まずは放送内容について訂正報道をして欲しいと思います。その上で、きちんと文書で謝罪して欲しいと思います。またこれら訂正報道及び謝罪については、フジテレビのホームページにも掲載して欲しいと思います。
Ⅳ.フジテレビとの交渉の経緯
フジテレビからは、あいの会監修下で、特集番組を作る提案をされ、それで解決として欲しいとの要請もありました。しかし私たちは、訂正報道がなければ視聴者の誤解は解けないし、東の名誉回復もされないと考えました。だから訂正報道をして欲しいと申し入れ、複数回の会合を通じ、特集番組の提案に対しても、その番組冒頭に謝罪訂正報道を入れてみるのはどうかとの妥協案を示すなどして、できるだけ穏便かつ建設的な解決をしようと努力してきました。しかしフジテレビがその妥協案も拒否したため、これ以上の交渉は埒があかないと考え、今回の申立てに至りました。
また、BPOに提出しました書面は以下の2通になります。
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