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ここから見るダウンタウンの高層ビル群が、私にとってのロスアンゼルスだ。殊に
暮れかかる頃に、その思いは強くなる。ガラス張りのビルに夕陽があたり、オレンジ色
に反射する時間帯だ。
それはフリーウエイ10、いわゆるサンタモニカフリーウエイを西から東に向かって、
110番に合流するあたりから、左手に見えてくる景色を目にするごとの感想だった。
なぜか、サンタモニカ、ビバリーヒルズ、ハリウッドなど、数ある名所にいるとき
よりもここを通過する時に、“ロスアンゼルスにいる”という気がしてならない。
自分でも理由ははっきりしない。あるいはここを通る時に一人で運転していることが
多いからなのか、いつしかそう思うようになっていたのだ。
今は疾うに日も暮れ、夜の帳りが下りている。が、やはりダウンタウンの高層ビル達は
寄り添うようにそそり立っている。昼間なら後方にサンガブリエル山脈が遠く連なって
いるのが見えるはずだ。
左前方に見えるビル達が近づくにつれ、私も吸い寄せられるようにレンタカーを左へと
車線変更していく。110番、ハーバーフリーウェイへの合流に備えるためだ。円を描く
ような合流部を過ぎればすぐに、9th、6th、3&4th、とダウンタウンへの出口が
連なっている。9thで下りて直進し、フィゲロア通りを右に曲がって、ピコ通りとの
交差点沿い左角の駐車場に乗り入れる。
午後10時を回ったダウンタウンに人影はまばらだ。が、駐車場と一本路地を隔てたビル
には、時折り出入りする男達が行き交う。車を停めた私も、その古ぼけたビルに向かって
歩き出す。
ガイドブックには“夜間の一人歩きは危険”と書かれているダウンタウンだが、駐車場
にはセキュリティもいてまずは安全なはずだ。とはいってもやはりどこかでいつも緊張を
強いられる。しかし私だけでなく、ここで暮らす人は、多かれ少なかれこうした緊張感を
共有しているはずだった。
フィゲロア通り沿いの歩道には、ヴァンの荷台を改造した移動商店車が一台停まり、ビル
から出てくる男女を相手にジュースやガム、カップラーメンといったスナックを商っている。
ビルの2階から聞こえるラテンミュージックの喧燥は、立ったままカップラーメンを啜る
男達の耳まで届いて来ている。
たむろする男達を後にしてビルに入り、階段を上がっていくと、なお一層大きくなって
床の振動にまでと化した音の洪水が近づいてくる。上がりきると、廊下の正面にクラブ
の入口が見える。手前には、入場料を払わずに中の様子を見ようと首を伸ばす男がいる。
入口に腰を据えるセキュリティに入場料の3ドルを渡す。週末のこの時間だと、いつも
大勢の男達で混み合っている。中に入り、左手のバーカウンターに目をやりながら、
ダンスフロアーのさらに奥にあるトイレに向かう。
Sは何回となく「トイレに行く時にダンスフロアーを見て、何だったら中に入って見てこなくちゃ。
セキュリティがいなければ平気だし」と言ったものだ。Sの忠告に従うわけではないが、トイレへ
の行き帰りにはダンスフロアーが目に入る。しかし、とても彼や他の男達がするように、暗い照明
の中のフロアーにいる男女を観察して、その夜の様子を判断するまでには至らない。第一私には
娘達の顔が良く見えた試しがないのだ。Sの様に毎週来ていれば彼を認めて近寄ってくる娘もいる
のだろうが。
しかし、そう言えば私自身「きのうあなた来てたでしょ?私フロアから見てたんだから」と
いわれた事もあった。だが、そんな時でもやはり、「あ、そう?でも見えなかった」と答える
しかなかった。きのうの時間というのもいわれてみればその位だったし、「白い車でしょ、
駐車場のはじっこに停めた」といわれればその通りだった。
だが、久しぶりに訪れる私に、声をかけて来る娘がいるはずもない。となると、する事と
いえばとりあえず壁にもたれて椅子席とダンスフロアーを行き来する男女を眺めることだった。
週末のこの時間帯だと、めぼしい娘はダンスフロアにいるはずで、そういう娘と踊りたければ
ダンスを終えてチェックアウトするカップルを待って声をかけねばならない。男たちがダンス
フロアを見たがるのも、待ちぼうけを食わないようにお目当ての娘がいるかどうかを確かめる
ためだった。
「Sはいないな」、ひとしきり店を眺め、目が赤く薄暗い照明に慣れると私はひとりごちた。
もっとも彼の事だからここにいなければ他の店にいるに決まっている。Sは少なくとも、
これを5年以上も毎週末続けているのだ、と思った。
つづく
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2番乗りゲッツ!待ちかねていた連載の始まりですね!!本の書き出しに早くも引き込まれております。また毎日が楽しみに♪one wayさんに先越されてちょっと悔しい☆
2005/3/15(火) 午後 10:25 [ mikan ]
☆ONEWAYさん、クイズ2連勝ですよ♪ 蜜柑ちゃんの当てたのも、ONEWAYさんが譲ってくれたようなものよ♡
2005/3/15(火) 午後 11:08
ONEWAYさん、イイ人ですねぇ♪座布団持って遊びに行ってきますぅ!
2005/3/15(火) 午後 11:27 [ mikan ]
3番乗りゲッツ!はじまりましたね。新連載。ワクワクします。 以前歌舞伎町の、サルサバーにいったことあるんですが、コロンビアの方ばかりで、日本人は私を含め2人だけでした。熱い展開期待しておりますです。師匠!
2005/3/16(水) 午前 1:56
4番乗りゲッツ!お〜!!LAナイツ!! 文章上手だねぇ。本当に。 情景が目に浮かんだよ。夕日のLAや、薄暗いクラブ。続きがすっごい楽しみ!!
2005/3/16(水) 午前 6:46
☆ホントに座布団持って行ったのね、一枚しか残ってないのに…♪→蜜柑ちゃん。
2005/3/16(水) 午前 7:31
☆あら。渋いトコ知っとるねぇ〜♡→マサラん。
2005/3/16(水) 午前 7:33
☆誰が○番乗りせよ、言うたん?→ぴ〜ちゃん。
2005/3/16(水) 午前 7:36
なんだか、自分がその街に住んでいるような気がしました。職業は多分、ビルの掃除のおばちゃん。黒人。
2005/3/16(水) 午前 8:45
やばっ、6番目だ!いいなぁーLA・・・なんか本当に小説をよんでるような・・・やっぱり本物の天才はちょこっとづつその天才ぶりを出すのだろうか???
2005/3/16(水) 午前 9:53
今回は初めから読めました。是非現役メジャーリーガーを登場させてくださいまし。出来ればアナハイムのフィンリーとか♪
2005/3/16(水) 午前 10:22 [ - ]
☆え〜、ピンク星人さん出番があるので、掃除夫にならないで…。あ、あった、第48部の第七回−ビロン星人LAを襲う−で、ビロン星人の親友の恋人役にキャスティングしてあります♪→nixeさま。
2005/3/16(水) 午後 0:54
☆あれ、またバレちっち?お姉ちゃんに言っておいてね♪(うん、次回作は町田の美人姉妹と…、妄想ハ枯野ヲメグル)→Sちゃん。
2005/3/16(水) 午後 0:57
☆そう来たか!でも、実はこれ、冷凍食品をレンジで温めて出しているようなものなので、ご希望に添えるかな?→海老さま。
2005/3/16(水) 午後 0:59
これは半分自伝なんでしょう?
2005/3/16(水) 午後 10:54
んー、例えれば、玄奘三蔵がインドにお経をとりに行きました。これは「大唐西域記」などに記録があります。そして孫悟空の「西遊記」、これはこうした事実をもとにした物語。「アメリカで交通事故に!」が「大唐西域記」に近いとすれば、こちらは「西遊記」かな?設定とあらすじは事実をもとにしているけど、孫悟空も沙悟浄も実際の人物じゃない♡
2005/3/16(水) 午後 11:19
にゃ〜ちゃん記事から宣伝をみてやって参りました。やぱりカッコイイが、なんだ西遊記なのか。サンタモニカ、ビバリーヒルズ、ハリウッド・・・だんだん思い出して来た。このUPしたビルの写真は素敵です。ね。
2005/9/4(日) 午後 2:32 [ - ]
☆この写真好きなひと多いナリよ♡
2005/9/5(月) 午前 4:18
私の思い出せるダウンタウンLA=ステープルセンター=しかもフリーウェイから眺めた、だったのでした。この写真、完璧・・・
2007/1/20(土) 午前 7:46 [ onehundredsecond ]
☆もしかしたら早朝のさしんの可能性が…
2007/1/20(土) 午前 10:32