Southern California Journal

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LAラテンナイト

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TVルームの入り口に突っ立っているわけにもいかない。私は、また元の椅子席に戻った。
しかし、今度は余っている椅子はなく、それぞれに客が座っていた。仕方なく、立ったまま
「いたのか」と思った。

それなら、もう少し待ってみようかと思っていると、こちらに近づいてくる男がいる。Sだった。
「やっぱりここにいたね。きのう、ここのコのこといってたから、来てると思ってさ、彼女いた?」
「うん、今、TVルーム見たらいた。いつ来たの?」「さっき。ちょっとダンスラ見てきた。じゃあ、
待つでしょ?適当にやって」といって離れていく。Sにとっては、私が気に入った娘を見つけた
ことも小事件なのか、わざわざ見にきたらしかった。

酒を出さないので、酔ってもいないダンスクラブの客は、30分くらいできりあげていく者が多い。
女性の方も30分が1時間でもチップは倍にはならないからか、それほどしつこく引き止めること
もない。

私がここに来てから、かれこれ20分は経つはずだ。もう少し待てば客は帰るだろうと思ってい
ると、彼女と客が出てきた。チェックアウトではないらしく、ダンスフロアに向かう。時間が来る
前にもうひと踊りするのだろうと思い、チェックインカウンターの近くに移動する。

Sも目ざとくやって来た。「彼女がそう?ああいうのがいいの?何か”猿の惑星”みたいだね」
という。私の目には情熱的な美人でも、Sには猿人に近く見えるらしい。「彼女は南米だね。
ベネズエラとかエル・サルバドーとかじゃないかな、聞いてみて」とアメリカ風にエルサルバド
ルを発音する。

やはり最後のダンスだったようで、ダンスフロアから出てきた二人はチェックアウトしにやって
来る。別の客が待っていれば、同じように周りにいるはずだ。そうなるとまだ面識のない私は、
後回しにされてしまう。その呼吸を飲み込んでいるSは、チェックアウト中に声をかけろと言う
が、私はなぜか無作法な気がしてできない。しかし、幸い他の客はいない様子で、私は待機
席に帰ろうとする彼女に、声をかけた。

「OK」と、呼びかけに答えた彼女は、またボードを返しに行く。「Would you like to dance with
me?」という私の呼びかけを聞いていたSは、「そんなに丁寧に誘うの?」と茶々を入れてくる。

「どうするの?踊る、それとも座る?」という彼女に「とりあえず座ろう」と促して、ダンスフロア
の手前にある椅子席に座る。しばらく話してわかったことは、彼女の名はエリザベスで、生ま
れたのはSの言うように南米で、エクアドルだった。間近で見る彼女は、気が強そうにみえる。
Sの"猿の惑星"というのも、いい得て妙だった。厚い唇とやや大きい鼻がそういう印象を与え
るのか。

少し話したあと、フロアに誘って踊ってみる。スローな曲では手慣れた感じで背中に触れる手
の動きは、Dance Landの娘達にはないものだった。しかし、話した印象は悪くない。といっても、
打ち解けてくれたわけでもない。壁のようなものがあり、自分を護っていると感じた。しかしそれ
は当然だ。彼女にとって、私は外人で初対面で、しかも、こういう店に出入りする男だった。逆
に、以前に踊ったアメリカ娘のように、自分の私生活を問われ語りする方が不思議だった。

1時間ほどいた私は、チェックアウトしながら「明日は来るの?」と彼女に聞いてみた。「Maybe」
というのが答えだった。Sはいつのまにかいなくなっていた。

この夜、彼女が問われて語ったのは、ほとんどが嘘、つまり偽のプロフィールだった。だが、私に
それがわかるのは、この年が明けるまで待たねばならないのだが。

第一部 完。

ダンスクラブとは? http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/646256.html
第一回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/562436.html
第二回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/596944.html
第三回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/624251.html
第四回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/673517.html
第五回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/700349.html
第六回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/716854.html
第七回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/747232.html
第八回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/768570.html
第九回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/795928.html
第10回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/822875.html
第11回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/852422.html
第12回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/903113.html
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第17回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/1199647.html
第18回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/1238225.html

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Flamingoの駐車場は、ビルのすぐ裏手にある。2階に上がり、ここではガードではなく、
チェックインカウンターで入場料を払う。Dance Landより小ぢんまりとした店内は、それ
に合わせて控えめの音量で音楽が流れている。私は、バーカウンターでコーヒーを買い、
客用の椅子に座った。

昨夜見た黒いワンピースの女性は、見える範囲にはいないようだ。ダンスフロアかTV
ルームにいるのか、休みなのか、それともSのいうように辞めてしまったのか、皆目見
当がつかない。

Dance Landにいるのは、女性も客もラティーノ、それもメキシカンばかりなので、ある種の
統一感がある。しかし、ここではバラバラだ。Flamingoの女性用待機席は、客用の座席と
対峙して置かれている。したがって女性たちの表情も、こちらの方が見やすい。黒人・ア
ジアン・白人系そして同じラティーナでもメキシコ系だけではなく、バラエティに富んでいる。

私は、10分ばかりそうして場内にいる男女を観察しただろうか。Sなら「ダンスフロアとか
ソファの方見た?いないんだったら時間の無駄だから見てくれば」と言うに決まっていた。
Sはチップの店にはあまり来ない。そのうえ、「Flamingoにいるのはタチが悪い」と言って
いたので、ここにいるはずもなかったが。

そのうち私も、ただ座っているのにも飽きてきた。もう少しいるか、出てしまおうかと考えた
が、少し店内をうろつく事にした。Flamingoのダンスフロアの照明は暗く、奥の方は柱もあ
って死角になっている。それでも、通路に面している2面は覗いてみることができる。TVル
ームも、入口から全体を見渡せる造りにはなっている。とりあえずこうした場所を見てみよう、
と思ったのだ。

まず、ダンスフロアを見る。女性用待機席の奥はカップル席になっていて、そのまた背後
にダンスフロアがある。正面はさきほど来、コーヒーを啜りながら見ていたので、側面の通
路に廻る。左側にはトイレ、右にDJブースがあり、ダンスフロアが見える。Flamingoのフロ
アは圧倒的に暗く、それは多分客が踊りながら女性を触るのに都合がいいのだろう。ここ
もSに好かれず、客の年齢層が高くなる一因なのかもしれない。ダンスをすれば体の接触
は少なからず生じる。それも料金のうち、という所なのか。暗いのでよくは見えないのだが、
彼女はいないようだ。TVルームを見ることにする。通路を少し客席側へ戻るとバーカウンタ
ーがあり、それに面してTVルームの入口がある。入口から見て、手前に置かれたテレビに
向かい10席ほど置かれたソファは、ほぼ満杯だ。

彼女はいた。左手中ほどのソファに、同じような黒いワンピースを着て、中年の白人男と座
っていた。前の小さなテーブルには、紙コップが二つ置いてある。昨夜は一瞬見ただけだっ
たので、あらためて見ると印象が違うかな、とも思っていたが、変わらなかった。やや長身で、
スリムな肢体。そして印象的な黒く大きな瞳と、厚手の唇。

つづく

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第一回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/562436.html
第二回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/596944.html
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ホテルに戻ってみると、Sはいないようだった。受付の女の子が、私を覚えていて、
「Sはいないわよ」と教えてくれる。まだ夕方だったが、運転に疲れたようだったので、
部屋に戻って少し寝る事にする。

目が覚めるともう7時過ぎだ。シャワーを浴び、火照った体を冷やすため、テレビを点
けて椅子に座る。7時のニュースを引き続きやっているようだ。どうやら、昼間にカー
チェイスがあったらしく、そのダイジェスト録画を各局ともしきりと流している。

南カリフォルニアでテレビを見ていると、カーチェイスの実況中継が入って来ることが
ある。警察に追われた犯人が、自らのあるいは強奪した車で逃げる様子を、ヘリコプ
ターから撮影する映像を流す。ほとんどが自分も車で行ったことのある場所を走るの
で、不謹慎だが面白い。ガソリンが満タンでも、せいぜい持って5時間。犯人が逃げ
きれる可能性は、まずない。カーチェイス中継は、車社会である南カリフォルニアを象
徴するにふさわしいプログラムだろう。

昼過ぎに寿司を食べたきりだったので、まず何か食べようと思う。が、一人だと選択肢
は限られてしまう。それではローストダックにでも行くか、とダウンタウンのチャイナタウ
ンに行くことにする。三和という、その店はチャイナタウンのメインストリートであるブロー
ドウェイの中ほどにある。なぜか一人でも落ち着け、高価でもないので以前から贔屓に
していた店だ。店内の客は、週末ともあって家族連れが多い。チャイニーズブロッコリー
のソテーとローストダックライスを注文する。他にも、ローストダックチャオメン(焼きそば)、
ローストダックローメン(つけ麺様のもの)などのバラエティーがある。

ここのウェイトレスの一人は、無愛想で化粧もしていないのだが、なぜか色っぽい。ある
いは、体にフィットしたチャイナドレスがそう思わせるのだろうか。ある日、髪を切った彼
女に、「髪切ったね、いいじゃん」と言ってみた。すると、無愛想な表情に変化はないのだ
が、それでも「ありがとう」と答えてくれるのが面白かった。

食べ終えると、料金とチップを合計した金額を置いて外に出る。ダウンタウンはもうすっか
り暗くなっていた。シャッターを閉じた宝飾店の前には、いつものように警備員がいる。

このまま南に向かえば、ダンスクラブが連なる場所になる。ロスアンゼルスでは東西南北
を良く使う。広い、ということもその一因だろう。しかし、例えば東京で、ずーっと南に行こう
と思っても道は曲がりくねっていて方向感覚が狂わされる。ここでは、フリーウェイもノース
やサウスという名称がついているので、自分が向かっているのは西だとか南だということを、
常に意識することになる。

9時過ぎを指す時計を確かめ、南に向かう。フィゲロアよりも一本東のフラワー通りを進み、
Flamingoの駐車場に車をいれる。最初からFlamingoを目的とするのは、これが初めてだ。

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第一回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/562436.html
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SもO君も日本に住みつきたくない、という点では同じなのかと私は405、サンディエゴ
フリーウェイを走りながら思った。Beach Sushiを後にし、近くの古本屋などを覗いてから、
ロスアンゼルスへ帰る途上だ。コスタメサ近辺では、最大片側8車線にもなる広いフリー
ウェイも、朝夕にはひどく混む。1時間のロスアンゼルス行きが、2〜3時間かかることも
珍しくない。

夕方も近づいて渋滞がはじまりつつあるフリーウェイの上で、私はオレンジ郡の日本人社
会が形成する世間を思った。私がいた頃は学生であり、日本人社会とのつきあいもなかっ
た。ゆえに全く感じていなかったのだが、ゲンちゃんの話を聞いていると、そこには紛れもな
く、世間があるようだった。

Sには仕事を除くと、日本人とのつきあいはほとんどないようだった。「アメリカ人は人の
こと気にしないから。まあ少しは気にしてるのかもしれないけど、日本ほどじゃないね」と
言った事があった。Sがなぜ高校からこちらに来たのか、本人もはっきり説明できなかっ
た。が、アメリカの魅力・吸引力といった表の理由のほかに、どこかで世間にうまく適応
できないことを本人が予感していたのではないか。

Sの学生時代の友人のチャイニーズと、パサデナで食事をしたことがある。そのとき彼らは、
私たちが日本語で話したことに驚いていた。「Sとは10年来のつきあいだけど、日本語しゃ
べれるの知らなかったよ」と、言ったものだ。

しかし、Sにしても英語が完全とはいえない。これは自身ある程度英語ができるようになっ
てから分かったのだが、例え古典を縦横に読むことができるようになったとしても、日本で
いえば紅白歌合戦を見たり、モー娘。のモノマネをした子供時代がなければ、現地の人に
較べて遜色のない会話力は望めない。かえって難しいのは、そういった経験をもとにした、
日常のたあいもない会話だ。それには生活の蓄積がなければ得られない、細々とした雑多
な知識が必要になるからだ。

ゲンちゃんやO君、あるいはラティーノやコリアンタウンの人たちのように、同胞とのつきあい
で終始するアメリカ生活であるなら英語の苦労も希薄かもしれない。しかし、それに代わる、
それぞれの小世間と向き合わねばならないことだろう。

Sは意識的にそうした関わりを拒否しているようであり、それゆえ毎日が、多分今でも無意識
の緊張の連続である事は想像に難くない。彼にとっては、世間と馴れあいでつきあうよりは、
緊張や衝突の方が、まだましなのだろう。

ただ、アメリカ人として生きるのならば、日本とは違うアメリカの世間があるはずだ。O君の
学生生活にも、いつか終わりが来るように、Sの生き方も、いずれある選択を迫られるはず
だった。

そこまで考えた私は、果たして自分自身が日本の世間にどっぷりと浸かって生きていく覚悟
ができているのか、と考えざるを得なかった。一年足らずのここでの生活が、より長い日本で
の生活より印象深く思えるのは、自分も同類だからじゃないのか。あるいは、O君やSやゲン
ちゃんの立場をうまくカテゴライズすることによって、自分をも相対化しているのか、と思った。

つづく

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第一回 http://blogs.yahoo.co.jp/keiji44/562436.html
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O君も変わった男だった。10代や20代前半の生徒が多いESLでは珍しく、20代後半
だったのもそうだが、とくにESLを渡り歩いているというのが変わっていた。

ESLに入学すると、学生ビザがもらえる。今は厳しいビザの取得だが、すこし前なら
ESLでも5年滞在可のビザがでた。しかし、ESLは、本来、大学入学のための英語力
養成のカリキュラムなので、まともに進めば一年足らずで修了する。

しかし、O君は、ひとつのESLが終わりに近づくと、次の学校に移るというのだ。しかも、
それを繰り返してもう3年以上になるという。もちろん、ESL修了程度の力はとうについ
ている。しかも、ただアメリカにいるだけならば、違法かもしれないが学校に通う必要は
ない。ある時私は、なぜそんな事をするのかO君に聞いてみた。「O君、もうESL飽きて
るでしょ?学校行く必要ないんじゃないの」、するとO君は、「学校行ってないとね、日本
に帰れないんだよね」という。

留学期間中に一時帰国をする場合、アメリカ再入国の際に学校で発行する書面がな
いと、ビザが無効になる。アメリカにいながら時々日本に帰るには、学生であり続けね
ばならない。カリキュラムによっても違うが、1年4学期なら、そのうち1学期を休むのは
学校も認めてくれる。

休暇を利用しては日本に帰り、要るものを買い、「パチンコしたりしたいんだよね」という
のが理由だった。O君は日本に帰る気はさらさらないのだが、アメリカが好きなわけでも
ない。とりあえず漂泊できる間はしていたい、というのが本音らしかった。

さすがのO君も、私が帰国する頃にはESL通いは飽きたとみえて、ヘリコプターの学校を
見つけて通っていた。そして、その後ハワイの飛行機学校に移るため、家を処分したとい
う事だった。ゲンちゃんが参った、というのはそのときのいきさつだった。

「Oがさ、いきなり家売るっていうから困ったわ」「そんなに急だったんですか?」「そうよ。
知り合いがハワイにいるから行って来るっていってたんだけど、そこの学校がすごい気
に入ったらしくてさ」「へー」「すぐに手続きして、そのまんま日本に帰って親に報告してさ」
「ええ」「こっち帰って来たら『家売れちゃうんで、2〜3週間で出てください』だもんなー。
俺、アパート見つけんの大変だったわ」と思い出しつつ、めずらしく真顔で語った。

やはり、アメリカの日本人社会は広いようでも狭い。特にゲンちゃんのように英語に不自
由があれば、日本人同士の交際が多くなる。何かあったときに頼れるのも、結局は日本
人だ。それだけに、少しくらい気が合わない人がいても、如才なくつきあって行かねばな
らないこともあるだろう。日本にいればすれ違うことすらないだろう、さまざまな地方の色
々な環境から来た世代たち。そうした人々と鼻突きあわせて生きていくのが、海外の日本
人社会の現実かもしれない。

そんな中で、年が近くて親しいといえる関係が、何年も続くのは実は貴重だ。学生や駐在員
は、数年で滞在をきりあげてしまう。長くつきあえる同世代というのは数少ない。O君とのつき
あいを考え、ましてゲンちゃんの性格からすれば、少しくらい迷惑をかけられた事があったとし
ても、泊めてくれと言われれば快く承知しただろうことは、よく理解できた。

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