エッセイ集 小鹿桂司作品集

NHK文化センター名古屋 エッセイ入門「オアシス」に収載されてtます。愛知県図書館名古屋市立図書館に収蔵されています。

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うろこ雲とブランコ

 
 
 
私は名古屋市立工業高校を卒業している。
機械科が四クラス、電気科が三クラス、自動車科が一クラス、工業化学科が二クラス。私は工業化学科に入学し、卒業した
男ばかりの学校であるが、工業化学科には毎年四人〜五人の女子生徒が入学していた。
全学年に人気があったかわいい妹のような美少女、剣道二段の先輩女剣士、中川区に学校があるのにわざわざ千種区から通って来ていた美少女。
二年生になり私がクラスの室長に指名され、合わせて生徒会の副会長にも立候補させられ、当選して忙しくなると、初恋のジュンちゃんとの付き合いが自然に遠ざかって行った。
私は工業化学科の女子生徒、同級生ばかりでなく、先輩、後輩の女子生徒の面倒も見ることになった。教員、生徒会との連絡係である。これは工業化学科から選出される生徒会副会長の義務になる、という伝統があった。
同級生にはOMさん、KKさん、TYさん、NKさんの四人がいた。四人とも可愛かった。現代のいわゆる「キャピキャピギャル」とは縁遠い、まじめな女子高生であった。とても扱いやすかった。だが今とは違って、スカートの丈もひざ下までだったことはちょっぴり、いや、随分残念に思う。
私はNさんとKさんには特に関心があった。Nさんは色白でほっそりとしたスタイルで、茶色がかった長い髪が魅力的だった。麻丘めぐみを思い起こさせた。まるで江戸時代の御姫様のようなそそとした雰囲気をもっていた。とても工業高校の生徒には見えない上品な美少女であった。彼女とは一年、二年と同じクラスであった。あまり勉強はできなかったが、休むことなく出席して来ていた。彼女は千種区の鍋屋上野から通学していた。
Kさんとは一度も同じクラスになったことがなく、直接会話することはほとんどなかった。彼女は昭和橋中学校を卒業して入学してきた。学校にも近く徒歩で十五分ほどの市営住宅から通っていた。中上さんとは違って、可憐な、世間知らずの妹のような感じがした。女優の中谷美紀を見ると彼女を思い出す。彼女は特に後輩からモテたようだった。三年生の時、一年生から告白されているのを私は目撃したことがある。彼女も髪が長く艶々していた。Nさんとは違って、真黒な髪で、前髪の隙間から見えるおでこがかわいい女の子であった。
三年生の秋、文化祭の終わった後、校庭でキャンプファイヤを囲んでフォークダンスが開かれた。男子生徒が九十九%占める学校だが、姉妹校の商業高校や普通科高校からも女子高生が来ており、ちょうどいい組み合わせになっていた。私は普段フォークダンスをすることなど絶対にない、同級生のOMさん、KKさん、TYさん、NKさんと代わる代わるペアを組み、楽しく過ごすことができ、高校三年最後の文化祭を有意義に過ごせた。主催者側としても大成功で大変満足した。
それからしばらくして十月の中頃、突然OMさんから私の自宅に電話があった。男子同級生とは何度も電話しあったことはあったが、数少ない女子生徒から電話が入ったのは初めてだった。
私は何か揉め事でもあったのかと思い、
「どうした?なんか揉め事?」といきなりの電話に驚き聞いてしまった。
「ちがうの。O君、今、誰かと付き合ってる?」
「へええ?」と素っ頓狂な声を上げてしまった。
「だって、一年生の時、中学の同級生の女の子、ジュンちゃんだっけ、文化祭に連れて来てたから」
「い、いやあ、今は音沙汰ないねぇ」
「それじゃあねえ、KKさん、わかるでしょ。彼女がねえ、O君と付き合いたいんだって」
「えっ、KKさん?」私はすぐに亀井さんの顔が浮かばなかった。
「だって、いや、あの、KKさんと同じクラスになったことがないから」しどろもどろになって、どう返事をしたらいいか分からなくなっていた。
「とりあえず、明日放課後に会わせるから」
OMさんは半分笑いながら電話を切った。
次の日、半信半疑であった私の目の前に、顔を真っ赤にしたKKさんが、OMさんに連れられて女子更衣室から出てきた。私は以外にも落ち着いていて、KKさんの真っ赤な顔をまともに見ることができた。変に緊張もしなかったし、照れくさい感情も湧かず、ごく自然に対面した。
すぐにOMさんは更衣室に帰ってしまい、私とKKさんは二人だけになった。教室とは離れた別の棟の二階にある女子更衣室は、男子禁制であるし、何となく人目につくのが恥ずかしいのか、彼女はいきなり私の手を取ると、階段の方へ引きよせ、ぺたりと階段に座り込んで、私を背にして
「ご、ごめんなさい。私でいいかしら」
「なんか、ドラマみたいだねぇ。僕でよければ卒業してからも付き合おうよ」と妙に冷静に返事をした。
ちょうど、夕暮れで空にはうろこ雲が夕日を浴びて赤く染まっていた。
そのあと二人で学校のすぐ近くにある公園のブランコに乗りながら、取り留めもない話をして過ごした。
彼女は卒業して、日本〇〇〇に入社した。
私は大学入試に失敗し、YMCA予備校に入学し暗く辛い浪人生活を迎えた。
その後の二人がどうなったか、これはご想像にお任せする。
 
 
 
 

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