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  2020年の夏季オリンピック開催地が東京に決定してしまった。
  どうにもこうにもスッキリしない。

  まだ福島第一原発事故が収束の気配も見せない中で、数千億円を注ぎ込んでオリンピックを招致する必要があったのかどうか。
  いまだに、仮設住宅で生活している被災者や、避難生活を強いられている人の合計は28万人を超えており、復興や被災者の生活の先行きが不透明な中で、被災地と被災者を置き去りにしている印象は拭えない。
  復興中の被災地の人たちを勇気づけるためのオリンピックではなく、被災地が復興してから被災地でオリンピックを開催すればいいだけ。

  IOC総会で開催地が決定するまでのここ数日の招致活動関係者の発言も酷いものだった。

  「東京は福島から250km離れているから安全」って、福島は危険だけど東京は大丈夫と言ってるようなもの。東京さえよければ、他の地域はどうでもいいのかと言われても言い訳のしょうがない発言だと思う。

  ちなみに、島国で狭い日本の250kmは遠いのかもしれないけど、たとえばここテキサスでの250kmは、この街からどこへ向かってもテキサス州から出ることもできない。早い話が、全然遠くないってこと。

  そして、どうにもこうにも納得いかなかったのが、最後のプレゼンテーションで安倍首相が行った汚染水漏れの問題に対する発言。

「状況はコントロールされている。決して東京にダメージを与えることを許さない」
「汚染水の影響は原発の港湾内の0・3平方キロメートル範囲内で、完全にブロックされている」
「健康問題については今までも現在も将来も全く問題ない」

  科学誌ネイチャーや海外メディアを含め、福島第一原発事故の現状がコントロールされているとは認識していない。むしろ、現状を認めようとせず、過小評価して情報を矮小、小出しにする日本政府と東電の体質を厳しく指摘する論調が目立つほど。コントロール不能になっていて、政府も東電も福島第一原発でなにが起こっているのか把握できていないとみてる。

  これからどれだけの汚染水が漏洩するのか見通しも立たない中で、東京のダメージを語ることはできないし、ましてや原発の港湾内0.3km範囲内でブロックすることなんでできない。海に漏れ出た水を、どうやって海中でブロックしているというのか、技術的な説明はまったくなされていない。

  健康問題についても、今なにが起こっているのかもこれからどうなるかもわからないのに全く問題ないと言い切るのはあまりにもいい加減すぎる。深読みすれば、これは今後7年間東京でどんな健康問題が発生しても、すべて原発由来とは認めないという宣言のようにもとれる。

  IOC委員の投票で決まるため、各委員に科学的知見がないと、一国の首相がプレゼンテーションで語る言葉は事実と同じだけの重さがあるんだろうと思う。たとえそれが国内向けには一度も語られたことがない、根拠を伴わない大嘘だとしても。

  そんなものが決め手になったと言われている開催地決定を、どうして素直に喜べるのか僕には全く理解できない。
  「原発も汚染水もまったく手に負えないし、今後どうなるかわからないけど、世界の技術と知恵を結集して7年間でできるだけ収束させるから、それを見込んで東京で開催させて」くらいだったらもうちょっと納得もできたかもしれないけど。

  正々堂々やフェアな精神、良心や倫理、モラルという人が生きていくうえでもっとも大切なものを捨てて、嘘をついて勝ちとった2020年東京オリンピック。

  そこにどんな夢や希望を見出し、勇気をもらえるというんだろうか。

  僕にとって、今日は世界が良心を失った悲しい日になってしまった。

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