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  異常気象も世界各地で顕著になり、先進国でもようやく少しだけ身近な問題として捉えられるようになってきた気候変動問題ですが、とっくの昔から遠い未来ではなく、今の世代の切実な問題として真剣に取り組んできた国々があります。

  南太平洋に浮かぶ島しょ国たち。
  千年単位の歴史を持ち、周りを海に囲まれた、小さな島が集まってできた国々にとって、気候変動問題は次世代とか来世紀とか悠長なことを言っていられない「危機」なんです。
  南太平洋の島しょ国の多くは、島の最も高い場所で海抜数メートル。ツバルやマーシャル諸島などは、海抜1メートルから2メートルしかありません。
  そんな島々が連なる南太平洋では、気候変動による海面上昇は、住む場所と一緒に民族の歴史や文化を奪うかもしれない問題なのです。

  9月中に発表される、国連の気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の第5次報告書の中では、海面は2100年までに最大0.9メートル上昇する可能性が示唆されています。でも、気候科学者たちはこの数字を「甘く見積もりすぎ」と批判しており、米海洋大気庁(NOAA)が設置した専門家による検討委員会は、最悪の場合、2100年までに最大で海面が2メートル上昇する可能性があると発表しました。

  南太平洋諸島やインド洋に浮かぶモルディブなど、海抜が低い島を抱えている島しょ国にとって、90センチ、2メートルという数字は、国と文化の消滅を意味することになるんです。

  それらの国々の温室効果ガス排出量なんて、先進国と比較したら微々たるもの。ないも同然です。それなのに、彼らは最初に気候変動の影響を最も受ける国々になってしまう可能性がかなり高いんです。

  なにもしていないというのに。僕たち先進国の大量消費社会のせいで、人口数万人の島しょ国が先祖代々千年単位で受け継いできた土地を離れ、見知らぬ場所で暮らさなければいけないことになるかもしれないのです。

  そんな太平洋の国々のリーダーたちが、今月(2013年9月)太平洋諸島フォーラムを開催し、気候変動問題への取り組みに並々ならぬ決意を表明しました。

  4日間の会議で彼らは、気候変動問題解決への太平洋諸国の今後の具体的な取り組みを明記した「マジュロ宣言」を採択しました。

  たった今から、国だけに限らず、個人レベルからできることをやって気候変動問題解決に向け、先進国をリーダーとしてついていくのではなく、太平洋諸国が世界のリーダーとなり、先進国がそのあとを追うように、まずは自分たちが行動を起こすんだという、これまでの発展途上国には見られなかった動きを見せてくれました。

  マーシャル諸島で暮らすキャシーさんは、もしもマーシャル人がマーシャル諸島を離れることになるとすれば、それはただ土地をなくすだけではなく、マーシャル人としてのアイデンティティーと文化も一緒に失ってしまうと語っています。
  そして、それを理由として、マーシャル諸島には急に海面が上昇した場合の避難計画がないそうです。

  キャシーさんはこうも語りました。
「敗北を認めることになるから逃げない。私たちは、この島々なしでは存在し得ないんです」

  同じ南太平洋に浮かぶ島しょ国、ツバルの人が「この島は遠い昔、私たちの先祖に神様が与えてくださったのだから、もしも島が沈むのだとすればそれも神様の思し召し。わたしは、島と一緒に沈むことを選びます」と話していたことを思い出します。

  マジュロ宣言は、今月中に国連事務総長の潘基文氏の元に届けられます。

  完全に停滞している気候変動対策への世界的な取り組みへの流れを、マジュロ宣言で一気に変えることができれば、という太平洋諸国の想いが届いてほしいと願わずにはいられません。

【参照】
Majuro Declaration for Climate Leadership (マジュロ宣言/PDF)

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