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2010年に発生したムラピ山噴火災害からもうすぐ1年が経とうとしている。
先月、10か月ぶりに被災地域を訪れた。
9月22日
ここは昨年12月にも訪れており、2度目の訪問となった。昨年訪れた際には、まだ被災後3カ月で
既に観光地と化しており、その迅速さにはなんとも複雑な心境になったのを覚えている。
(例えば東日本大震災の被災地が被災3カ月で観光客であふれかえるという状況は
日本では考えにくい)
現在は着々と(??)観光開発が進み、入域料金・駐車料・バイクタクシーの金額も明瞭会計となっていた。また、昨年はそのままにされていた被災家屋も、解体されて、以前の村の様子や被災後の状況を伝えるミニ資料館や安宿に変わっており、溶けたヘルメットや焼けたコーランなども「売り物」になって
いた。
ではもともと住んでいた住民たちはどこにいったのか。
現在、この村は政府より居住が禁止されているため、人々はその村から数キロ離れた仮設住宅に
入居してるとのことであった。
9月25日
ひょんなことからしりあったAさん(彼女自身も被災し2カ月の避難所生活を送った。現在はもとの
家に戻り、屋台を経営してる)の案内で仮設住宅の集まる地域を訪れる。
そこで暮らすAさんの親戚の家を訪れ、その家の主人Sさん(61)にお話しをうかがう。
Sさんは妻(45)と長男(23)長女(16)とともに仮設住宅に暮らす。
Sさんは前述のM老人とは親戚関係にあり、被災前は同じ村に住んでいて日々交流があったそうだ。
火砕流に襲われた時は、夜道を妻と子供とともに5km駆け下りたそうだ。(その火砕流で村人が37人
犠牲となった)その後2カ月避難所で暮らし、6か月前にこの場所に移ってきた。
現在の仮設住宅は政府の援助で造られ6m×6mの風呂トイレ付きである。共同井戸やモスクも
政府の援助で建てられており、質素ながらも最低限のものはそろっているとの印象を受けた。
また生計支援に関しても、Sさんは被災前に牛を数頭飼っており、それも現物支給という形で
政府から補償された。また、各世帯にナマズの養殖池とナマズの稚魚50キロが与えられている。
生活物資に関しては、被災直後は余るほどたくさんの援助物資があったが、今は1カ月に1度
生活必需品の支給があるのみである。
これは私見であるが、1)コミュニティの形を維持したままでの仮設住宅の建設、2)その後の生活維持
まで配慮した支援の実施、など政府の今回の対応はある程度評価できるものであると感じた。
無論、被災者からは「政府が関与すると汚職によって中抜きが行われ、私たちの手元に届く時には
援助の額が半減している」との、今やインドネシア人の口癖になりつつある非難の声も聞かれたが。。
しかし、被災者や行政関係者にとって本当に難しいのはこれからだろう。
今回の災害は、1)2004年のスマトラ沖大地震に始まる災害対応の経験がインドネシア国内
(政府・NGO・市民・企業etc)に蓄積されてきた,2)災害の起こった地域がジャワのジョグジャ
カルタということもあり国内的な知名度が高かった、3)地方政府(ジョグジャカルタ特別州)自体は
官庁等に被害がなく、機能しやすかった、など理由により緊急支援期、およびその後の復旧期
にはかなりの援助が行われた。
しかし、ここからどう被災者・被災地域を復興させていくのか、という問題は対処治療的な対応では
なく、明確なビジョンが必要となってくる。
現在Sさん達が住んでいる仮設住宅は2年の期限付きであり、その後は解体される予定。
政府は別の土地を購入してそこにレンガ造りの家を建造し、復興住宅地とする計画をたてている。
しかし、そこに入居するためには1世帯30,000,000rp(約30万円)支払う必要があり、どれだけの
被災者がそのお金を用意できるかは不明瞭だ。
また、S老人の「以前の土地には畑もあったし、森もあった。食べるものには苦労せず、村は豊か
だった。」という言葉に象徴されるように、村の人々の暮らしは住宅さえあれば食っていけるものでは
ない。
「次の災害に備えつつも、住みやすいコミュニティの再建の目指す」
今、東北が直面している問題に、ここジョグジャの被災者・行政も対峙している。
写真1
SさんのすんでいたK村に向かう道沿いにある看板。「あなたは今から危険な地域に立ち入ります」
というなんとも直接的なメッセージ
写真2
売られている遺品
写真3
Sさんが住む仮設住宅
写真4
Sさんと仮設住宅の前で。Sさんの「村は豊かであった。」という言葉が今も忘れられない。
写真5、6
火口から18km離れているにも関わらず火砕流が到達し、64人の死者を出した村。現在は排出された
砂を採りに来る人たちで賑わっている。案内してくれたAさんも叔母一家をこの地で亡くしており、写真
の家はその叔母の家である。合掌後、Aさんの許可を得て撮影。
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