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 評価:85点/作者:佐藤優/ジャンル:政治・思想/出版:2006年


 『自壊する帝国』は、日本の元外務省職員、佐藤優氏のドキュメンタリイー小説である。

 本作は、『国家の罠〜外務省のラスプーチンと呼ばれて』に続く、佐藤優氏の二作目の著書であるが、二作目とは思えないほど、文章力に優れており、その場の光景が、ありありと脳裏に浮かんでくる。

 並みの小説家以上に、作品の世界に引き込まれてしまう。

 本書は、1991年の「ソ連崩壊」という、世界史上に残る、衝撃的な事件の最中に、主な舞台のモスクワに駐在していた、外務省職員が、その目で見、その耳で聞いた、生の現実を綴った、ドキュメンタリー及び、ノンフィクション作品である。

 タイトルの『自壊する帝国』の「帝国」とは、無論、ソ連帝国のことであり、ソ連は、他国との戦争に敗れた結果、崩壊したのではなく、文字通り、内側から「自壊」したことを表している。

 ソ連崩壊に、『自壊する帝国』ほど、相応しいタイトルはあるまい。

 本書は、佐藤優氏が、1985年に外務省に入省してから、1991年にソ連が崩壊するまでの六年間を中心に描いた作品である。

 1985年は、ゴルバチョフが書記長に就任した年であり、彼のペレストロイカによって、時代は、まさにソビエト帝国の崩壊に向けて、動き出した年であった。

 佐藤優氏は、英国陸軍語学学校で、ロシア語を学んだ後、1987年にモスクワに赴任する。そして、1995年に帰国するまでの七年八ヶ月間を、モスクワで過ごした。

 本書は、基本的に、1991年のソ連崩壊前後のモスクワ及び、バルト三国の様子を描いているが、話の途中で、登場人物のその後、即ち、ソ連崩壊後の様子も描いているために、話が飛んで、何年の話をしているのか、わからなくなることがある。

 幸い、刊頭にソ連崩壊前後の年表が掲載されているので、参照しながら読むことをオススメする。

 佐藤優氏は、プロテスタントで、同志社大学大学院神学研究科を修了しているために、神学に関する知識が豊富である。

 実際、彼は、外交官になりたくて、外務省に入省したのではなく、チェコスロバキアの神学について学ぶため、あくまで、アカデミズムのために外務省に入省した。

 しかし、希望は叶えられず、語学研修は、チェコ語ではなく、ロシア語になり、赴任先も、チェコスロバキアではなく、ソ連になった。

 佐藤氏は、モスクワに赴任した後、モスクワ国立大学に入学する。そこで、彼は、本書の主要登場人物である、サーシャと出会う。

 そして、サーシャを通じて、佐藤氏は、様々な人物と知り合い、最収的には、ソ連の改革派・守旧派の双方に人脈を広げる。

 佐藤氏は、改革派・守旧派の主要な人物達と出会うが、本書に登場する、生の彼等は、単に学術書に名前だけ登場する、無機質な人物とは異なり、実に魅力的である。

 佐藤氏は、彼等を通じて、日本人の誰よりも、ソ連の政局の正確な情報を得るのである。

 本書は、2008年に文庫版が出版されたが、80頁近く増補されている。増補部分を読むと、思想的背景が深まるので、是非、文庫版の方をオススメしたい。



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