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No.810【酔って候】

 評価:65点/作者:司馬遼太郎/ジャンル:歴史小説/出版:1965年


 『酔って候』は、1965年に文藝春秋新社から刊行された、司馬遼太郎氏の短編集である。

 表題の「酔って候」、「きつね馬」「伊達の黒船」「肥前の妖怪」の四作品が収録されている。

 「酔って候」の主人公は、山内容堂、「きつね馬」は、島津久光、「伊達の黒船」は、伊達宗城、「肥前の妖怪」は、鍋島閑叟で、何れも、幕末の雄藩の藩主である。

 幕末の四賢侯と言えば、越前福井藩の松平春獄、薩摩藩の島津斉彬、土佐藩の山内容堂伊予宇和島藩の伊達宗城で、薩摩藩は、島津斉彬の死後は、弟の久光が、四賢侯の一人に数えられる場合が多い。

 本作は、四賢侯の内、山内容堂、島津久光、伊達宗城の三人を、主人公としているが、四人目は、松平春獄ではなく、鍋島閑叟を主人公としている。

 本作は、文庫版で、全318頁あるが、表題作の「酔って候」は、三分の一以上の136頁を使い、土佐藩主の山内容堂の生涯を描いている。

 容堂は、山内宗家の生まれではなく、分家の生まれで、宗家の相次ぐ早世により、唐突に、土佐二十四万石の藩主の座に就いた。

 正直、筆者は、山内容堂という人物を、評価していない。

 信長に憧れ、「一橋卿の英明、越前侯の誠実、それに、わが果断。これをもって、天下の大事を断ずべし」と豪語するが、本文の最後に「容堂は、暴虎のごとく幕末の時勢の中で荒れまわったが、それは佐幕にも役だたず、討幕にも役だたなかった。」と記されている通り、実際は、何もしていない。

 容堂の生涯の中で、唯一の見せ場は、王政復古後の小御所会議の発言であろう。

 容堂は、出席者の中で、唯一、徳川慶喜と徳川宗家を弁護し、薩摩藩の陰謀を阻止しようとした。

 しかし、最終的には、岩倉と西郷、大久保に敗北している。

 二作目の「きつね馬」は、62頁を使って、薩摩の島津久光の生涯を描いている。

 実は、勘違いしている人も多いが、久光は、薩摩藩主ではない。

 兄の島津斉彬の死後、藩主の座を継承したのは、久光の息子の茂久で、久光は、藩主の父に過ぎない。

 本作では、久光を、権勢欲が強いだけの英明とは言い難い人物として描いている。

 本作の四作品の中で、個人的には、三作目の「伊達の黒船」が、最も好きである。

 43頁という、短い作品で、伊予宇和島藩主の伊達宗城を主人公と上記したが、本作の事実上の主人公は、武士でさえない、提灯張替屋の嘉蔵である。

 伊達宗城は、黒船を自藩で建造しようと考え、家老に命じ、手先の器用な嘉蔵に、白羽の矢が立てられる。

 その嘉蔵が、蒸気船の機関を製作するため、武士や町人にさえ、酷く扱われながらも、懸命に取り組む姿には、日本の技術者魂の先達を感じさせる。

 四作目の「肥前の妖怪」は、55頁を使い、肥前佐賀藩主の鍋島閑叟の生涯を描いている。

 閑叟は、所謂、「四賢侯」とは異なり、大言を吐かず、政局に介入せず、佐賀藩を富ませ、洋式の兵器を秘密裡に自藩で製造し、強国にする。

 筆者は、鍋島閑叟についての知識が、少なかったため、「酔って候」「きつね馬」より、面白く読めた。


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