【正義】と【平和】

英雄千人をランキング。『千人の英雄伝』連載中。

全体表示

[ リスト ]

No.124【峠】

 評価:85点/作者:司馬遼太郎/ジャンル:歴史小説/出版:1968年


 『峠』は、1966年11月〜1968年5月にかけて、毎日新聞において、連載された、司馬遼太郎氏の歴史小説である。主人公は、越後長岡藩の家老、河合継之助。

 継之助の名前は、相当な幕末通以外には、知られていない、無名に近い、人物であったが、本作によって、河合継之助の名前は、飛躍的に高まることになった。

 本書は、安政五年、継之助が、長岡藩の首席家老に、江戸遊学の許しを得るため、家老の家に通い詰めるところから始まる。

 安政五年(1858年)には、既に、井伊直弼が、徳川幕府の大老に就任し、時代は、幕末に突入していたが、長州薩摩・土佐を始めとする、外様の藩とは異なり、譜代の長岡藩は、危機意識を持っていなかった。

 長岡藩の中で、一人、継之助だけが、時代の流れを読み、士農工商の世が崩れることを感じて、自分自身が、家老として、藩政改革を行わねばならない日が来ると自負していた。

 そのために、諸国の学者を歴訪したのである。

 その継之助が、最大の師と仰いだのは、継之助と同様、陽明学の徒である、備中松山藩の家老、山田方谷である。

 方谷は、百姓の出身であったが、譜代の備中松山藩主である、板倉勝静に抜擢され、藩政改革を成功に導いた、実績があった。

 なお、勝静は、後に徳川幕府の最後の老中首座となる。

 継之助は、方谷から、経世済民の実践を学んだ。

 長岡に帰国すると、継之助は、藩庁に出仕し、瞬く間に出世する。

 そして、藩政改革を断行して、遂には、自負していた通り、家老にまで上り詰める。

 同時に、継之助は、日本に内乱が起こることを想定し、スイスの様に、長岡藩の武装中立を目指して、懇意の外国商人のスネルから、大量の新式の武器を買い入れる。

 その中には、日本に三台しかない、ガトリング砲が、二台あった。

 わずか、七万四千石の小藩とは思えない武装である。

 継之助にとっての不幸は、維新の元勲達に匹敵する様な、大きな器量と時勢を見る目を持ちながらも、越後長岡藩という、七万四千五区の譜代の小藩に生まれたことであろう。

 同時に、それは、長岡藩にとっても、大きな災いとなった。

 継之助が、長岡藩の家老になった頃、既に、京では、徳川慶喜が、大政を奉還し、徳川幕府は消滅した。

 しかし、薩摩と長州は、謀略によって、徳川宗家の領地を取り上げると同時に、官軍として、新政府に従わない者達の討伐に乗り出す。

 新政府に対抗する、奥羽列藩同盟討伐のため、官軍(奥羽諸藩及び、長岡藩は、官軍と認めず、「西軍」と呼んでいる)が迫ると、継之助は、奥羽諸国との仲介を申し出、小千谷において、西軍の岩村精一郎と談判するが、相手にされず、決裂した。

 歴史にifはないが、仮に談判の相手が、岩村の様な器の小さな人物ではなく、西郷、板垣など、度量の大きな人物であれば、戦いは避けられたかもしれない。

 こうして、戊辰戦争の最大の激戦の一つと言われる、北越戦争が勃発するのである。

 継之助は、行政の才能のみならず、軍事的才能にも恵まれていた。

 圧倒的な兵力の西軍に対し、長岡軍は、果敢に戦った。

 継之助が、最新の兵器を大量に購入していたことも、同じく、最新の装備の薩長軍を相手に、長岡軍に互角の戦いをさせたのである。

 しかし、続々と増援を送る、西軍に対し、長岡軍には、増援はなかった。

 衆寡敵せず、遂に、継之助は左膝に流れ弾を受けて負傷。

 長岡軍は、会津へと敗走せざるを得なくなる。

 継之助は、その途上で、死去した。

 継之助の死と共に、この物語は終わる。

 継之助は、封建制度の終焉と新しい時代の到来を見越しながらも、譜代藩の家臣として、徳川家への「義」を通した。

 それは、陽明学の徒としての行動でもあった。

 本書は、北越戦争を余すところなく描き、継之助の生き様には、感動を覚える。

 継之助が、戊辰戦争を生き残り、新政府の一員となっていれば、その行政能力と軍事的才能を遺憾なく発揮して、新国家建設に多大な貢献を果たしたであろうことを思うと、残念でならない。


[https://book.blogmura.com/bookreview/ranking_out.html" target="_blank にほんブログ村 書評・レビュー]

この記事に

閉じる コメント(0)

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

開く トラックバック(0)


.


みんなの更新記事