【正義】と【平和】

英雄千人をランキング。『千人の英雄伝』連載中。

全体表示

[ リスト ]

 カエサルは、12月末という、冬の最中に出陣したため、新兵達の不安は増大し、彼等は、総司令官の陰口を叩いていた。

 しかし、カエサルを迎え撃つ、旧ポンペイウス派の残党も、カエサルが、真冬に出港するとは想定していなかったため、優位な海上戦力を持ちながら、海戦に持ち込むことができず、カエサルに渡海を許すことになった。

 新兵達の不安は、マルサラからの出港後、四日目に、アフリカ属州の東岸に接近した時、更に増大した。

 歩兵と騎兵、総勢2万の兵を乗せた、船団は、100隻近くになっていたが、行軍路は、海の上であり、陸上とは違い、友船を見失う船も出てくる。

 カエサルは、上陸予定地点を、他のどの船長にも告げていなかった。

 通常は、戦略上、機密を保つ必要がある、上陸地点の指令は、封印をして、船長に渡し、船長は、海上へと出た後に、初めて、それを読むことになっている。

 しかし、カエサルは、それさえ、していなかったため、迷う船が続出した。

 新兵達は、最高司令官は、軽率で、無鉄砲との不満を抱いた。カエサルは、アフリカ属州の東部は、どの地も防衛は手薄のため、各船は、上陸地点を自主的に選択し、上陸後に集合するべきと考えていた。

 カエサルの考え通り、各船は、自主的に判断し、自主的に行動したためか、一隻の船も、一人の兵も失わずに上陸し、カエサルの許に集合したのである。

 その頃には、新兵達は、苦情を言わなくなっていたが、不安は消えなかった。

 上陸後、カエサルは、直ちに、ハドゥルメトゥム、レプティス、タプソスの三都市に対して、降伏勧告の使者を送ったが、城門を開いたのは、レプティスのみであった。

 ハドゥルメトゥム、タプソスの両都市は、旧ポンペイウス派の兵士達が、守備を固めて、カエサルの降伏勧告を無視した。

 既に、カエサルの上陸は、ウティカに報告されているに違いなく、新兵達は、いつ、敵の6万の大軍が現れるか、不安に駆られていた。

 カエサルは、陣営地を築き終わると、軍を率いての周辺の行軍と視察に余念がなかった。

 一方、シチリア属州からの後続部隊は一向に到着しない。

 ヒルティウスの著作と言われる、『アフリカ戦記』では、この時期の新兵達の想いを、次の様に述べている。

 「将と兵とを問わずに、ただの一人も、最高司令官の考えに通じている者はいなかった。

 誰もが、心配と不安に駆られて、カエサルの胸の内を探ろうと努めた。

 小規模な軍勢で、敵の海の中に孤立しているのである。

 特に凄まじい数という、敵の騎兵が、恐ろしかった。

 兵士達の心配と不安は、直属の指揮官である、百人隊長にも解決できなかった。

 彼等も、兵士達と同じ心境にあったからである。

 唯一、最高司令官の快活な表情と疲れを知らない、行動力のみが、兵士達に、自分自身への信頼感を呼び戻すのに役立っていた。

 実際、兵士達は、彼の姿を見るたびに、彼の精神の偉大さと自信の確かさを感じ取り、自分達も落ち着きと勇気を回復したのである。

 カエサルの思慮深さと優れた力量であれば、いかなる事態でも、喜ばしい結果で終わるという、希望と確信を持てたのであった。」
 
 カエサルのことを、軽率、無鉄砲と陰口を叩いていた、新兵達は、一カ月もしない内に、カエサルを見る目が変わり、「カエサルの戦士」へと変貌を遂げつつあったのである。


[https://history.blogmura.com/his_greatperson/ranking.html にほんブログ村 偉人・歴史上の人物]

この記事に

閉じる コメント(0)

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

開く トラックバック(0)


.


みんなの更新記事