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No.125【戦雲の夢】

 評価:85点/作者:司馬遼太郎/ジャンル:歴史小説/出版:1961年


 『戦雲の夢』は、『梟の城』『上方武士道』『風の武士』に続く、司馬遼太郎氏の四作目の長編歴史小説である。そして、意外にも、実在と事跡の確かな人物を主人公とするのは、本作が、初となる。

 主人公は、土佐の太守である、長曾我部盛親。ただし、忍者の雲兵衛の存在など、司馬氏の初期作品らしい、フィクションの要素も含まれている。

 本作では、長曾我部盛親を、大きな器量を持ちながらも、乱世の動きに取り残された、悲運の武将として描いている。

 司馬氏は、七年後の1968年に、盛親の父、長曾我部元親を主人公とする、『夏草の賊』を執筆しており、『夏草の賊』の終わりと、本作の始まりが、直接的に繋がっているため、『夏草の賊』を先に読んだ方が、本作を楽しむことができる。

 筆者の知る限り、長曾我部盛親を主人公とする、歴史小説は、本作以外には、2007年の二宮隆雄氏の『長曾我部盛親』が存在するらしいが、筆者は、読んだことはない。

 NHKの大河ドラマなどにおいても、盛親が登場することは、皆無に等しかったが、遂に、2016年の大河ドラマ、『真田丸』において、盛親が、主要な人物として登場した。

 盛親は、四国に覇を唱えた、長曾我部元親の四男である。

 長男の信親の死後、元親は、家臣の反対を押し切り、信親の同母弟である、盛親を後継者に指名した。

 しかし、元親は、最愛の信親の死後、失意の内に世捨て人の様になり、秀吉の死後、大名達が、徳川家康派と石田三成派に分裂する混乱の最中、遺言を残さずに死去した。

 家康が、会津の上杉討伐のために出陣すると、盛親は、東軍に味方しようと、家康の許へと使者を派遣するが、使者は、西軍の関所を通過することができずに、盛親は、西軍に味方することを余儀なくされた。

 しかし、関ケ原の戦いでは、吉川広家と共に南宮山へと布陣したが、広家は、家康に内通していたため、動かず、盛親も動けなかった。

 関ケ原の戦いの後、盛親は、土佐二十二万石を守るため、家康に謝罪しようとするが、直前に発生した、兄の親忠殺害事件を口実に、盛親は、所領を没収され、長曾我部家は、土佐の太守の座から滑り落ちた。盛親は、牢人大名となったのである。

 このまま、盛親の生涯が、牢人のままで終わっていれば、盛親は、時勢を見抜けずに、西軍に味方し、家康に所領を奪われた、無能で不運な人物として、歴史に名を残すだけであったであろう。

 しかし、その十五年後、天は、盛親にその才能を発揮する機会を与えた。大坂冬の陣・夏の陣である。盛親は、旧領回復を条件に、大坂城へと入城する。

 盛親は、真田幸村・後藤又兵衛達と共に五人衆の一人として、牢人達を率いる。

 そして、関ケ原以来の汚名を雪ぐかのように、長瀬川の血戦において、藤堂高虎の軍勢を打ち破るのである。

 国を失った、無能な人物なままで終わることなく、最期に、見事にその武勇を歴史に刻んだ、盛親の生き様に、筆者は、強烈な感動を覚えた。

 司馬氏の作品の中では、有名な作品とは言えないが、筆者の中では、Best10に入る、好きな作品である。


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