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 紀元前44年2月、元老院と市民集会は、カエサルを終身独裁官に任命する。

 その結果、カエサルの生前、即ち、独裁官の間には、護民官の拒否権は、行使不能になる。

 護民官は、完全に有名無実と化した。

 しかし、カエサルは、民衆の権利を踏みにじるために、護民官を無力化したわけではない。

 カエサルは、ローマ世界の頂点に立つ、一人の人間が、民衆の権利を守ることを前提に、護民官の拒否権を行使不能にしたのである。

 前述の通り、カエサルは、名門貴族の出身であるため、護民官には就任できなかった。

 しかし、カエサルの後継者である、オクタヴィアヌスは、平民貴族の出身であったため、護民官への就任が、可能であった。

 彼は、カエサルの意図を、理解していたと考えられ、ローマの頂点に立つ、唯一の支配者になった時、護民官の職を兼任している。

 カエサルは、独裁官に就任した後も、ローマの最高職である、執政官を廃止していない。

 二人の執政官の内、一人は、カエサルが、独裁官と兼任している。

 そして、紀元前45年度の執政官は、カエサルとファビウス。ファビウスの死後には、トレボニウスが就任する。紀元前44年度の執政官は、カエサルとアントニウスであった。

 ファビウス、トレボニウス、アントニウスの三者は、全員、カエサルの指揮下において、軍団長を務めた、長年に渡る、カエサルの部下者達である。

 故にカエサル以外の執政官は、カエサルの同僚というより、事実上、補佐役であったと言える。

 カエサルは、元老院を弱体化させ、市民集会と護民官を有名無実化し、執政官を補佐役の座に落とした。

 その結果、一人の人間による、世界帝国の支配が完成を迎えたのである。

 カエサルの考える、唯一の支配者、それは、市民の第一人者=プリンチェプスであった。

 日本では、カエサルの後継者である、オクタヴィアヌス=アウグストゥス以降のローマ帝国の支配者を、「皇帝」と訳す。

 確かに、多民族を支配し、数多の同盟国を傘下に治める、「世界帝国」の支配者として、「皇帝」の訳語は正しいのかもしれない。

 しかし、ローマ帝国の支配者は、翻訳の語源である、中国の「皇帝」とは、その性質が、明らかに異なる。

 中国の「皇帝」は、「天命」を受けた、云わば、「天」によって選ばれた、「天子」=「天」の地上の代理人であり、故にこそ、専制君主である。

 しかし、アウグストゥスは、ラテン語の「プリンチェプス」と呼ばれるが、その意味は、「指導者」、もしくは、「第一人者」である。

 即ち、ローマ帝国の支配者は、ある意味では、「市民」の存在があってこその第一人者であり、「天」ではなく、あくまで、人間である、「市民」に認められているからこそ、初めて、支配者になれるのである。

 筆者は、長い間、ローマ帝国の支配者を「皇帝」と訳すことは、間違いだと感じていた。

 敢えて、「皇帝」と訳す必要などなく、ローマ帝国の「プリンチェプス」と、カタカナで、そのまま、ラテン語を使用すれば、良いのではないだろうか。

 例えば、チンギス・ハーンの「ハーン」は、遊牧民族の君主の称号だが、チンギス王と訳すことはない。

 ファラオ、スルタンなども、翻訳されず、そのまま、使用されている。

 無理に翻訳するが故に、「プリンチェプス」の本来の意味が、誤解される危険がある。




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