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 評価:55点/監修:武光誠/ジャンル:歴史/出版:2003年


 『大和朝廷と天皇家』は、明治学院大学教授、武光誠氏による、日本古代史の解説書。

 武光氏は、東京大学大学院国史学専行を卒業後、2008年の五十八歳で、東京大学博士課程を修了し、文学博士号を取得した、日本の歴史家である。

 2003年出版の本作の著者略歴に、明治学院大学教授とあるが、博士号の記載はない。

 武光氏の専門は、古代律令制であるが、1980年代の若い頃から、日本古代史のみならず、日本史全般から、世界史にまで及ぶ、一般向けの書籍を、数多く、執筆・出版しており、その総数は、二百冊に近い。

 ただし、筆者は、本作以外は、読んだことはない。

 「はじめに」によると、著者は、天皇制の本質を知ることが、日本史の特性をつかむ、最大の鍵になると考え、「なぜ、日本人は天皇による全国支配を受け入れたか」との問いを、追求するため、今日の天皇制の特性を正しくつかむためには、天皇支配の根源となった、大和朝廷の歴史を知る必要があると考え、本書を執筆したのである。

 本書の特徴は、主に戦後の日本古代史学界に登場した、様々な研究者の説を、網羅的に紹介・解説している点にある。

 その反面、著者自身の独自の見解は、稀にしか登場しない。

 本書の最後に、わずかに、自身の説を述べているが、極めて、雑な説で、説得力がない。

 本書は、基本的に、『古事記』『日本書紀』については、戦後の日本史学界の風潮である、完全否定説を取っている。

 特に、継体天皇以前の多くの天皇の系譜については、「捏造」論を紹介すると同時に、著者自身も、それに賛同している。

 本書では、『古事記』『日本書紀』の原史料となった、『旧辞』『帝紀』『上宮記』について、その成立過程を解説することで、いかに信用できない史料かを論じ、特に『日本書紀』の記述を否定し、三書についても、「捏造」説を採用している。

 『七支刀銘文』『好太王碑文』『江田船山古墳出土鉄刀銘文』『稲荷山古墳出土鉄刀銘文』の銘文及び、古墳などの考古学的見解を取り上げている。

 また、「記紀」のみならず、朝鮮の『三国史記』などについても、信用できないとしている。

 その上で、最後に、著者は、継体天皇以前の系譜に関する、自身の説を述べているが、実在の天皇と非実在の天皇の分類の根拠が薄弱で、更に、「記紀」では、即位をしていない、皇子を天皇の系譜に入れているが、全く、説得力がない。

 筆者の個人的見解であるが、『古事記』『日本書紀』の記述を信用するか否かについては、最早、学術的問題ではなく、直観及び、思想的な問題であると考える。

 戦後の日本古代史学界は、戦前の皇国史観の反省から、「記紀」を全否定することを研究目的とした。

 しかし、「記紀」を否定した後に、大和朝廷の歴史を復元する際、「騎馬民族征服王朝説」「三王朝交代説」など、根拠のない、妄想説を繰り広げた。

 本書は、現在の日本の古代史学界の説を知る、という点にのみ、価値を見出せる、一冊である。





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