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 評価:70点/作者:倉本一宏/ジャンル:歴史/出版:2007年


 『戦争の日本史02〜壬申の乱』は、吉川弘文館の『戦争の日本史』シリーズの第二弾。

 本書は、古代史上の最大の内乱、天智天皇の皇子、大友皇子と天智天皇の弟、大海人皇子の皇位継承戦争、壬申の乱を、東アジアの国際情勢と絡めて、新説を唱えている。

 著者の倉本一宏氏は、東京大学文学部国史学の出身で、文学博士号を取得し、現在は、国際日本文化研究センター及び、総合研究大学院大学の教授である。

 専門は、日本古代の政治史で、奈良時代及び、藤原氏の時代に関する、著作が多い。

 天智天皇の皇子、大友は、明治三年に、弘文天皇の諡号を送られ、現在は、歴代天皇の一人に数えられるが、倉本氏は、大友は、大王位に即位していないと断定する。

 大友は、母の身分が低いため、天智は、大友に大王位継承資格がないと考えていたとしている。

 天智の大王位継承プランは、同母弟の大海人を中継ぎとして、即位させた後、次世代への交代の際に、大友と、大海人と額田王の娘、十市との間に生まれた、「葛野」、大海人と天智の娘の太田の間に生まれた、「大津」、大海人と天智の娘の鸕野の間に生まれた、「草壁」、もしくは、「鸕野」自身を大王位継承候補と考えていたとする。

 本書の最大の特徴、驚くべき、新説は、壬申の乱の首謀者が、大海人ではなく、その妻の鸕野、後の持統天皇であったとしている。

 大海人にとって、天智の大王位継承プランは、その全員が、自身の息子か、孫、妻であるため、異論はなかったはずである。

 しかし、鸕野は、自身の息子である、草壁を、確実に、次の大王にすることを望んだ。

 そのために、大友を殺害することで、葛野王の継承権を消失させ、更に、草壁は、共に、吉野に連れてゆくが、大津は、大友の近江朝廷に残し、危険に晒させたのである。

 同時に、大友の大王位継承権を否定することは、大海人の第一子ではあるが、母の身分の低い、高市の継承権は、自動的に消失する。

 なお、「大王」は、無論、後の「天皇」で、天皇の称号を初めて使用したのは、天武天皇との説に基づき、大王位としている。

 歴史小説の様な、斬新な説ではあるが、正直、筆者は、個人的には、倉本氏の説には、無理があると考える。

 『日本書紀』では、天智は、大友に、大王位を継承させたいと考え、大海人を暗殺しようとするが、大海人は、それを察すると、吉野に去っている。

 しかし、倉本氏の説では、天智は、本気で大海人に大王位を継承させたいと考えており、更に天智の次世代への大王位継承プランについて、大海人には、異論はない。

 大海人が、鸕野に唆されて、大王位を断り、挙兵する理由が、皆無なのである。

 本書では、鸕野が、どのような言葉を用いて、大海人を唆したのかについては、説明はない。

 本書のもう一つの説、壬申の乱に参加した、兵士達は、近江朝廷が、親唐政策に転換し、対新羅戦のために徴発した兵を、大海人が、利用したとの説は、論理的で、説得力がある。

 倉本氏の説はともかく、壬申の乱の知識を深めたい人には、オススメの一冊である。






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