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 評価:65点/作者:保谷徹/ジャンル:歴史/出版:2007年


 『戦争の日本史18〜戊辰戦争』は、吉川弘文館の『戦争の日本史』シリーズの第十八弾。

 薩長による、武力倒幕への陰謀から、鳥羽伏見の戦いを経て、江戸開城と北関東の争乱、東北越後戦争、そして、箱館戦争に至る、戊辰戦争を詳述している。

 著者の保谷徹氏は、東京大学史料編纂所の教授で、幕末維新、特に軍事史の専門である。

 単著は、本作が初めてで、2010年に『幕末日本と対外戦争の危機 下関戦争の舞台裏』を、本書と同じく、吉川弘文館から、出版している。他に、維新史の編著、共著がある。

 本書は、著者の専門である、「軍事史」が中心であり、所謂、「戦史」ではない。

 刀と槍の武士の軍役体制から、最新の銃と大砲による、西洋式の軍役体制への幕府及び、各藩の軍事改革について、詳述している。

 同時に、軍事物資の輸送のための軍夫の動員について、非常に詳しく述べているが、その点に余り、関心の無い、筆者には、面白いとは言い難い。

 筆者が、本書に期待していたのは、「戦史」、即ち、土方歳三、河合継之助などの壮絶な戦いとその死、勝海舟と西郷隆盛による、江戸無血開城など、英雄達の活躍であったが、その点は、わずかに触れられているのみで、正直、期待外れであった。

 幕府、薩長、諸藩の軍事改革については、それなりに興味を惹いた。

 特に、当時、進歩の著しかった、銃器の性能の違い、最新の銃器に合わせた、戦術の変更、そして、兵士達の動員体制の改革など、戊辰戦争の前後で、戦争の様相は、全く、異なることになる。

 筆者は、本書を読むまで、知らなかったことが、何点かある。

 一点目は、徳川慶喜が、辞官納地を受け入れた後、朝廷が、慶喜を議定に任命するため、大坂城の慶喜に、上洛を命じていたことである。

 最終的に、岩倉具視、大久保利通などの倒幕派の工作によって、慶喜上洛の差し止めの沙汰が、下されているが、筆者は、朝廷が、一度は、慶喜を議定に任命しようとしていたことを、知らなかった。

 二点目は、神戸事件である。西宮警衛に向かう、岡山の藩兵が、神戸通行中に、隊列を横切ろうとした、外国人に発砲し、銃撃戦を引き起こした。

 列強海軍は、即座に兵を兵庫に上陸させて、居留地一帯を占拠し、新政府は、危機に陥った。

 最終的に、新政府は、天皇裁決によって、岡山藩主の池田茂政に、家臣の処罰を命じ、従わなければ、追討するとしている。

 発砲を指揮した、滝善三郎は切腹、その主人の日置帯刀は、謹慎処分となった。

 幕末、朝廷と長州藩は、攘夷を命じて、幕府を追い詰めたが、薩長を中心とする、朝廷は、列強の要請を受け入れたのである。

 戊辰戦争では、欧米列強諸国は、日本の内戦に、完全な中立主義を貫いている。

 列強の植民地化政策の手口は、内戦に介入し、莫大な借金を負わせ、租借地を得ることであった。

 しかし、日本に対しては、局外中立を貫いている。

 本書は、東京大学史料編纂所の膨大な資料に基づいているため、戊辰戦争の研究者にとっては、オススメの一冊である。





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