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 評価:70点/作者:水谷千秋/ジャンル:歴史/出版:2005年


 『謎の豪族蘇我氏』は、堺女子短期大学准教授、水谷千秋氏による、日本古代の豪族、蘇我氏の解説書。

 水谷氏は、龍谷大学大学院において、日野昭氏に師事したが、日野氏は、日本古代史学会における、蘇我氏研究の先駆的存在である。

 凡そ、中学生以上の日本人で、蘇我氏の名を知らぬ者は、いないであろう。

 少なくとも、中学校の歴史教育において、645年に始まる、中大兄皇子と中臣鎌足による、大化の改新、その時に、滅ぼされたのが、「逆賊」、蘇我氏である。

 本書のテーマは、蘇我氏を滅ぼした、中大兄皇子=天智天皇及び、その弟の天武天皇が、律令国家の建設を推進し、「記紀」の編纂の際に、「逆賊」とした、蘇我氏の政策を検討し、その業績を正統に評価することで、皇国史観の「逆賊」を見直すことにある。

 蘇我氏は、宣化天皇〜皇極天皇に至る、九代の天皇の許で、大臣を務め、実に百三十年に渡って、権勢を振るい続けた。

 蘇我本宗家は、稲目、馬子、蝦夷、入鹿の四代続いたが、実は、その出自と異例の台頭については、不明な点が多く、「謎の豪族」であった。

 蘇我氏は、葛城氏・平群氏・許勢氏等の大和の有力豪族と同じく、第八代孝元天皇の孫、武内宿禰の後裔氏族を称している。

 しかし、宣化天皇の時、蘇我稲目が、大臣に就任する以前の系譜は、満智・韓子の名が、「記紀」に登場するが、関係性が、不明である。

 そのため、一時期は、蘇我氏=渡来人説が、有力となり、百済の官人、木満致が、蘇我満智に比定され、現在では、有力視されてはいないものの、渡来人説は、消えてはいない。

 水谷氏は、蘇我氏は、葛城氏と擬制的な親族関係にあったと推測している。

 水谷氏の前著、『謎の大王継体天皇』では、継体が、大和に定着するまでに、長い年月を必要としたのは、葛城氏が、継体に対する、反抗勢力であったためとしている。

 そして、蘇我氏の台頭は、継体天皇の大和定着に、蘇我氏が、功績を挙げたためとしている。

 蘇我稲目は、堅塩姫、小姉君の二人の娘を、継体の息子、第二十九代欽明天皇の妃とし、第三十一代用明天皇、第三十二代崇峻天皇、第三十三代推古天皇と、実に、三大の天皇が、蘇我氏の血を引いた、「蘇我氏あっての天皇」だったのである。

 本書では、蘇我氏による、仏教の受容と、屯倉の設置について、解説している。

 日本に仏教を広めたのは、間違いなく、蘇我氏の功績である。

 また、蘇我氏は、屯倉の設置など、豪族の官僚化を進め、王権を強化しつつあったのである。

 蘇我氏滅亡の政変、「乙巳の変」の真相は、舒明天皇の長子、古人大兄皇子の擁立を図る、蘇我入鹿に対し、舒明と皇極の息子、中大兄皇子が、先手を打ったことが、要因の一つと推測している。更に、当時、唐から帰国した、留学生達の影響があった。

 唐との交流に、消極的な皇極・蝦夷と、唐と積極的に交流しようとする、中大兄・鎌足・入鹿の世代間の対立があった。

 蘇我氏の詳細な解説書は、少ないため、本書は、貴重な一冊である。



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