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 『内乱記』は、古代ローマの英雄、ガイウス・ユリウス・カエサルが、ガリア戦争後、かっての盟友、グナエウス・ポンペイウス・マグヌスの率いる、ポンペイウス派との戦い、「ローマ内戦」について、カエサル自身が記録した、ラテン文学の傑作である。

 前作の『ガリア戦記』は、カエサルが、ガイウス・スクリボニウス・クリオに執政官への書簡を託し、「新執政官レントゥルスとマルケッルスに、カエサルの書簡を手渡した」との文章で終わっている。

 そして、本作冒頭は、「カエサルの書簡は、(ファビウスによって)執政官の手に渡されていたが」との文章で、唐突に始まる。

 なお、(ファビウスによって)の部分は、追記であると考えられるが、クリオとファビウスは別人であり、何故、敢えて、(ファビウスによって)との追記がなされたのかは、不明である。

 この『ガリア戦記』最後の文章と、本作の冒頭の文章から考えれば、『内乱記』が、元々、『ガリア戦争』の続編、というより、『ガイウス・ユリウス・カエサルの業績に関する覚書』とのタイトルの一つの作品であったことは、明白であろう。

 ただし、『内乱記』の部分は、カエサルの生前には、刊行されなかったらしく、刊行時期は不明である。

 当時のローマ共和国では、軍団を率いたまま、イタリア本土へ侵入することは、禁じられていた。

 イタリア本土と、その北の属州、ガリア・キサルピナを隔てるのが、ルビコン川であり、カエサルが、ルビコン川を渡り、イタリアに侵入する際、「賽は投げられた」との言葉を発したことは、余りにも有名で、現在でも、決断の代名詞として使われる。

 しかし、カエサル自身の著書である、本作では、そのような劇的な発言は、一切、記録されていない。

 それどころか、ルビコン川の名前さえも登場せず、ガリア・キサルピナのラヴェンナにおいて、カエサルは、軍団に対して、演説を行った後に、「その軍団と一緒にアリミヌムへ向けて出発する」との簡単な記述があるのみである。

 カエサルは、本作において、徹頭徹尾、自分が、イタリアに侵攻した理由は、一般市民の利益を代弁する、護民官の権利を擁護するためであり、一握りの領袖の党派根性から、ローマ市民を解放するためであり、自己の威信を政敵の侮辱から防衛するためであったと述べている。

 そして、ポンペイウスに対し、何度も、和平交渉の使者を送り、ローマ市民同士の内戦を避けるため、互いに軍隊を解体すべきだと提案している。

 本作のカエサルは、上記の通り、「一握りの領袖の党派根性」から、ローマ市民を守る、ローマ共和国の守護者であり、ローマ内戦後の独裁者、そして、事実上、ローマを共和制から帝政へ以降した、事実上の最初の皇帝のイメージからは、大きく、かけ離れている。

 本作で描かれる、「ローマ内戦」は、イレルダの戦い、マッシリア包囲戦、バグラダス川の戦い、デュッラキウムの戦い、パルサルスの戦いと、多くの戦線で戦いが行われたため、マッシリア包囲戦・バグラダス川の戦い等は、カエサルは、直接、戦闘を指揮していない。

 そのため、カエサル自身が、自分の目で見たわけではなく、後の報告によって、記録した部分も含まれている。

 しかし、紀元前一世紀の当時、西方世界最強のローマ軍同士の戦いを記録した、貴重な資料であることは間違いない。



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