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 『カエサル』は、日本のローマ史研究家、名古屋大学名誉教授の長谷川博隆氏による、ガイウス=ユリウス=カエサルの解説書である。

 長谷川博隆氏には、古代ローマに関する著作が多数存在する他に、『ハンニバル〜地中海世界の覇権をかけて』など、古代ローマを語るに欠かせない、カルタゴに関する著作も存在する。

 また、ゲルツァー、グリマール、モムゼンなど、古代ローマ史に関する、多数の翻訳を手がけている。

 「あとがき」にあるように、本書の原著は、長谷川氏自身の1968年の著作『シーザー〜古代ローマの英雄』で、1994年の再版時には、加筆・修正は行われず、原著のままである。

 この『シーザー』は、中学生・高校生向けに書かれた本であるため、その再版の本書も、平易な文章で、大変読み易く、カエサルの入門書としては、申し分ない。

 本書の最初の二章は、当時のローマ世界についての解説から始まる。

 元老院・政務官・民会などの都市国家ローマの基本的な枠組みや、ローマが戦争によって獲得した「属州」、ローマの政治を動かす、独特の人間関係=クリエンテラについて語られる。

 しかし、本書は、あくまで、『カエサル』の解説書であるため、紀元前1世紀のカエサルの時代に至るまでの、ローマの歴史についての解説は少ない。

 故に、ローマ史について、全く、学んだことのない人には、背景がわかりにくいと思われる。

 最初の二章で、当時のローマ世界を解説した後、若き日のカエサルの逸話、紀元前69年に財務官に選ばれた後、元老院議員になった、カエサルの活動、そして、ポンペイウス、クラッススとの三頭同盟など、政治家としてのカエサルについて解説している。

 そして、紀元前59年にコンスルに就任すると、様々な改革立法を行うと同時に、人気取りの政策を展開して、将来への布石として、クリエンテラを増大させるのである。

 政治家としてのカエサルについての解説の後、本書では、軍人としてのカエサルを解説している。

 政治家としてのカエサルについては、実に二千年の長きに渡り、カエサルが、本当に明確な構想を持った、偉大な政治家であったのか、それとも、その時々の状況に流されたに過ぎなかったのか、その評価が、定まることはない。

 しかし、軍人としてのカエサルが、一流であったことは、二千年の間、多くの人々が、認めている。

 本書では、特にカエサルが、自分自身を、「運命の寵児」と信じると同時に、「運命の女神」に応えるという使命感に駆られて、戦争に挑んだと解説している。

 本書では、ガリアでの九年間の戦争、その後の内乱について、三分の一程度の紙面を割いて解説している。

 特にガリア戦争においては、実に九年の間、最高司令官であったため、一人支配=独裁への方向へ歩み出したこと、また、「世界帝国」の創造への理念についても、その過程で確立されたのではないかと解説している。

 本書では、独裁者としてのカエサルを、好意的には描いていない。

 カエサルは、王位を狙っていたと噂されていたが、それについては、否定せず、専制君主としてのカエサルの独善的な行為を記している。

 最後の付論である、「カエサルの孤独」は、エッセイに近いが、興味深い文章なので、是非、オススメする。


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