評価:55点/作者:堀越孝一/ジャンル:歴史/出版:1996年
『ブルゴーニュ家〜中世の秋の歴史』は、フランスの王家、ヴァロア家の一門である、ブルゴーニュ家に関する、歴史解説書。
ヴァロア家系ブルゴーニュ家は、四代続いたが、本書では、三代目のフィリップ・ル・ボン、四代目のシャルル・ル・テレメールの時代を中心に扱っており、初代及び、二代目については、簡単な概説のみである。
本書の作者である、堀越孝一氏は、東京大学文学部西洋史学科を卒業後、高校の非常勤講師を務めた後、東京大学大学院に進学し、堀米庸三に師事している。
1971年、文部省の在外研究員として、パリ在住。その後、1976年に同大学教授に就任。定年退官後、同大学の名誉教授。2001年、人文科学研究所所長に就任。2013年には、瑞宝章を受章する。
本書のタイトルの通り、『中世の秋』の作者、ヨハン・ホイジンガに傾倒し、西洋中世史を専門とするが、分野は幅広く、政治史以外に美術、詩を研究及び、著作の対象とする。
主な著書は、『ジャンヌ・ダルクの百年戦争』『画家たちの祝祭〜十五世紀ネーデルランド』『わがヴィヨン』など。編著には、レンブラントの解説書がある。
ブルゴーニュは、元々、フランスの王家、カペー家の出身のブルゴーニュ家が、領主を務めていたが、その家系が断絶すると、王家の直轄領となった。
その後、カペー家が断絶、ヴァロア家のフィリップ5世が、フランス王になるが、イングランド王エドワード3世が、フランスの王位継承権を主張し、英仏百年戦争が始まる。
ヴァロア家の二代目、ジャン2世の末子である、フィリップが、1356年のポワティエの戦いにおいて、見事な働きをしたために、ジャン2世は、フィリップにブルゴーニュ領の下賜を約束。
ジャン2世の後継者で、フィリップの兄のシャルル5世は、その約束を守り、ヴァロア家系ブルゴーニュ家が、誕生したのである。
初代の剛胆なフィリップは、1369年、フランドル伯の娘である、マルグリットと結婚。
その結果、フランドル、アルトワ、そして、神聖ローマ帝国に属する、ブルグント伯領を、継承することになり、ブルゴーニュ家は、一躍、巨大勢力となった。
ブルゴーニュ家の四代は、全員、あだ名が存在し、通常、初代のフィリップを「豪胆」、二代目のジャンを「無怖」、三代目のフィリップを「善良」、四代目のシャルルを「突進」と訳すことが多いが、本書では、善良を「おひとよし」、突進を「むこうみず」と、若干、コミカルに訳している。
また、爵位は、通常、「公」であるが、本書では、「侯」である。
本書は、フランス王家内部の党派対立、シャルル6世の弟のオルレアン公ルイを擁する、アルマニャック党派と、ブルギニョン=ブルゴーニュ派を描いている。
しかし、堀越氏が、芸術、詩など、幅広い分野に関心を有しているため、本書では、絵画、詩、葡萄酒、通貨、塩など、対象が、余りに多彩過ぎ、政治史が、全く、整理されておらず、ブルゴーニュ家の政治史に興味のあった、筆者にとって、正直、残念な一冊であった。
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