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 評価:80点/作者:菊池良生/ジャンル:歴史/出版:2002年


 『傭兵の二千年史』は、娼婦と並ぶ、「世界最古の職業」、傭兵に関する、歴史解説書。

 傭兵は、古代オリエントの時代から、存在したが、本書は、ヨーロッパを対象としており、中国、インド、イスラム世界などのアジア世界は、扱っていない。

 作者の菊池良生氏は、歴史家ではなく、ドイツ文学者である。

 早稲田大学法学部卒業後、同大学院研究科独文科博士課程を中退している。

 しかし、ハプスブルク家を中心とする、神聖ローマ帝国に関する、著書が、大半を占め、事実上、歴史家と言える。

 作者は、「はじめに」に記しているが、20世紀の世界大戦の異常さである、「途方もない、数の人々が、自らの命を投げ出そうとした」、ナショナリズムの由来を探るために、本書を執筆した。

 そして、ヨーロッパの歴史の中で、ナショナリズムとは、無援の存在である、傭兵の歴史を辿ることで、ナショナリズムの仕組みを逆説的に捉えようとしている。

 本書は、最初に、ギリシア及び、ローマの傭兵について、解説する。

 ギリシアのアテネ、ローマなどの古代都市国家の軍隊は、「市民軍」が、中核であった。

 しかし、都市国家が、帝国主義的海外膨張に乗り出し、貨幣経済が、進展すると、中小都市市民は、没落して、無償の兵役を嫌う。

 そして、愛国的献身を貨幣価値に換算する、傭兵が、誕生する。

 ヨーロッパの中世の初期は、軍事は、「戦う人」、騎士階級が、中核であった。

 しかし、古代都市国家と同様、貨幣経済の進展に伴い、騎士階級は、経済的に没落し、傭兵稼業で、現金を稼ぐようになる。

 そして、傭兵の時代が、始まる。

 イタリアは、早くから、戦争を傭兵に依存していた。

 そして、ルネッサンスの時代に、数多の傭兵隊長が、活躍する。

 その中の一人、フランシスコ・スフォルツァは、イタリアの五大勢力の一つ、ミラノ公爵になった。

 まさに、下剋上時代の華であった。

 しかし、「芸術品としての戦争」に現を抜かす、傭兵隊長達を戦慄させる、新たな傭兵が、登場する。

 スイスの傭兵部隊である。

 スイスの歩兵の登場によって、ヨーロッパの戦争は、騎兵中心から、歩兵中心に変わった。

 そして、ランツクネヒトが、登場する。

 筆者は、本書を読むまでは、「ランツクネヒト」という、言葉を知らなかった。

 彼等は、ドイツ人の傭兵で、次第に、スイス傭兵を凌駕した。

 ランツクネヒトは、故郷で食い詰め、定住社会に背を向けた、「自由戦士」を自負する者達の集まりであった。

 しかし、ランツクネヒトは、オランダのマウリッツの軍制改革によって、その地位は、低下する。

 三十年戦争の史上最大の傭兵隊長、ヴァレンシュタインを最後に、傭兵隊長と傭兵は、軍事機構の中核の地位から、脱落し、哀しい歴史を辿るのである。

 そして、フランス革命によって、徴兵制による、「国民軍」が、誕生すると、傭兵制度は、排除され、補助・特殊部隊になった。

 本書は、傭兵のみならず、ヨーロッパの軍制全般の歴史を理解できるため、非常に面白い。

 オススメの一冊である。


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