華麗に舞った剣士たち

剣道で記録と記憶に残る少年〜青年〜中年剣士を追いかけます

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皆さん、大変ご無沙汰しております。
ここのところ仕事が佳境に入っていて毎晩遅いので
全くパソコンに向かえていませんでした。
せっかくコメントを頂いていた方には大変失礼したこと、
お詫び申し上げます。




第4回全日本選抜剣道七段選手権大会(横浜七段戦)


いやあ驚いた。

まさか、大阪から出場の4名が
ベスト4に残るとは。
大阪府警恐るべしだ。

日本を代表する剣道七段16名が選ばれ出場するこの大会。

Aリーグ
佐藤博光(大阪府警・43歳)
鈴木剛(千葉県警・44歳)
古澤庸臣(熊本県警・39歳)
松脇伸介(警視庁・38歳)
Bリーグ
寺本将司(大阪府警・41歳)
竹中健太郎(鹿屋体育大・44歳)
北条忠臣(神奈川県警・40歳)
岩下智久(千葉県警・38歳)
Cリーグ
清家宏一(大阪府警・43歳)
高鍋進(神奈川県警・40歳)
米屋勇一(埼玉県警・40歳)
権瓶功泰(警視庁・39歳)
Dリーグ
木和田大起(大阪府警・38歳)
北条将臣(神奈川県警・43歳)
外山浩規(愛知県警・42歳)
小関太郎(警視庁・40歳)

ああ、まさに夢のオールスター。

世界チャンピオンが4人
寺本・佐藤・北条(将)・高鍋
全日本チャンピオンが4人
鈴木・寺本・高鍋・木和田
(2名は重複だが)
世界・全日本2位・3位が8名。
世界選手権出場者が11名。
煌びやかすぎて目がくらむ。

年齢は38歳〜44歳と、
パワー&スピード剣道から、
より美しく、より洗練され、研ぎ澄まされた
剣道の理想形に向かって深い境地に入って行く過程。
全日本選手権よりも芸術的で、クオリティーの高い、
惚れ惚れするような試合が展開された。

しかも、この大会の舞台となる神奈川県立武道館は
300百人程度しか入れない狭い会場なので、
観客からみて目と鼻の先の距離で試合が行われる。

そんなこともあり、
私も随分と剣道の試合を見てきたが、
この七段戦のド迫力は別格である。


選手のウォーミングアップを観察するのも楽しい。
イチローが毎回寸分違わぬ同じ手順でアップして打席に立つように、
選手一人ひとり決まったウォーミングアップの方法がある。

この大会では
松脇選手のウォーミングアップが強烈に私の目を奪った。

次に試合を控えた松脇が、
私から1mの距離で、
面をつけてウォーミングアップに入った。

「パーン!、パーン!」

とにかく体中をスゴイ力で叩く、叩く。

次には自分の竹刀の柄頭で、
鋼のような太ももや尻を、グサッ、グサッと力任せに突き刺す。
刺したところは間違いなく青あざになっているであろう力だ。
見ているだけで痛そう。

そして前の試合が終わった瞬間、
ポーンとその場で高く飛び上がったかと思ったら、
股を広げた状態で落下し両踵で床を鳴らす。
「ドーン」
もの凄い音と同時に、道場全体が揺れる。
ゴジラが東京のビル街を歩いたかのような地響き。
試合の方に熱中していた私は、
意表をつかれた衝撃で
思わずビクッと、身体が反応してしまった。
「こわー」
このウォーミングアップを間近で見ただけで
松脇に対して恐怖を覚えるぐらい激しいものだった。
もし松脇と本気の決闘になったら
私など間違いなくあの世に行くだろう。
などと想像してしまう。

その松脇は、予選リーグで、昨年2位の鈴木剛からメンを2本奪うなど
実力を発揮しAリーグを突破し決勝トーナメントへコマを進めた。
ところがそこで立ちはだかったのが、同学年の木和田大起だった。
松脇は当時関西で猛威をふるっていた東洋大姫路から日大そして警視庁へ。
木和田は、三重高校から中大そして大阪府警へ。
同じ関西出身同士であり、また世界選手権団体優勝に貢献した2人である。
しかし、この同学年対決は、
木和田が得意のコテを2本決めて勝利した。


さて、この日、私が注目していた選手の1人が清家選手だ。

リーグの初戦では高鍋にコテを奪われ負けるも、
続く米屋、権瓶に連勝し、高鍋を抜いて1位で予選通過を果たした。

特に権瓶に決めたドウには度肝を抜かれた。
左上段からメンに行くと見せかけての強烈な逆ドウだった。
「パチーン!」
会場に乾いた爆発音が響き渡った。

清家の上段はカッコいい。

普通の上段選手の構えは、左拳を前に突き出し
右手を引いている感じだが清家の上段は少し違う。
左拳は前に出さず左目のすぐ上に置いておく。
右拳は引かず、横から見れば左拳とほぼ同じ平面上にあると言った感じだ。
だから相手に対して半身になることなく、常に正面向いている。

清家の構えは常に角度や距離を測ったように正確。
180cmの長身は前かがみになることもなく背筋をピンと伸ばし、
相手を静かに威圧する。
清家の構えのカッコよさは
私が勝手に選ぶBEST5に入る。

清家は2年前の七段戦では、
予選リーグの死闘を勝ち抜き3位入賞を果たしている。
清家の真骨頂は「相手が動いたらすかさず打つ出ばな面」だ。

このブログでも何度も登場しているが、
清家は、1991年のあの高千穂最強とも言われたチームのベンチを温めていた。
メンバーは先鋒から浅田健二、溝川幹敏、甲斐昌太、佐藤博光、吉井泰裕だ。
このメンバーで玉竜旗、インターハイと圧倒的な強さで2冠を達成した。
後の世界選手権日本代表の清家が控え選手というばかりか、
後の世界チャンピオンとなる佐藤博光も、
実は補欠とレギュラーの間を彷徨ったというほど凄まじい選手層だった。
吉本監督は地元の高校生をこれでもかというほど鍛え上げ、
怪物チームを創ったのである。

清家は、もともと右腕の力が強すぎて
一拍子で打つことができず右手を担ぐようになるという癖があった。
その癖を矯正させるために吉本監督は
高校2年生の清家に上段をとることを薦めたという。

清家は佐藤博光とともに大阪体育大に進学、
卒業後、大阪府警に奉職するのだった。
そして佐藤・清家のコンビは大阪府警で大暴れする。
清家は2006年には佐藤の代役として大将を務め
全国警察剣道大会で5年ぶりの優勝を掴みとったのだった。

大器晩成とはまさに清家のためにある言葉だと思う。


さて、清家のこの七段戦。
予選リーグ初戦、目下2連覇中の高鍋にコテを奪われ敗れた。

ところが、それで終わらないのが清家である。
2戦目の米屋戦。
2年前には強烈なツキの餌食にされたあの米屋を今日は寄せ付けず、
堂々とメンを2本決めた。
さらには権瓶を、先ほども書いた通り、度肝をぬく上段からの逆ドウ一閃。
その後、権瓶の怒涛の攻撃でコテを奪われるも、最後はコテを取り返して勝利。
なんと、高鍋を抑えて、Cリーグトップで抜け出した。

決勝トーナメント1回戦は、
千葉県警の岩下智久。
今日の岩下は、3年前の本大会チャンピオンである北条忠臣を破っている。

しかし清家はこの岩下をも退けた。


さて、今大会
選ばれた16名の中からベスト4に残ったのが、
佐藤博光
寺本将司
清家宏一
木和田大起
だった。
4名とも大阪というとんでもないことになった。

ちなみに、
2005年の全国警察剣道大会
大阪チームのメンバーを見ると、
先鋒 木和田
次鋒 清家
五将 谷山
中堅 松本
三将 寺本
大将 佐藤

おお、4人とも同時に同じチームにいたではないか。


準決勝 第一試合
寺本vs佐藤

寺本にとって佐藤はずっと大阪府警の大将を張ってきた先輩である。
寺本が一歩踏み込む、
メンに来ると思った佐藤が避ける、
寺本が一拍置いて大ナタを振り下ろす。
ドーン!
凄いメンが決まった。


準決勝 第二試合
清家vs木和田

木和田は上段をとる清家の左コテを狙う。
清家は木和田のコテの巧さは十分わかっている。
しかし、真っ向勝負だ!
清家がメンを振り下ろす、木和田がコテを放つ。
相打ちか!
いや清家のメンだ。
そして直後にまたもや清家が上段からの豪快なメンを決め、
後輩を退けた。


いよいよ決勝戦。


寺本vs清家

開始早々、清家が上段から竹刀を振り下ろす。
普通の選手だったら、動揺するところだが、
寺本は全く動じず。よく見ている。
手の内を知り尽くした2人だ。

その後も静かなる攻防が続く。
観衆も2人の一挙手一投足を、一瞬たりとも見逃すまいと
固唾をのんで見守る。

寺本が牽制気味にツキを放つ。
清家も全く動じず。

寺本がグイグイと間合いを詰めはじめた。
2人の間合いはかなり近い。
ボクシングでも右ストレートが入りそうな距離じゃないか。
っこれじゃあ互いに何かを打てば必ずどこかに当たる。

寺本がコテに飛んだ。
惜しい、旗が1本挙がった。
今度は寺本がメンだ。
しかし清家がそれを返してのメン!
七段戦ならではの、高度な攻防だ。
しかも一振り一振りが重く、打突するたびに火花が見えるようなド迫力である。

延長となる。

清家が上段からメンを振り下ろした。
と同時に寺本もメンに飛びこんだ。
上段と中段の相メンか。

しかし、寺本はメンに飛びこみならが、
首を少し右に傾ける。
清家の振り下ろした大ナタは、
寺本のメンをかすめて空を切る。
そして寺本の竹刀は清家の右メンをしっかりと捉えた。

「メーン!!!」

赤旗が3本一斉に挙がった。

おお、なんという1本だ。
美しすぎる。玄妙だ。

この1本で寺本の優勝が決まった。

試合後、私は寺本に近づき聞いてみた。
「準決勝、決勝と先輩2人でしたがやりにくかったですか?」と。
すると寺本は、
「2人とも強い先輩達だから、やりにくいなんて感じる余裕もなく、とにかく全力でかかりました」と。

この日の寺本は、決勝トーナメント1回戦では、
2連覇中の高鍋も破っての完璧な優勝だった。

41歳の寺本。
最低でもあと2回はこの大会に出場するだろう。
史上初の3連覇も夢でないほど、
強靭で隙のない寺本をこの目で確認した大会だった。

来年また横浜で会いましょう。

【文中敬称略】



イメージ 1

決勝戦
寺本vs清家


イメージ 2

16名の出場選手

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