華麗に舞った剣士たち

剣道で記録と記憶に残る少年〜青年〜中年剣士を追いかけます

高校剣道

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1972年の凄い出来事

久々の投稿。

何度も訪れられた方には申し訳ないのですが、
おかげさまで、大好きな剣道についていろいろと考えたり
過去に遡って思い出を紐解いたりと
のんびり過ごさせていただきました。

コメントいただいていた方。
後でお返事させていただきます。
ありがとうございます。


今日は皆さんあまり興味はないかもしれませんが、
1972年の高校剣道で驚くべきことを知ったので、
当時の高3世代で活躍された選手たちの様子と併せて記することにしました。

昭和47年(1972年)。

この年の高3の同年代には、

後に警視庁に奉職し、
全日本選手権優勝3回の大記録を作った西川清紀範士(八代第一高出身)、

1980年の高鍋高校教員時代に全日本選手権優勝
教員として最後の選手権者となった外山光利(鹿児島商出身)、

そして外山と同じ東海大出身で世界大会個人2位、
全日本選手権2位と教員最強の一人としてあまりにも有名な古川和男(西海学園高出身)

また全日本選手権2位、世界選手権出場、日本を代表する選手として活躍し
熊本県警察首席師範をされていた亀井徹範士(九州学院高出身)ら

錚々たる面々がズラリと揃った年である。

上記の4人は全員が九州出身。

また九州と言えば、
国体優勝の鹿児島商工には鶴薗福夫、下薗千秋、花木博志らが、
玉竜旗優勝の長崎東の大将は現在慶應大学教授の植田史生が、
九州大会優勝の八代東には、IH個人3位、後の大阪府警首席師範となる椎葉隆徳が、
そして嘉穂にはIH個人2位となった池田逸夫が、
さらに島原には後の大学チャンピオンとなる平井節朗もいた。

「九州強し」の旋風が吹き荒れた年だったのではないだろうか。


しかし、インターハイでは、
決勝でPL学園が鹿児島商工を破って初優勝を飾った。

PL学園からは、
この時点ですでに福本英男(1964年)、蒔田実(1966年)という
2人のIH個人チャンピオンを輩出、
また1968年には団体3位入賞を果たしているが、
圧倒的な強さを誇ったPL学園の
怒涛の快進撃はこの年から始まったと言えるだろう。
そして高校剣道史に燦然と輝く黄金時代を築いていったのだ。

またインターハイ個人チャンピオンは安房の佐野正男。
安房はIH個人戦がスタートした1959年に吉田勝己が準優勝、
また団体では1969年に優勝しているが、個人優勝は初めてだった。
ちなみに、安房は2017年までに、団体優勝3回(1969、2005、2010)
個人優勝は佐野と千葉由樹(2010)の2人である。

準優勝は嘉穂の池田逸夫。
当時の嘉穂はここまで19回のIHにおいて
団体優勝3回の強豪中の強豪校として全国に名を馳せていた。

優勝の佐野が早稲田大へ、
準優勝の池田とBEST8の植田が慶應大へ進学した。
当時の早慶戦もかなり盛り上がった。
1年時は佐野が怒涛の8人抜き、
3年時は佐野が5人抜き。
最後の早慶戦も佐野がメメ-メで池田を下し、早稲田が勝利した。

IH個人3位の椎葉は国士舘大へ進学し主将として活躍した。


とここまで書いてきたが、
1972年というのは、私が小学3年生。
初めて竹刀を握りはじめた頃であり、
彼らの活躍をリアルタイムで見てきたわけではない。

まだ剣道時代も剣道日本も発行されていない時代だ。
もちろんインターネットなどもないので、全国の剣士の情報など知るすべもない。

ということで、この学年の高校時代のことは、
後から知ったことではあるが、
極めて興味深い面々に思わず興奮した。

やはり何と言ってもこの世代のその後の活躍も含めれば
西川清紀の実績が圧倒的だろう。

西川のいた八代第一高校は、
八代東、九州学院という熊本の厚い壁に阻まれてインターハイには出場していない。
国体代表となるも、当時西川の名は全国では全くの無名だった。

私が初めて西川選手を知ったのは、
昭和50年(1975年)、
私が中学1年生の時である。

私は全日本剣道選手権を見るために
心躍らせて日本武道館に向かった。
そこに若干20歳の選手が登場していたのである。
その4年前の1971年に、国士舘大学の川添哲夫が
21歳にして全日本を獲ったというニュースは知っていたが、
もし西川が優勝すれば史上最年少だなあなどと思いながら見ていた。

西川の初戦の相手は、国士舘大時代に学生チャンピオンとなった試合巧者の宮澤保信だ。
西川は豪快にそして、粘り強く戦ったが惜しくも敗れる。
この年の優勝者は、川添哲夫(高知学芸高等学校教員で25歳)、
そして2位が西川青年を破った宮澤だった。

緒戦で敗れた西川だったが、私には印象深かった。


とここまで話をしてきて、
なぜ、1972年のことを突然書きたくなったかというと、

先日、わが母校である茨城県立水戸第一高等学校剣道部の
新春大同窓会に参加してきたからである。

この時に初めて知り、腰を抜かさんばかりに驚いたことがあった。

それが1972年の水戸一高 3年生のことである。


この年、茨城では敵なしの圧倒的な強さを誇ったのが
名将・宮本安監督率いる水戸一高だった。


○新人戦 県優勝
○勝抜き大会 県優勝
○高校総体(IH予選)
団体戦 県優勝
個人戦 石井勉 県優勝

と圧倒。

そして迎えたインターハイ。
もちろん目指すは優勝。

予選リーグは無難に勝ち上がり、
いざ決勝トーナメントへ。
ところが、決勝トーナメント1回戦で当たったのが、
この年、地元国体を控え強化を図っていた優勝候補の鹿児島商工だった。
いやいや水戸一高選手も負けてはいない、
粘る粘る。
が、鹿商工の前に力尽きたのだった。
結果はBEST16。

しかし、これだけだったら
「ふーん、それで?」
という感じだろうし、私も母校だからと言って敢えてブログで取り上げたりしないだろう。

驚いたのはここからだ。
この強豪チームのメンバーの進学先を聞いて卒倒しそうになったのだ。

大将 石井勉 一橋大
副将 高安哲雄 北海道大(医学部)
中堅 矢吹俊吉 東京大
次鋒 小原芳夫 東工大
先鋒 生沼俊一 北海道大

こっ、これは。。。

なんと、5人全員が東大を含む超難関国立大ではないか。
どこかの予備校の特待クラスの合格実績と見まちがえてしまう。

2003年に、田中達也や高瀬武志らとともに最強桐蔭学園を支えた
太田桂が一橋大に進学したのには驚いたが。

文武両道にもほどがある(笑)

先日、大将の石井勉氏に当時の様子を伺った。

今の時代ではありえないのかもしれないが、
ただ一つ言えることがある。

それは「集中力」である。

稽古の成果は「質」×「量」だ。
短時間の稽古でどれだけ成果を高められるかは質の高さにかかっている。
彼らは日本一質の高い稽古をしてきた誇りと自信を持って試合に臨んでいた。


1972年の高校大会の結果

【インターハイ】
団体
優勝 PL学園(大阪)(先鋒から、猿渡、益田、蔵原、上辻、中嶋)
2位 鹿児島商工(鹿児島)(先鋒から、亀之原、鶴薗、岩田、花木、下薗)
3位 国学院栃木(栃木)
3位 小牛田農林(宮城)
BEST8  高知(高知)
BEST8  安房(千葉)
BEST8  嘉穂(福岡)
BEST8 琴平(香川)

個人
優勝 佐野正男(安房)
2位 池田逸夫(嘉穂)
3位 椎葉隆徳(八代東)
3位 植木邦男(樹徳)
BEST8 植田史生(長崎東)
BEST8 古川陵(湯沢商)
BEST8 太田進也(向陽)
BEST8 為谷昇(小松原)


【玉竜旗】
優勝 長崎東(長崎)(先鋒から、岡島、陣野・野副、宮崎、川島、植田)
2位 鹿児島商工
3位 糸島
3位 八代東

国体
優勝 鹿児島(鹿児島商工)(先鋒から亀之原、花木、岩田、鶴薗、下薗)
2位 香川
3位 千葉
3位 栃木

【文中敬称略】

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高校剣道総括(2)

今年の高校剣道は紙一重
結果はじゃんけんに似ている。

私が今年の高校剣道の総括としてまず思ったのは、
強豪校の多くが、本当に紙一重だったということ。
一つ歯車が狂えば結果は全く違っていたかもしれない。

26年ぶりにインターハイ復活Vを達成した高千穂だが、
彼らの強さはまさに日本一に相応しいものだった。
決勝まで快進撃を見せた島原も驚くべき強さだった。
葵陵も札幌や九学を破った試合ではまさに天下無双の強さだった。
もちろん九学も個々の強さでは右に出るチームはなかった。
今大会、特にこの4校は極めて高いレベルで拮抗していたと思う。

高校4大大会の結果(優勝・準優勝)を見ると、
この4校が綺麗に2回ずつ出てくる。
イメージ 1

4校の中で水戸葵陵だけ優勝がないわけであるが、
このインターハイで葵陵が九学を破ったのは、
ある意味、近年の高校剣道界における事件だったと言える。

そしてその時、私はある言葉を思い出した。
それは、私が7月初旬に
水戸葵陵高校のIHの決起集会に行った時のこと。

最後に皆が叫んだ言葉は、

「打倒、九州学院!」

だった。

彼らは九学に勝つことにとことんこだわり、
それを一つの大きな目標にしてきたのだ。
同時に君島監督が私に力強く放った言葉が。

「葵陵は九学に勝てます!」
「寒川は岩切に勝てます!」

だった。
「勝ちます」ではなく、
「勝てます」と断言。
文法的には意志ではなく可能の形を使ったのである。
その自信のほどがうかがえた。

おそらく、九学の個々の選手を研究し尽くし、
それに対抗するための激しい稽古を重ねてきたため、
監督には確固たる勝算があったのだと思う。

そして、インターハイではその通りとなった。
打倒・九学を掲げ続けてきた水戸葵陵にとっては大変な快挙であり
半分がた目標を達成した。

そして普通で考えれば、王者・九学を破った水戸葵陵は
天下無双となるはずだったが。。。

そのあと島原に1-4という大差で敗れることになろうとは。


さて、優勝した高千穂。
これまでの特に九州学院との戦歴をたどると、
年末の青龍旗(勝ち抜き戦)で、高千穂は決勝で九学に敗れた。
しかも九学は副将・大将を温存する圧勝だった。
また2月の九州選抜。
高千穂は準々決勝で九学に1-3で敗れた。
そして、玉竜旗では高千穂が26年ぶりに決勝まで勝ち上がるも、
九学が岩切を温存したまま高千穂を破った。
高千穂は公式戦で九学に一度も勝ててない。

また、このIHで水戸葵陵に圧勝し、
準優勝となった島原。
今年に入ってからの島原の九学との対戦を見ると、
2月の九州選抜。
決勝を九学と島原が戦うも、3-1で九学の勝利。
3月に鹿児島で開催された大霧島旗では、
岩切抜きの九学に島原は0-2で敗れた。
全九州では、島原は準決勝で九学と当たり、
大将戦で岩切が志築を破って九学の勝利。
島原も公式戦では九学に一度も勝てていない。


次の表は、4大大会+九州大会における、
上記4校の対戦成績表である。

イメージ 2

剣道には相性というものもある。
高千穂、島原が、九学と相性が悪いのかどうかはわからないが、
少なくともよくはなかったのだろう。

そう考えると、
打倒九学の1点突破に命を賭けた水戸葵陵が、
高千穂優勝の、
あるいは島原準優勝の「お膳立て」をしたのかもしれない。


今年の高校剣道の勢力図は、
「じゃんけん」に似ている。

パーはグーに勝ち、グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝つ。

それまで九学は高千穂には全勝だったが、
葵陵が九学に勝ち、島原が葵陵に勝ち、高千穂が島原に勝って優勝。

「で、お前は何が言いたいの?」
という感じになってきてしまったが、

勝負は時の運。
しかし運を引き寄せるのも実力のうち。

だから、実力拮抗の中、
いろいろと主張する方は居られるが、
最後の最後に頂点に立った高千穂が
結局は、最終的に最も実力があったという結論となる。


今回は、若干支離滅裂な感じになり申し訳ありません。
次回は個人の成績について詳細に見て行きたいと思います。

【文中敬称略】
(次回に続く)

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いまさら、インターハイの記事かという感じですが。。
すでに、高校最後の大会としての国体ブロック予選の結果も出てきているのに。。


大変遅くなりましたが、今年の高校剣道の総決算として、
テーマを何回かに分けて書いて行きたいと思います。



その1.インターハイ・ベストバウト

それはなんと言っても、
団体決勝戦、
清家vs志築の2番勝負だ。

この試合には心底しびれた。


この日の志築は、まさに無双の強さで
決勝までの戦いを驀進していた。

準々決勝で水戸葵陵の寒川を、
そして準決勝では本庄第一の泉を、
圧倒的な力でねじ伏せたという表現がぴったりだ。
特に泉に決めたメン2本のド迫力には参った。

本庄第一の泉はここまで絶好調で、
予選で高知のあの東野兄から迫力の2本勝ち。
東奥義塾戦では大将戦で1本獲らねば負けという状況でしっかり勝利。
決勝TではPL廣から2本勝ち。
また準々決勝では強豪・龍谷と大将戦となるも、
あの中山相手に怒涛のメン2本を決めた。
「泉つえー」
そんな声が聞こえてきた。

さあ、その泉に対する志築、
あの長身から大きく振りかぶって、
泉の脳天を真上からクラッシュ!
そして審判の2本目の合図と同時に、
またまた大きく振りかぶっての飛び込みメンだ「ボコッ」。
ほぼ2振りで勝負をつけてしまったのには開いた口がふさがらなかった。
志築のメンは、頭上から叩きつけるように強烈だ。

もともと全国屈指の実力者である志築だが、
今日は特にすこぶる調子がよい。
力も漲っている。

そういえば、渡邉(元)監督が全九州大会の時に言っていた。
「志築はだいぶ力をつけてきたから、個人でも優勝は狙えると思っていました」
あの鬼の渡邉監督をして「だいぶ力をつけてきた」と言わしめたのだ。
春の選抜で緒戦敗退という屈辱から、どれだけ激しい稽古を積んできたのか。
その力がこのインターハイ団体で爆発した。

今日の志築は誰にも止められない。
そんな気さえしてきていた。


一方の清家はというと。

高千穂は予選リーグで、大社を相手に苦戦していた。
副将まで終わったところで0(0)-1(1)とリードされて清家が登場。
清家が2本勝ちしてチームが勝利という場面で、
清家がやってくれた。
試合時間2分半で怒涛の2本勝ち。
チームを救った。

しかし、大社も高千穂相手に、
1年生1人、2年生2人という若いチームでよくここまで頑張ったと思う。
来年が楽しみである。

清家のパーソナルデータを見ると、身長168cmとある。
いやいやウソでしょ。
もっともっと大きく見えるから不思議だ。

しかし高千穂の苦戦はこれで終わりじゃなかった。
決勝T1回戦の仙台育英戦。

高千穂は、先鋒が引き分け、
次鋒の古澤が2本勝ちをしたところまではよかった。
ここから地元・仙台育英の怒涛の反撃が始まった。

高千穂は、中堅が1本負け、副将が2本負け。
なんと1(2)-2(3)のビハインドで大将・清家にまわってきた。

さすがに清家と言えど、相手の伊藤も相当な実力者だ。
引き分けに持っていかれれば高千穂の夏は終わる。

ところが、清家がここでもまたとんでもないことをやってのける。
試合時間、先ほど同様2分台で2本勝ち!

今日の清家はたとえ誰が相手でも2本勝ちしてしまうような、
そんな気にさえなってきた。

準々決勝の安房戦でも、まさにその通りとなった。
高千穂リードで迎えた大将戦。
安房の山崎雅斗はこれまた関東屈指の強豪選手だ。
しかも2本取らなければならないとあって、猛烈に攻めてくる。

山、飛び込みドウからのメン!
清家の脳天をしっかり捉えたか!と思った瞬間、
清家の恐ろしい程の闘争心が
山崎を体当たりで場外へ吹っ飛ばした。
その前にも山崎を体当たりで倒している
清家の足腰の強さは脅威的としか言いようがない。

そしてその直後に、立て続けにメンを2本奪ったのだった。
試合時間はわずか38秒という結果にまた驚かされた。


前置きが長くなったが、
つまりは、志築も清家も特に今日は抜群に強い。
頂上対決に相応しい2人じゃないか。

しかし考えてみれば、この2人をIH個人戦で続けて破った
九学の長尾も素晴らしいということだ。


さて、団体決勝戦に話を戻す。

先鋒が引き分け。
次鋒が引き分け。
勝負は中堅で動いた。
個人戦で岩切に惜敗した高千穂の林がメンを決め、
貴重な1勝をあげた。
副将は引き分け。

島原にとっては何とも苦しい展開だ。

大将・志築がなんとしても勝たなければならない。
今日の志築なら負ける気がしない。
しかし相手が清家では話が別だ。
今日の清家も負ける気がしない。
負ける気がしない同士の勝負はいったいどんな展開となるのか。


いよいよ運命の大将戦が始まった。

「はじめ!」

審判の合図と同時に、志築がメンに飛んだ!
清家は待っていましたとばかりコテで押さえる。

志築は慌てることはない。
試合時間は延長を合せれば6分ある。
いくら今日の志築でも安易にメンに飛び込めば、
清家の餌食となる。

その後は、互いに相手をよく見る展開となった。


一足一刀の間合いから、
志築がメンに行くぞ!と一歩前に出て竹刀を上げる。

清家はメンを避けるために一歩下がって手もとを上げた。
志築がもう一歩前に出て今度こそメンに行くぞとフェイントをかける。

清家はさらに一歩下がって引きメンを打とうと大きく手元を上げた。

それは清家のノドがあらわになった瞬間だった。

「ずずーん!!」

志築の超ど級バズーカ砲が炸裂した。

志築の諸手突きが、清家の喉元に激しく突き刺さる。
ぐにゃり、志築の竹刀が曲がり、
清家の首が一瞬ガクンと崩れる。

その後すぐに清家が引きメンを放つも、
文句なしの志築の突きに白旗3本が上がった。


高千穂が勝負を振り出しに戻した。

その後も志築の引きメン、
清家の引きメンなど、
互いに惜しい技が次々と繰り出される。

打突の一本一本がまさに大ナタを振るっているかのような迫力だ。
当たれば真っ二つに斬られる恐怖感と緊張感の中で、
勝負は代表者戦に持ち込まれた。

両校を代表するのはもちろんこの2人。


さあ、泣いても笑ってもこれが最後の勝負。

代表者戦が始まった。

志築の飛び込みメンが、
真上から清家のメンを捉えたか。
間一髪で清家が下がり免れた。

志築の引きドウ!

志築の引きメン!

ドカンドカンと大砲が放たれるも、
清家が間一髪でかわす。


今度は清家の出ゴテ!

清家の引きドウ!

ズバンズバンと大ナタが振るわれるも、
志築は一歩も引かない。


志築、清家をコーナーに追い込んだ。
清家がたまらず手もとを上げたところに、
志築の強烈逆ドウ一閃!!

「バコーン!」

すかさず清家が、引きメン

「ボコッ!」

決めさせるものかと、
志築が清家をコーナーから場外へ突き飛ばす。

会場から思わず、
「うおー」
とどよめきが起こる。



さあ、開始線に戻った両者。

清家が一歩前に出てコテで牽制。

両者間合いが近いぞ。

中結どうしが交差する
超危険ゾーンだ。


何かが起こる。

固唾をのみ静まり返る観衆。
一瞬のまばたきさえも許されない。

どちらが勝つかなんて
この状況では全く想像すらできない。


清家が振りかぶる。
一瞬遅れて志築が振りかぶった。
相メンだ。


「メーン!!」


「わー!!!!」

会場が揺れた。


わずかに早く振りかぶった清家のメンに、
志築のメンは追いつかなかった。

清家が相メンを制し、
代表戦を制した。

勝負が決まった後も、
興奮冷めやらず。
私まで手の震えが止まらない感じだった。


「素晴らしい!」
勝った方も、負けた方も
最高の戦いを見せてくれた。

これぞ今回のインターハイのベストバウトに相応しい名勝負だった。


高千穂を全国レベルに押し上げ、
数々の栄光の歴史を築いてきたのが故吉本監督だった。
その偉大なる吉本監督の後を引き継いだ佐伯監督、
そして現監督の野口貴志氏。
大変な苦労だったに違いないが、
ようやくここで大輪の花を咲かせた。

そして、奇しくも26年前の高千穂優勝の時に、
ベンチを温めていたのが、
泣く子も黙る大阪府警の清家宏一。
父が高校時代に果たせなかった思いを息子が果たした瞬間でもあった。

ああ、これこそ筋書きのないドラマだ。
だからこそ、剣道は面白い。


【文中敬称略】
(次回に続く)

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■高校剣道クライマックスへ(1)

玉竜旗も終わってみれば九学の圧倒的な勝利だった。

春までは、

今年は九学と他チームとの差が随分と縮まった気がしていただけに、
今回の九学の26年ぶりとなる座り大将、
そう、破壊的とも言える勝利は、
今年最後の大舞台となるインターハイにおける
九学の優勝の可能性を一段と高め、
打倒九学を狙うチームに大きな打撃を与えたことは確かだ。

今回の玉竜旗でつくづく思うのは、
5人全員の調子が大会当日にBESTの状態となることが
いかに難しいことかということ。
しかし、もしそれができさえすれば、
まだまだ打倒九学の可能性はあるチームはある。

結論だけ先に言えば、
5人全員の力をピークに持っていき
自分の仕事をしっかりやりきるという条件付きで、

打倒九学候補は、

水戸葵陵
高千穂

さらには
島原
龍谷
育英
東海大札幌

の6チームを挙げる。
あくまで私の主観的で、
勝手な思い込みによる、
独りよがりの予想なので、
結果が異なってもどうかお許しください。

しかし
何度も言うが、
水戸葵陵と東海大札幌が予選リーグで当たるのはもったない。



さて、ここからは、
玉竜旗を見ての感想や、
インターハイに向けた展望など、
主にIH出場校について
徒然なるままに書いて行こうと思う。


まず、インターハイ5連覇を狙う九州学院。

今回の玉竜旗での九学は、
全員が王者に相応しい戦いをしたと思う。
うーん岩切は戦ってないか。。

いや、岩切もその姿がそこにあるだけで、
相手チームへの無言の圧力となっていたし、
岩切が後ろに控えているからこそ
近本が伸び伸びと力を発揮できたことを考えれば、
岩切もただ座っていただけではなく仕事をしたと言えるだろう。

今回の九学は、副将に近本、次鋒に長尾という、
予想を覆すようなコンバートで臨んだ。
しかし、結果的にこれがドンピシャにハマったのだ。
7回戦から出場した長尾だったが、
長尾は引きメンが冴えわたり3勝で負けなし。
近本は結局、佐日戦と高千穂戦の2試合に出場し、3戦全勝で、
岩切に回すことなく責任を全うした。

優勝後に米田監督に聞いた。

剣キチ「近本を副将、長尾を次鋒にした真意は?」

米田「それだけは聞かないでください(笑)。言えません。」

剣キチ「IHもこのまま行くのですか?」

米田「いや、また代えていくつもりです。」


この日の近本は本当に強かった。
絶好調の時の梶谷を見ているようなスピードとキレ。
出て良し、引いて良し。

7回戦
佐野日大戦で、
近本は相手副将の大平に引っ張り出された。
今大会唯一の副将でのタイ勝負となったが、
終盤、目の覚めるような逆ドウを決め、
さらに大平がメンに飛び込んでくるところを、ピシャリとコテで抑えた。

さらに大将の但馬に対しては、
但馬が手元を浮かして攻めてきたところを落ち着いてコテで抑え、
さらに、2本目の合図と同時にメンの2段打ちを決めた。
関東屈指の大将である、あの但馬をして、
まったく剣道をさせず、わずか1分で屈服せしめたのはまさに衝撃だった。

「今日の近本に勝てる選手はいないかも」
この試合を見て私はそのような確信めいたものを感じた。


決勝戦での近本の活躍は言わずもがなだが、思ったことを記していく。

その前に、高千穂の大将・清家について書かなければならない。

私は、彼の試合をこの大会ではじめて間近に見て、
清家はこんな強い選手だったのかと驚いた。
スピードもさることながら、
驚くべきは技の宝庫というべき多彩な攻め。
もう一つは安定感。
隙がないから打たれない。

福岡第一戦、育英戦ともに、
相手副将に引っ張り出されるというピンチに陥りながらも、
落ち着いて2人を抜き返して
見事チームを勝利に導いた頼れる大将。

飛び込みメン、出ゴテ、諸手突き、抜きドウ、引きゴテ、引きドウなど、次々と多彩な技を繰り出す。

私が最も驚いたのは、福岡第一の小松に抜きドウを決めた直後のメンだ。

一足一刀の間合いから、
清家が竹刀をクルリと回しながら、
小松は低い構えのまま、互いの距離をグイと詰める。
次の瞬間、小松の剣先が前に出る清家の喉元に向かって
猛烈なスピードで進んできた。
これはカウンター突きだ!!

小松の剣先が清家の喉に突き刺さる寸前だった。
清家が体ごと右に開いて間一髪で突きをかわす。
と同時に、小松のがら空きとなった面にすかさず竹刀を振り下ろした!
「メーン!」
この面は決まらなかったが、
この動きを見て、
清家の類い稀なる運動能力のすべてを悟ったような気がした。
全く恐ろしい選手がいたものだ。


話を戻す。

決勝戦。

九学は次鋒の長尾が古沢に見事な引きメンを決めて
1人リードのまま試合は進む。

九学の副将・近本に対するは、高千穂大将・清家。
二人とも父は日本を代表する剣道家。
その話はいったん置いておくが、まさにサラブレット対決である。

ここまでの試合を見てきて、
「今日の近本に勝てる選手はいないだろう」という予感と
「今日の清家は絶対に負けない気がする」とう二つの矛盾する予感が、
ただ見ているだけのお気楽な私の
心臓の鼓動をバクバクと増幅させた。

試合が始まった。

互いに慎重である。

鍔迫り合いからの引きドウで
先に会場を沸かせたのは近本だった。
近本のキレは半端じゃない。

こんどは清家が前に出て、相手を誘って誘って誘って
近本がたまらずに手元を挙げたところを、
抜きドウ!
さらに引きメン!
一本にはならないが
清家の技のレパートリーが披露され始めたぞ。

今度は鍔迫り合いから、
ふっと力を抜いた瞬間に炸裂した、近本の引きメン!
一瞬でも隙を見せると
どこからでも襲ってくる近本。

しかし清家も負けていない。
近本がコテで牽制してきたところを、
コテ返しドウだ!
惜しい。

ここでホイッスルが鳴る。
延長戦に突入。

清家が鍔迫り合いから、
クイっと体を右に90度回転させながらの引きメン。
やや惜しい。
そしてまた鍔迫り合い。
またもや清家がパッと体を右に90度回転させた。
また引きメンだろう。
普通はそう思う。

ところが清家が放ったのは、
近本が引きメンを避けようとして空いた、
逆ドウだった。
「バチーン」
命中したが、やや浅かったか。
まったく驚かせてくれる選手だ。

しかし、最後に
それを上回る驚きを見せてくれたのは近本だった。

鍔迫り合いから、
近本が逆引きドウ!
そのまま1歩下がった次の瞬間。
なにっ!?

それは近本の強靭な足腰が生み出した
アンビリーバブルな逆噴射だった。

「ボコッ!!」

近本が引きドウをした刹那、
清家のがら空きになっていた面を
近本の竹刀がすかさず捉えたのだった!

逆引きドウからの、飛び込みメンを決めるまでのタイムは
わずか0.7秒(私の感覚なのでテキトウだが)。

「うおー」
会場から唸り声が起きた。
凄すぎる近本の1本だった。

九州学院、史上初の4連覇が決まった瞬間だった。


しかし、高千穂はここまでよく頑張ったと思う。

試合後、野口貴志監督に話を聞いた。

剣キチ「おめでとうございます」

野口「ありがとうございます」

剣キチ「決勝まで来ると思ってましたか?」

野口「もちろんです。優勝を狙っていたので悔しいです」

剣キチ「今年はいい選手を揃えましたね」

野口「選手たちは誰にも負けないぐらい稽古してますよ」

剣キチ「大阪府警にも出稽古に行ったとか?」

野口「そうなんです。ボコボコにされたけどあれはいい経験でした」

私は、26年ぶりの決勝進出を果たした野口監督は、
さぞかし喜んでいるだろうと勝手に思って話しかけたが、
これほどまでに、本気で優勝を狙い、
決勝で敗れたことを、これほどまでに悔しがっているとは思わなかった。

素晴らしい監督だと思った。
野口監督自身の現役時代のことも、このブログで何度も紹介しているが、
中2で全中個人優勝(中3時は内村良一)。
長崎南山高時代は1年時に玉竜旗優勝。
中大時代にインカレで個人優勝と、
学生時代に何度も日本一を経験してきた男だけに一切の妥協がない。

春の大会以降、相当な強化を行ってきたことが結果となって現れた。
もちろん、今度のIHも優勝候補の一角である。


さて、
今回の九学VS高千穂には、
さまざまな因縁が込められており、とても興味深い。


まずは、玉竜旗翌日の西日本スポーツの見出し。
「復活準V高千穂」
そこまではよい。
次がすごい。
「都会から神話の里へ、大将清家けん引」
このタイトルを見て何を意味しているのか
パッとわかる若い人がいたなら、
剣道ツーではないだろうか。

清家の父は、大阪府警の清家宏一氏。

このブログにも過去何度となく登場した偉大な選手である。
清家宏一は高千穂高校から大体大、そして大阪府警と進み、
2005年の全日本選手権でBEST8に入り、
世界剣道の日本代表の大将もつとめた。
こんなにも強い清家であるが、
高校時代はベンチを温めていたというのだから
当時の高千穂がどれだけ強かったのか。

今回の九学は26年ぶりの座り大将(大将の出番がなく優勝)。
そして高千穂は26年ぶりとなる決勝進出。

26年前に座り大将で優勝したチームというのが、
まさに清家の父が補欠としてベンチを温めていた、
1991年のあの高千穂史上最強と言われたチームだ。
メンバーは先鋒から浅田健二、溝川幹敏、甲斐昌太、佐藤博光、吉井泰裕。
このメンバーで玉竜旗、インターハイと圧倒的な強さで2冠を達成したのだった。

この時の玉竜旗は、
高千穂は準決勝で九学と当たるが、
先鋒の浅田が3人抜き+引き分け、次鋒の溝川で勝利と
全く九学に試合をさせなかった。

あれから26年。
ベンチを温めていた選手の息子が
大将となって決勝の舞台に立ったというだけで、
胸が熱くなる。
そして、九学は26年前に高千穂にボコボコにされた
リベンジを、26年ぶりの座り大将という形で果たす。

しかも、九学の先峰の重黒木の父も、
九学の大将の岩切の父も2人とも
高千穂高校出身なのだから、これまた感慨深いものがある。

岩切の父は、国際武道大学教授で剣道部監督の岩切公治氏。
高千穂高時代は、1984年に国体3位入賞。
その後、国際武道大学時代にインカレ個人3位と活躍する。

重黒木の父は、神奈川県警師範の重黒木英俊氏。
高千穂高時代は、大将としてインターハイ団体優勝。
国士舘大でインカレ優勝と活躍する。

そして、近本の父は、全日本選手権者で愛知県警の近本巧氏。
私が2009/12/26のブログ記事で、「史上最速のメン」と惚れ込んだあの近本氏である。

こうしてみると、この決勝戦は、
本当にサラブレットだらけで、父たちの時代のさまざまな因縁や
ライバル関係なども引き継いでいる。
そのへんのことも頭に入れながら見ると、
また違った楽しみにもなる。


おっと、話がだいぶそれた。
ほとんど近本と清家の話で終わってしまったが、
今日のところはこのへんにして続きはまた。

そうこうしているうちにインターハイが始まってしまう。

【文中敬称略】
(明日に続く)

この記事に

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2017玉竜旗大会直前に(2)

直前にといいながら、もうすでに1日目が終わってしまいました。。
とりあえず、書いたものをそのまま掲載して、その後に
1日目で印象に残った試合についていくつかコメントします。
いよいよ明日・明後日と盛り上がりますね。


剣キチが勝手に選んだ優勝候補

【九州学院】 昨日掲載

【水戸葵陵】 昨日掲載

【島原】
島原の選手を見てきてぼんやりと思っていたことがある。
それは、1年見ないうちに別人のように逞しくなっているということだ。
剣道そのものが逞しくなったと言う意味もあるが、物理的な身体の大きさである。

高校生だから今さら身長がそれほど伸びるわけではない。
大きくなるとは、まさに1年間で見違えるような筋肉の鎧をつけたということだ。

島原の稽古は、直接拝見したことはないが、
剣道時代さんのDVDで見たり、島原出身の選手たちからさんざん聞かされた。
基礎基本を徹底的に叩き込むと同時に、基礎体力をつけるのだが、
まず、そのキツさは半端じゃない。

今年の玉竜旗のパンフをなんとなく眺めていて「あれ?」と思い、
昨年のパンフと比べて仰天した。

なんと、
黒川雄大(2年)の体重が、この1年で、
56kgから70kgに14kgも増えているではないか。

これは何かの間違いじゃないか。

そう思って
他の選手についてもいろいろひっくり返して調べてみると、
大将:志築 70kg → 75kg
副将:林田 61kg → 70kg
中堅:下田 65kg → 70kg
次鋒:荒木 58kg → 65kg
先鋒:黒川 56kg → 70kg
補欠:木塚 57kg → 70kg
補欠:前田 不明→ 70kg

黒川以外は1年半前となるが、驚いたのなんのって。
玉竜旗パンフでは大雑把な5kg単位で書かれているので
さほど正確ではないにしても、
全員がわずかの期間でこんなにも大きくなっている。
まさにこれが強さの秘密の一つじゃないだろうか。

今回玉竜旗のオーダーの7名中6名は長崎の地元出身。
黒川のみが他県だが、福岡だからお隣であり、
他の強豪校から見れば
ほぼ全員が地元と言っても過言ではない。
しかも中学時の戦績は、ほぼ全員が県大会レベルなのだ。
その子たちを高校入学後、
だいたい2年間で全国トップレベルまでもって行く。
しかも毎年毎年。

いったい渡邉(元)監督は、どんなマジックを使っているのだろうか。
これは高校剣道界の七不思議でもある。

その一端が、
この体重の推移データに現れるいるのだと私は思う。

さて、島原の戦力であるが、
毎年「昨年よりはチーム力がダウンする」と言っている割には、
やっぱり今年も相当に強い。

先日の全九州大会の個人戦には本当に驚いた。

なんせ、島原から出場した3人全員が
準決勝まで勝ち進んでしまったのだから。
4人中3人が島原という衝撃。

そして九州チャンピオンには、
岩切でも、百田でも、志築でも、谷口でもない、
2年生の黒川雄大(島原)が輝いた。

これにはさすがの渡邉(元)監督も、「いい誤算だった」と振り返る。

しかし、黒川のスピードには圧倒される。
小柄ながら、極めてパワフルで打突の速さが半端じゃない。
剣先も強そうだ。
打突時に体勢がやや崩れる荒削りなところはあるが、
まったく末恐ろしい選手が誕生したものだ。

この先鋒は、他校にとっては脅威でしかないだろう。
下手すればIH出場校レベルであっても
5人抜きされる可能性はあるのではないだろうか。

そして、全九州3位に入賞した志築(しずき)と林田。

志築は、この春まで、若干不安定なところがあったが、
やっぱり島原だ。夏までにレベルを一段上げてくる。
準決勝で百田に敗れ、また団体戦では九学・岩切に敗れはしたが、全くの紙一重。
時と場所が変われば結果は違ってくる可能性も高い。
いずれにしても、全国屈指の大将であることには違いない。

そして副将の林田。
林田は、高校に入り上段をとりメキメキと実力を伸ばし、昨年新人戦では長崎チャンピオンに。
そして全九州3位。頼りになる副将だ。

1年半ぐらい前に、林田拓朗という選手の名前を見て、「ん?」と思った。
一昨年の全日本学生チャンピオンとなった筑波大の林田匡平を
関東選手権で破ったのが、同郷で同学年、上段選手の林田拓郎(國學院大)だった。
長崎に林田姓が多いのはわかるが、
同じ長崎出身で上段で名前も漢字一文字違いの「林田拓郎」と「林田拓朗」。
スゴイ縁だなあと思う。
ちなみに、この全九州大会、
島原の「林田拓朗」が準々決勝で対戦した高千穂の選手は「林拓郎」である。

話を戻すと、志築、林田、黒川、この3人がいる島原を攻略するのは
並大抵のことではない。
あと2人は中堅が下田、次鋒が荒木である。

島原はHパート、組合せの一番端の第2シードである。
同じパートには、習志野、麗澤瑞浪
新潟商、愛知桜丘、筑紫中央、弥栄などが並ぶ。
(日本航空も福岡舞鶴も緒戦で敗れた)



九学、水戸葵陵、島原に続くチームは。

【東海大札幌】

今年の東海大札幌は、ハッキリ言って全国を狙えるチームを作ってきたと思う。
同校については6月30日の記事で詳しく説明したので、ここでは簡単にしたいが、
それにしても、IHの組み合わせ、予選リーグNは地獄すぎる。
東海大札幌、桜丘、水戸葵陵が当たるといのだから。
まあ、やってみなければ分からないとは言え、
そのためにもこの玉竜旗では何としても
上位入賞、いや優勝を狙って行きたいところだろう。

東海大札幌は、IH北海道予選で、
宿敵・恵庭南を5-0で破っての優勝には度肝を抜かれた。
恵庭南が決して弱いわけではない。
恵庭南は準決勝で札幌日大を破っての決勝進出だった。
その札幌日大は、今日行われた玉竜旗の初戦で福岡の強豪、福岡舞鶴を破った。
それはそれで驚いたのだが。

東海大札幌の強さは、北海道の常識のさらに上を行く。
団体決勝でパーフェクト勝利を果たしたのみならず、
なんと個人戦のBEST4を独占してしまったのだからとんでもない。

IH予選から、廣澤を大将に、そして小田を中堅にもってきた。
小田のような強い選手が中堅にいること自体が相手から見ればコワすぎる。
この2枚看板はそうとうに手ごわい。
さらに副将の川口翔太郎が実力者だ。安定の後ろ3人。
だからと言って前2人(おそらく、途中から芳賀・栄花が先鋒・次鋒にくるだろう)で
ポイントをとろうと思っても、この2人がまたそう簡単には勝たせてくれない。

北海道札幌はBパート。
本日の初戦では、松江東に対して先鋒の松下が5人抜きを達成。
パートを勝ち上がるには、国士舘、福工大城東あたりを破る必要がある。
もしパートを勝ち上がったら、次の準々決勝で九学とあたることになるだろう。


【龍谷】

龍谷と言えば、高校4大全国大会14連勝中の大横綱・九州学院に、
今年の魁星旗、15大会ぶりに土をつけたヒーロー(あるいはヒール)として
高校剣道界に強烈なインパクトを与えたチームとして注目された。
しかも大将の宇野を温存させたままの勝利。

さらに次の準々決勝では、なんと関東の強豪・本庄第一を先鋒の鈴木が
あろうことか5人抜きをしてしまったことに、重ねてびっくり。
その後、準決勝で水戸葵陵に敗れるも、
とんでもない破壊力のチームが出てきたと思ったものだ。

龍谷は先日の全九州大会では、九学にリベンジされるも
準優勝というのはやはり実力チームである証明だ。

龍谷はメンバーの実績も凄い。

大将の中山遼平は、京都・久御山中出身。全中団体3位のメンバー。
昨年の県新人戦で佐賀県個人優勝。九州選抜では個人3位入賞。

副将の谷口祥磨は、福岡の今宿出身。中学時代は道連全国大会個人2位。全中団体3位の大将。
IH予選個人優勝。

中堅の宇野舜昨は、大分の三芳出身。中学時代は全中個人3位。大分チャンピオン。

次鋒の鈴木涼也は、愛知の玄武道場出身。中学時代は東海個人優勝、全中個人BEST16。

先鋒の安藤千真(2年)は、愛知洗心道場出身。久田松の後輩である。

登録上は控えだが、おそらく出場してくるであろう藤田大征は、佐賀の三瀬出身。中学時代は道連個人BEST16。そして今回のIH個人代表となっている。

安藤以外は全て3年生。佐賀の地元出身者は藤田のみ。

あの2007年、歴代最強チームですら、西村、川崎、栗山、海野は全員が地元・佐賀県出身。
三雲のみが県外(大分)出身だったことを考えると、
よくぞこれだけの選手を全国から揃えたものだ。

今回の玉竜旗では龍谷はDパート。
このパートを勝ち抜くには、まずは磐田東、履正社、土浦日大あたりが立ちはだかり、
その後、順当にいけば筑紫台との勝負になりそうだ。
もしも九学と当たるとすれば準決勝である。



【筑紫台】

何と言っても大将・百田尚史のポテンシャルの高さにある。
ここで、玉竜旗伝説の勝負師S先生に福岡の状況を聞いた。
「福大大濠も東福岡ももちろん強いけど、俺は総合力で筑紫台だと思うよ。実にバランスがいい。百田の状態も良いし、水田という核弾頭がいるから。彼が暴れまくるとかなり手ごわいことになるだろうね」

なるほど。
IH福岡県予選では百田が個人優勝したが、中部ブロックでは水田千尋が優勝。
新人戦でも県大会は百田が2位、中部ブロックでは水田が2位。
競合ひしめく福岡県ならびに福岡中部ブロックにおいて
常に個人でも上位に食い込む2人は、筑紫台の強力2枚看板である。
さらに、先鋒の的場大和も中部ブロック3位と個人入賞している。

今年のIH出場は福大大濠が射止めたが、
中部ブロック総体、昨年の県新人戦、中部ブロック新人戦の3大会は、
筑紫台が、東福岡、福大大濠、福岡第一、福工大城東らを抑えて優勝している。

なお激戦区・福岡県の今年の国体メンバーは
井上・木島(福大大濠)
百田・水田(筑紫台)
中山(東福岡)
である。

筑紫台のいるDパートには、
龍谷、東海大浦安、履正社、磐田東、土浦日大らがいる。
順当に行けば龍谷とガチンコ勝負になるのではないだろうか。

----------------------------------

さて、玉竜旗の第一日目が終わった。

今日の注目の戦い。


Hパート2回戦
●日本航空vs日章学園○
日本航空は関東大会決勝で
水戸葵陵を代表戦まで追い詰めた関東屈指の実力校。
河合という頼りになる大将を擁し、本大会も優勝候補の一角と見ていた。
一方の日章学園は、高輪の甲斐先生が昨年から赴任し監督を務めるチーム。
IH宮崎予選ではBEST8。
日本航空有利と見ていたこの1戦は、日本航空中堅・金子のところで
日章の大将・長友を引っ張り出した。日章学園ピンチ。
ところが、この長友がここから怒涛の3人抜きで日本航空を破った。


Hパート2回戦
○筑紫中央vs弥栄●
筑紫中央の白水監督と弥栄の梅沢監督は、国士舘大の同級生。
筑紫中央は、超激戦区、福岡中部ブロックに埋もれて
全国であまりその名を耳にすることはないかもしれないが、
玉竜旗では一昨年がBEST16、昨年がBEST32と、
福岡ではない他の県にいたならば、IH出場レベルにあることは間違いない。
一方の弥栄は、ここ数年メキメキと実力を上げてきて、今年は関東神奈川予選で
桐蔭学園を破り、また関東大会ではBEST8に入り注目を浴びた。
この両者の戦いは、弥栄がリードしていたが、筑紫中央の大将・川島が2人を抜いて勝利。
福岡の層の厚さ、レベルの高さを思い知るような戦いだった。


Fパート2回戦
●宮崎日大vs土浦湖北○
宮崎県で高千穂に次ぐ2位の宮崎日大。茨城県で水戸葵陵に次ぐ2位の土浦湖北。
両者の対決は、宮崎日大が一歩リードするも、最後は湖北の実力者、渡辺が2人を抜いて逆転勝利。2回戦でこれだけハイレベルのチームが当たるのも玉竜旗ならではの醍醐味だ。


Eパート2回戦
●立教新座vs育英○
立教新座の中嶋は埼玉チャンピオンであると同時に関東屈指の強豪選手。
そして先鋒の渡部もIH個人出場者。立教はIH団体予選を決勝で逃したが、中嶋を中心に全国レベルのチームと言える。その立教が育英とどこまで勝負できるだろうか非常に興味深かったのだが、結論から言えば育英は強かった。である。
育英の2枚看板、大将の横藤(近畿チャンピオン)と、副将の松澤(近畿個人3位)が登場することもなく、前3人で立教を破った。今年の育英はやっぱり強いぞ。
もしかすると、育英が最後まで残るということもあり得る。


では、明日、福岡マリンメッセでお会いしましょう。

【文中敬称略】

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