華麗に舞った剣士たち

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高校剣道

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■春の高校剣道総括と夏への展望(2)

前回からの続き。

㉑仙台育英(宮城)

東北選抜チャンピオン。
今夏の宮城インターハイを控え気合いが入る。
選抜県予選(新人戦)、団体は圧勝、個人でも出場した2人(伊藤由・佐藤)がワンツーを獲った。
レギュラー5人がそれぞれの出身県で個人優勝経験あり。大将・伊藤由侑(福島伊達中)、副将・大西翔也(群馬沼田剣桜会→栃木小山三中)、中堅・石井大夢(秋田土崎中)、次鋒・伊藤泰仁(宮城東向陽台中、あらた道場出身)は中学東北チャンピオン、そして先鋒・佐藤伶皇(宮城門脇中)。
全国選抜では1回戦で土浦日大に惜敗。
魁星旗は石井を大将に持ってきたが、4回戦で福大大濠に敗れた。実力がありながらも、全国を舞台になかなか成果が出せていないが、ポテンシャルは高い。何より地元インターハイがこれから夏に向けて彼らをもっともっと強くするだろう。


㉒本庄第一(埼玉)

昨年の関東予選・IH予選ともに、
本庄第一の大将・井田光哉は、個人戦で同じ2年生の中嶋将太(立教新座)に準々決勝で敗れ、
またIH埼玉予選でも本庄第一は準決勝で立教新座に敗れた。
昨年、立教の中嶋は2年生ながら、関東で個人BEST8、IH個人選にも出場と、この学年を引っ張る存在だったが、本庄の井田がついに新人戦を制し埼玉No.1の座を手にした。
先鋒の新井雄大(1年)と中堅の泉英大(2年)がともに北本中出身で、2人とも中学時に埼玉チャンピオンとなっている。中堅の畑中源太も埼玉出身(越谷栄進中)。副将の山本悠真が富山速星中出身で、中学時は県個人優勝、北信越個人2位の記録を持つ。そして大将の井田が青森田名部中出身で青森チャンピオンである。
全国選抜では緒戦が九学という不運もあったが、九学にわずか1本しか与えない健闘を見せた。
続く魁星旗では、3回戦鹿児島商に苦しめられるも大将・井田が2人抜きで勝利。5回戦では東海大札幌を井田が登場することなく撃破しベスト8。
最後は龍谷に5人抜きされたのが何とも後味が悪いが、全国上位を目指す地力はある。


㉓中央学院(千葉)
中央学院については3/30の「魁星旗2日目雑感」で書かせてもらったので
ここでは詳しい紹介は割愛するが、一つだけ付け加えたい。
中央学院先鋒の宮内友也は、全国選抜、魁星旗の2大会で20試合を戦った。
これは水戸葵陵の青木に次ぐ全体で2番目の記録。
そして13勝2敗5引き分けと、先鋒として本当に頼りになる成績を挙げた。
特に魁星旗5回戦、水戸葵陵・青木との戦い。
2人はここまで何度も剣を交えているが、直近では青木が勝利(全ての勝敗を覚えていないので間違っていたら申し訳ないのですが、青木が何度も勝っている印象があります)。
しかしここで青木に勝ったのは宮内にとって大きい。
中央学院と言えば大将の藤田の強さが光るが、ここに素晴らしい先鋒を得て益々期待がかかる。


㉔長野日大(長野)

長野日大の選抜BEST16進出は素晴らしい。
全国選抜26回の歴史があるが(うち第20回は震災で中止)、
1999年の松代高校以来18年ぶり3度目のBEST16入りだった。
選抜大会の長野県予選で、
長野日大は、決勝戦で5(10)-0(0)勝利という
とんでもないことをやってのけての優勝と知って驚愕した。
こんなことってあるのだろうか。
それで今回、個人的に長野日大がどこまでやるのかと注目していたのだが、
想像以上の働きをしたと思う。
今回の長野日大の1回戦の相手は東海チャンピオンの地元・桜丘だ。
1-1で代表戦となり、長野日大からは副将の塩崎大道が出てきて、
桜丘の強豪・小柴相手にメンを奪って勝利。
2回戦は平工業に勝利。そして3回戦の相手は桐蔭学園。
失礼ではあるが、大差も予想されたが、なんと大将まで5連続引き分けで代表戦に。
今度は鈴木応が出てきたが、最後は森山に屈す。
しかし桐蔭学園と五分に渡りあったのは、今後の自信にもつながったのではないだろうか。
もしインターハイでもう一つ勝ってBEST8となれば、長野初の快挙となる。


㉕習志野(千葉)

選抜代表になれなかった悔しさを魁星旗で晴らす。
3回戦の相手は、選抜で島原を破った磐田東。その磐田の野瀬に対し大将の高橋匠がメンを決めた。4回戦では地元の秋田商をこれも高橋が決める。5回戦は西大寺。江場田・柴尾が各々1人ずつ抜いて危なげなく勝利。準々決勝では水戸葵陵に敗れるもBEST8は立派だ。
しかし、今年の千葉は激戦区だ。
新人戦(選抜予選)のBEST4が、東海大浦安、中央学院、習志野、東京学館浦安。そして安房がいる。学館浦安は現2年生が全中3位、関東優勝チーム。まったくどこが勝ってもおかしくない。


㉖安房(千葉)

選抜出場は逃したが、かなり力があるチームだ。昨年末の黒潮旗では水戸葵陵を破って、また若潮杯では育英を破っての優勝は大いに評価できる。
特に野中翠、佐藤蓮、そして大将の山崎雅斗の3人は頼りになる存在だ。
千葉予選を勝ち抜けばIHでも上位を目指せるだろう。ただし、習志野のところでも書いたが、今年の千葉予選はかなりの激戦区だ。所監督が退職されてもぜひ安房の伝統を守りぬいてもらいたい。


㉗高山西(岐阜)

麗澤の牙城だった岐阜からの出場。
全国選抜では1回戦で北信越チャンピオンの敦賀に対し、
大将戦で伊崎理倫が同じく大型選手の谷口からメンを奪い追いつき、
さらに代表戦でもメンで逆転勝利を収めた。
しかし続く東海大札幌戦では0-3の完敗。
ところが驚いたのは魁星旗だ。
3回戦で強豪・学館浦安との大将戦を伊崎が制し、
4回戦で小禄を破り、5回戦、日本航空とまたしても大将戦となる。
河合に対して伊崎がメンで勝利。
準々決勝で土浦日大に敗れるもBEST8入りしたのは素晴らしい。


㉘小牛田農林(宮城)

仙台育英と同様、宮城インターハイを控え気合いが入る。
大将の傳法優生と、先鋒の水沼太希の2人が昨年からのレギュラー。
全国選抜では、1回戦から玉島に苦しめられるが、代表戦で水沼太希がいい仕事をした。
続く高松商には圧勝。3回戦で水戸葵陵に対して0-5という屈辱を味わうが、
BEST16と希望が見えた。現状ではライバル・仙台育英に若干リードされているが、
宮城インターハイと言えば、1990年、佐藤充伸選手が高2で個人優勝、団体でも3位入賞している。古豪・小牛田の復活に期待する。



【個人篇】

剣キチの選ぶ、
春の段階での注目選手16強(勝敗は全国選抜・魁星旗のもの)
しかしまだまだ実力が安定しておらず、対戦するたびに結果が変わる、
混沌とした状態である。あくまで現段階での勝手な評価なので悪しからず。
(ここからは新学年で表記します)

ヾ篝斃λ(九州学院3年)
 2勝2敗4分 勝率50.0%(主な勝利:桐蔭/森山、敗戦:育英/横藤、龍谷/中山)

寒川祥(水戸葵陵3年)
 6勝1敗2分 勝率85.7%(主な勝利:龍谷/宇野・東海札幌/小田・廣澤、敗戦:島原/志築のみ)

小田宗治(東海大札幌3年)
 2勝1敗2分 勝率66.7%(主な勝利:履正社/元岡、敗戦:葵陵/寒川のみ)

せ崔柯威(島原3年)
 4勝1敗1分 勝率80.0%(主な勝利:葵陵/寒川・杉田・筑紫台/百田、敗戦:磐田東/野瀬)

タ校確祇(桐蔭学園3年)
 4勝1敗3分 勝率80.0%(主な勝利:佐野日大/但馬・長野日大/鈴木、敗戦:九学/岩切)

ΣFN喫(育英3年)
2勝1敗2分 勝率66.7%(主な勝利:九学/岩切・高千穂/清家、敗戦:明豊・武蔵のみ)

中山遼平(龍谷3年)
2勝1敗2分 勝率66.7%(主な勝利:九学/岩切・長尾、敗戦:浜名/長田)

百田尚史(筑紫台3年)
 4勝3敗0分 勝率57.1%(主な勝利:帝京第五/山崎・明豊/武蔵、敗戦:佐野日大/但馬×2、島原/志築)

岩部光(水戸葵陵2年)
 11勝2敗3分 勝率84.6%(主な勝利:九学/長尾・東福岡/新井、敗戦:東海札幌/廣澤、高千穂/清家)

武蔵治斗(明豊2年)
 2勝2敗1分 勝率50.0%(主な勝利:育英/横藤、敗戦:筑紫台/百田、球磨工/向坂)

清家羅偉(高千穂3年)
 2勝1敗2分 勝率66.7%(主な勝利:水戸葵陵/岩部・西大寺/森木、敗戦:育英/横藤)

向坂浩哉(球磨工3年)
 5勝2敗1分 勝率71.4%(主な勝利:明豊/武蔵・埼玉栄/蒔苗、敗戦:奈良大附/玉垣、明豊/中尾)

近本太郎(九州学院3年)
 6勝1敗0分 勝率85.7%(主な勝利:葵陵/青木・桐蔭/南波・育英/高橋、敗戦:龍谷/谷口のみ)

長尾和樹(九州学院3年)、
 4勝2敗4分 勝率66.7%%(主な勝利:育英/松澤・浜名/長田・安房/山崎、敗戦:葵陵/岩部・龍谷/中山)

但馬圭太郎(佐野日大3年)
3勝1敗2分 勝率75.0%(主な勝利:筑紫台/百田×2、敗戦:桐蔭学園/森山のみ)

案鏐納佑(浜名3年)
 1勝0敗2分 勝率100.0%(主な勝利:土浦日大/比佐)

その他の有望選手(北から)、
○廣澤快(東海大札幌3年) 、
○伊藤由侑(仙台育英3年)、
○比佐和(土浦日大3年)、
○高橋徹太(新潟商3年)、
○井田光哉(本庄第一3年)
○藤田瑞輝(中央学院3年)、
○曽我部伽南(国士舘3年)、
○伊崎理倫(高山西3年)、
○長田悠樹(浜名3年)、
○野瀬俊也(磐田東2年)、
○久能嘉以(日吉ヶ丘3年)、
○元岡純(履正社3年)、
○盪獲亀(奈良大附3年)、
○山崎将治(帝京第五3年)、
○谷口祥磨(龍谷3年)、
○宇野舜昨(龍谷3年)、
○林田拓朗(島原3年)、
○重黒木祐介(九州学院2年)、
○中尾泰真(明豊2年)、
○朴木涼馬(樟南3年)、

甲乙つけがたい、またここに紹介できない強豪選手はまだまだ全国に大勢いるので、
夏に向けてこれからさらにじっくりと見て行きたい。
私にとっては楽しみでしかない(笑)

【文中敬称略】

この記事に

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■春の高校剣道総括と夏への展望(1)

GWに入ったところで、
春の高校剣道の総括と、夏に向けての注目選手やチームなどを
私なりにまとめてみました。
2回に分けて掲載します。


今年の高校剣道の最大のポイントは、
絶対王者が王座を守りきるか、
それとも誰かがその牙城を崩すかという一点だと思う。

魁星旗、秋田を舞台についにその時が来た。
龍谷が絶対王者の牙城を崩す、
そしてその龍谷を水戸葵陵が破り、
結局優勝をさらったのは島原だった。

この「事件」は、
ここ4年間続いた絶対王者が一強支配する専制体制から、
戦国時代への突入を予感させるものだった。


【団体篇】

現段階でチームの総合力から言えば、やはり、

ゞ綵3惘(熊本)

⊃絽涌陵(茨城)

の2校が頭一つリードしている。

それに続くのが、
E膰(長崎)
の驚(佐賀)
ヅ豎ぢ膸ニ(北海道)
Χ涌学園(神奈川)
筑紫台(福岡)
┛蕷(兵庫)
あたりだろうか。

しかし昨年までとは少し違う。
上記のチームを含め、力が拮抗しているため
混戦となることは否めないだろう。

さらに
佐野日大(栃木)
土浦日大(茨城)
浜名(静岡)
帝京第五(愛媛)
球磨工(熊本)
らも上位を狙うポテンシャルを持っている。

また、今年ももちろん強豪校には違いないが、
来年はもっと楽しみという視点で言えば、次の3校が注目。

東福岡(福岡)
→1年生4人で選抜3位入賞!
明豊(大分)
→オール1年生で、選抜2回戦進出、魁星旗では育英を破る!
鞍愿津(静岡)
→オール1年生で、選抜で島原を破る大健闘!


さて、今回は、今まであまり紹介してこなかったチームを中心に、
少しずつコメントを書いていくとする。


の驚(佐賀)

この春の龍谷には本当に驚かされた。
選抜では1回戦で1本も取れずに浜名に敗れる。
不完全燃焼にさぞかし悔しい思いをしただろう。
その悔しさが龍谷を覚醒させた。
魁星旗。4回戦で強豪・佐野日大に1人残して勝利。
そして5回戦で龍谷の前に立ちはだかったのが九州学院。
ほとんどの人が九学勝利を疑っていなかったはずだ。
九学先鋒の諸岡が2人抜きと快調に飛ばす。
ところがこの日、中堅に入っていた谷口祥磨が九学の先次中を3タテ。
その後、今度は副将の中山が、九学の2枚看板を次々と破る快挙!
最後に岩切に対してコテを決めた瞬間、会場からは歓喜と絶望の入り混じる、
どよめきが起きた。
この時の中山は地上最強のスーパーマンに見えた。
調子に乗る龍谷は、準々決勝では本庄第一を先鋒鈴木がなんと5人抜き!
最後は水戸葵陵に惜敗するも、九学を破る千金に値する3位入賞だった。

しかし、今年の龍谷のポテンシャルは計り知れない。
中学時代の実績で言えば、
全中個人3位の宇野舜昨(大分東部中)、
道連全国個人2位の谷口祥磨(今宿少年剣道部)、
東海チャンピオンで全中BEST16の鈴木涼也(愛知西尾中)、
道連全国大会個人BEST16の藤田大征(佐賀三瀬)、
久御山中全中3位の立役者である中山遼平(京都・久御山中)
全員が実績を背負って龍谷に集まってきた。

そして高校へ入ってからは、
昨年IH予選で2年生にして県個人3位に入った谷口が一歩抜き出た存在だと思いきや、
中山が新人戦で個人優勝、そして九州選抜で個人3位入賞を果たし、中山が一歩リードと思いきや、魁星旗で大将を務めた宇野が、先日行われた春季佐賀県大会で個人優勝。
いったい誰が龍谷No.1なのかわからない。
おそらく、大将は宇野か谷口なのだろうが、中山と魁星旗で本庄第一相手に5人抜きというとんでもない偉業を成した鈴木も含め、龍谷の戦力が想像以上に高い。
私の今現在の見るところで言えば、龍谷は、九学、水戸葵陵、島原に次ぐ、あるいは肩を並べる存在であると思う。


球磨工業(熊本)

熊本第2位で通過し念願の選抜出場を果たした球磨工業。
特に大将の向坂浩哉の強さが光った。
スピードといい試合勘といい素晴らしいが、
何よりの魅力は、取らねばならない時に取れる勝負強さだ。
全国選抜では、1回戦、八幡工業との大将戦をメンで破り、
2回戦では、明豊の1年生軍団と対戦。
大将戦で中尾に不覚を取り代表戦になるも
武蔵に対して目の覚めるような会心の出ゴテを決める。
続く3回戦では日吉ヶ丘に僅差で敗れBEST16。
魁星旗では1回戦から大将戦を向坂が2本勝ち。
そして3回戦は埼玉栄戦。
栄の副将に引っ張り出されるが、2本勝ち×2で勝ちすすむ。
4回戦で奈良大附属には完敗。
向坂まで繋げる剣道が徹底できれば、(最低でも五分の状態で大将に繋げれば)
もっと上位も目指せるチームだと思う。


影吉ヶ丘(京都)

私にとってノーマークだったが、近畿王者は強かったと改めて思った。
選抜では1回戦・2回戦と危なげなく勝利。
3回戦で球磨工と対戦。
個人的には球磨工有利かと思っていたが、1本で勝利した。
大将の久能嘉以はなかなか安定感がある。
全国BEST8は素晴らしいし、その実力を十分に持っているチームである。
久能嘉以(山科)、福井尚志(太秦)、大久保建(常磐野)、柏葉郁人(山科)、小関由馬(九条)と5人全員が地元の京都出身。
兵庫の育英、京都の日吉ヶ丘、大阪の履正社と、関西チームが熱い。


架正社(大阪)

5名中4名が小曽根剣友会出身。
彼らの高校になってからの試合を見るのは初めてだったが、
粒ぞろいでかなり鍛えられている凄いチームが大阪から出てきたぞという印象だ。

特に森島諒はメンの伸びがよい、引きメンも鮮やか!
と思っていたら東海大浦安の代表戦で元吉に決めたコテも絶品。
この選手を次鋒に置いておくのは戦略か。
大将の元岡純も安定感がある。
最後、東海大札幌をあと一歩まで追い詰めたのは惜しかった。
全員姿勢もいいし、とにかく真っ直ぐなメンを徹底的に練習していることがうかがえる。
今回BEST16だったが、もっと上位を狙える可能性がある。

しかし先日の大阪私学大会では
清風が優勝、2位がPL、履正社は3位だったようだ。
大阪のレベルが例年にも増して高い。


嚇豎ぢ膺生(東京)

選抜、IHを含めた全国初出場を果たした東海大菅生。
坂田正晴監督が1987年に監督に就任してから、
IHは高輪が19回、国士舘が7回、國學院久我山が2回
選抜は高輪が17回、国士舘が3回、巣鴨商が2回と、
高輪が圧倒的に強く、いつも惜しいところまで行きながらも
苦汁を舐めてきた東海大菅生。
今回の春の選抜は東京予選2位ながら、
坂田監督31年目にしてようやく叶ったチャンスだった。

1回戦の相手は鹿児島の新鋭・錦江湾。
珍しい青胴同士の戦いだ。
先鋒戦、錦江湾の新小倉も惜しいところを攻めてきたが、松崎がいいメンを決めた。
そして執拗に攻めて2本取った水村のコテ。
大将の松澤はどっしりと構え落ち着いている。頼りがいのある大将らしい大将だ。
1年生3人がなかなかよいので来年も楽しみだと思う。
先日行われた都の関東予選では、ついに国士舘を破って優勝を果たしたというニュースに
私はある意味納得。
こうなると、初のインターハイ出場の可能性も膨らんできた。


甘膰驚羆(長崎)

島原中央の名を全国選抜で見る時が来るとは。
今や長崎と言えば島原。毎年全国トップに食い込んでくる。
さらには西陵がいる。
この全国選抜では過去に長崎南山と西陵の2校が優勝。
そんな剣道強豪県にいながら頑張ってきた成果がようやく実った島原中央。
もちろん選抜初出場だ。
しかし全国の壁は厚く、帝京第五に緒戦敗退。
続く魁星旗では3回戦で横浜商大高に敗退。

ところが、その後、4/16に事件が起こった。

なんと長崎県高等学校剣道選手権大会で、
島原中央が優勝したのである。私は最初耳を疑ったが間違いではなかった。
島原が準決勝で佐世保北に代表戦で敗れ、
その佐世保北を決勝で破った島原中央が優勝。
しかも決勝戦までの5戦(25試合)で無敗の完全優勝だ。

魁星旗優勝の島原を抑えてのインターハイ出場の可能性も出てきた。
そうなれば島原中央がIHでも台風の目となるだろう。

(次回に続く)
【文中敬称略】

この記事に

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■2017全国高校選抜を振り返る

決勝戦
九州学院vs水戸葵陵

葵陵は1回戦からここまで一切オーダーを変えず。
先鋒から青木、貝塚、岩部、杉田、寒川で完全固定。

一方の九学は、同じオーダーは6試合中2試合のみ。
で、決勝でも変えてきた。

米田監督は、実戦の中でベストオーダーを検証しているようだ。

決勝での、最大の変化は、先鋒に近本を持ってきたこと。
近本の調子がすこぶる良いので、先鋒で確実な1勝。
その1勝さえあれば、優勝が見えると計算したのだろうか。

そして副将の長尾と中堅の重黒木をチェンジしたこと。
重黒木と岩部の対決を避けたのか、あるいは長尾と杉田を避けたのか、
それとも、長尾なら岩部に、重黒木なら杉田に勝てると踏んだのか。
真意は謎であるが、いずれにしても軍師・米田の必勝の戦略である。

そうやって、オーダーの変更を
観客としてあれこれ推測するのも選抜ならではの醍醐味だ。


さあ、2チーム10名が並んで挨拶をする。

壮観だ。

この10人の中には、ダブりカウントなしで、
全中個人チャンピオンが2人、2位が1人、3位が1人、BEST8が1人。
道連全国大会個人2位が1人、小学生全国チャンピオンが1人、BEST8が1人。

ここまでくると、
さながら高校剣道版
東西オールスターゲームだ。

出身地で言えば、
神奈川2人、千葉2人、香川2人、熊本1人、茨城1人、愛知1人、岐阜1人と全国区。
まさに、全国の猛者たちが日本一を目指して、両校に集結したという図式がうかがえる。

監督が力づくでかき集めたと揶揄する人もいるが、監督がどれだけ誘っても強制力などない。

結局進学先を決めるのは生徒本人である。たとえ授業料が全額免除だったとしてもだ。
期待できない環境であれば、選手はその学校を絶対に選ばない。

選手に選んでもらえるだけの指導力と実績と環境を整えてきた監督や学校関係者、そして多くの卒業生とその父母たちが懸命になって築き上げてきたブランドだからこそ。

そういう意味で私は全国から強豪選手が集まってくることを否定はしない。
公立高校ではそうもいかずに歯がゆい思いをされていることもまた一方での事実ではあるが。。。


決勝戦の前に、
ここまでの水戸葵陵の戦いを振り返る。

先鋒は青木心磨。
青木は芳名館→阿見中と、葵陵レギュラー唯一の茨城出身者だ。
先ほども記したが、葵陵は今回の選抜も魁星旗も、
5人のオーダーを最後まで変えずに固定した。
葵陵にはこの他にも、牧野、波間という強力な2年生がいるため、
誰がレギュラーになってもおかしくない。
今回の青木は選抜・魁星旗を通して、確かに負けもあったが、
全出場選手の中で最多の25試合をこなし大活躍した選手の一人と言えるだろう。


水戸葵陵であるが、今大会は、
1回戦で崇徳(広島)に対し前3人で決め、
2回戦は磐田東を大将戦で倒し、
3回戦は小牛田農林に5-0勝利。

そして準々決勝で東海大札幌を迎える。
この激戦については、「全国選抜を振り返る 廚傍したが、
絶体絶命のピンチから、寒川の大車輪の活躍によって勝利を引き寄せた。

準決勝は東福岡戦。
東福岡は大将の中山豊樹をはじめ、新井以外の4名が1年生。
その中山が、ここまで代表戦で2度の勝利を上げ、
今大会見事優秀選手に選ばれた。
大した1年生選手がいたものだ。

その東福岡が、水戸葵陵に対して先鋒戦を制した。

次鋒戦引き分け。

中堅の岩部で返しておきたい水戸葵陵、
岩部がまず引きドウを決めたかと思えば、
その後、新井がコテを決め、勝負に。

岩部、新井の手元が上がったところへ、
すかさず飛込み気味の抜きドウを決めた。
なんと頼りになる1年生なのか。

副将戦も引き分けて、1(2)-1(2)のまま大将戦となる。

寒川vs中山
手数は中山の方が多いが、
寒川は確実に有効打を狙っている。

中山がメンに飛びこもうと腕を上げようとした瞬間、
寒川が下からチョンと手首のスナップでコテを押さえる。
腕が上がる瞬間だったので、バッチリ決まった。

そして、2本目の合図と同時に、
今度は寒川が、軽く表から竹刀を払って、
目にも止まらぬスピードで飛び込んだ!
メーン!!
それはあっという間の出来事だった。

ここまでの中山の活躍と彼の実力からすれば、
「もしかすると」という気持ちはあったろうが、
寒川の強さは半端じゃあなかった。

東福岡は1年生4人のチームでよくぞここまで頑張ったと思う。
まったく末恐ろしいチームだ。


さあ、泣いても笑っても
今年度初の日本一が決まる。

決勝戦が始まった。


先鋒戦
互いにスゴイ気迫だ。

中盤、青木が飛びこみメンに行く。
惜しい、少し浅いか、
そのあと諸手突き!
これが近本の突き垂れを命中!
しかし、旗は上がらず。
そして、こんどは近本がコテに来たところ、すかさず相コテメン!
副審がスーッと白旗を上げるがこれも1本にならず。
決勝戦だけあって、旗は重めである。
近本が鍔迫り合い反則を1本取られる。
ここまで青木がずんずん押している感じだ。

試合は早くも終盤戦。
互いに一足一刀の間合いから、
青木は剣先を下げて、近本は中段のまま、飛んだ。
相メン!!!
青木は剣先を下げた分、コンマ1秒遅れた。
完全に近本のメンだった。

さすがは近本。
育英の高橋に決めたメン、
桐蔭の南波に決めたメン、
そして葵陵の青木に決めたこのメン。
いずれも完璧、目の覚めるようなメンだ。
このメンを打たれては仕方ない。というところだろう。

しかし、青木のメンとツキも惜しかった。
決勝戦でなければ1本になっていたのではないだろうか。


次鋒戦は黒木裕二郎(2年)vs貝塚脩悟(2年)

貝塚が相コテメンだ。
惜しい。
こんどは貝塚が我慢しきれず引きメン、
決まらなかったため、中途半端なところで止まってしまった。
そこをすかさず追った黒木のメンが決まる。

葵陵ピンチ。

黒木のコテ。
そこを貝塚がコテ抜きメン。
惜しいが、貝塚の竹刀が道着にひっかかり決まらず。

結局黒木の1本勝ちとなったが、
勝負はほぼ互角だったと思う。


次鋒が終わった段階で早くも九学が優勝に王手をかけた。

中堅戦
長尾和樹(2年)vs岩部光(1年)

まず思うのは、岩部は本当に1年生なのかということ。
いやその前に、岩部は本当に高校生なのか。
高段者とまでは言わないが、五段・六段の大人の風格というか落着きだ。

ふと気を抜いた長尾の竹刀を叩き落とす岩部。
そして長尾のコテに対する小手返しメン。
寒川の剣道にもダブるところがある。

長尾も何度も鋭いコテを放つが、岩部はビクともしない。

そして長尾が前に出て何かをしようとしたところだった。
岩部のロケットダッシュ・スペシャルメガトン面が炸裂!!
「メーン!!」
見事に決まった。
何というメンだ。

しかし長尾も負けてはいない。
今度は岩部が動いたところを、長尾が飛び込んでメン!
惜しいメンだったが1本にならず。

中堅戦は、岩部の1本勝ちに終わった。

2(1)-1(1)
勝負はこれでわからなくなったぞ。


副将戦、重黒木祐介(1年)vs杉田龍太郎(2年)

重黒木の上から叩きつけるようなコテ!
杉田はなんとしても1本返したいところ。
しかし杉田の攻撃はことごとくいなされる。
杉田の方が一回り大きいが、
重黒木はどっしりとしていて、鍔迫り合いでもビクともしない。
互いに有効打のないまま引き分け。


さあ、いよいよ本大会を締めくくるビッグマッチだ。

岩切勇磨(2年)vs寒川祥(2年)

剣キチが勝手に決める、
2017年春における、高校生の頂上対決。


静まり返る会場。
観客席の咳払いさえも聞こえる緊張感。

大将戦が始まった。

岩切が牽制気味のコテ。
寒川、待ったましたとばかり、そのコテを返してのメンだ!
おおお。
岩切が伸びあがっている寒川をすかさず一押し、
寒川その場に倒れる。
寒川惜しい。
タイミングはバッチリ。

寒川、今度は飛び込みメン!
速い!
やや軽かったか。有効打とはならず。

そして、またまた、岩切がコテ!
それを返して寒川がメン!
バシ!!
先ほどと全く同じタイミング、同じ展開だ。
しかし今度は寒川の竹刀がさらに深く強く、岩切の頭部を直撃した。
今度こそ入ったか。

旗は上がらず。
決勝戦だけあって旗は相当重い。


ここまでは明らかに寒川が押している。
「行けるかもしれない。いや行ける!」
水戸葵陵の応援団が熱くなる。

今度は寒川が逆ドウだ!
しかし岩切は見切っていた。
あっ。これは、森山戦と同じ展開か!
がら空きとなった寒川の面を岩切の振りかぶった竹刀が襲う!!
しかし寒川は慌てずしっかりと防御。

「ふう。。」

まばたきすらできない、まさに息を飲む展開だ。

1本取らなければならないはずの寒川だが、落ち着いている。
というか、岩切の方が気持ちで攻めている。
寒川をジリジリとコーナーに追い詰める。

追い詰められた寒川がフェイント気味に一歩前に。
今度は岩切が飛び込んでメン!
惜しい。

寒川の戦略、
それは
「岩切の単発の攻め(=飛び込みコテ、あるいはメン)を待って、得意の返しメンで決める」
じゃないだろうか。
確かに、ここまで惜しい返しメンを2本。
もう一回岩切が同じコテに出てくれば
今度こそ返しメンが決まるだろう。
そんな予感さえ覚える。

どう攻める岩切。
しかし残り時間は刻一刻となくなっていく。
どうする寒川。

時間がない寒川が、
攻めてグイと前に出たところ、
今度は岩切のコテだ。
バシっ!
このタイミングで寒川は得意の返しメンが打てず。
岩切のコテか?
いや旗は上がらず。

この緊迫した試合。
1勝リードしている方が精神的に何倍も余裕なのが普通だが、
連覇のかかる九学・岩切にとって、
永遠に終わりが来ないほど試合時間が長く感じられたのではないだろうか。

しかも相手は寒川、
一歩間違えば一刀両断される恐怖。
何を打っても返されそうな気がしたに違いない。
チョンと小手を打ってみたり、メンに行くフェイントで鍔迫り合いとなったり、
ここで主審が岩切の反則を取る。

さあ、
寒川、本日一番の大きな賭けにでる。
「はじめ」の合図とともにメンに飛んだ!!!
メーン!
絶妙のタイミングだ。
うーん。旗は上がらず。

だが、岩切も負けていない。
またしても寒川をコーナーに追い詰め、
今度はコテを的確に当ててきた。
さすがは岩切。
惜しい。そしてそのまま寒川を場外に突き出す。

寒川、場外反則。

「ピー!!」

試合終了のホイッスル。

二人の立派な戦いに万雷の拍手。
と同時に九学の栄誉を讃える拍手。

九州学院、優勝!


しかし、この優勝は今までの4回とは違い、
苦しんで苦しんで何とか手にした勝利だった。
そういう意味では、九学の選手たちはプレッシャーに押しつぶされず、
本当によく頑張ったと思う。


九州学院の5連覇はもちろん前代未聞。
空前にして絶後(とは言えないかもしれないが)、
今回の記録が途絶えたら、また5連覇というのは50年後か100年後か。
それぐらいありえないとてつもない大記録である。

63回の歴史を持つインターハイでさえも、
今の九学が連覇街道を走りだすまでは、
2連覇が最高記録(最近では2002-3年の田中達也らの桐蔭学園)。

全国選抜では、
九学自身が2006年(西村英久ら)、2007年(有馬幸平ら)の時の2連覇が最高。

ありきたりな、俗物的な言い方をすれば、
「九学の記録はどこまで続くのか?」

これだけは言える。
少なくとも来年も優勝の可能性は大きい。


ところが。
この数日後に行われた魁星旗での九学まさかの敗退。
ついに九学の連覇記録が途絶えた。

しかし、これが正常な状態なのかもしれない。
九学の選手たちにとっては、これで肩の荷が少し軽くなったと思えばよい。
そして夏に向けて思いっきり自分たちの剣道をやってほしい。
結果は後からついてくる。


今回の選抜大会の決勝戦を私は5回以上見た。

総じて言えるのは、剣道が美しい。
剣道とは、かくも美しく華麗な競技であったのか、
そんなことを改めて感じさせる立派な戦いだった。

平たく言えばこうだ、
「強い高校剣士はカッコいい!」

高校剣士の皆さんは、
夏本番に向けて頑張ってください。
私はどこかで見ています。

【文中敬称略】

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■2017全国高校選抜を振り返る

九学に対し桐蔭学園がオーダーを変えてきた。
中堅の北村拓丸を先鋒に起用。
そして、南波・中澤が一つずつ下がって、次鋒・中堅に。

冨田監督が、北村を潮田中後輩の重黒木とぶつけるのを避けたのか、
あるいは先鋒の児嶋に対して狙って北村をぶつけたのか。
真意はわからないが、対九学の冨田監督の戦略であろう。

いずれにしても、桐蔭学園が九学を倒すためには、
副将まで五分できて、
大将の森山に賭けるというところじゃないだろうか。

先鋒戦の北村vs児嶋は引き分けに終わった。
これは、冨田監督の狙い通りだったのだろうか。

しかし、桐蔭にとっての脅威は
なんといっても次鋒の近本だろう。

次鋒戦が始まった。
近本に対して、1年生の南波賢人がよくくらいついている。
桐蔭にとっては、南波が近本と引き分けてくれれば御の字だろう。
頑張る南波。
よし、あと5秒で試合終了だ。

と、思ったところで、
近本が間合いを詰める。
南波が思わず動いた瞬間、
狙いすましたかのように
近本が飛んだ!!

おおお、
稲妻のようなメンが炸裂!!

南波が「あっ」と思った時には、
もう近本がメンを打ちぬいていた。
鮮やかすぎるメンだ。これは近本を褒めるしかない。

南波、あと5秒に泣いた。


中堅戦。
九学の重黒木に対するは桐蔭・中澤知大。
中澤は明徳義塾中の出身。
中学時代の高知は高知中の天下で、
なかなか全国で活躍する場がなかった中澤であるが、
今こうして桐蔭学園のレギュラーとして全国の舞台で立派に戦っている。
中澤としては一年下の重黒木に対して、何とかここで意地を見せたいところだろう。
重黒木は、離れてよし、くっついてよし、
何度か惜しい打突があったが、
結果は引き分け。


副将戦。
九学・長尾vs桐蔭・高橋舜。
高橋も1年生だ。

しかしいつ見ても高橋は大きい。
中学卒業時に187cmとあるが
現在は190近いのではないだろうか。
長尾が小さく見える。
長尾も見上げる相手にやりづらそうだ。

高橋の剣道はまだ粗削りな、
どちらかと言えば高校時代のヘンリーを見ているようである。
この高橋が、どっしりと構えて相手を威圧していく厳しさを身に付ければ、
そうとう怖い存在になると思う。
いずれにしても、この恵まれた体格は今後が楽しみである。

おっと。
高橋、惜しいメンだ。
一本にはならなかったが、
長尾の防御の上からでも当たってしまうのには驚いた。

副将戦も引き分けに終わった。


さていよいよ大将戦。

岩切勇磨 vs 森山竜成

この注目の一戦を「ぜひとも見たい!」と
楽しみにしていた人は大勢いるだろう。
見ている方も心臓が高鳴る。

「はじめ!」

1本返さなければならないという状況で、
森山は果たしてどのような戦いを展開するのか。

開始と同時に、スーッと懐に入った森山。
意表を突かれた岩切の手元が上がる。

右にかつぎ気味に振りかぶった森山が、
目にも止まらぬ速さで
斜め左下45度に竹刀を振り下ろす。

「ビシャッッ!!!」

岩切の左胴を強打した。

逆ドウ炸裂!

おっと逆ドウをとらえた森山の竹刀が抜けない。
岩切の足に絡まった。

あっ!!
その瞬間、森山のメンががら空きだ。

そこをすかさず岩切、
引きながらのメーン!!!

「うおー」
大歓声が起こる。

好機を絶対に逃さない岩切の見事なメンが決まる。
あっという間の出来事だった。

赤旗3本で残心を決める岩切とは対照的に、
バランスを崩した森山はコートに四つん這いに倒れた。

しかし勝負はまだ分からない。

「2本目!」

森山がまたスッと間合いを詰める。

岩切が動いた瞬間。
森山の目にも止まらぬメンが、ストーンと岩切を襲う!

メンありか。

いや、旗は上がらない。
タイミングはバッチリだったのだが、やや軽かったか。
旗は重い。
惜しい。

その後、数合激しい打ち合い。

鍔迫り合いから、
森山がピシャッ!今度は鋭い引きゴテを放つ。

そこを岩切がすかさず追いかける。

「メーン!!!」

勝負あり。

岩切・森山のゴールデンマッチは、わずか20秒、
あっという間に岩切の2本勝ちに終わった。

しかし、2人の力量の差がそれだけあったわけでは決してない。
私の印象では紙一重だ。
ただ、この試合に限って言えば、
岩切の方が試合を大切にしたということではないだろうか。

森山のあの逆ドウは不用意だったと指摘する人もいる。
しかし、岩切から1本とらなければならない状況だからこそ、
一か八かの勝負を挑んだのだろう。
しかし、飛び込み逆ドウはリスクが大きすぎることもまた事実である。


さて、九学にとって
いよいよ5連覇がかかる決勝戦。

対するは水戸葵陵。
相手にとって不足はない。

私に限らず多くの剣道ファンが、
この2校の決勝戦を熱く思い描いていたのではないだろうか。

九学の5連覇と同じぐらいの興味は、
準決勝の岩切vs森山に続く、
2人の偉大な大将の戦いだろう。

あくまで現時点における剣キチの独断と偏見ではあるが、
岩切vs寒川は、これこそが高校剣道界の頂上対決だ。

さあ、勝負の行方は。

(今回は短めでしたが次回に続く)
【文中敬称略】

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2017全国高校選抜を振り返る

九学の3回戦の相手は浜名。
浜名は、「全国選抜をうらなう」でも書いたが、楠、長田という強力な2枚看板を有し、
静岡勢としては初の全国選抜入賞も目指せるチームとして注目してきた。
しかし、この全国選抜において浜名は不運にも、
極めて過酷な組み合わせに直面していた。
1回戦が龍谷、2回戦が土浦日大、3回戦が九州学院。
決勝トーナメントと間違えてしまうレベルだ。

さて浜名は1回戦の相手、龍谷に対し、
副将の長田が中山にメンを決め、この1本で勝利した。
選抜は1回戦で沈んだ龍谷だったが、
この数日後の魁星旗では、王者九州学院に、
4大大会において4年ぶりに土をつけ一躍、大注目のチームとなる。
その龍谷を完封した浜名を褒めるべきだろう。

浜名の2回戦の相手は土浦日大。
土浦日大は、続く魁星旗では3位入賞を果たしたやはり実力校。
副将の長田に回ってきたところで0-1のビハインド。
しかし、浜名の真骨頂はここからだ。
副将の長田で追いつき、
楠がなんと、あの強い比佐に対してメン・コテの2本を奪って
見事な逆転勝利を勝ち取ったのには驚いた。
この2人がいれば、もしかすると九学にも対抗できるのでは。
多くの人がそんなふうに思ったのではないだろうか。

3回戦 九学vs浜名
今日の近本は、たとえ誰であろうとも触れば火傷するレベルの強さだ。
先鋒引き分けの後、近本がストレート勝ち。
次鋒の2本勝ちはチームにとってズシリと重い。
中堅が引き分け。
九学リードのまま、副将の長尾が登場。
ここで浜名の長田が1本でも返しておけば、あるいはという場面だったが、
九学の長尾は強かった。メンと反則で長田を退けた。
この段階で浜名の春は終わった。

しかし、浜名は確かに、春日井に春の旋風を巻き起こした。

そして、もう一つの静岡代表の磐田東がすごいことをやってのけていた。
本大会でも屈指の優勝候補だった島原を1回戦で下してしまったのである。
しかも5人全員が1年生というから驚いた。
島原戦は、先鋒から大将まで5引き分け。
代表戦は、島原のあの志築に対し、磐田東は1年生の野瀬俊也である。
野瀬は大阪の蒲生中出身。中学時代は大阪2位、全中では個人戦BEST16。
この野瀬の執念のコテが炸裂!!!
代表戦をものにした。

しかし続く2回戦で水戸葵陵に大将戦で惜しくも敗れる。
1回戦が島原で2回戦が水戸葵陵とは、浜名にも劣らぬ過酷な組み合わせ。
何か静岡に恨みを持った人が決めたような組合せだ。

しかし、その逆境をものともせずに頑張った浜名と磐田東は、
静岡の星であり、今後がますます楽しみなチームである。


さて九学の準々決勝の相手は育英。

育英は選抜では8年ぶりとなる準々決勝進出だ。
ここまで日本航空、高千穂、秋田商と強豪チームを破って勝ち上がってきた。
大将の横藤、そして1年生副将の松澤の2人は鉄壁のコンビ。
さらに今回中堅に入っている1年生の榊原がよい。
日本航空を相手に、育英は榊原の1本で勝利した。
また前半戦のヤマだった高千穂戦は、大将戦で横藤が清家からメンを奪って勝利した。

さて、この育英に対して九学は、
先鋒が引き分けの後、
次鋒は絶好調の近本が、
高橋がメンにくるところ、しっかりと受けてドウを返す。
近本の反応はすこぶるよい。
圧巻は2本目。
高橋が剣先を下げてグッと間合いに入る。何かを狙ったのだろう。
しかし、その間合いは近本にとっては一足一刀圏内だった。
素早く飛んでメンを打ちぬいた。

剣風は決して似ているとは言えないが、
このスピードは父譲りなのではないだろうか。

私は、父の近本巧氏をかつて日本最速のメンを打つ男と勝手に認定した。
あの凄まじい稲妻のようなメンを間近で見たら驚愕しか覚えない。
2003年の全日本選手権の近本巧選手のメンはまさに神技。
私は雲の上の人を見るように、遠くから憧れの眼差しを向けていた。
それだけに、数年前に大阪で初めて巧氏と話ができた時には大変嬉しく思った。
全日本選手権のあの衝撃の時、息子の太郎選手はまだ3歳。
父の日本一の雄姿を覚えているのだろうか。
太郎選手は父を尊敬していることには違いないだろう。
何かのインタビューで太郎選手が、
「将来は愛知県警に入って全日本選手権で優勝したいです」と言っていた記憶がある。
父とはタイプは違うが、九学での地獄のような武者修行が彼を大きく伸ばしているに違いない。

今さらだが九州学院はとんでもなく選手層がぶ厚い。
岩切、長尾の後ろ2人はまず不動だろう。
そして昨年からのレギュラーである黒木と
2年生エースの重黒木が中堅あるいは次鋒に入る。

先鋒を誰にもってくるかというところが問題だ。
昨年の先鋒は鈴木雄弥が八面六臂の活躍をした。
一昨年は2年生の梶谷が史上最強の先鋒と言っても過言ではない強さを見せた。
先鋒が勝つというのは、九学の勝利の方程式であったはずだ。

しかし、今年はその先鋒に悩む。

岩切、長尾、黒木、重黒木ともう一人。
候補は大勢いる。
近本太郎に加え、九学中出身の今福、師岡。そして児島の新3年生。
さらには、新2年生には、九学中出身で全国道場選手権個人2位の深水皓斗、
そして東松舘大将の小川大輝もいる。
考えてみればとんでもない贅沢な悩みだ。

しかし、今回の選抜の様子を見れば、
近本が先鋒として、昨年の鈴木に匹敵する仕事ができると確信する。


さて話を戻そう。

育英戦、
中堅が引き分けて、
副将は長尾の登場だ。
相手は松澤尚輝。1年生の中では全国屈指の選手だろう。
松澤は茨城の結城尚武館出身。そう、国士舘大の宮本敬太の後輩である。
茨城から遥々育英に剣道留学だ。
しかしここは長尾が一枚上手、二段打ちのメンを見事に決めた。
大将戦を待たずして九学が勝利を決めた瞬間である。

大将はこれも屈指の大将である横藤が、
岩切の出端にコテを決め1本勝ちする健闘を見せた。


さあ、全国選抜もいよいよ大詰めに入ってきた。

九学の準決勝の相手は、久しぶりに3位以内入賞を果たした桐蔭学園。

桐蔭学園は大将の森山竜成が絶対的な存在だ。
堂々とした剣風。何よりも肝の座り方が違う。まさに大将の器である。

森山は歴代の大将の面々、そう、例えば、
菊川省吾、杉本健介、雨谷武蔵、田中達也、成田辰訓、村上雷多、田島純一といった錚々たるメンバーにも肩を並べる実力とポテンシャルを有していると思う。

今回の選抜でも、
初戦の青森北は、4-1の大差で勝利したが、
2回戦からは、大将の森山が奮闘し僅差を制してきた。

2回戦の星稜戦は大将まで5人が引き分け。
代表戦となるも森山が落ち着いて鍋谷にメンを決め勝利。

3回戦の長野日大戦も先鋒から5引き分け。
本日2度目の代表戦を森山がやはりメンで制した。

そして準々決勝の佐野日大戦。
この試合も副将まで4引き分け。
大将戦で、やはり関東屈指の大将である但馬をメンで倒した。

3試合連続で森山が決めた。
逆に言えば、3試合で勝ったのは森山だけという
若干の不安を残して九学との対戦を迎えた。


九学vs桐蔭学園

面白いと思ったのは、この試合を戦う10名の中に、
2014年全中団体優勝の潮田中(神奈川)メンバー4人が入っているということだ。
当時の潮田中、
大将の森山、副将の南波、中堅の北村、先鋒の重黒木の4人が
つまり安房に行った佐藤蓮以外が、九学と桐蔭学園に集まってしまったのだ。

さて試合の方であるが、先鋒が引き分け。
そして次鋒戦では、本日絶好調の九学・近本がメンで先制する。
この1本のまま、大将戦を迎えた。

3年前の全中個人チャンピオンの岩切と
全中団体チャンピオン大将の森山。
さらに言えば3年前の関東中学校大会、個人チャンピオンと2位の2人。
中学時代から、まさにこの学年の代表する2人である。
団体戦としてはもちろん、個人的にも非常に興味深い試合だ。

さて、勝負の行方は。

(次回に続く)
【文中敬称略】

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