華麗に舞った剣士たち

剣道で記録と記憶に残る少年〜青年〜中年剣士を追いかけます

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■関東学生新人戦にむけてのメモ2

昨日の続き。

今年の優勝候補のメンバーの予想も含め、
もう少し詳しく見て行く。
パンフレットが手元にないのであくまでメンバーは私の予想の範囲である。


○筑波大

2年生が、加納誠也(桐蔭学園)、佐藤祐太(九州学院)、松井真之介(佐野日大)、元吉雄弥(埼玉栄)。
1年生が、星子啓太(九州学院)、松賢士郎(島原)、橋本将輝(帝京第五)といったところだろうか。あるいは、白鳥湧也(東海大浦安) 、遅野井匡(水戸葵陵)あたりが入ってくるのか。

今年の関東および全日本団体に出場した1・2年生は星子と松井のみ。
昨年は加納と佐藤が出場。この4人は堅いだろう。さらに昨年の新人戦に元吉が出場。

2年生の4人はそこそこのレベルにあると思う。
しかし勝負強さという点で言えば、他校に比して飛び抜けているわけではない。
今まで見てきて最も安定感がある2年生は佐藤だろうか。

筑波が優勝するためには、2年生が他の強豪に伍して戦い、
1年生がポイントゲッターとして活躍するというシナリオである。

星子は押しも押されもせぬスーパールーキー。
ここまでの戦績は23戦して負けは2敗。
負けたのはいずれも個人戦の準決勝で、国士舘の宮本と専修の平野である。
個人戦は優勝しない限り必ず誰もが1敗はするので、
そういう意味では、星子のここまでの戦いはパーフェクトだ。
新人戦出場の強豪たちの中でも星子は最強だろう。
ただ星子のガンガン攻める姿を期待していたファンにとっては、
ややフラストレーションが溜ったようであるが、
団体戦ではリスクを冒してまでも攻めるだけが能ではない。
技術・スピードに加え、戦い方までも熟知した安定感抜群な選手である。

1年生には、他にも松崎、橋本、白鳥、遅野井と言った高校時代のスターが揃う。
彼らの大学デビュー戦を早く見たいものである。

筑波は中大、国士舘とどう戦うか。
星子のポジションにもよるが、
中大戦では丸山、本間、国士舘戦では中西、福居とは勝負しない。
その前でリードしていれば勝算は十分あると思う。

あとは、同じ左下ブロックでも、
明治、駒澤あたりが波に乗ってきた場合には怖い相手となるだろう。


○国士舘大

2年生が、中西港(清風)、福居義久(水戸葵陵)、岡健士朗(龍谷)、石田宏平(小牛田農林)、佐藤拓弥(高山西)、松本諒(新潟第一)、小川絋夢(洛陽工)、山田崚平(東海大浦安)といったところだろうか。

とにかく国士舘の2年生にはポテンシャルの高い選手がズラリと揃っている。
そういう点で言えば、1年生は落合皓一朗(国士舘)だけということもありうる。

1年生には、八木聖真(国士舘)、伊藤玖太朗(国士舘)、奥村優太(東海札幌)、森越進(麗澤瑞浪)、高木英亮(水戸葵陵)らもいるが、おそらくメンバーに入ったとしても落合+1名がいいところだろうか。

とにかく中西と福居の2枚看板は強力だ。
世田谷六大学では大将が中西、副将が福居だったが、今回はどうだろう。

勝率で言えば福居だ。
今年度の公式戦で、福居は16戦してわずか1敗は素晴らしい。
記憶に新しい全日本団体の準々決勝・鹿屋戦でも曽田に1本勝ち、
世田谷六大学新人戦では吉武に2本勝ちを収めている。
安定感がハンパでないと同時に、貴重なポイントゲッターでもあるので、
やはり大将ではなく、副将かもっと前に置いてポイントを稼ぐという役割もありだと思う。
2つ上の宮本に憧れ広島から水戸葵陵に進学し、宮本を追って国士舘の門をたたいた福居。
宮本に負けず劣らず、類稀なる勝負勘を持った選手だと思う。

中西は豪快に勝負に出るという印象。だからか引き分けが少ない。
見ていて気持ちがいいのだが、
今までここぞという勝負所で星を落とすことも多々あった。
中西があの剣風で勝負強さを身に付けたら鬼に金棒だ。

松本は5月の東京都学生選手権でチャンピオンとなった。
私も彼のことは名前しか知らなかった。
高校時代は新潟第一の大将として、インターハイ出場(予選リーグ敗退)、北信越大会2位。
団体戦は殆ど負けなしの活躍をしたが、全国的な知名度ではなかった。
しかしこの東京都学生選手権で一気に名を轟かせた。
この大会は各大学の1・2年生と非レギュラー部員が中心となる。
そのため、これからの学生剣道を占ううえで私は注目している。
ちなみに昨年の優勝者は、中大の染矢だった。
国士舘大はこの大会大活躍。
3位に山田崚平、BEST8に佐藤拓弥、土屋良介(2年・甲府南)、
生沼新(3年・小山)と、上位8人中5人を国士舘が占めたのだ。

また、今後を占うバロメーターである世田谷六大学新人戦でも
国士舘は今年も優勝。
上記に名前が挙がっていないが、私個人的には、
国士舘高校卒で今2年生の小山涼、谷広大、森銀平らの活躍する姿を見たいものである。

さて国士舘大学は、順当に行けば決勝戦まで上がってくる確率が極めて高い。
いずれにしても分厚い層の国士舘には穴が見当たらない。


○中央大学

2年生の本間渉(九州学院)と丸山大輔(高輪)が中心となるだろう。

今年の中大レギュラーとして活躍した2人であるが、
団体戦で負けたところを見たことがない。
特に丸山は、今年の関東で敗れた明治戦でも山本から勝利、
全日本で敗れた鹿屋戦でも先鋒で寺田から勝利。
中大のポイントゲッターと言えば丸山と印象付けるだけの働きをしてきた。

本間も安定感抜群。
昨年の新人戦では、国士舘戦で中西を破りチームの勝利に結びつけた。

この2人に続き、
2年生は、藤嶋亮太(上宮)、桜井大地(酒田光陵)、中山広都(福大大濠)
1年生は、鈴木雄弥(九州学院)、河嵜遼(帝京第五)、沖拓真(麗澤瑞浪)、近藤祐世(九州学院)
らがレギュラーとして期待される。

1年生の鈴木は先月の全日本選手権でデビューを果たした。
鹿屋戦で山崎に敗れはしたが、立命館大戦の1勝は自信となったのではないだろうか。
高校時代に不敗記録を積み上げてきた鈴木。
前半でのポイントゲッターとして期待したい。

また、5月の東京都学生選手権では、1年生の河嵜が2位に入る健闘を見せた。
そして3位が藤嶋。
河嵜は京都太秦出身で少年時代から全国トップクラスの選手だったが、
高校時代の最後の頃は若干調子を落とし気味だったと思う。
しかし中大に入ってまた大活躍の兆しを見せている。
藤嶋は小曽根出身。中大には2番での入学だったと思う。
ここへきて力をつけてきたのが嬉しい。

中大の左上ブロックには日体大がいる。
日体大は、昨年優勝時から比較するとやや戦力ダウンのような気もする。
世田谷六大学新人戦でもまだまだ頼りなかったが、
日体大の選手は、時に常識を覆すとんでもない成長を見せる。
半年前とは別人となっていることもありうることを考慮に入れれば、
2連覇という可能性もないとは言えない。


昨日も書いたが、
今年の駒澤と國學院がいい。
優勝とは言い難いかもしれないが、
いいところまで勝ち上がる可能性も秘めている。
このサイトで取り上げることがあまりなかったので、
ここで少しだけ紹介する。

駒澤大は、
先の全日本学生優勝大会では早稲田を破ってBEST8に名を連ねた。
また、世田谷六大学新人戦では日体大を破るという勢いを見せた。
2年生が、内久保恭真(鹿児島実業)、柴崎恭平(土浦湖北)、
中村仁(九州学院)らが中心となるだろうが、
何と言っても1年生が心強い。
齊藤教世(九州学院)、増田滉士(東京学館浦安)、伊南航(木更津総合)、長尾亘樹(埼玉栄)
齊藤と増田は、1年生にして全日本学生選手権に出場する快挙。
また、伊南航がいい。私は高校時代の伊南を見て並々ならぬ素質を感じていた。
長尾は世田六新人戦では、國學院の藤野や日体大の寺本から勝利を上げるなど全勝。

駒澤は左下ブロックだが、順当に行けば4回戦で慶應、
そこで勝てばBEST4をかけた準々決勝で筑波と当たる。
この辺までは行ってしまうのではないだろうか。
そしてそこから先は勢い次第である。


國學院大は、
その駒沢大を世田谷六大学新人戦で破っている。

2年生は、藤野聖那(島原)、山科能之介(鹿本)、平野翔太(島原)らが中心となる。
世田六では、大将は山科と平野が代わる代わる務めた。
そして代表戦が藤野。
調子の良い時の藤野の勝負強さは、全学生の中でもトップレベル。
しかしやや調子の波はある。
そして古澤正太郎(九州学院)、ペリートレイシー・ジャスティス(水戸葵陵)、
保坂一樹(郁文館)らの2年生も実力は十分だ。
1年生の注目選手は永溪翔平(福大大濠)。
世田六新人戦では、先鋒として
国士舘の落合を破り、日体大の時田を破る活躍を見せた。

今大会の國學院は右下ブロック。
早稲田大、法政大がいるが、力を出し切り、このブロックを制覇し
BEST4に名を連ねるチャンスである。

残念ながらここで時間切れ。

明日が楽しみだ。

【文中敬称略】

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全日本学生剣道優勝大会を前に

一昨日からの続き。

【国士舘大】
今私の手元に国士舘大剣道部約40名のリストがある。
しかもその40名のほぼ全員が高校時代、
あるいは中学時代に全国で活躍した経験のある選手ばかりだ。
この中からレギュラーになるだけでまず大変なことである。

国士舘の大将は宮本敬太。
昨年、全日本選手権3位に入賞し大きな話題となる。
5月には関東チャンピオンとなり、
その強さが本物であることを証明した。
そして7月初旬の茨城予選で今年も全日本への切符を手にした。
本人も言っていたが、
やはりプレッシャーは我々の想像以上に大きい。

全日本学生では、残念ながら優勝した牧島に敗れたが
あの試合はホントに紙一重だったと思う。

しかしこれもプレッシャーからなのだろうか
脆さも否めない。
世田谷六大学では國學院の藤崎に不覚を取る。
また関東団体では、
緒戦の武蔵大戦で鈴木拓海(埼玉栄出身)にメンを先取されそのまま敗れる。
まあ、藤崎も鈴木も強い選手であることには違いないが。。。

しかし、ここぞという時の強さはやはり宮本だ。
私がしびれたのは、関東団体準決勝の筒井戦。
副将までで負けが確定していたのだが、
ここで宮本は意地を見せた。

中盤戦、
互いに発射体制に入った。
両者メンにくるのか。

宮本の気迫が剣にのった!
メーン!
爆メンの筒井に対して、
真っ向からの相メン勝負を挑み
宮本がものにした瞬間だっだ。
この1本にはしびれた。

大将の宮本が最高の状態にあるということが
国士舘が頂点に立つための条件のひとつである。
しかし必須条件はまだまだある。

今回パンフレットを見ていないので不明であるが、
杉野が出場するのかどうかは大きい。
関東で杉野の名前がないのには慌てた。
事情はあるのだろうが、
筋金入りの杉野がベストの状態で出てくれば
国士舘にとって極めて大きな強みである。

そして、昨年の関東チャンピオンである矢野。
矢野がこの2年間の関東団体・全日本団体で敗れたのは、
佐々木(筑波)戦の1回だけ。
フル出場の選手として1敗は宮本と同じでトップだ。
安定した強さである。

矢野・杉野・宮本と揃うと、
この後ろ3枚は強烈だ。

もう一人頼りになるのが、
黒木伊織(国士舘高出身)。
関東大会では、
筑波戦では田内に対して勝利し試合を繋いだ。

そして先鋒の福居(水戸葵陵出身)がいい。
とにかく動きが機敏だ。
どんな相手にでもついていけて、
悪くても引き分けには持っていける。

また、もう一人の期待の2年生である中西港(清風高出身)。
長身でガッチリとした身体を活かした厳しい攻めを見せる。

さらに、村上(新田出身)、染谷(拓大紅陵出身)、山本(九学出身)らの
状態がよければ、国士舘は最も頂点に近づくだろう。



【中央大】

昨年は久しぶりに関東を制し、
全日本では、ダントツNo.1候補に挙がっていた中大。
決勝戦で大阪体育大に敗れはしたが、
梅ヶ谷をはじめ、3年生以下が主体のチームだったため、
2017年は中大が席巻する一年となるだろうと想像していた。

特に2月の東京都剣道祭で
あわや警視庁を倒すかというところまで追い詰めた雄姿は、
学生最強チームとして向かうところ敵なしといった印象だった。

しかし、今年度に入り
やや精彩を欠いた感じで、
結果を残せてこなかった。

2年生から大将を務め数々の実績を残してきた
絶対的な存在である梅ヶ谷にもわずかな異変が。

関東個人で貝塚に敗れたのは仕方ないとして、
全日本個人では緒戦で関学大の山田拓実に敗れる。
その後、東西対抗で真田を破り「やっぱり梅ヶ谷だ!」と。

しかし、先日の関東大会では、
勝負は決まっていたものの、
2回戦で東大の川村が梅ヶ谷を破ったのには驚いた。
その後、梅ヶ谷は東洋大の新保には2本勝ちするも
返しドウ2本という梅ヶ谷らしからぬ勝ち方で、
どうかしたのだろうかと心配になった。
そして準々決勝、明治の山田との2番勝負に敗れる。

ただし、
実は梅ヶ谷も惜しいところを何本も打っていた。
審判が違えば1本になるかと思われるような打突も。
あそこで敗れはしたが、
私はむしろあの山田との2番勝負を見て、
梅ヶ谷は大丈夫だ!と思った。

結局は、梅ヶ谷の調子というのもあるかもしれないが、
ほぼすべての相手が、
梅ヶ谷をかなり研究しているというところが、
今までのようにいかない最大の要因ではないだろうか。

そして、引きメンもそうだが、
梅ヶ谷は、1本になるかならないかきわどい打突が比較的多い。
ほんの少しの調整によって、
再び無双の強さを発揮できると信じている。

梅ヶ谷にないもの、
それは全日本学生団体優勝である。
個人では、全日本、関東の2冠を早々と達成し、
団体でも、関東新人、関東と優勝を勝ち取ってきた。
残るはただ一つ。
梅ヶ谷の最後の挑戦に期待する。


中大では今回の全日本を前に、
選手選考のための部内戦を行った。

そこで優勝したのが曽我貴昭(4年、九学出身)だ。
曽我はIH個人2位で鳴り物入りで中大の門をたたき、
梅ヶ谷とともに活躍してきたキーパーソンだ。
この曽我の調子がここにきて絶好調になってきたというのは、
中大にとって極めて明るいニュースだと思う。

そして部内戦2位には
1年生の鈴木雄弥(九学出身)が入った。
曽我の後輩ではあるが、
4年と1年だから高校は出る入るの関係。
この若い1年生があがってきたのも嬉しい。

部内戦3位は
佐藤大洋(4年・桐光学園出身)と
本間渉(2年・九学出身)。

なんと上位4人中3人が九学出身じゃないか。
今度また明治と当たれば、さながら九学OB戦のようだ。

それはさておき、
本間、佐藤の強さは十分わかっているが、
鈴木にはどんな出番があってどんな活躍をするのかが楽しみだ。

そして来年の中大を背負って立つ男
染矢椋太郎(3年・高千穂出身)

さらに再来年の中大の中心人物
丸山大輔(2年・高輪出身)

確かに。ヘンリーが抜けたのは
中大にとって打撃となったかもしれないが、

松井航汰(4年・清風)、兵藤佳亮(4年・桐蔭学園)、
川井太誠(3年・酒田光陵)、棚本廉(3年・東海大相模)
ら、強豪選手がまだまだズラリといるのが中大だ。

今回は、3回戦で鹿屋と当たるだろう
非常に厳しい組合せだ。
しかし、ここで鹿屋を破れば、
中大がそのまま「優勝街道まっしぐら」となる可能性も高いのではないかと思う。



【明治大】

とにかく明治と中央は毎回のように当たる。

一昨年の新人戦、
昨年の関東、全日本と
3大会連続で明治は中大に敗れる。
明治は、山田凌平という類まれなる逸材を大将を据え、
常に優勝候補と呼ばれながら、
中大に完全に頭を押さえつけられてきた。
しかも、ここまで山田は、
梅ヶ谷に公式戦で3戦して一度も勝てていない。
戦うたびに中大の強さ、
梅ヶ谷の強さが際立った。


2015新人戦
準決勝で中大と明治が激突。
三将までで3-0で中大勝利が決定。
梅ヶ谷と山田は引き分け。
中大が決勝で法政を破って優勝。

2016関東
準々決勝で中大と明治が激突。
1-0で迎えた大将戦で
梅ヶ谷が山田にメンを決めて1本勝ち。
中大が決勝で国士舘を破って優勝。

2016全日本
3回戦で中大と明治が激突。
副将までで3-0と勝利を決めたのち、
梅ヶ谷が山田にメンを2本決めて4-0と圧勝。
中大は決勝で大体大に敗れて準優勝。

さてこの両チームが、
また今年の関東大会の準々決勝で当たるという組合せが発表された時には、
運命の悪戯を感じずにはいられなかった。

関東大会の明治のオーダーは、
昨年から残る
山田凌平(3年、九学出身)、
千田海(3年、仙台育英出身)、
槌田祐勢(2年、九学出身)に、
4年の津田祐輝(高輪出身)、
3年の山田将也(育英出身)、
2年の山本雅人(麗澤瑞浪出身)、
1年の梶谷彪雅(九学出身)が加わった。
昨年よりも強力な布陣だ。

準々決勝
明大vs中大は
先鋒が引き分けの後、
中大・次鋒の丸山が、明大の山本に1本勝ち。
そのまま副将まで引き分けで、
中大1本リードで大将戦を迎えた。
ここまでは、中大の思惑に近い戦いだったと思う。
大将戦で梅ヶ谷が山田に引き分ければよいのだから。
これはもう中大の勝利だろう。

大将戦が始まった。
1本獲らなければならない山田が攻める。
しかし梅ヶ谷には隙が全くない。
時間が刻一刻と過ぎる。

残り1分となった頃だろうか。
山田が不用意に下がったところを、
梅ヶ谷がすかさず追ってメンを打つ!
「メンあり!」
あああ、これで
99%中大の勝ちが決定した。

残り1分であの梅ヶ谷から2本取るというのは
奇跡でも起こらない限り無理だ。
ところが、ここからの山田が
今までの山田とは全く違った。

鍔迫り合いから
右に横っ飛びしての引きメンだ。
山田の大きな身体が軽やかに舞った。
「メンあり!」
1本返したぞ。

審判の「勝負!」の合図と同時に
梅ヶ谷が手元を上げ下げしながら間合いを詰めてきた。
山田も前に一歩出て、
上げ下げする梅ヶ谷の手元が上がったその瞬間に、
逆ドウをぶち込んだ!
これが見事に決まった。
なんと逆転勝利。
1%の可能性をものにしたのだった。

いや、これでようやく代表戦だ。

もちろん、
両チームともにこの2人の続投だ。

ひとつ思ったのは、
山田がそうとう梅ヶ谷を研究しているなということだ。
例えば、鍔迫り合いでは梅ヶ谷の伝家の宝刀である引きメンを打たせないように、
つねに前かがみになってくっつき、
離れる時も絶対に危険な距離では止まらない。

代表戦は20分を超える長い試合となった。
互いに隙がない。
この様子じゃ一時間やっても勝負はつかないかもしれない。
そんな風に思った矢先だった。
やや遠めの間合いから、
山田の巨体が足継ぎをせずに飛んだ!
真っ直ぐに飛んだ!
そして見事なメンを決めた。
文句なしのメンだ。

中大は明治に負けたというよりも
山田1人に負けたと言った方が正しいかもしれない。
それほどまでに山田が存在感を示した試合だった。

そして今大会の殊勲選手は山田凌平だけではない。
槌田が見違えるほど強くなっているではないか。
高校時代は無双の強さを誇っていた槌田。
ところが大学に入ってから
元気がないと思っていたら、
今大会は本当に強い槌田が戻ってきた。

そして山田将也だ。
ダブル山田として1年時に活躍した2人だったが、
昨年は控えに回っていた将也。
しかし今大会を見る限り、
おー、これこそが将也だと思わせるものだった。

さらにはスーパールーキー梶谷の参戦が大きい。
強い梶谷を見せてくれた。
立教大学戦は、
あれは九学の2年先輩である
古田智也を褒めるしかないだろう。

そして、唯一の4年生の津田がいい仕事をする。


決勝で筑波に敗れたが、
ホントに紙一重だった。
勝負は時の運もある。
今の明治であれば、全日本優勝の実力は十二分にある。
そして明治が本当に怖いのは来年かもしれない。



【大阪体育大】

昨年の全日本学生では、
優勝候補を次々となぎ倒し、見事優勝した大体大。
この時に決勝戦を戦った7人中6人が4年生。
今年に残ったのは石田崇(4年)のみである。
大体大は、
昨年上原というスター選手がいたが、
中大や鹿屋、国士舘、筑波といった
輝かしい実績を残した剣道エリートの集まりではなく、
たたき上げの強烈な野武士軍団というイメージだ。
いや野武士というと変剣、邪剣の類いを想像してしまうがそれは違う。
一人ひとりがしっかりとした正剣で、
命を懸けて戦っているという潔さ、カッコよさを感じた。

昨年の快進撃は、
3回戦で国士舘を5-2と圧倒したところから始まった。
4回戦で順天堂大を3-1、
準決勝の国際武道大には
なんと6-0の圧勝で決勝戦に進んだ。
しかし、相手が中大とあっては、大体大の快進撃もここまでか、
と多くの人が思ったようだが、
蓋を開けてみれば、大将戦を待たずに優勝を決めてしまったのには驚いた。

その大体大がチームを一新して今年もやってきた。

今年のチームは、
西日本大会では準決勝で鹿屋体育大2-3で敗れて3位。
関西大会では準決勝で関学を
決勝で近大を破って優勝。
今年も安定した強さを持って全日本に参戦する。

石田崇(4年・盈進高出身)
昨年も出場。
国士舘戦では五将として
五十嵐に2本勝ちし、流れを引き寄せた。
個人では全日本学生選手権に出場。

有馬耕大(4年・鎮西高出身)
大体大の大将。
鎮西時代には吉里幸起と同期で、
大将として活躍。
ただ、九州学院の厚い壁に阻まれ、
あと一歩のところで敗れてきた。
有馬にとって真田は
高校時代からの因縁の相手である。

野瀬亮斗(4年・福岡第一出身)
今年の関西学生チャンピオン。
全日本ではBEST16まで勝ち上がった。
高校時代は、山根舜平らといいチームを作りあげ、
福岡中部ブロック優勝するが、
県予選では
勇の東福岡、梅ヶ谷の大濠らの強豪校に阻まれ
なかなか日の目を浴びることがなかったが、
玉竜旗ではBEST8に入る。

吉里幸起(4年・鎮西高出身)
大体大からの全日本学生選手権出場者3人のうちの1人。
よく存じ上げず違ったら申し訳ないのだが、
鎮西の吉里泰彦監督のご子息だろうか。
鎮西時代は有馬が大将、吉里が副将。
2年先輩の今村侑資、
1年先輩の上原裕二郎、
そして現4年の有馬・吉里と、
鎮西→大体大で成功!というルートができつつある。

伊藤雄平(3年・高山西出身)
高校時代は高山西の中堅として全国選抜に出場しBEST16。
ただし、その後は麗澤瑞浪(小角らはまだ1年生)の壁に阻まれる。
大体大では多くの選手候補がいる中で
西日本学生に出場、そして関西学生では三将として出場し優勝に貢献した。

その他、
榎眞吾(4年・福工大城東出身)、豊田開(3年・久御山出身)
興梠太一(2年・東福岡出身)らがいる。



【別府大】

いよいよ、創部4年目を迎えた別府大。
岩本貴光監督の挑戦が花開くか。
塩野海風(4年・金沢高)
別府大の大将を務める。
大将を4年間務めるというのも、新設部の特権だ。

2年前の全日本学生優勝大会。
別府大学を知らなかった私は、
2回戦の明大×別府大の試合を間近で見てぶったまげた。
突如、彗星のように現れた「別府大」の垂れを付けた軍団。
パンフを見ると2年生と1年生のチームだし、
名前を見てもほとんど見覚えがない。
おー、1回戦で清和大を代表戦で破っているじゃないか。

明大戦が始まった。

先鋒の漢那が山田将からメンを奪いそのまま1本勝ち!
なんとまあ。
その後、
次鋒が引き分け
五将が引き分け
中堅が引き分け
三将が引き分け

で、明大副将・山田凌平が登場。
メンを先取。
これでようやく明治が追いついたか。
ところがここで東矢が山田からコテを奪う!
なんとまた別府が逆転だ。
ホントに別府が勝ってしまうのか。
しかし、山田が取り返し、大将の市川が勝利し明大の勝ち。
まあ、ある意味この時の明大も1・2年生チームではあるが、
あの明大を追い詰めた別府大に
得体の知れぬ恐怖を覚えたことは確かだ。

そして、後に別府大をよくよく調べて納得。
なんと寮内に温泉があるというではないか。
しかもただの温泉ではない、かの有名な別府温泉だ。
それは強くなるはずだ。
まあ、それは冗談として、
岩本貴光監督の話や、稽古の様子などを調べるほどに
なるほどこれは強くなると納得した。

今年はある意味、岩本マジックが試される年。
今年の西日本大会では、
決勝まで勝ち進み、
鹿屋に対して大将戦まで追い詰めた。
九州大会でも準優勝。

高校時代に全国的に活躍した選手はいないが、
フロンティア精神あふれる彼らの努力が
いよいよ晴れの舞台で花開くのか。
楽しみである。



【鹿屋体育大】

しかし、いつ見ても選手層がハンパじゃなく分厚い。

と一行書いたところで、
出かけなければならなくなってしまった。
鹿屋は、今大会の優勝候補3本の指に入る強豪。
後でゆっくりと書こうと思っていたので残念。

いよいよ明日。
台風が近づいているが、
武道館の中でも台風が吹き荒れることと思う。

【文中敬称略】

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高輪8人目の選手

「高輪8人目の選手」という話を聞いた。

甲斐最後の年となる
2015年の高輪高校剣道部には3年生しかいない。
しかも8名。

いや厳密に言えば、
中学からの持ちあがり組がいるが、
剣道が好きで集まってきている生徒たちで、
選手クラスとは一線を画している。

その8名というのは……。

今回出場した5名の選手に加え、控えの土居、坂ノ上の2名。
この7名がいわゆる登録選手である。
控えとはいえ、土居は中学の四国チャンピオン、
坂ノ上は中学時に神奈川県の大会で個人優勝の経験があるツワモノだ。
2人とも他のチームに行けばもちろん大将候補である。
私もこの7名についてはよく知っていたが、
8人目についてはその存在をこの日まで知らなかった。


甲斐は言う。

「彼らには後輩がいないので、
 掃除も雑巾がけも
 雑用も何もかも自分でやってきたんです。
 こんなことは私にとっても
 初めての経験ですね。
 上級生になったら威張るとか、
 面倒くさいことは後輩にやらせる
 といった先輩の特権がまったくない。
 でもそんな苦労があったからこそ、
 他の学年にない意味で
 成長したと思います。
 特に、8人目の小林は
 稽古も雑用も人一倍やっていましたよ。」

東京都杉並に大義塾という伝統ある道場がある。
そこでひときわ身体が大きくて、
剣の腕にも自信のある少年が
大志を抱いて、
2年と3ヵ月前に高輪の門をたたいた。
その選手が小林である。

同学年の部員が20名もいれば、
選手にならない部員が普通だけど、
わずか8名となると、
選手になれない部員はたったの1人。
もちろん高輪でなければ
レギュラーとして大活躍していただろう。

しかし、そんな中でも、
小林はいつも前向きに、
想像を絶するような
高輪の猛稽古も歯を食いしばって頑張り通し、
掃除や雑用も率先して行ってきた。

チームの勝利は自分のことのように喜ぶ。
皆、小林に負けじと頑張り、
また感謝の気持ちも忘れない。
そんな小林の存在があってこそ、
今回の高輪の勝利があったのだと私は確信する。


私と話をしたときの小林の母の流した涙は、
紛れもなくわが子を誇りに思う証だった。

いつもどんな時でも8人は一緒だった。
部員の中でたった1人だけ試合に登録されない選手。
でも、稽古はもちろん。
試合も遠征も、掃除も雑用も、
嬉しいときも辛いときも悲しいときも、
この8人がともに励まし合い、
力を分かち合い頑張ってきた。

壮行会での選手たち一人ひとりが宣言した
決意の言葉には、
全員が異口同音に
「8人で頑張ってきました」
「8人で戦います」
「8人で優勝してきます」と。

それは決して8人目の選手に対する
「いたわり」でも「気づかい」でもない。
心の底から自然にでてきた言葉なのである。
私はその選手たちの言葉を聞いて
思わず溢れる涙を抑えられなかった。
そしてこれがこのチームの強さだと確信した。

さて、IH東京予選後に行われた国体の東京都高体連予選会。
関東大会優勝の丸山大輔(高輪)と、
都大会優勝の谷広大(国士舘)の2名は既に決定済みである。

残りの4席を巡っての予選会であったが、
高輪から出場した4名
(新名敬介、野稲陸、綾部岳史、重黒木亮介)
全員が最後まで勝ち抜き代表に決定した。
ここへきて高輪の選手たちの
調子が上がってきている証である。

そしていよいよ
高輪最後の夏本番がやってきた。

(次回に続く)
【文中敬称略】

この記事に

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[第38話]

最後の戦いへ

2015年

6月、インターハイ東京予選。

高輪の目標は
最後のインターハイで優勝を飾って、
甲斐監督への餞(はなむけ)とすることである。
しかし、そもそもインターハイに出られなければそれも叶わない。
最も辛いのは、甲斐監督最後の年に
インターハイへ連れて行くことができないという事態である。
しかも今年出場を決めれば20回目の大台に乗る。
これだけは何が何でも果たさなければならない。

国士舘との最後の決戦。
ある程度は予想していたが、
ここまで壮絶な試合になるとは思ってもいなかった。

高輪と国士舘は新チームになってから、
この二強の直接対決は少なくとも6試合はあり、
新人戦、春季大会、水田旗は高輪の勝利。
桜門旗、大野旗、安部杯では国士舘の勝利とまったくの五分。
しかも常に僅差の勝負となっており、
やってみなければ結果は誰もわからないというのが結論である。

さあ、決勝戦が始まった。

先鋒戦は、重黒木vs森。
先鋒らしくガンガン行きたくても、
互いに慎重にならざるを得ず引き分けに終わった。

次鋒戦は、綾部vs落合。
序盤戦は落合の猛攻撃から始まった。
いきなりのコテ、そして近間に入ってからのメン、
綾部のメンをかわしてのメン、
さらには近間から竹刀を払って、
綾部の右手が離れたところすかさずメン。
落合のたたみこむような攻撃。

しかも落合の剣は一本一本がズッシリと、
綾部の体を叩き割るかのような迫力がある。
いずれも綾部が間一髪でかわした。
綾部が返しメンを打とうと横っ飛びするが、
落合その場で飛び上がって振りかぶり、
バランスを崩した綾部に対し、
はるか上空から竹刀を綾部の脳天に叩きつけた。

ドッカーン 綾部は思わずその場に倒れた。
落合皓一朗、なんと恐ろしい2年生なのか。
しかし、中盤となり、
自分のペースを徐々に取戻してきた綾部。
綾部の竹刀が、ドウを抜こうと屈んだ落合のメンを捉えた。
綾部が高らかに竹刀を上げると、
その首根っこを落合が下からかちあげるようにぶちかました。
その瞬間、綾部の体が10僂曚秒茲防發。
足場を失った綾部の体は後頭部から後ろに倒れる。

綾部とっさに体をねじって左手を床につき後頭部を守るも、
肩からずしっと倒れた。
残り時間はわずかになった。
綾部がじりじりと間合いを詰める。
綾部がグッと出た。
何が来るんだ? 
その一瞬の躊躇が勝負を分けた。
「メーン!」。
落合も慌ててメンを合わせるも、
先に仕掛けた綾部のメンが速かった。

見事な面が決まり、綾部はそのまま一本勝ち。
高輪にとって貴重な一勝をものにした。

しかし、恐るべしは国士舘の後ろ3枚だ。

その最強候補とも言える谷がついに登場。
谷は前の週に行われたIH東京予選の個人戦で優勝している。
この時は、高輪の新名、重黒木、野稲の3人をことごとく破っての優勝だ。
さて、その谷に対するわれらが丸山は、
先の関東大会個人戦で優勝。
言わば、今年の関東チャンピオンと東京チャンピオンの激突である。
勝負の行方は全く予測不能。
五分と五分の手に汗握る戦いが始まった。

序盤から激しいぶつかり合い。
谷の逆ドウがバシッと音を立てる。
しかし、そこをすかさず丸山の引きメンが炸裂。
一進一退の攻防だ。

谷が、引きメンを打って下がる丸山をコーナーへと追い詰め、
メンに飛ぶ! 

いや丸山も飛んだ!
相メンだ!!!

私の席からは全く同時に見えたが、
谷の白旗が3本上がった。
国士舘、谷がついに一本を取り返した。
会場全体が割れんばかりに盛り上がる。
残り時間はあと十秒もないはずだ。
「二本目!」
審判のはじめの合図と同時に、丸山が間合いを詰める。
一瞬フェイントをかけた直後、丸山が渾身の瞬発力で前に飛んだ! 
もの凄いスピードで谷のやや右面を見事に打ち抜いた。
これはまさに丸山の執念が乗り移った一本だ。

「勝負!」「ピー!」

えっ?

審判の勝負の号令のわずか1秒後に終了の笛が鳴り響いた。
なんという丸山の執念。
そして谷の無念。
結局、延長の2分間も過ぎ、引き分けに終わった。
丸山の終了一秒前のこの一本が、
この決勝戦にどんな影響を及ぼすのか。
少なくとも高輪としては
九死に一生を得た思いだったろう。

高輪1勝リードのまま副将戦を迎えた。

野稲vs佐藤
私が見るに、極限まで鍛え上げられた肉体を持つ国士舘軍団の中でも、
佐藤は最もパワフルで、その重量感のある打突は、
相手を破壊する凄まじさだ。
しかも剣捌きもしっかりしていて巧さも光る。
対する野稲は、小柄ながら佐藤の攻撃にも一歩も引かず、
逆に剣先の強さと、巧みな竹刀捌きを見せる。
遠間で勝負したい佐藤に対し、懐に入って勝負したい野稲が前に前に攻める。
そして引きメン!

野稲の鍛え上げられ方も半端ではないことがわかる。
延長に入ると佐藤の動きがより激しくなる。
鍔迫り合いから、佐藤が力を込めて野稲を押す。
たまらず吹き飛ばされた野稲は後方に転倒する。

延長も残り時間わずかとなった。
先ほど同様、鍔迫り合いから、佐藤が諸手で野稲を突き飛ばす。
野稲はトットットと後方に倒れそうになり体勢を崩す。
その瞬間を佐藤が見逃さなかった。
佐藤、振りかぶった竹刀を、渾身の力を込めて振り下ろす。
野稲の脳天を直撃した。
「ずずずーん!」

白い旗が3本パッと上がった。
ついに国士舘が高輪に並んだ。
1(2)−1(2)。
全くの五分でついに大将戦を迎えた。

高輪の新名に対するは小山涼。
静まりかえった観衆が、最後の大一番に注目していた。
互いに礼を交わし、三歩進みながら竹刀を抜いて開始線上に立つ。
ゆっくりと静かに、威風堂々と蹲踞の姿勢をとる。
これから始まる激戦に向けた嵐の前の静けさ。
ザーッと私の全身に鳥肌が立った。
会場全体が異様な緊張感に包まれる中、
審判の開始の声だけが響く。

「はじめ!」

ピリピリとした緊張感とものすごい高揚感。
全身からアドレナリンが分泌されているのがわかる。
両者が放つ一本一本に、うわーっと大きな歓声が沸く。
と思うと、互いに構えあっている状態では水を打ったような静けさとなる。
両者、離れた状態からは、小山には鋭い飛び込みメンがある。
これに対し新名には返しメンや返しドウがある。
小山のメンが速いか、それとも新名の返し技が決まるか。
矛と盾の戦いを思わせる。

そしてなんといっても鍔迫り合いからは、新名の最終兵器、引きメンがある。
これには小山は十分に警戒し、ここまで上手く封じ込めている。

延長戦。

鍔迫り合いから、小山が引きメン、新名が引きゴテ。
ほぼ相打ちだったと思われるが、
小山の引きメンの方が鮮やかでインパクトが圧倒的に強かった。
白旗がスッと上がった。が副審の1人のみ。
一本にはならなかった。

すると今度は、小山のメンに対して新名の返しメンが炸裂。
副審の1人が旗を揚げるもこちらも一本にならず。
さらに会場がヒートアップする。

ここまでくるともはや中途半端な技では一本にすることはできまい。
誰が見ても明らかに一本となる技が必要だ。
延長の2分間が終了した。

代表者戦。

そのまま、新名と小山の続投である。
互いに延長戦まで戦い抜き、疲労もたまっているだろうが、
ここからは勝負が決するまで延長が繰り返される。
気力と体力の勝負とも言える。

さあ、代表戦が始まった。
鍔迫り合いでは、新名が小山にプレッシャーをかける。
新名の引きメンは相手からすれば最悪の凶器だ。
そうとう警戒していても打たれてしまう。

その新名に引きメンを打たせないために、
鍔迫り合いとなるたびに、小山に緊張感が常に付きまとった。
これが小山の体力を著しく奪っていったのだろう。
小山に疲れが見え始めた。
惜しい飛び込みメンを何本も放つが、
腰が入りきらない感じで、決めきれない。
気持ちとは裏腹に、疲労物質が小山の全身を満たし、
すでに体の自由がきかなくなっているのかもしれない。

代表戦も4分間を戦い決着がつかず。
延長戦。
もはや、小山を戦わせているのは
気力と責任感だけではないだろうか。
疲労は限界に達している。

そんな中でも、出ゴテ、逆ドウ、と惜しい技を繰り出し、
鍔迫り合いでは新名の引きメンを完全に封じている。

ここで副審が小山のメン紐の緩みを指摘。
小山はメンを付け直す時間を得た。
まさに天の恵みだ。

約2分後、試合は再開した。
この2分間で何が起きていたのか。
新名は考えていた。
いや、自分に言い聞かせていた。
「初太刀で決める」。

試合再開!

新名が竹刀を反時計回りにクルリと小さく回しながら一歩前に出た。
小山は一瞬、何がくるかわからないまま居つく。

そこを新名の高速メンが小山の頭を打ちぬいた!

「メーン!!!」

それは大空を真っ二つに割る稲妻のような、
鮮烈なるメンだった。

新名、なんという勝負強さだ。
この一本で高輪は勝利をつかみとった。
そして高輪、20目のインターハイ出場決定!

試合終了直後、私は高輪応援団の陣取るエリアに行ってみた。
選手の家族はもちろん、たくさんのOB、加えてOBの家族と、
とにかく百名はゆうに超える大応援団ではないか。
みな大変な興奮状態である。
全国優勝したかのような喜びようだ。
いかに今大会の優勝が厳しいものだったのかを物語っている。

甲斐が率いる高輪最後の年に、
インターハイ出場ができなかったなどという汚点だけは
絶対に残してはならないというプレッシャーは、
選手のみならず、増田の両肩にも重くのしかかっていた。

増田助監督は今回の東京予選決勝が、
剣道人生のなかでも最も緊張し痺れた試合だったと証言している。

母親たちはともに手を取り号泣。
このような姿には私はめっぽう弱い。
思わずもらい泣きしてしまいそうなので、
今度はOBたちのところへ行ってみる。
おお、いるぞいるぞ。
古くは30年前のIH初出場を果たした大OBから、
昨年の卒業生までそれはそれは大変な数だった。

(次回に続く)
【文中敬称略】

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この記事は、出版した本の原稿を再編集しています。

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いよいよ明日に迫った関東学生剣道優勝大会。
9月に入ってバタバタと忙しくて何一つ更新できずに
毎日訪問される方には本当に申し訳なく思っています
自分としても何ともフラストレーションが溜まるばかりで。。

明日は、何もかも忘れて思いっきり観戦したいと思います。


さて、今回の大会は、
黄金世代の最後の関東大会。
この世代は少年時代からずっと追いかけてきたから、
とりわけ感慨深いものがある。
小中高大と続いた学生最後の、
ある意味、総決算となる大会である。

まだパンフレットを見ていないので、
この記事で紹介する各校の選手はあくまで私の推測である。

優勝候補は、
中大
国士舘
筑波
そして明治。

また、シードになっていないダークホース的な存在が
専修
そして日体大。

もっとも常にシードだったが、昨年ベスト8決めで
東海に敗れたことでシード外となった日体大をダークホースと呼ぶには少々違和感はあるが。


この6大学に続くのが法政、早稲田、国際武道大といったところだろう。

昨年3位入賞した東海大は、
大活躍した大将の後藤をはじめ、
大半が入れ替わってしまっているので昨年の実績は参考にならない。
ちなみに今年の全日本学生選手権の出場者は残念ながらゼロだった。
せっかく勝ち取ったシード権は、絶対に渡したくないところだろう。
新生東海大の活躍を期待する。

また、上記9大学に加えて、
注目チームが、東洋大、立教大である。

東洋大からは今年は3名が全日本学生選手権に出場した。
我妻拓(京北高出身・4年)、三山宙(九州学院出身・3年)、三輪佳史(麗澤瑞浪出身・2年)だ。
特に我妻は高校時代から東京では高輪や佐々木を悩ます選手で、
小柄ながら確かな実力を持っている。
今日も東洋大の桐生選手が100mで日本人初の9秒台を出したり、
昨年は萩野がオリンピックで金メダルを獲るなど、
スポーツにも本格的に力を入れてきているのが東洋大だ。

立教大も全日本学生選手権に3名出場。
今村圭太(東福岡出身・4年)、澤田武秀(九州学院出身・4年)、古田智也(九州学院出身・3年)だ。また昨年関東BEST16の松下もいる。昨年の新人戦では、法政に互角の勝負を展開するなど、勢いはある。

さて優勝候補に話を戻す。


まずは中大。

昨年の関東大会は、稀代の大将・梅ヶ谷を中心に
現3年生・2年生が活躍するチームで
見事優勝を果たした。

全日本では大体大に決勝で敗れるも、
準決勝までは圧倒的な力を見せつけた中大。

さらに、3月に行われた東京都剣道祭では、
あわや優勝というところまで警視庁を追い込んだのには驚いた。
中大が怪物チームに見えた。

この時点では、今年の中大は
タイトルを総なめする旋風を巻き起こすだろうと思われた。

しかし、そう順調にいかないのが剣道である。

5月の関東選手権。
昨年は全日本学生選手権に9名を送り込んだ中大。
今年は2ケタ出場も夢でないと期待される中、
中大選手が次々と敗れ、
全日本への切符を手にしたのはわずか3名に終わった。
その全日本でも優勝候補の梅ヶ谷が初戦敗退。
松井、川井も上位入賞にはならず。
中大に一気に暗雲が立ち込めた。

あの時点から、夏を経てどこまで調整が進んでいるかが中大優勝の鍵となる。
メンバーは次の通り。
梅ケ谷翔(福大大濠出身・4年)
曽我貴昭(九州学院出身・4年)
兵藤佳亮(桐蔭学園出身・4年)
松井航汰(清風出身・4年)
佐藤大洋(桐光学園出身・4年)
染矢椋太郎(高千穂出身・3年)
川井太誠(酒田光陵出身・3年)
本間渉(九州学院出身・2年)
丸山大輔(高輪出身・2年)

実にいい面々である。
夏の部内戦で2位となった兵藤が初のレギュラー入り。
攻撃型で1本を獲れる選手が揃っている。
部内戦優勝の染矢の実力は本物。
2年生の本間、丸山も楽しみな選手だし、
あとは大将の梅ヶ谷の調子次第だ。

優勝するためには、
明治や国士舘と当たれば大将戦までもつれる可能性が高い。
その時に、梅ヶ谷が山田凌平や宮本敬太に勝つことができるか、
そこにかかっている。


国士舘大学。

昨年は関東決勝で中大に涙を飲んだ国士舘。
しかし、昨年からはメンバーの大半が入れ替わる。
私の予想では、学年順に、
宮本敬太(水戸葵陵出身・4年)
杉野翔耶(PL学園出身・4年)
黒木伊織(国士舘高出身・4年)
矢野貴之(福大大濠出身・3年)
山本冬弥(九州学院出身・3年)
中西港(清風出身・2年)
福居義久(水戸葵陵出身・2年)
あたりか。

宮本は、昨年の全日本選手権で、
学生最高の3位入賞で注目を浴び、
今年の関東選手権優勝。
全日本学生選手権では、優勝した鹿屋の牧島に敗れるも、
学生トップレベルの安定感抜群の選手である。

矢野は昨年の関東学生チャンピオン。
キレとスピードは天下一品。
調子のよい時の矢野はまさに無敵の存在だ。

また、山本は関東学生選手権で3位に入賞するなど、
ついに実力が開花した。
体格も高校時代と見違えるようにガッチリとし、
その体は相手からすれば岩のように感じるだろう。

そして今回、2年生の中西、福居が出場するのかどうかは不明だが、
この2人の戦力も既に他校を圧倒するレベルだ。

国士舘が勝ち上がるためには、
準々決勝で、国際武道大か法政大と当たり、
準決勝が、筑波か日体、もしくは早稲田と当たる可能性が高い。
そして決勝が中大となれば、
大将戦で、宮本と梅ヶ谷、宮本と佐々木、宮本と久田松、宮本と田中といった、
少年時代からのライバル同士の対決もまた楽しみの一つである。


筑波大。

筑波大のメンバーだが、
まあ、普通に考えれば、学年順に、
佐々木陽一朗(高輪出身・4年)
筒井雄大(秋田南出身・4年)
田内雄大(東福岡出身・3年)
初田彪(高千穂出身・3年)
多賀谷歩(小山出身・3年)
加納誠也(桐蔭学園出身・2年)
佐藤祐太(九州学院出身・2年)
星子啓太(九州学院出身・1年)
あたりだろう。

ところが、筑波大関係者に聞いたところ、
私の予想に対して「ブブー!」と不正解のブザーを鳴らされた。
そして「きっと誰も当てることができない、驚きのメンバーですよ」
と言われ、結局は教えてくれず。

「この、ケチー!」

と叫んでやった(笑)

しかし1年生は星子のみということなので、
山下(4年)、堀川(4年)、甕(3年)、松井(2年)、元吉(2)あたりが出てくるのか。
全くわからないが、明日パンフレットを見るのを楽しみにしよう。

佐々木は、関東選手権では梅ヶ谷と3回戦で当たるというありえない不運により、全日本出場を逃した。東西対抗では、東軍の副将を任せられるも、チームメイトの筒井が活躍しすぎて(笑)、結局試合することなしに終わる。
粘りの剣道でわずかなチャンスをものにできる選手なので、
同点で迎えた大将戦では、たとえ相手が誰であっても勝利できるポテンシャルはある。
学生最後となる、関東、全日本団体で有終の美を飾って欲しい。

筒井は、今年に入って関東選手権2位という好成績を収め、
また上記にも書いたが、東西対抗では久々に見た5人抜きという偉業を遂げて、一気に注目が高まった。筒井のメンは健在。そして筒井のドウも鋭さを増した。

また、初田がいい。
関東選手権ではBEST8に食い込む。
宮本を追い詰めた試合など、
その恐ろしいほどの闘争心と底力を見た。

そして何と言っても飛ぶ鳥を落とす勢いの
ゴールデンルーキー、星子だ。
全日本3位、関東3位の実力は本物だ。
おそらく何度か対戦すれば、牧島や宮本を破る力を持っている。
ハッキリ言って星子がいる筑波は他チームにとって恐怖だ。


明治大学。

明治のメンバーを見ると豪華絢爛だ。

私の予想では、学年順に、
津田祐輝(高輪出身・4年)
漆島伊織(九州学院出身・4年)
山田凌平(九州学院出身・3年)
千田海(仙台育英出身・3年)
山田将也(育英出身・3年)
槌田祐勢(九州学院出身・2年)
梶谷彪雅(九州学院出身・1年)
あたりではないだろうか。

やはり明治は山田凌平の調子が重要なウエイトを占めると思う。

昨年2年生で全日本学生チャンピオンとなった山田。
やっぱり山田の強さは本物だったと誰もが納得した。
しかし、関東団体・全日本団体と2回連続で梅ヶ谷に敗れ、
関東新人戦ではチームは勝ったが早稲田の秋山に敗れ、
今年の関東選手権では、宮本との決戦を皆が楽しみにしていたが、
そこに行きつく前の3回戦で、亜細亜大の山崎に敗れ、
全日本出場さえも逃した。
スランプが続いている様子であるが、
これは決して山田本来の力でないことは
誰もが知っている。
昨年の全日本学生選手権の時の、
強い強い山田が戻ってくることを期待したい。
おそらく山田にしか打てないだろう、あの鋭いコテをもう一度見せて欲しい。

今の3年生に注目を奪われてきた明治の4年生であるが、
関東選手権では津田がやってくれた。
津田らしいタンターンという連続技や返しドウなどが冴え、
BEST8まで上り詰めたのには、彼をずっと見てきた私は嬉しくなった。
あの津田ならば有力なポイントゲッターとなるだろう。

また安定感という意味では千田が頭ひとつ抜けている気がする。
全日本学生選手権では2大会連続でBEST8と、
屈指の実力者であるには違いない。
高校時代から強い選手ではあったが、
大学に入って確実に力強さとスピードが増した。
コワい選手だ。

そして、ゴールデンルーキーの梶谷。
関東選手権でBEST16。
しかも敗れた相手が星子でなければもっと行けたかもしれないという
勢いすら感じられた。
相手チームもこの梶谷には手を焼くだろう。

ある意味、九州学院オールスターズ的な明大。
他のメンバーも含め高校時代は全員が全国大会入賞経験者である。

明治が勝ち上がるには、
準々決勝で中大と当たる可能性が高い。

明治にとって中大は目の上のタンコブだ。
昨年の関東も全日本も中大に当たって敗れている。
さあ、今年はどうか。


専修大学。

「専修大学、22年ぶりの関東優勝!」
そんなニュースもありうる。
そう思えてしまうのが今年の専修だ。

今年の全日本学生選手権には5人が出場。
関東では国士舘に次ぐ2番目である。
その5人とは
安藤修平(秋田南出身・4年)
平野青地(東福岡出身・3年)
了戒一彰(東福岡出身・3年)
森光聖(福大大濠出身・2年)
秋吉涼平(東福岡出身・1年)
である。

そして上段をとる平野が大驀進を見せた。
準決勝では星子を倒し、ついに決勝進出。
牧島に敗れはしたが全日本2位は立派である。

さらに、もう一人の上段選手、
原三四郎(福大大濠出身・3年)がいる。

また1年生には大西優斗(福大大濠出身・1年)もいる。

えっ?
専修大というのは、
福大大濠と東福岡の連合チーム?
そんな錯覚さえ覚えてしまうほどだ。

専大の監督は梅山義隆。
監督が福大大濠出身なのだ。
高校時代には九州個人チャンピオン。
玉竜旗優勝、IH団体優勝。
専修大時代には関東団体優勝、個人2位。
そしてNTT東日本で全日本実業団優勝、関東優勝。
全日本選手権にも出場経験のある超一流選手である。

専修大は今年も強いが、
来年はさらに期待できるだろう。

今大会、専大はノーシード。
シード校としては、最も自分のヤマに来てほしくないチームだったろう。
その当たりくじというかハズレくじというかを引いたのが、
流通経済大、そしてBEST4をかけては東海大だ。
この左下ブロックからは専大が勝ち上がってくる可能性は高いと思われる。


さて、このへんで時間が来てしまった。

最後に私が少年時代からずっと追ってきた黄金世代。

そのメンバー(関東)のおさらいだけして終わりにする。

宮本敬太(国士舘大)
梅ヶ谷翔(中大)
佐々木陽一朗(筑波大)
久田松雄一郎(早稲田大)
勇大地(早稲田大)
田中芳秀(法政大)
曽我貴昭(中大)
筒井雄大(筑波大)
杉野翔耶(国士舘大)
貝塚泰紀(日体大)
狼輪樹明(流経大)

明日が楽しみすぎて
今日は眠れないかもしれない。

【文中敬称略】

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