華麗に舞った剣士たち

剣道で記録と記憶に残る少年〜青年〜中年剣士を追いかけます

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■関東学生剣道選手権をふりかえる(1)

決勝戦のアナウンスが場内に流れる。

「赤、筑波大学 筒井雄大選手 秋田南高校出身。
白、国士舘大学 宮本敬太選手 水戸葵陵高校出身」

この広い武道館で、
センターコートの2人だけに注目が集まる。
決勝戦に出場した選手ならではの最高の栄誉だろう。

正面に礼をしたところで、パーッと眩いばかりに照明が全開になる。
会場が「うぉー」と唸り声をあげる。
お決まりの演出と反応ではあるが、
いよいよ決勝が始まるぞと、
見ているだけなのに武者震いを覚えるほど、
緊張感が頂点に達する。


「はじめ!」

いよいよ決勝戦がはじまった。
互いに気合い十分だが、
さすがは4年生。両者落ち着いている。

両者ともに姿勢が正しい。
構えも中心を崩さない。
筒井がコテメンにくるも、宮本は見切って捌く。

それはまだ序盤戦。
互いに触刃の間から、
一足一刀の間に入った瞬間だった。

両者が示し合わせたように、
ジェット噴射の勢いで飛び出した!!

互いの剣が中心にそって突き進む。

「メーン!!」

相面。

速い、鋭い、
互いに意地とプライドをかけて
捨てきった凄まじい相面だ。

まさに相面の頂上対決と言える勝負を宮本が制した。

宮本の剣は、
理想的な最短距離を力強く突き進み、筒井の剣を弾き飛ばした。

文句なしの1本だ。

宮本は残心をした後、
両手で竹刀を持って、ちょこちょこと控えめに開始線に戻る。
あれだけ凄まじい1本を決めたのだから、
「どうだ俺のメンは!」
とアピールするどころか、逆に1本獲られたかと思うほどの奥ゆかしさ。
以前も書いたが、IH優勝の時の佐々木と同じだ。

見ていてとても清々しい。



あれ?
筒井の左足がおかしいぞ。

開始線に戻ることすらできない。

ふくらはぎがつったのならば、
アキレス腱を伸ばすようにべったりと足を床につけるはずなのに。
それすらもできない。

これはおおごとかもしれないな。
大丈夫か筒井。


あれは4年前。
2013年魁星旗決勝の福大大濠戦、
あの時のことが頭によぎる。
筒井がドウを抜いたときに相手の足に引っかかって左ひざから落ちた事故だった。
蹲踞すらできない状態ながら、試合続行を選んだ筒井の覚悟。
あの時は関係のない私も涙が出た。

戦わずして負けるくらいなら、
たとえ敗れて死せるとも戦うことを選ぶという、
武士の誇り高き、気高い精神が宿っているのを目の当たりにしたからだ。


しばしの中断で、
ドクターが筒井の足をチェックし、
筒井が続行をアピールした。

筑波の選手としては、
2年前の全日本優勝大会の決勝戦の林田のことも思い出す。
鹿屋の持原との対戦中に肩を脱臼し、
そのまま続行勝利し、筑波の優勝に大貢献したっけなあ。


さて、試合が続行した。
さすが筒井だ。

しかし負傷した筒井は
まず得意の飛び込みメンは封印されたと言っていいだろう。
宮本相手にこの状況でどうやって取り返すのか。

そう考えているうちに、
宮本がズンと間合いを詰める。

宮本の剣先が効いている。

宮本が飛んだ、
筒井の手元が思わず
フッと上がったところを、
「バコーン!!」

宮本の電光石火のような剣が筒井の右手をズッシリと捉えた。

コテあり。

なんという見事なコテだ。
傷を負った筒井には残念ながらなすすべもなかった。
華麗に舞った剣士とは、まさに今日の宮本のためにあるような言葉である。

万雷の拍手を浴びる宮本が、
ちょこちょこと上品に開始線に戻った。

宮本が強いのは百も承知だったが、ここまで圧倒的だとは。
昨年の全日本選手権は決してまぐれではなかったことを証明した。

優勝を決めて国士舘陣営に戻った宮本を皆が祝福する。


私はすかさず、宮本に近寄り、声をかけた。


剣キチ「宮本くん見事だったよ。念願の優勝だね」

宮本「ありがとうございます」

剣キチ「最後は筑波3連戦だったね。どの試合が一番キツかった?」

宮本「決勝は思い切って行くしかないと思ってその通り試合ができましたが、やはり初田に1本獲られた時が一番キツかったです。あの時は焦りました」

剣キチ「確かに、初田くん凄い気合い入ってたし、強かったよね。星子くんは?」

宮本「星子には絶対に負けられないし、全試合そうでしたが、特に一瞬たりとも気が抜けない強さを感じました」

剣キチ「筒井くんへの最初に決めたメンは見事だったね」

宮本「先生から教えられた通りに打つことができました」

剣キチ「宮本くん、どんどん強くなっているんだけど、昨年からどんな気持ちで剣道に取り組んできたの?」

宮本「昨年、全日本選手権で入賞して、周りの方々から期待されて、それがプレッシャーになっていました。みっともない姿は見せられない。もっともっと強くならなければと。それがよい形で出せたのだと思います」

剣キチ「茨城のみんなも喜んでいるよ。『敬太は茨城の星』だってさ」

宮本「ありがとうございます。頑張ります」


私が宮本選手と初めて話をしたのは、6年前の玉竜旗、彼が高1の時だった。
あの頃から身長は変わっていないと思われるが、
目を見張るような大人の剣士に成長した。


背筋がピンと伸びた美しい姿勢。
常に相手の中心をとる正しい構え。
相手の気を読み、先を取る華麗な攻撃。
爆発的な瞬発力と、正確無比な打突。
そして相手に対する礼儀正しさ。

全てを兼ね備えたスーパー学生剣士誕生と言ったところか。
全日本学生選手権の活躍も楽しみである。


ちなみに、筒井選手とは話ができなかったが、
鍋山監督に聞いてみた。

剣キチ「筒井くん残念でした。足は大丈夫そうですか?」

鍋山「前の試合から、足がつり気味だったみたいです」

剣キチ「つったのですか?」

鍋山「筋まで行ったかはこれから検査しますが、いずれにしても、全日本まで日がありますのでリベンジしますよ」



さて、今回の関東学生選手権では思うところがたくさんあったので、
思いつくままに書いていく。


1.最高学年の活躍

私が勝手にゴールデンエイジと名付けた現大学4年生。
少年時代から強い選手が競い合い、上の学年を喰い、
スター選手を多数生んできた学年だ。

その4年生が今回の決勝を戦った。

決勝を4年生同士が戦ったのは、
実に10年前の2007年まで遡る。
そう、優勝した田中達也(法政)と2位の升田良(中央)の対決以来である。

そして宮本が優勝したわけであるが、
4年生の優勝というのも次の通り7年ぶりだ。

2010年 松亮介(中大4年)
2011年 安藤翔 (国士舘3年)
2012年 宮本大幹(中大3年)
2013年 榎本雄斗(中大3年)
2014年 林田匡平(筑波大3年)
2015年 梅ヶ谷翔(中大2年)
2016年 矢野貴之(国士舘2年)
2017年 宮本敬太(国士舘4年)

これほどまでに4年生が優勝するのが難しくなってきている昨今だが、
宮本が圧倒的な強さで優勝したのはある意味非常に嬉しい。

大学1年生や2年生といった低学年選手が活躍するのも見ていて楽しいが、
もしそれが常になってくるようなことになれば、
高校時代の貯金で頑張り、
そして大学では学年が上がるにつれ高校時代の貯金を食いつぶし、
実力が落ちていく。
という悲しい事実を意味するからである。
これでは大学剣道の魅力は薄れてしまう。

4年生が強い学生剣道。
その強い4年生に対して臆することなく
がむしゃらに立ち向かって時々勝利する低学年生。
こういう図式が本来の学生剣道のあるべき姿なのだと私は思う。


ついでに言えば、
関東のみならず、
今年の九州学生チャンピオンは真田裕行(鹿屋体育大4年)、
そして関西学生チャンピオンは野瀬亮斗(大体大4年)と、
いずれも4年生が優勝した。


さらに、
今回、全日本学生選手権に出場が決まった60名を昨年と比較した。

学年別

学年 今年 昨年
4年 25 人 23人
3年 18 人 21人
2年 11 人 14人
1年  6 人  2人
計  60人 60人

確かに4年生が若干増えたが、最も増えたのは1年生だった。



おまけ。

全日本出場
大学別人数ランキング

大学  今年 昨年
国士舘  8  8
専修大  5  3
筑波大  4  3
中央大  3  9
日体大  3  7
明治大  3  4
立教大  3  1
明星大  3  0
東洋大  3  0
早稲田  2  2
流経大  2  2
日本大  2  2
國學院  2  2
慶應大  2  1
国武大  2  1
清和大  2  1

やはり安定の国士舘がトップ。
そしてここ数年、急激に勢力を伸ばしてきた専修がついに2位に浮上。
筑波から代表となった4人は全員が優勝した宮本に敗れた。
中大の激減は意外だった。ここから強い中大を見せて欲しい。
日体・明治の3人は不本意な結果だろう。
立教大、明星大、東洋大の3名は大したものだ。



全日本出場
高校別人数ランキング

高校  今年 昨年
九州学院  8  4
東福岡   5  3
福大大濠  3  3
水戸葵陵  3  2
秋田南   3  1
高輪    3  1

とにかく九学が凄まじい。
東福岡と福大大濠の福岡勢は相変わらずの強さだ。
高輪と秋田南が昨年の1名から3名と頑張った。

(次回に続く)
【文中敬称略】


イメージ 1

決勝戦、筒井選手に面を決める宮本選手。



イメージ 2

優勝が決まって面をはずし
国士舘の仲間に囲まれながら
カルピスウォーターで水分補給する
おちゃめな感じの宮本選手。



イメージ 3

インタビューに答える凛々しい宮本選手。

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