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『条解民事訴訟法(第二版)』 弘文堂 2011
日本における民事訴訟法の解説書としては
至高の一品といっていいと思う。
日本の民事訴訟法学を確立した兼子一が1951年に原書を書き、
その後1986年に、弟子である松浦馨,新堂幸司,竹下守夫の三氏が
大幅に改訂したものを、この度、さらにその弟子である
高橋宏志,加藤新太郎,上原敏夫,高田裕成の4氏が
手を加えて成ったのが、このコンメンタールである。
当初からの方針により分冊はせず、条文からはじめて
判例や学説の解説まで、1冊にぎゅっとまとめられている。
何かと情報が分散しがちな社会科学において、
こういうのが一冊作られて、引き継がれている
民事訴訟法学はすごいと思う。
そうそうたるメンバーを見れば一目瞭然だが、
“民事訴訟法の広辞苑”という感じである。
定義や通説的解釈などを知りたければ真っ先にこの本で
調べてみるのが王道とみていいのではないだろうか
(容量の都合上、必ず答えがあるとは限らないが)。
教科書的な重要判例や論点の解説ならほとんど網羅され、
多角的で詳しい解説がなされている。
条文にとどまらず、明文にはない部分の争点も
反対説を交えながらしっかり取り上げられている。
参考文献の注記も多いし、索引も一通り完備している。
1冊の本でできることは全部やっているという感じだ。
どのような本でも「これじゃ足りない」という意見は
不可避ではあろう。もちろん、今後、全5冊とか全10冊とか、
本書よりも詳しい注釈書が出てくることはあるだろうし、
実務家さんや学者さんはそういったものでないと
満足できないかもしれない。ただ、いずれにせよ、
「実務に向いている」とか「この点の解釈が詳しい」とか
「判例紹介が多い」とか、解説書の長所短所を語る上で、
本書がそういった価値評価の中心を担うだろうと推察される。
今後しばらくは、「民事訴訟法の体系書の決め手はどれか」、
「いいものは出ないのか」、などと(私のようにそういった
“不毛な品評会”を趣味にしている人もいるだろうが)
悩む必要はなくなった。
正直2万円もする高い本なので買う人は少ないだろうが、
民事訴訟法のこれまでの総まとめとして、
手元において損はないと思う。
最近、法律情報もどんどん電子化されていて、
紙の本は減少していく運命にある。そんな中でも、
こういうメルクマールとなる注釈書・事典には
末永く生き残ってほしいと思う。
民事訴訟法は本書を含めてコンメンタールは多く、
会社法や刑法も解説書が豊富。『条解破産法』もすごそうだ。
となると、あとは『条解憲法』とか『条解民法』(全3冊くらい)
が出たらいいのになあと強く思うしだいである。
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