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『日本の名著』 桑原武夫編 中公新書 1962/2012
新書御三家、中公新書の記念すべき第一作目である。
読まれ続けて50周年。改版を機に遅ればせながら読んでみた。
明治から終戦までの期間に書かれた本で、
文学を除く、社会科学,人文学,自然科学から名著を50冊選定し、
その要旨を紹介している本である。
“桑原武夫編”となっているが、実際は桑原武夫,河野健二,
上山春平,樋口謹一,多田道太郎の5人による編集であり、
そこにさらに10人を加えた15人による分担執筆の本となっている。
ほとんどが当時の京都大学教授である。
編者は、西洋思想に比べて日本の近代思想が
軽視されかねないことを危惧して本書を作成したそうだが、
たしかにまとまった入門書は珍しい。一覧すると、
選ばれた名著執筆者はそうそうたる面々であり、
読んでみたいという気持ちをそそる本ばかりである。
本書のテーマは、はしがきで桑原教授により熱く語られているが、
一言で言えば“温故知新”である。この大きな流れを体験することで、
日本人として知っておくべき教養の大きなエッセンスを得ることが
期待されている。
解説のほとんどは要約が主体であり、
評者による奇をてらったものはなく、しっかりまとめられている。
作品の勘所と注意点が単刀直入に明確に提示されていてわかりやすい。
この解説書を通読するだけでも、近代の日本思想の熱い気迫の
余波が伝わってくるように思う。50冊はさすがに困難でも、
何冊かの原書は読んでみたいという気持ちがきっと起こってくるはずだ。
そのくらい熱い本が多いし、紹介も熱い。また、全作品には
各著者のプロフィールも付されていて便利である。
まさに“名著を紹介する名著”といって間違いない。
長く読み継がれていることにも理由があるといえよう。
この本自体が日本近代史の名著の一つである。
同じ中公新書草創期の一冊、
碧海純一『法と社会』についても感じたことだが、
こういう信頼の置ける入門書やブックガイドは、
ありそうでなかなかあるものではない。
この50年の間でこれが読み続けられるのは、
他がないからという面もまたあるだろう。
明治から昭和まで(1888〜1988)の
“日本100年の名著”とでもいったものも、
誰か作ってはいただけないものだろうか。
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