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『刑法基本講義‐総論・各論(第2版)』 佐久間・橋本・上嶌 有斐閣 2013
なぜかよくわからない3人の取り合わせで登場した
刑法テキストの第2版である。おそらく御三方の講義を
取る人以外にはあまり関係がない本だろうが、
一般読者という目線で多少気になるところがあったので、
一応考えてみる。
悪いとまではいえないが、
やっぱりいまひとつと言わざるをえないだろう。
コンセプト的に不明瞭な感じが否めない。
従来の刑法の教科書は、総論と各論と分かれ、
非常に大部なものが多い。そのことを考えると、
両者を1冊で説明するという取り組みはたしかに有益だ。
そんな中で、せっかくの機会にどうしてこういう感じの
本にしようということになったのかは、やはり疑問。
1冊でまとめるなら、1人または学説の近い学者で
やらなければすっきりしない。そういう意味で、
本書はちょっと評価するのは難しいと思う。
いろいろパターンで空想してみると。
Ⅰ 橋本教授・上嶌教授が1人で書き下ろす。
当然これがベスト。佐久間教授でもまあよいが、
ご自分の著作群があるのだから、その必要はない。
Ⅱ 上嶌教授が東大系若手数人と組んで作る。
リーガルクエストみたいな感じ。
Ⅲ 「この3人で作る」ということを前提とするのであれば、
①各300ページほどで、総論と各論の二冊に分ける。
③それぞれを、橋本教授と上嶌教授の単独執筆にする。
④佐久間教授は、それぞれにサポートというスタンスで参加する。
『書斎の窓』(2010年1‐2月号)では、
佐久間修教授と民法の佐久間毅教授が、
同じ「基礎シリーズ」の著書として対談しているが、
この二者のどこが同じシリーズ(いわば姉妹書)なのだと、
強い違和感を感じる。『民法の基礎』の方は、
佐久間毅教授が1人で、しかも本格的に大部に書き下ろした教科書である。
“全体を圧縮した内容を三人がかりで書いた”この『刑法基本講義』とは
趣向がまったく違うと言わざるをえないだろう。
『民法の基礎』と姉妹書だとするのであれば、
上述した分野別とか単独執筆にしなければ、
はなはだ的外れだと思う。
なお、第2版のはしがきでは、
「本書の特長はケーススタディにある。諸々の批判は当たらない」
と強調されている。しかし、さらに口を挟ませていただくなら、
まず、ケーススタディ(あてはめ)を意識していないテキストが
もはや通用しないことは当然であって、本書だけの特長とするのは
難しいだろう。また、刑法のケースブックや事例演習書・問題集は、
すでにけっこうな数ある。それらとの兼ね合いも微妙だ。
さらに、ケーススタディを多く盛り込みたいなら、逆に分量は
増えるはずであり、“コンパクト化”と両立するのかも疑問である。
この本を格別に槍玉に上げる必要はないのだけど、
「なぜこうかな〜?」という法律テキストがあまりに多いので、
この本をネタに愚痴を書き連ねてみた。
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