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岩波書店から新しいレーベル、「岩波現代全書」がスタートした。
シリーズの特徴は、「人文・社会・自然科学のあらゆる分野の
若手・ベテラン研究者が,アカデミズムを社会にひらき,
多くの人びとに最新最良の成果を発信し,学知の水脈を切りひらきます。
読みやすい文章,親しみやすい造本,求めやすい価格で、
学問研究の魅力を,新たな器に盛りこんでいきます。
創刊時に5冊,毎月2冊の定期刊行.どうぞご期待ください」
ということらしい。
ごくごく個人的な趣味でいえば、大いに期待はずれな企画だ。
「全書」というからには、「哲学入門」とか「政治入門」、
あるいは、もう少し細かくても、「カント哲学」とか「アメリカの哲学」、
「中国の政治」とか「現代日本経済入門」とかいう、
大づかみな、基本書が出されるものと思っていたからだ。
しかし、創刊ラインナップは次のようになっている。
6月
『ドゥルーズの哲学原理』 國分功一郎
『「幸せ」の経済学』 橘木俊詔
『「シベリアに独立を!」』 田中克彦
『円周率が歩んだ道』 上野健爾
『日本人の心を解く』 河合隼雄
7月
『日本デモクラシー論集』 堀 真清
『GHQの検閲・諜報・宣伝工作』 山本武利
『脳と機械をつないでみたら』 櫻井芳雄
要するに、「新しい選書・叢書を始めました」ということにすぎない。
「全書」という設定からはほど遠いのではないか。
この内容なら、岩波新書や岩波現代文庫でも出版は可能だろう。
もちろんのこと、それに収まらなければ単行本で出せばよい。
筑摩書房の「筑摩選書」や講談社の「メチエ」などとも同じことだが、
「清新なことを始めました」という積極的な取り組みというよりは、
「単行本では採算が取れないので、ローコスト製本にしました」
という消極的な企画という気がしてならない。
とはいえ、出版不況の世の中だからしょうがないのだろう。
「岩波全書の現代版が出る」ということで、期待して構えていたが、
なんのことはない、興味がありそうな本がたまに出るのを気長に
待つという、今までと何ら変わらない状態に落ち着きそうだ。
「出るものをほぼすべてそろえ、端から読んでいく」という
「全書」という語感とはほど遠い。
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