社説:論調観測 震災と憲法 緊急時の国の権限とは
憲法記念日の社説は東日本大震災と憲法について論じたものが多かった。「緊急時にこそ国が『生命と最低限度の生活』を支えるのが憲法の要請」「政府のより強力な被災者支援が急務だ」(毎日)という問題意識はほぼ同じだが、具体的な主張の内容はかなり違う。
「憲法を含め、国家緊急事態に関する不備の是正が喫緊の課題」という産経は「非常時に頼りになるのは自衛隊などだ」として、自衛隊を憲法上「国民の軍隊」として処遇することを訴えた。また、政府が災害対策基本法で定められた「災害緊急事態」の布告を見送ったことについても、「この布告により、生活必需物資の配給や価格の決定などが行われれば、今回の震災で問題になったガソリンなどの流通の混乱は是正できたろう」と批判した。
読売も「現行憲法が、緊急事態への対処を規定する条文を欠いていること」を問題とする。ただ「近い将来の憲法改正が容易ではないことを考えれば、『緊急事態基本法』を制定してはどうか」と提案した。経済秩序の維持や公共の福祉確保のために、政府が国民の権利を一時的に制約できるようにするものという。また、「災害対策基本法では、国が強制力を持った措置は取りにくく、今回のように広域で甚大な震災には、十分対応できないとの指摘が出ている」と産経とは違う見解を示した。
一方、朝日は、被災者の私有財産の国による保障、再興や防災強化の観点からの私有地利用制限などについて論じた上で、「公と私のぶつかりあいを、憲法改正で乗り越えてしまおうという議論も改めて出てきている。非常事態条項を新たに盛り込むべきだという自民党内などからの主張である」「同時多発テロ事件後の米国で見られたように権力へのチェック機能が失われる危険をはらむ。民主主義体制そのものを浸食しかねない」とけん制した。
毎日も「憲法を改正して緊急事態の条項を入れるべきだとの意見もあるが、その前に現行法制と運用について議論する必要がある」と主張。衆参ねじれと与野党協力について触れ、「緊急課題を忘れたかのような行動では政治が国民から見放されてしまう」と警鐘を鳴らした。
東京も「被災者らの生活再建は生存権の問題です。政府にはその権利を保障し実現する責任があります。復旧、復興対策のもたつきぶりをみると、関係者が責任を十分自覚しているとは思えません」と厳しく論じた。
【論説委員・野沢和弘】
2011年5月8日 毎日新聞
震災に関して、憲法論として特に問題になる点は、
今のところ生じていないと思います。
各社の主張は、今回も、具体的にどこがどう問題なのか、
漠然としてよく伝わってきません。
「震災後」と「憲法記念日」がたまたま重なったため、
各社論説委員が無理やり関連づけたというところなのでしょう。
憲法記念日に、基本的な法的知識を踏まえた
建設的・具体的な議論が、マスメディアのレベルでは
今年もなかったのは残念ではあります。
なお、同日の毎日新聞で、加藤陽子・東京大学教授が、
これまた「震災」と「憲法(立憲主義)」を
からめてエッセイを書いているのですが、
やはりこじつけという感じは否めません。
強引な展開で、論旨不明確な内容となっている
ように思うのは私だけでしょうか。
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