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『セカンドステージ債権法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 野沢正充 日本評論社 2011
債権法の総論から各論までを書き下ろした全三冊の教科書。
法学セミナーでの連載をまとめたものである。
法律学を勉強しようと思ったときにとかく困るのがテキスト選びだが、
今現在、この分野を勉強しようと思い始めた人には
このシリーズをおすすめしたい。良作だと思う。
本書は、一人の著者が、シンプルな体裁で、
全面的に判例,通説を中心として債権法を説明したものである。
そういうときわめてオーソドックス(ふつう)に聞こえるが、
実際にはここまで割り切ったテキストはなかなか存在しない。
民法をかじった人ならわかるだろうが、
重厚すぎたり、独自すぎたり、詳しすぎたり、薄すぎたりと、
法律学の教科書は、数が多い割には、
“これ”というものが実は少ないと思う。
そういう意味ではこの本は相対的にかなり良くできていて、
貴重とすらいえるかもしれない。
中でも判例の扱いが丁寧な点がよい。
シンプルながら重要な判例は原文を引いて詳しく説明されている。
そして学説は、いまどき珍しく基本的に「我妻説」一筋であり、
それをあくまで補強する形でその他の学説も盛り込まれている。
やや淡白とも感じるが、おおむね明快でわかりやすい記述である。
無駄なところがほとんどない。
ただ、本書の特長として、“論理的な思考力も涵養されて、
試験問題の解答力も向上する”といったようなことまで
うたわれている(そのため「セカンドステージ」か)が、
その点はやや疑問だ。そこまでテクニカルで、
懇切丁寧だとは思われない。その点をいうならば、
他に読むべき参考書はいろいろあるだろう。
やはり本書のすばらしいところは、“当たり前の基本を、
オーソドックスに説明してくれる基本書”というところにあり、
演習書的性格まで請け負うのは限界があるだろう。
そういう意味では、「セカンドステージ」というネーミングは、
ややミスリーディングで不適切だし、損していると思う。
タイトルから取り払った方がいいだろう。
それはそうと、迷っているなら読んでみてもいいテキストだ。
債権法(債権総論,契約法,不法行為法等)について、
これから勉強をし始める人、または、
混乱したのでもう一度勉強し直したいという人に、
ぜひお薦めしたい。
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2012年04月24日
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