カンカンとガクガクの部屋

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『最新重要判例250刑法(第9版)』  前田雅英  弘文堂  2013
 
 
首都大学東京の前田雅英教授による判例(評釈)集である。
結論からいって、ある意味、
前田刑法学の集大成といっても過言ではないと思う。
 
まず、いわずもがな、単独執筆でかつ一冊にまとまっていることは
非常に大きい。改訂が早く、判例数も過不足ない。
これはかなり大きなアドバンテージだと思う。
比較的最近の裁判例を中心に、たっぷり262件収録されているので、
多くの場合における学習には充分な数だ。
レイアウトもすっきりしていていい。
研究者や司法試験受験生にはわからないが、
一般の大学生や、司法書士・行政書士試験を目指している人には、
判例百選より格段におすすめである。
他の刑法の先生や、刑事訴訟法,民事訴訟法においても
同様な本を出して欲しいなと切実に願う。 
 
ただ一方で、短所も当然ある。事実関係や審級関係、
主題以外の判決事項はバッサリと簡略化されているところだ。
これは一通り学習した中級以上の人には物足りないだろう。
したがって、当然すぎることだが、例えば、レポートを書くときや、
法科大学院既修者課程で難しい課題に取り組む人には、
本書一冊では知りたいことが充足されないと思う。
 
また、解説が良くも悪くも前田体系書とほとんど変わらない
ということも、賛否を分けるところだろう。
他の先生の体系書で勉強している人は見解が食い違うのは当然だし、
さらに前田体系書で勉強している人にとっても、
結局体系書と同じような説明が書いてあるわけだから、
それを読んで納得できない部分は、本書を読んでも
納得できないままということになりかねない。
 
なお、前田説は、「結果無価値論者として有名」とよく言われるが、
それはかなり語弊がある見方だ。前田説は、結果無価値でも
行為無価値でもない第三の方向である「実質的犯罪論」という
立場をとっているところに特徴があるのであり、
学説としてはかなり独自な部類(少数説)である。
確かに「判例に近い」が、「中立的な立場」にいるとは言いがたい。
これを中立という人はやや誤解していると思う。
前田説は世間からのうけは抜群にいいが、
学術的な評価は低調というのが現状らしい。
つまり、あくまで、前田説をベースに判例をスムーズに
知ることができる本であり、刑法学の多数説を的確に学べる本とは
いいがたいことには留意が必要ということだ。
 
とはいえ、ほどよい詳しさで重要判例を網羅してある本書は便利だ。
優良なケースブックの見本といえる。
また、逆説的ではあるが、少数説刑法学者である前田教授にとっては、
これが(学術論文を除けば)代表作という風にみなすこともできると思う。
本書があれば、バカ売れしている総論講義や各論講義なども、
実のところは、特に購入する必要性はないともいえるかもしれない。
 
 
 
 

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