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『裁判長!桃太郎は「強盗致傷」です!』  小林剛  永岡書店  2010
 
 
本の意図とは外れますが、
裁判とか法律がどうという前に、
「昔話の原話って、ほんとにこわいんだなあ」と
いうのが最初の感想。
 
日本と海外の昔話が28話、
あらすじとして載っているので、
それをまとめて読むだけで楽しめますね。
知っているつもりだった話が、実はぜんぜんちがう
悲惨な内容だとわかったものが半数近くありました。
 
今の童話は相当、教育的・穏健的に
書き換えられているのだと再確認させられて、
興味津々でした。この点では面白い本だと思います。
 
 
 
しかし、著者がエリート弁護士なのにもかかわらず、
裁判の結論には不可解なものも多いと思います。
 
例えば、
「桃太郎」は、強盗致傷成立とされていますが、
手をこまねいていれば、鬼の軍団に村が襲われていた
ことを考えれば、正当防衛とか、何らかの超法規的
違法性・責任阻却事由が検討されてしかるべきでしょう。
成立の理由が、「警察に頼むべきだった」では
事実評価として、あまりに暴論です。
 
「耳なし芳一」のミスをした和尚に
高額賠償の注意義務違反がある
というのも、あまりに酷なお裁きです。
和尚はまったくの善意で、しかも加害者は
想定外の大災難だったわけですからねえ。
 
 
「裸の王様」の子どもは、
公益的な発言(刑法230条の2)をしているのですが、
著者は「公益の意図がないので有罪」とします。
でもそれを言うなら、そもそも未成年者に
責任(故意)を認めるのがおかしいでしょう。
ここは公益発言として免責されるというべきです。
 
その他にも、
同時代の財物なのに、掘り返した宝は
「文化財」だとか(「はなさか」)、
当時制度としてあったかもわからない「婚姻届」が
出ていないから婚姻は認めないとか(「青ひげ」)、
ファンタジーとして、話の中では現に実在する前提なのに、
「魔法は犯罪の実行行為とはいえない」とか(「ハーメルン」)、
常識的に首をかしげるものが
相当あるのではないでしょうか。
 
 
まあ、あんまりきっちり考えるとみんな
常識的結論になってつまらないという作意でしょうね。
でもやっぱり、弁護士が書くなら、処罰の妥当性まで
きっちり詰めて考えられていないと迫真性に欠けます。
ほんとに弁護士?検察官じゃないの?
と思ってしまいました。
 
弁護士だから全部正解と考えず、
自分の常識に照らして読むといいと思います。
 
法律は、たしかに複雑ですが、
そんなに非常識(つまり不正義)な結論が
まかり通るほどガチガチのお題目では
ないと思いますよ。
 
 
 
 
 
『憲法と平和を問いなおす』  長谷部恭男  ちくま新書  2004
 
 
「憲法と平和」の入門書として、
かなり有名になった一冊。
遅ればせながら私も読みました。
そこそこ売れているようで、
読書感想もネット上にたくさんありますが、
一応私も感想を書いておきます。
 
憲法の解説本ですが、
著者もあらかじめめ言うように、
護憲だの改憲だのとアジテーションを
繰り広げるような本ではまったくありませんし、
条文を一つ一つ取り上げて、
講義するような本でもありません。
古今東西の憲法学や政治学の知識を駆使して、
「憲法とは何で、どうあるべきか」
とことんこだわった入門書ということができます。
 
この立場は著者の他に多くある著作でも
一貫しています。その政治学に関する
博識ぶりはいつもながら舌を巻くところです。
ホッブスやルソーの社会契約論の解説にも力が入っていて、
社会契約論とは何だったのか、非常に充実しています。
何度も読むことで考え方を鍛えたくなります。
 
まず、
多数決とは何か?
民主主義とは何か?
から懇切丁寧に説明されます。
そしてそれをコントロールする装置としての
立憲主義の説明が本書の肝です。
 
易しい本ではないですし、
難解と感じる人もいるかもしれませんが、
憲法を真剣に考えるためには
この本(あるいは著者の他の本)は、
一冊くらい避けて通れないと思います。
 
あとがきで著者は、
「買うかどうかは慎重に決めてください」
と言っていますが、私はけっこう広く
おすすめできると思います。
憲法を本気で考えるすべての人に
推薦できる一冊が見つかったように思います。
 
 
 
 
 
 『永遠平和のために』   カント  1795年

 
国家間の永遠平和のための予備条項
 
第一条項
 将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、
決して平和条約とみなされてはならない。
 
第二条項
 独立しているいかなる国家(小国であろうと、大国であろうと、
この場合問題ではない)も、継承、交換、買収、または贈与によって、
ほかの国家がこれを取得できるということがあってはならない。
 
第三条項
 常備軍は、時とともに全廃されなければならない。
 
第四条項
 国家の対外紛争にかんしては、いかなる国債も
発行されてはならない。
 
第五条項
 いかなる国家も、ほかの国家の体制や統治に、
暴力をもって干渉してはならない。
 
第六条項
 いかなる国家も、他国との戦争において、
将来の平和時における相互間の信頼を不可能に
してしまうような行為をしてはならない。
 
 
国家間の永遠平和のための確定条項
 
第一確定条項
 各国家における市民的体制は、共和的でなければならない。
 
第二確定条項
 国際法は、自由な諸国家の連合制度に基礎を置くべきである。
 
第三確定条項
 世界市民法は、普遍的な友好をもたらす諸条件に
制限されなければならない。


                   宇都宮芳明 訳   岩波文庫  1985年刊 
                            http://www.iwanami.co.jp/
 
 
 
 
 
 
 

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