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『岩波 社会思想事典』   今村仁司ほか   2008
 
 
 
小型で、総合型の哲学事典のようだったので、購入してみた。
 
 
帯の紹介はこうだ。「文科・社会系学問の基礎用語のすべてを
一冊に凝縮。基本用語・重要人名を195項目に絞り込んで、
詳しくていねいに解説。レポート・論文執筆の参考書として最適。
人名索引には、原綴・生没年・主著を付す。」
 
執筆者は、今村仁司、三島憲一、川崎修、市野川容孝、犬塚元、
大塚和夫、加藤節、川出良枝、木前利秋、熊野純彦、齋藤純一、
桜井哲夫、佐々木毅、佐藤恵子、新宮一成、杉田敦、関口正司、
竹村和子、中村研一、中山竜一、成田龍一、野家啓一、松沢弘陽、
松本礼二、村上淳一、柳原正治、山口節郎、吉岡知哉、鷲田清一と、
ほぼ文句がないであろう陣容だ。 
 
 
個々の内容については、素人なので論評などはできない。
しかし、概括的に言って、この事典には複数の大きな注意点がある。
 
1 扱うのは「西洋」思想である。
  したがって、東洋思想や日本思想など非西洋思想はない。
 
2 扱うのは「近現代」思想である。
  プラトンやアリストテレスなどの古代思想は直接は扱われない。
  おそらく中世思想もほとんどない。古代・中世は、あくまで
近現代思想を説明する文脈で間接的に取り扱われるのみである。
 
3 周辺に位置する学問領域の扱いは狭い。
  基本的には「公共哲学」が主体である。
  人文・社会・自然科学などは、執筆者の関心・裁量で
  数点がピックアップされているのみで、かなり狭い。
  宗教思想もほぼない。キリスト教などですらさわりのみ。
 
4 項目を絞り込むにもほどがある。
  たとえば、「ルソー」の項目はあるが、
  「社会契約」とか「一般意思」といった項目はない。
  「現象学」はあるが、「フッサール」や
「ハイデッガー」といった項目はない。
 
5 「詳しい」と言うほど、詳しくはない。
では、「ルソー」や「現象学」の項目が手厚いかといえば
そうでもなく、わずか1〜2ページである。
小・中項目であり、新聞記事程度の論評がほとんど。
手がかり程度の情報量しかない。
 
 
 
「看板に偽りあり」と言いたくなる。
“参考書としてすべてを網羅した”などと、
よくまあ謳えたものである。
 
本書のタイトルを正しく変更するならば、
『西洋近現代思想入門事典』とでもするべきだ。
『西洋近現代思想入門事典』という極めて限定した
タイトルにして、それでも興味があるという人だったら
買う価値はあるだろう。
 
 
確かに「民主主義」とか「政治」とか「福祉」とかいった
超基本用語については、ためになる鋭い指摘が随所に見られる。
でもこの、項目数の少なさ、対象範囲の狭さ、文章の短さは、
あまりに事典としては苦しすぎると思われる。
 
 
 
 
 
 
『政治学をつかむ』   苅部直・宇野重規・中本義彦 編  有斐閣  2011
 
 
本書は全5章で構成されているのだが、
まず注目されるべきは第1章および第2章,
および第3章の半分にあたる、苅部教授と宇野教授の
執筆する「政治学総論」ともいうべき部分だろう。
 
東京大学の現役教授が書いた入門編であるから、
待望のスタンダードな入門講義録として
注目する価値があるといえる。
 
 
ただその点が待望であるだけに、
逆にそれ以外の部分には若干の不満を感じずにはいられない。
それぞれに簡潔にまとめられていて、
ざっと勉強するには確かに便利ではあると思う。
しかし、第3章「日本政治のいま」(共著)と
第4章「国際秩序と正義」(中本教授の単独書き下ろし)、
そして“政治学各論”ともいうべき第5章「政治のこれから」
(アンソロジー)については、執筆者の評価をはじめ、
「他の教科書・入門書で、興味に合わせて勉強したほうがよい」
という感じがする。「いま、ここで、この人が」という
必要性があまり胸に響いてこないのだ。
 
 
個人的な好みに過ぎないのかもしれないが、200250頁など、
やや薄い内容になっても別にかまわないので、
苅部教授と宇野教授と中本教授だけで、
全部を一貫して書き下ろしてほしかったと思う。
非常に惜しい。
 
本書は入門書であり、
各論は専門書で勉強しなければならない。
大学であれば、それぞれに講義があり教科書があろう。
そうであれば、「有名教授1〜3人が、例え不十分な面があっても、
わかる範囲で一気に語り下ろす」というのが
社会科学の入門書としてはベストな形だと思う。
その方が書籍としての存在意義も高まったに違いない。
 
 
『書斎の窓 201111月号』において、
編著者である苅部教授が本書の紹介をしていた。
 
まったく案の定であるが、本書のコンセプトについて、
「政治学の教科書はそもそも作るのが難しい。
特に専門分化が進んだ現在では、統一的な体系を
描きあげるのは困難である。それぞれの専門の先生にお願いし、
整合性よりも、興味をもった箇所から読んでいける体裁をとった」
とされている。
 
しかし、それではやはり安易だ。
本質的な体系論を回避して、
ありがちなアンソロジーに走ることには、
私はぜんぜん賛成できない。
まるで「政治学」がひとつの体系的学問領域で
あることをあきらめてしまったかのようである。
類書への埋没にいたるおそれも強いだろう。
 
編者は日本の第一線の政治学者さんである。
ここはそろそろ「自分の政治学講義」を体系的に
まとめるというのがあってもいいのではないだろうか。
 
  
 
 
 
 
 
『ゼミナール現代日本政治』  佐々木毅・清水真人  日本経済新聞出版社
 
 
 
見た目にインパクトがあったので、
「ちょっくら、政治でもかじってみようか」
と思い、手にとってみた。が、
あくまで私の中で勝手にハードルが上がり過ぎていたのか、
少々、期待はずれな本と感じた。
 
 
「政治学者と記者がタッグを組んだ」
となっているが、これは注意を要するだろう。
 
本書は、まず民主党政権を観察した前半半分(220頁ほど)を、
新聞記者の清水真人氏が単独で書き下ろしている。
そして、後半部分(300頁ほど)を
佐々木教授ら政治学者6人が分担執筆しているのである。
つまり、「日本政治に関する主要論点を、
学者と記者の双方向から共同分析した」
というわけではないのだ。
 
2つの本が1つに合わさっているといってもよい。
「学者と記者の共同作業」というには不十分だろう。
ごく個人的な感想では、清水氏という一記者が、
一過性の政権交代について絞って書いた、
前半部分には興味がもてない。
それは別に、清水氏が一人で
単行本や新書か何かで発表すればよいことだ。
清水氏の手腕以前に、「超現代史」というものは、
すぐに古くなってしまうため、こういう教科書的な本に
ふさわしいのだろうかと疑問に思う。
 
この方針を維持するのであれば、
ゼミナールシリーズとしては、
清水真人氏による『現代日本政治』というような本と、
政治学者6人による『日本政治学入門』というような本に、
加筆したうえで、2冊に発展的に分割させてほしいと思う。
 
これは別に私の独りよがりではなく、
ゼミナールシリーズの経済学分野は当初から、
『日本経済入門』(ジャーナリズム)と、
『経済学入門』(理論)というように
きっちり住み分けられている。
 
政治学もそうすることを切に願う次第である。
 
 
 
 
 
 

 

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