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『条解刑法(第3版)』    前田雅英 編集代表  弘文堂  2013  
 
 
 
刑法を代表するコンメンタール(逐条解説書)の一つが
この『条解刑法』である。初版出版から10年ということで、
その概要をざっくりと見てみた。
 
 
初版以来のこの本のコンセプトは、
「実務において現実に妥当している刑法を一書にまとめること」であり、
「実務における刑法の考え方」を提示することにあるという。
そのため、理論上・学説上の問題にはほぼ立ち入らず、
参考文献は(ごく一部を除き)注記されない方針になっている。
執筆分担も記載はしないことになっており、
文責は編集委員6人が連帯して負うものとされている。
 
 
全体のボリュームは、初版が823ページ,第3版は893ページ。
8%くらいの増量であまり変化はない。
 
 
編集委員に出入りはない。前田雅英教授か池田修判事が
最高裁判事になるかもしれないとうっすら思っていたが、
それはなかった。残るは大谷直人判事で、この人が一番可能性は
高いらしい。第四版で初の最高裁判事誕生となるかもしれない。
 
 
執筆陣もあまり入れ替わりはない。ただ、
検察官の比重が下がり、裁判官中心の色合いが濃くなっている。
初版は、裁判官17人、検察官12人であったが、
3版では裁判官20人、検察官4人となっている。
 
 
学者は変わらず、実質的に前田教授の右腕である
木村光江教授ただ1人の参加である。前田教授の研究者弟子は、
10年経っても参加は無い。そもそもガラパゴス学派であるため、
前田説は刑法理論としては一代限りの運命なのかもしれない。
本書は、学説にはあまり触れないというコンセプトだが、
むしろ、学会における99%の通説でない限り、前田説であっても
言及はしないという徹底した立場にシフトしたほうがいいのかもしれない。
 
 
気は早いが、第四版が出るのは、2019年頃になるだろう。
その頃に編集委員は全員キャリアの終着を迎えることになる。
メンバーの入れ替わりとかはあるのだろうか。
 
 
これからもなんだか気になる一冊である。 
 

 
 
 
 
『最新重要判例250刑法(第9版)』  前田雅英  弘文堂  2013
 
 
首都大学東京の前田雅英教授による判例(評釈)集である。
結論からいって、ある意味、
前田刑法学の集大成といっても過言ではないと思う。
 
まず、いわずもがな、単独執筆でかつ一冊にまとまっていることは
非常に大きい。改訂が早く、判例数も過不足ない。
これはかなり大きなアドバンテージだと思う。
比較的最近の裁判例を中心に、たっぷり262件収録されているので、
多くの場合における学習には充分な数だ。
レイアウトもすっきりしていていい。
研究者や司法試験受験生にはわからないが、
一般の大学生や、司法書士・行政書士試験を目指している人には、
判例百選より格段におすすめである。
他の刑法の先生や、刑事訴訟法,民事訴訟法においても
同様な本を出して欲しいなと切実に願う。 
 
ただ一方で、短所も当然ある。事実関係や審級関係、
主題以外の判決事項はバッサリと簡略化されているところだ。
これは一通り学習した中級以上の人には物足りないだろう。
したがって、当然すぎることだが、例えば、レポートを書くときや、
法科大学院既修者課程で難しい課題に取り組む人には、
本書一冊では知りたいことが充足されないと思う。
 
また、解説が良くも悪くも前田体系書とほとんど変わらない
ということも、賛否を分けるところだろう。
他の先生の体系書で勉強している人は見解が食い違うのは当然だし、
さらに前田体系書で勉強している人にとっても、
結局体系書と同じような説明が書いてあるわけだから、
それを読んで納得できない部分は、本書を読んでも
納得できないままということになりかねない。
 
なお、前田説は、「結果無価値論者として有名」とよく言われるが、
それはかなり語弊がある見方だ。前田説は、結果無価値でも
行為無価値でもない第三の方向である「実質的犯罪論」という
立場をとっているところに特徴があるのであり、
学説としてはかなり独自な部類(少数説)である。
確かに「判例に近い」が、「中立的な立場」にいるとは言いがたい。
これを中立という人はやや誤解していると思う。
前田説は世間からのうけは抜群にいいが、
学術的な評価は低調というのが現状らしい。
つまり、あくまで、前田説をベースに判例をスムーズに
知ることができる本であり、刑法学の多数説を的確に学べる本とは
いいがたいことには留意が必要ということだ。
 
とはいえ、ほどよい詳しさで重要判例を網羅してある本書は便利だ。
優良なケースブックの見本といえる。
また、逆説的ではあるが、少数説刑法学者である前田教授にとっては、
これが(学術論文を除けば)代表作という風にみなすこともできると思う。
本書があれば、バカ売れしている総論講義や各論講義なども、
実のところは、特に購入する必要性はないともいえるかもしれない。
 
 
 
 
 
刑法基本講義‐総論・各論(第2版)』  佐久間・橋本・上嶌  有斐閣  2013
 
 
 
なぜかよくわからない3人の取り合わせで登場した
刑法テキストの第2版である。おそらく御三方の講義を
取る人以外にはあまり関係がない本だろうが、
一般読者という目線で多少気になるところがあったので、
一応考えてみる。
 
 
悪いとまではいえないが、
やっぱりいまひとつと言わざるをえないだろう。
コンセプト的に不明瞭な感じが否めない。
 
従来の刑法の教科書は、総論と各論と分かれ、
非常に大部なものが多い。そのことを考えると、
両者を1冊で説明するという取り組みはたしかに有益だ。
そんな中で、せっかくの機会にどうしてこういう感じの
本にしようということになったのかは、やはり疑問。
1冊でまとめるなら、1人または学説の近い学者で
やらなければすっきりしない。そういう意味で、
本書はちょっと評価するのは難しいと思う。
 
 
いろいろパターンで空想してみると。
 
Ⅰ 橋本教授・上嶌教授が1人で書き下ろす。
 
 当然これがベスト。佐久間教授でもまあよいが、
ご自分の著作群があるのだから、その必要はない。
 
 
Ⅱ 上嶌教授が東大系若手数人と組んで作る。
 
 リーガルクエストみたいな感じ。
 
Ⅲ 「この3人で作る」ということを前提とするのであれば、
 
 ①各300ページほどで、総論と各論の二冊に分ける。 
 ③それぞれを、橋本教授と上嶌教授の単独執筆にする。
 ④佐久間教授は、それぞれにサポートというスタンスで参加する。
 
 
『書斎の窓』(201012月号)では、
佐久間修教授と民法の佐久間毅教授が、
同じ「基礎シリーズ」の著書として対談しているが、
この二者のどこが同じシリーズ(いわば姉妹書)なのだと、
強い違和感を感じる。『民法の基礎』の方は、
佐久間毅教授が1人で、しかも本格的に大部に書き下ろした教科書である。
“全体を圧縮した内容を三人がかりで書いた”この『刑法基本講義』とは
趣向がまったく違うと言わざるをえないだろう。
『民法の基礎』と姉妹書だとするのであれば、
上述した分野別とか単独執筆にしなければ、
はなはだ的外れだと思う。
 
 
なお、第2版のはしがきでは、
「本書の特長はケーススタディにある。諸々の批判は当たらない」
と強調されている。しかし、さらに口を挟ませていただくなら、
まず、ケーススタディ(あてはめ)を意識していないテキストが
もはや通用しないことは当然であって、本書だけの特長とするのは
難しいだろう。また、刑法のケースブックや事例演習書・問題集は、
すでにけっこうな数ある。それらとの兼ね合いも微妙だ。
さらに、ケーススタディを多く盛り込みたいなら、逆に分量は
増えるはずであり、“コンパクト化”と両立するのかも疑問である。
 
 
この本を格別に槍玉に上げる必要はないのだけど、
「なぜこうかな〜?」という法律テキストがあまりに多いので、
 この本をネタに愚痴を書き連ねてみた。
 
 
 
 
 
 
刑法総論 (LEGAL QUEST)』  今井・小林・島田・橋爪  有斐閣 
初版 2009年 / 第2版 2012
 
 
西田典之・山口厚教授らの次世代となる
東大系刑法学(いわゆる結果無価値論)の
若手学者による、標準的なテキスト。
 
きっと、4人ともこれから活躍して、
その筋では有名となることだろう。
 
 
しかし、このテキスト、基本を示すという
シリーズの趣旨からみると、ちょっとばかり
力が入りすぎてしまったのではないかと思われる。
 
450ページ。
西田総論や山口総論と、ほとんどサイズとして
変わらないというのはいかがなものだろうか。
同シリーズの行政法や労働法に比べてもかなり分量が多い。
価格も分相応で、特にリーズナブルではない。
 
 
また、同じく標準を志向する
山口厚『刑法』、
有斐閣Sシリーズ『刑法総論』
有斐閣アルマ『刑法1』
などと比べても突出している。
 
“入門段階の基礎固め”を目的とする
シリーズの趣旨からすれば、
350頁くらいに収めるべきではなかっただろうか。
 
これなら多少の支障があっても
西田総論や山口総論で勉強すればいいと思う。
せっかくの機会にちょっとばかり残念な感じだ。
 
なお、「師匠の学説とはちょっと違うので、自分達の
本を作りたい。」という気持ちもあったのかもしれない。
だが、もしそうだとすると、それはよい思いつきでは
ないと思う。多少の使いにくさがあろうとも、
定評が確立した体系書を用い、それに講義で修正を
加えていくのが、学問としての正道なはずだ。
(と、たしか偉い先生が言っていたと思う。)
 
 
学生にとっても、まだ無名な本より、
定評のある体系書を買わせた方が良心的だといえる。
繰り返すが、価格に大差はない。
両方買わせるならむしろ不経済である。
 
 
この手の法律学のテキストは、
総論300頁くらい、各論350頁くらいの2冊組み、
あるいは、総論と各論を合わせた一冊本として
600頁くらいが適量だというのが、私の見解である。
 
さらにいえば、類書が豊富な刑法学に関しては、
「この一冊で新時代を確立する!」くらいの
意気込みが ない限り、“教科書”と称する書物を
市場に投じる意味すら疑わしいものがある。
 
 
 
 
『刑法(第版)』  木村光江  東京大学出版会  2010
 
 
ついに、というかやっと出た、木村光江『刑法(第3版)』。
前田刑法の改訂と歩調を合わせているためしかたないのでしょうが、
8年ぶりというのはあまりに長い。
 
 
少数派学説であるため、人気は頭打ちという感じで伸びないですが、
実は判例・実務を最もよく反映した良書だといっても
過言ではないでしょう。賛否はありますが、
判例に親和的であり、一般の処罰感情にも比較的近い
結論をとることが多いので、学説とかにこだわりがないなら、
かなり広い層におすすめできる刑法教科書の一冊です
 
 
前にも書きましたが、研究者ではない限り、
刑法の“体系書”としては、かつては団藤刑法や大塚刑法、
現在ではそれに加えて、山口刑法だけあれば十分だといえます。
あれこれたくさん出回っている刑法体系書ですが、
とりあえずそれ以外は読む必然性は今のところありません。
 
あとの学習者需要としては、よりコンパクトで
易しいテキストということになりますが、
その点で木村刑法がおすすめということになります。
 
本書は、刑法総論と各論を1冊で解説するという
画期的なテキストとして登場しました。私としては、
理路整然と丁寧に解説されているので、
少なくとも、凡百のマニュアル本や入門書よりは
理論的で役に立つのではないかと思います。
論点の解説も簡にして要を得ているので、
一般の大学生や社会人の勉学には
これで十分ではないでしょうか。
 
もちろん、「それではぜんぜん足りないよ」という
専門家を含めた中〜上級者の方の意見があるでしょうが、
それに対しては私などから特にアドバイスできることはありません。
 
「何でもいいから刑法を勉強したい」という人に一冊
おすすめするとすれば、今でもこれが一番に頭に浮かびます。
あとは、くどいですがやはり山口厚教授による
『刑法』(一冊タイプ)でしょうか。
  
 
もちろん前田刑法で勉強している人にとっては
まとめ用としてぜひ持っておきたいところ。
特に、『最新重要判例250』(弘文堂)との併用が
効果的だと思います。
というか、語弊を恐れずにいってしまうと、
本書さえあれば前田刑法(総論・各論)すら
存在意義はないかもしれません。極論ですが。
 
 
ただ、ひとつ難をいうと、各章末にレジュメを記載するという
配慮がされているのですが、この本自体が簡潔なため、
あまり意味をなしていないように感じられました。
ここは削除して、本文をもうちょっと充実させてほしいです。
 
 
なお、500頁程度,ハードカバー,2色刷りというこの体裁は、
刑法はもちろんのこと、あらゆる法分野のテキストにとって、
“基本書の模範とすべき手法”だと思われます。
このサイズがもっとも使いやすいといって過言ではないでしょう。
学者先生や出版担当者には、ぜひとも本書を
まねてほしいと思います。
 
 
                   http://www.utp.or.jp/
 
 

 
 

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